背後から聞こえてくる銃声に、ユウカ達の戦いが始まったことが感じながら、俺は前方に居る不良たちに意識を向ける。
それぞれの位置は疎らにばらけている状態だ。
1対5という数的不利を考えれば、先制攻撃を仕掛け、最初に一人でも持っていきたい。
そう考えた俺は、こちらの一番近くで銃口を向けている不良生徒を標的に決めた。
(彼女に撃たれるよりも早く撃つ!——
その弾が、俺を狙う銃口に一寸の狂いもなく入っていく。
ズガンッ!
一人目。
「うわっ!?」
突然自身が持っていた銃が壊れたことに、その銃の持ち主とその隣に居た不良生徒は驚き、隙を晒す。
当然そんな隙を見逃さない俺は、
「早っ……!?」
「君のような女の子がこんな危ない物を持っていたら駄目だよ。」
二人目。
「何しやがった!」
当然不良生徒はこちらにアサルトライフルを発砲してくる。
だが、その弾道は焦りと動揺の所為か、とてもいい加減なものだ。
放たれた二十発の弾丸たちの軌道は、五つの弾以外は俺に当たらない。
減速して横に避けようとしたが、すぐにそれが悪手であることに気付いた。
他二人の不良生徒の存在だ。
二人とも銃でこちらを撃ってきているが、
ならばこの状況の俺が取る最適解は——
(
ヒステリアモードで集中力を高めた時に見えるスローの世界で俺はベレッタを五発撃つ。
ガァン!
スローの世界が終わるのと同時に。
そんな金属同士がぶつかったような甲高い音が、刹那の内に五回聞こえてくる。
その正体は至って簡単で、
ズガンッ!
そんな音を立てて不良生徒の銃は破壊される。
三人目
ただ他の武器を隠し持っていることを想定して意識からは絶対に外さない、当然先ほどの武器を破壊ないし、取り上げた二人も意識からは外していない。
そして、俺が四人目に向かおうとすると。
「ま、待ってくれ、降参だ!」
「武器も捨てる!」
そう言って残りの不良生徒二人は武器をこちらの足元に投げ捨て、両手を上げて降参のポーズをとる。
その顔には「こんな化け物を相手に出来るか!」という感情が滲み出ている。
女の子にそんな顔をされるなんて、悲しいものだね。
そんなことを思いながら俺は、足元の銃を拾い上げて素早く分解し、重要な部品を破壊してから足元に置く。
普段なら女性の持ち物を破壊するようなことはしないが、今は状況が状況なので時間は掛けられないし、持ち物が増えて動きにくくなるのも避けたい(拳銃のような小さいものなら話が変わるが)。そのため破壊することにした。
「じゃあ、逃げていいよ。」
「は?……い、いいのか?」
「ああ、君たちを構ってあげたいという気持ちもあるけど、生憎
そう言って彼女たちに背を向け、未だ銃声が聞こえてくる方へ走る。
背後から聞こえてくる、逃げる不良生徒たちの足音を、ヒステリアモードで強化された耳で聞きながら。
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
戦況は拮抗、いやユウカたちの方が少しだけ劣勢だ。
個人の戦闘力はワカモが一番だが、連携出来ればユウカたちの方にだいぶ分がある。
それなのになぜ劣勢なのか。
その理由はやはり連携力不足だろう。
無理もない。今まで一度も共闘したことがない、しかも他の学園という関りさえない四人に連携して戦えというのは少し酷だろう。
すぐに加勢しよう。
そう考えた俺は、足元の瓦礫に気付かずこけてしまったところをワカモに狙われているユウカに向かって、
が、それでは間に合わない。
すでにワカモの銃口はユウカを完全に捉えており、ヒステリアモードにより強化された視力で、引き金に掛けられたワカモの人差し指に力が入ったことが分かる。
ワカモとユウカの距離は5mもなく、逆にこちらからふたりまでの距離はまだ40m以上も離れている。
これでは、
なら、ワカモの意識を無理やりにでもこちらに向けさせればいい。
そう考えた俺は、一度足を止めて息を思いっきり吸い込む。胸が吸い込んだ空気により膨らむのを視界の下ら辺で確認しながら、俺は肺が破裂しそうな程ため込んだ空気を声として開放する。
「ワカモッ!!!!」
空間を揺らす程の大声(190㏈)で、敵対する少女の名前を呼ぶ。
そんな大声に流石のワカモも気を取られ、両耳を塞いでこちらに視線を向けてくる。
俺はそんなチャンスを逃すことなく、再度
「くっ!?」
亜音速の速度で、一秒と掛からず40mという距離を詰めた俺をワカモは銃弾ではなく、銃の先端に付いている銃剣で突き刺そうとしてくるが。
遅い!
「
ヒステリアモードの反射神経で、骨格、関節、筋肉などを順番に高速で加速させることによって超音速の打撃を叩き込む。
数々の強敵を打ち倒し、俺の十八番とも言える、最強の打撃技。
そんな桜花により超音速で放たれた俺の拳は、こちらを突き刺そうとするワカモの銃剣の根本部分を横から殴り飛ばした。
それによりバキリッ!という音を立てて銃剣は、付いていた短刀が根本部分から折れ、銃身も折れ曲がっている。
「失礼するよ、ユウカ。」
「ちょ……!? と、遠山先生!!」
ワカモが別の武器を隠し持っている可能性を考慮し、ベレッタをワカモに向けつつ、倒れているユウカを片手で抱き込み後ろに下がる。
ある程度下がるとユウカを優しく地面に下ろす。
「それで、可愛い狐ちゃんはまだ遊び足りないのかな?」
「………あ、ああ。」
ワカモは俺の言葉に何も返さない。
俺の顔をじっと見つめて、小さく身体を震わせている。
そんなワカモの様子に違和感を感じ、俺が再度話し掛けようとしたところで——
「し、し……失礼いたしましたー!!」
そう叫んで走って逃げてしまった。
「つ、追跡します!」
「いや、追わなくて大丈夫だよハスミ。」
「ですが遠山先生!」
「いいから、お願いだよ。 ハスミ。」
「……わかりました。」
ワカモを追おうとするハスミを制すると、渋々といった様子で従ってくれる。
今ワカモを追いかければ、また戦闘になり、要らない被害が増える。それに、俺たちの目的はワカモの確保ではなく、シャーレを奪還して連邦生徒会長が残したモノを使い、サントゥクムタワーの制御権を取り戻すことだ。
「じゃあ行くぞ。」
そう言って俺はユウカたちを連れ、シャーレへと向かう。
シャーレの入り口付近で重装甲の巡航戦車に遭遇したが、ハスミの貫通弾おかげで難なく突破することが出来た。
お久しぶりです、ライズの鏡です。
戦闘描写ってムズイです。他の作者さんたちにはほんとに尊敬しかないです。マジで
《今回の用語解説》
『不可視の弾丸(インビジヴィレ)』
概要:眼で見えない速度で早打ちする技。
『秋草(しゅうそう)』
概要:足による寸勁で瞬時に亜音速まで加速する技。
『ヰ筒取り(いづつどり)』
概要:相手の携行武器をスリ取る技。スリ取るには両手が必要かつ表面に携行しているものしか出来ない。
『銃弾撃ち(ビリヤード)』
概要:相手が撃った銃弾を、自分の銃弾で弾く技。色んな応用技がある。
『鏡撃ち(ミラー)』
概要:『銃弾撃ち』の応用技の一つ。銃弾を相手の銃口に跳ね返す技。
『人間音響弾(ヒューム・カノン)』
概要:酸素を限界ギリギリまで取り込み、それを大声(190㏈)へと変える技。ちなみに本家は200㏈まで行ける。
『桜花(おうか)』
概要:遠山キンジの十八番とも言っていい最強の打撃技。
骨格、関節、筋肉などを順番に高速で加速させることによって超音速の打撃を叩き込む必殺技。
遠山キンジが考えた技。
技が多すぎる。
詰め込みすぎだろと思うかもしれないけど、今後のことを考えたら出来るだけ多くの技を序盤の内に解説しておきたいんですよね。
なんで許してください。
脱字誤字ありましたら報告くれると助かります。
感想、評価、お気に入りしてくれると嬉しいです。
では、また次回お会いしましょう。