超鋼鉄戦士ガリオスインフィニティ 作:アイアイホイホイおさるさん
その日、東京は大騒ぎになった。かねてより地球を目指していたエルフェン船団が、羽田空港に降り立つ事になったのだ。
世界中のマスメディアが押しかけ、宇宙人の姿を一目見んと人々が集まった。羽田空港は、国際イベントのそれを上回る厳重な警備の元、エルフェン星団を迎える事になった。
「わざわざ押しかける必要ないだろ、こーしてスマホで見れるんだし………」
休日、家に居たくなかったミノルは街に出かけていて、予想外の人混みに辟易としながら、海沿いの公園のベンチに腰掛けて
小さな画面の中では、なんとかカメラ位置を獲得できた日本の某放送局が、羽田空港に降り立ったエルフェン船団の宇宙船を捉えていた。
『あっ!見えてきました!エルフェン船団のUFOです!すごい大きさです!』
小さな画面の中で、空の向こうから降りてくる巨大な物体が映し出されていた。
金持ちの家にある
数は三つ。巨大な物が一つと、それを小形化したような外観の物が二つ。
「母艦とその護衛艦って所か………」
見上げれば、遠くからでもその姿がうっすらと見えた。丁度ミノルのいる公園からも羽田空港が見えたからだ。
眼下に広がる空港施設と比較しても、かなりの大きさがあるのが見える。
『あっ!今宇宙船から人が降りてきました!宇宙人でしょうか!』
そして、手元のスマホの中でも事態が動いた。羽田空港に降り立ったエルフェン船団の母艦から光が走り、数人の人影らしき物が降りてきた。
報道カメラがズームになり、ようやく宇宙人がその姿を映し出される………と思われたが。
「うわっ!ラグった!今かよ!」
スマホの画面が止まり、データ通信中を意味する丸い円がぐるぐると動いていた。
人が集まりすぎ、周囲に飛び交う電波が加重された事で通信が重くなり、データが「詰まった」のだ。こうなってはしばらくは動かない。
「はぁーあ、萎えた萎えた………行こ」
世紀の瞬間をデータ通信の限界により逃した事で気分が萎えたミノルは、スマホを仕舞うと歩き出した。このまま遠目で宇宙船を見ていても仕方ないと思ったからだ。
時刻は午後2時。間食に何か菓子でも買おうか。そう考えながら歩を奨めていた、その時であった。
………ドォッ………ン………
遠くに、大砲でも放ったような、ぐもったような爆音が聞こえた。羽田空港の方向だった。
何かと思いふと顔を向けたミノルは、騒然となる周囲と共にその光景を見た。
「………え?」
エルフェン船団の、護衛艦サイズの宇宙船二隻。その内の片方から煙が上がっていた。
そして水平線の彼方から飛んでくる、鉄の巨兵の姿が確かに見えた。
***
待機していた航空自衛隊に、
もし、エルフェン船団が敵意を持って攻撃してきた際に対処すべく用意されていた彼らだが、出撃理由は予想外の物だった。
エルフェン船団の船が、突如所属不明機の攻撃を受けたというのだ。
「宇宙人の船を攻撃した!?一体どこの国の馬鹿が!」
世界中が注目する中行われた強行。対応に向かう戦闘機のパイロットの脳裏にこれまでの人生の中で見聞きした様々な………明言は避けるが評判の悪い某国や某国の名が浮かんだ。
しかし、現場にかけつけた彼が見たのは荒唐無稽かつ予想外にも程がある存在だった!
「な、なんだありゃあ!?ロボット!?」
そう、それは空飛ぶスーパーロボットだった!
ドラム缶に手を付けたような銅色のロボットが、スーパーなマンがごとく拳を前に突き出して、背中のロケットを噴射しながら飛んでいた。
そいつが、エルフェン船団の宇宙船を攻撃したのだ。
そして読者諸君は既に察しがついている通り、そのロボットこそ、南極は地球防衛軍基地から発進したガリオス1号である!
『ガリオス!パァァーーーーンチ!!』
そのコックピットに座るおそ竹が叫ぶと同時に、音声入力によりガリオスの拳が撃ち出された!
ガリオスパンチ!それは悪を、つまりガリオスの前に立ち塞がる全てを撃ち貫く鉄拳、つまるところのロケットパンチである!
どごぉん!!
二発目のガリオスパンチがエルフェン船団の護衛艦に撃ち込まれ、その絢爛が外観を粉砕し、本体に戻ってゆく。
二発も攻撃を撃ち込まれたエルフェン護衛艦は、たまらず羽田空港に不時着する。
と、同時にガリオスも羽田空港に降り立った。
『やいやいやぁーい!悪の宇宙人め!地球を侵略しようなんざ、この西野おそ竹様とガリオス1号が許さねぇーぜ!!』
外部スピーカーをオンにして、おそ竹が叫んだ。その熱血漢ボイスが東京中に響き渡る。
この時おそ竹は、完全に自分がニシノ博士から教育として見せられた、熱血スーパーロボットアニメの主人公になったつもりでいた。
自分が宇宙と地球と外交を邪魔したなど、毛頭思っていなかった。
『おっ!出てきやがったな宇宙人ども!』
そして見れば、エルフェン船団の母艦のハッチが開き、次々と小型の宇宙船が発進していくのが見えた。
球体を板で挟んだような………某
ガリオスからの攻撃を受けた為に、それを迎え撃つべく出撃したのだ。
『下等生物共めッ!!てめえらの相手はこの西野おそ竹様とガリオス1号だ!行くぜガリオス!!ゴーーーッ!!』
ガリオスが両手を振り上げ、某鉄人の「ガオー!」のようなポーズを取る。スーパーロボットのお決まりの決めポーズだ。
そして、人類初の宇宙人との邂逅は、突如として乱入してきた
***
母艦ブリッジは騒然となった。予定ではこれから日本の総理大臣並びに国連大使との会談を予定していたのだが、不躾な来客によりその全てが中断となったからだ。
突如として来襲し、友好の使者としてやってきた自分達に対して攻撃を仕掛けた、あのスーパーロボット・ガリオスの手によって。
「お母様!大丈夫でしたか!?」
「ええ、なんとか………」
地球に降り立つハズが急いで戻ってきた女王は、事態を収集すべく母艦のブリッジに来ていた。傍らには、彼女を心配する少女の姿もある。
「自軍損耗率40%!」
「たった一機で!?嘘でしょ!?」
ブリッジの巨大なモニターでは、彼女らの主力戦闘機・ガンシップの大部隊を一機で蹴散らす地球のスーパーロボット・ガリオスの姿が映し出されている。
敵はたった一機。しかし圧倒的であった。時が一秒過ぎる度に、ガリオスはガンシップを何機も撃墜してゆく。
「地球にあんなロボットが居たなんて………」
自衛隊の戦闘機も攻撃を開始したのが見えたが、ガリオスはミサイルが直撃しようとびくともしない。当然だ、その装甲は地球で一番硬いGメタル合金なのだから。
「お母様………」
「自衛用のガンシップでは、やはり限界がありますね………」
不安げな表情で、少女は画面の中で自分達の戦力が撃破されてゆくのをただ見ているしか出来ない。
母艦を地球外に避難させるべきか?と考えていたその時、少女は見つけた。逃げ惑う人々の中にいる、その少年を。
「………あっ!」
「どうしました?ティファ」
「あそこ!XB360座標、拡大してください!」
少女に従い、モニターの一部が拡大する。そこには、ガリオスによる破壊から逃げ惑う市民の中にいる、一人の少年が映っていた。
少年は少女を知らない。けれども、少女は少年を知っている。それは少女が地球を目指した理由なのだから。
「………お母様、ワガママをお許しください」
「何です」
「アークカイザーX1を出します!あのままでは、"弟くん"が死んでしまいます………!」
少女は、自分が言っている事がどれだけ横暴かを理解していた。個人的な理由で船団の最強の戦力を動かそうと言っているのだから。
けれども、この状況で少女は自分を律する事は出来なかった。その事は、女王も理解していた。だから。
「………許可します」
「お母様!」
「ただし、アークカイザーが破れた場合、即座に船団を地球から撤退させます。よろしいですね?」
「………はい!」
許可は降りた。願いを聞き届けられた少女は、自らの使命を遂げるべく走り出す。
向かうは格納庫。王族専用に用意された特別な場所であり、彼女だから入る事を許された場所。
「待っててください"弟くん"………お姉ちゃんが今行きますからね!」
格納庫。そこでは、鋼鉄の騎士が出撃の時を待ち、佇んでいた。
***
「はあっ………はあっ………はあっ………!」
そして、少年………ヒラギ・ミノルは走っていた。
戦争のない平和な国であるハズのそこは破壊と戦火に晒され、その中を少年は死にたくない一心で走っていた。
「なんだよっ………どうなってんだよ………っ!」
見れば、見覚えのある街が破壊されていた。ビルは砕かれ、道路は陥没し、所々から炎が上がっていた。
まさに、そこは戦場。テレビや
現実に起きている破壊と殺戮の渦。その中を、その破壊を生み出した元凶たる巨大な鉄の塊が、ガリオスが動いているのが見えた。
「なんでこんな事が現実に起きてんだよ………夢だろ、夢じゃないのかよ、こんな事………!」
また、ガンシップのレーザービームの光が飛んだ。ガリオスはそれを太い腕で受け止める。当然ながら、Gメタルの走行にはダメージは無い。
そしてお返しとばかりに、鉄塊は腕を相手に向けた。そして。
『ガリオス!パァァーーーーンチ!!』
どごぉん!
拳が、ロケットパンチとなって射出される。ガンシップは容易く破壊された。たったの一撃、飛来した拳がまた一つ撃墜スコアを増やした。
「えっ」
しかし、問題があった。
撃墜されたガンシップの残骸が、燃え盛る炎に包まれたひしゃげた鉄塊が、ミノルの方向けて真っ直ぐ落ちてきたからだ。
残骸は大きい。人一人を押しつぶして殺すには丁度いいサイズだろう。それが。
「こっちに来てる!?」
重ねて言うが、ミノルは死にたくなかった。
ろくでもない人生という自覚はあった。それでも、死ぬのは嫌だった。
だから必死に考えた。この状況をどうにかする方法を。降り注ぐ残骸を避け、助かる手段を。
コンマ1秒の間に様々な思考がミノルの中を巡った。おそらく、今までで生きてきた中で一番、ミノルは思考していただろう。
だが、それでも駄目だった。助かる方法など思いつかなかった。
残骸が迫る。近すぎた。そして、遅すぎた。
「わ………わあ、わあああああーーーーーーーっ!!」
死が迫ってきた。死にたくないとミノルは叫んだ。そんな彼目掛け、残骸は容赦なく降り注いだ。
一巻の終わり、ジ・エンド、ミノルは否応なしに全ての
………はずだった。
ずばしゃあっ!
瞬間、閃光が走った。
降り注いだ残骸はその一撃により切り裂かれ、四散する。結果、ミノルの頭上には何も降ってこず、その命は守られた。
「えっ………?」
そして、少年は見た。残骸を切り裂き、自らの命を救った巨大なヒトガタを。
『待たせましたね弟くん、助けに来ましたよ!』