超鋼鉄戦士ガリオスインフィニティ   作:アイアイホイホイおさるさん

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第一章「待たせましたね、弟くん!」
#01


 まず、暗黒の闇の広がる宇宙空間を割くように飛ぶ、複数の人工物があった。

 

 いわゆる宇宙船。地球の基準に当てはめるとUFOに分類されるそれらは、複数の船からなる船団を形成し進んでいた。

 してその外観であるが、人を乗せて長い時間生活する為のものでありながら、まるで中世貴族の家に飾られるシャンデリアのように豪華絢爛な様を闇の宇宙に輝かせていた。

 

「………地球側と連絡が取れました。進行は予定通り、ランデブーまであと少しです」

「ご苦労、下がってよろしいですよ」

「はっ、女王様」

 

 女王と呼ばれたその船団の最高責任者は、側近からの報告を聞いて優しく微笑んだ。

 

 彼女のいるその場所は、宇宙線の中でありながらそれを忘れてしまうような美しい庭園である。そこには故郷から持ち込んだ草花が咲き、立体映像の空は青く広がっている。

 既に在りし日の光景となったこの場所で、女王はカップに注いだ茶を飲み、人工の風に揺られている。

 

「お母様!」

 

 そこに、一人の少女が走ってきた。少女は、その女王とよく似ていた。

 

「もうすぐ地球というのは本当ですか?」

「ええ、本当ですよ」

「ふふ………本当に楽しみです、もうすぐ"弟くん"に会えるなんて」

 

 船団の目指す大地がもうすぐであると聞き、少女はその豊かな胸の高鳴りを抑えられないでいた。

 それは、彼女に限らずこの船団を形作る全ての「彼女たち」にとって共通の感情である。誰もが、誰しもが、大地に足をつけて生活するのを夢見ているからだ。

 

「ふふふ、ティファは本当に"彼"に会いたいんですね?」

「はい、お母様。早く"あの子"に会って、できれば抱きしめて守ってあげたいんです」

 

 しかし、その少女にとっては地上への憧れとは別に、その大地を目指す理由があるようだった。

 

「惑星間通信のお陰でここでもお話はできます。でも、それだけじゃ限界がありますから………」

 

 そう話す少女の表情に、若干の陰りが見えた。

 彼女には「会いたい」という感情以上に「会わなければ」という使命感があるようにも見えた。

 そんな彼女の感情を前に、女王は優しく微笑んだ。

 

「いいでしょう、では最初に降り立つ地は"彼"の国である日本にしましょう」

「えっ!?いいんですか!?」

「ええ、他ならない娘の願いですからね」

「お母様………本当に、本当にありがとうございます!」

 

 少女は喜び、年甲斐もなく跳ねて喜んだ。

 ブロンドの髪と長い耳が風に揺られ、豊満な乳房が上下にブルンブルンと揺れていた。

 人工的に作られた春の庭園にて、少女は運命の時を心待ちにしていた。

 

 

 ………ある日の事である。

 

 太陽系を周回していた探査衛星が、地球を目指して飛ぶ飛行物体の大群を検知した。

 調査により、それが隕石等ではなく人工的に作られた物、つまり宇宙船の船団である事が明らかになり、世界は騒然となった。

 

 更にその直後、宇宙船から地球に向けて接触が図られた。電波による通信が届いたのだ。

 その内容は、自らを「エルフェン船団」と名乗った彼らと地球との交流を求めるものだった。

 

 長年、SF映画や小説の中でしか無かった地球外知的生命体とのファーストコンタクトが実現する。その衝撃は地球全土を沸かし、世界は熱狂に包まれた。

 

 だが………その裏で。

 

 

 ***

 

 

 一方、そこも宇宙ほどではないが閉ざされた場所であった。

 一切の生命の存在を許さぬ、極寒の吹雪の吹き荒れる南極の地。

 そこに、かつて建てられた様々な基地の規模を遥かに上回る巨大な巨大な採掘施設(プラント)が建てられたのは、調査の結果その場所に広大なGメタルの鉱脈がある事が発覚したからだ。

 このGメタルというのが何かと言うと、精錬すれば頑強なGメタル合金になる上、核分裂の過程で核をも上回るエネルギーを生み出すまさに夢の物質であった。

 

 Gメタル採掘基地には、世界中から様々な人材が集められた。Gメタルを研究する為の科学者、軍人、資産家、企業………そこには、人類の未来があると言っても過言ではなかった。

 そして事件は、そんなGメタル採掘基地にて起きた。

 

「博士………あなたは狂っている!」

 

 白衣の男が、眼前の老人を糾弾した。

 この男も、周囲に倒れている人々も、Gメタルを人類の明日に役立てるべく集められた、世界屈指の優秀な人間である。

 それが、そんな人類科学の未来とも言うべき人々が、今ゴミのように殺されていた。

 

「ジョッシュ君、ワシは何も狂ってはおらんよ」

 

 それは、この老人によって引き起こされた事であった。

 同じように白衣に身を包み、ヒゲを蓄え、頭は剥げているという「博士」のパブリックイメージそのまんまなこの老人が、この虐殺を引き起こした。

 

「地球を狙う悪のエイリアンに立ち向かうべく、正義のスーパーロボット軍団が立ち上がる!まさに夢のシチュエーション、男が燃えるナイスな展開ではないかーっ!」

 

 自己満足、自慰行為、虚栄心、子供のような………ありとあらゆる、身勝手を意味する単語が白衣の男の頭に過ぎった。

 老人がこの基地を掌握し、自身に従わぬ者達を容赦なく殺害した理由は、あまりに幼稚であり、また勝手であった。

 

「それが狂っていると言うんだ!!」

 

 こいつはここで殺さないとダメだ。全身の細胞が叫んでいた。そして!

 

 

 パァン!!

 

 

 一科学者として、人間の頭脳の代表としての使命感から、男は老人に向けて拳銃を構え、引き金を引いた。

 放たれた弾丸が、眼前の狂人を撃ち貫く事を信じて。

 

「………が、ふっ」

 

 男の胸を、別の弾丸が貫いていた。どさりと音を立てて、物言わぬ肉塊となった男は倒れる。

 

「よくやったトド竹、流石はワシの息子じゃ」

「ありがとうございます、父さん」

 

 老人の隣に、また別の男が立っていた。その男の構えた拳銃の銃口から煙が上がっていた。正義は成される事は無かった。

 

「ヒヒ………では、始めるとするかのう」

「いよいよですね、父さん」

「ああ、ワシの長年の夢。地球を守る正義のスーパーロボットの建造という夢が、ようやく叶うのじゃ」

 

 こうして、老人の企みが動き出そうとしていた。

 老人は意気揚々と、自身を待つ配下達の前に出る。これから始まる聖戦の幕開けを告げるために。

 

「ぼくらの使命、それは地球の平和を守る事。地球を狙う悪の宇宙人から地球を守るため、ぼくらは立ち向かわなくてはいけないんだ!!厳しい戦いになるだろう!しかしぼくらは負けない!!何故なら、スーパーロボットは正義!正義は必ず勝たねばならないからだ!!さあみんな!正義のため、地球の平和を守る為に今こそ立ち上がろう!!いざゆけ!ぼくらのスーパーロボット!!」

 

 まるで、ヒーロー番組を子供に紹介する児童雑誌の一節がごとき演説が、血みどろになった採掘基地に響き渡る。

 無数の死体の上に彼らは立っている。口では正義と言っていても、そこにあるのは盲信と狂気ばかりであり、そこには正義など一欠片も無かった。

 

 

 ………その日、南極Gメタル採掘基地からの連絡が突如として途切れた。

 

 人類の未来があったその場所で何が起きたのか。国連は調査に乗り出そうとした。

 しかし、南極に吹きすさぶ猛吹雪が、その日を境に急に激しさを増したそれが、調査員の基地への立ち入りを拒んだ。

 

 こうして、突如として人々の認識を離れたGメタル採掘基地の謎が残されたまま、数日が過ぎた。

 そこで何が行われているのか。何が起きたのか。誰も知らぬまま、いつしかGメタル採掘基地への世間からの関心は薄れ、世間はエルフェン船団の話題に夢中になっていった。

 

 

 ***

 

 

「はあっ………はあっ………はあっ………!」

 

 そして、少年は走っていた。

 戦争のない平和な国であるハズのそこは破壊と戦火に晒され、その中を少年は死にたくない一心で走っていた。

 

「なんだよっ………どうなってんだよ………っ!」

 

 見れば、見覚えのある街が破壊されていた。ビルは砕かれ、道路は陥没し、所々から炎が上がっていた。

 まさに、そこは戦場。テレビや携帯電話(スマートフォン)越しに見る異国のニュース映像ではないし、ましてやアニメや漫画で描かれるような絵空事でもない。

 

 現実に起きている破壊と殺戮の渦。その中を、その破壊を生み出した元凶たる巨大な鉄の塊が動いているのが見えた。

 

「なんでこんな事が現実に起きてんだよ………夢だろ、夢じゃないのかよ、こんな事………!」

 

 また、レーザービームの光が飛んだ。鉄塊はそれを太い腕で受け止める。ダメージは無い。

 そしてお返しとばかりに、鉄塊は腕を相手に向けて、射出。

 

 どごぉん!

 

 相手は破壊された。たったの一撃、飛来した拳がまた一つ撃墜スコアを増やした。

 

「えっ」

 

 しかし、問題があった。

 撃墜された残骸が、燃え盛る炎に包まれたひしゃげた鉄塊が、少年の方向けて真っ直ぐ落ちてきたからだ。

 残骸は大きい。人一人を押しつぶして殺すには丁度いいサイズだろう。それが。

 

「こっちに来てる!?」

 

 重ねて言うが、少年は死にたくなかった。

 だから必死に考えた。この状況をどうにかする方法を。降り注ぐ残骸を避け、助かる手段を。

 コンマ1秒の間に様々な思考が少年の中を巡った。おそらく、今までで生きてきた中で一番、少年は思考していただろう。

 

 だが、それでも駄目だった。助かる方法など思いつかなかった。

 残骸が迫る。近すぎた。そして、遅すぎた。

 

「わ………わあ、わあああああーーーーーーーっ!!」

 

 死が迫ってきた。死にたくないと少年は叫んだ。そんな少年目掛け、残骸は容赦なく降り注いだ。

 一巻の終わり、ジ・エンド、少年は否応なしに全ての(せい)を諦め、その意識を手放さなくてはならない………

 

 ………はずだった。

 

 

 ずばしゃあっ!

 

 

 瞬間、閃光が走った。

 降り注いだ残骸はその一撃により切り裂かれ、四散する。結果、少年の頭上には何も降ってこず、その命は守られた。

 

「えっ………?」

 

 そして、少年は見た。残骸を切り裂き、自らの命を救った巨大なヒトガタを。

 破壊を振りまく無骨な鉄塊とは真逆の、それはか細く、ヒロイックで、そしてスタイリッシュな巨大ロボットであった。そして。

 

『待たせましたね弟くん、助けに来ましたよ!』

 

 そしてロボットから聞こえたのは、そんなロボットの外見とは若干合わない、耳が幸せになるようなウィスパーボイスであったという。

 

 ………さて、これはどういう事なのか。

 このロボットは何者で、そのパイロットは何故この少年の事を「弟くん」と呼んだのか。

 その全てを説明する為には、今より時間を少々巻き戻さなくてはならない。

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