ポケットモンスター 君がいた記録   作:人間国宝

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第17話

 

 最後の回廊。

 

 そこは、絶対零度の氷の玉座の部屋だった。

 四天王最強の男、ドラゴン使いの『カイゼル』。

 彼は玉座に座り、両脇にガブリアスとオノノクスを従えていた。

 

「……ここまで来たか。死人の行進だな」

 

 カイゼルが立つだけで、空気が凍る。

 

 僕の身体は、もう限界を超えていた。

 指先だけでなく、腕全体が紫色に変色している。

 心臓が動いているのが奇跡だ。

 

 シリウスは片腕が使えない。ハヤテは羽がボロボロ。ウツセミは瀕死。キャンバスはガス欠。

 

 そして、僕の命綱であるウィック(ランプラー)の炎が、風前の灯火のように揺らめいている。

 僕の命が、もう尽きかけているのだ。

 

「終わりにしてやる。ガブリアス、『ドラゴンダイブ』!」

 

 圧倒的な質量とスピード。

 

 誰も受け止められない。

 全滅か。ここまで来て。

 

 その時。

 僕の懐で、黒い石が熱を持った。

 

 第8ジムリーダー・グリムから貰った『エンドバッジ』。黒曜石。

 いや、これはただのバッジじゃない。

 特殊な波動を放つ、『闇の石』の結晶体。

 ウィックが、僕の手から離れた。

 彼は、迫りくるガブリアスの前に立ちはだかり、そして振り返って僕を見た。

 

 『……レン。全部、よこせ』

 

 そう言った気がした。

 彼は『エンドバッジ』を取り込み、自らの身体を砕いた。

 

 進化。

 

 ゴオォォォォッ!!!

 

 天井まで届くような、蒼白い火柱が上がる。

 ランプラーのガラスが弾け飛び、シャンデリアのような優雅で、不吉な姿へ。

 

 シャンデラ。

 魂を誘う灯火。

 進化したウィックは、僕に残されたわずかな「余命」を、根こそぎ吸い上げた。

 

 僕の視界が完全にブラックアウトする。

 音も聞こえない。感覚がない。

 僕は立ったまま死んだのか?

 

 いや。

 ウィックが、僕の身体を「着て」いた。

 彼の炎が僕の血管を駆け巡り、心臓を無理やり動かし、神経を接続する。

 ゴーストタイプによる、憑依。

 

 今の僕は、レンであってレンじゃない。

 ウィックと一体化した、青い炎の亡霊。

 

「……ガァァァァァァッ!!」

 

 僕の口から、人間のものではない咆哮が出た。

 ウィック(シャンデラ)の特攻種族値は、伝説ポケモンにすら匹敵する。

 

 放たれた『オーバーヒート』は、氷の玉座を一瞬で蒸発させ、ガブリアスを黒焦げにして吹き飛ばした。

 カイゼルが、初めて恐怖の表情を浮かべた。

 

 「化け物か、貴様……!」

 

 理屈じゃない。

 僕たちは、生きるために死神と融合したんだ。

 オノノクスも、サザンドラも、蒼炎の前には塵に等しかった。

 

 

 

 

 

 四天王を全員倒した。

 最後の扉が開く。

 

 

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