最後の回廊。
そこは、絶対零度の氷の玉座の部屋だった。
四天王最強の男、ドラゴン使いの『カイゼル』。
彼は玉座に座り、両脇にガブリアスとオノノクスを従えていた。
「……ここまで来たか。死人の行進だな」
カイゼルが立つだけで、空気が凍る。
僕の身体は、もう限界を超えていた。
指先だけでなく、腕全体が紫色に変色している。
心臓が動いているのが奇跡だ。
シリウスは片腕が使えない。ハヤテは羽がボロボロ。ウツセミは瀕死。キャンバスはガス欠。
そして、僕の命綱であるウィック(ランプラー)の炎が、風前の灯火のように揺らめいている。
僕の命が、もう尽きかけているのだ。
「終わりにしてやる。ガブリアス、『ドラゴンダイブ』!」
圧倒的な質量とスピード。
誰も受け止められない。
全滅か。ここまで来て。
その時。
僕の懐で、黒い石が熱を持った。
第8ジムリーダー・グリムから貰った『エンドバッジ』。黒曜石。
いや、これはただのバッジじゃない。
特殊な波動を放つ、『闇の石』の結晶体。
ウィックが、僕の手から離れた。
彼は、迫りくるガブリアスの前に立ちはだかり、そして振り返って僕を見た。
『……レン。全部、よこせ』
そう言った気がした。
彼は『エンドバッジ』を取り込み、自らの身体を砕いた。
進化。
ゴオォォォォッ!!!
天井まで届くような、蒼白い火柱が上がる。
ランプラーのガラスが弾け飛び、シャンデリアのような優雅で、不吉な姿へ。
シャンデラ。
魂を誘う灯火。
進化したウィックは、僕に残されたわずかな「余命」を、根こそぎ吸い上げた。
僕の視界が完全にブラックアウトする。
音も聞こえない。感覚がない。
僕は立ったまま死んだのか?
いや。
ウィックが、僕の身体を「着て」いた。
彼の炎が僕の血管を駆け巡り、心臓を無理やり動かし、神経を接続する。
ゴーストタイプによる、憑依。
今の僕は、レンであってレンじゃない。
ウィックと一体化した、青い炎の亡霊。
「……ガァァァァァァッ!!」
僕の口から、人間のものではない咆哮が出た。
ウィック(シャンデラ)の特攻種族値は、伝説ポケモンにすら匹敵する。
放たれた『オーバーヒート』は、氷の玉座を一瞬で蒸発させ、ガブリアスを黒焦げにして吹き飛ばした。
カイゼルが、初めて恐怖の表情を浮かべた。
「化け物か、貴様……!」
理屈じゃない。
僕たちは、生きるために死神と融合したんだ。
オノノクスも、サザンドラも、蒼炎の前には塵に等しかった。
四天王を全員倒した。
最後の扉が開く。