レクイエム・シティの外れ、古い墓地。
静かな場所だった。ここで少し休息を取りながら、新入りのウツセミ(ツチニン)の特訓をすることにした。
ウツセミは不器用だった。
目は見えず、動きも遅い。けれど、ひたむきだった。
僕が咳き込んで座り込んでいると、土の中から「きれいな木の実」や「光る石」を掘り出して、僕の手に押し付けてくる。
「……ありがとうな。優しいやつだな、お前は」
撫でてやると、硬い甲羅の下で嬉しそうに震える。
だが、その時は唐突に訪れた。
特訓中、野生のズバットを倒した直後。
ウツセミの身体が、激しい白光に包まれた。
進化だ。
僕は息を飲む。ツチニンの進化は特殊だとは聞いていたが、実際に見るのは初めてだ。
バキ、バキバキッ……。
光の中で、甲羅が割れる音がした。
まるで、自分の身体を引き裂くような、生々しい音。
背中が割れ、中から現れたのは――
ブゥゥゥン!!
目にも止まらぬ速さで空へ飛び出した、黄金色の虫。
テッカニンだ。
そのスピードは音速に近い。残像を残して飛び回り、鋭い鎌を振るう。
生命力の塊。速さの権化。
それが、ウツセミの「新しい命」なのか。
「すごいな……! あんなに速くなれるなんて」
僕は感嘆の声を上げた。
だが、シリウス(キルリア)は空を見上げず、地面をじっと見つめていた。
その表情は、どこか悲しげで、恐れを抱いているようだった。
『……キル?』
シリウスの視線を追う。
そこには、テッカニンが飛び立った後の「抜け殻」があった。
土色の、割れた甲羅。
動くはずのないゴミ。
しかし。
その「抜け殻」が、ふわりと浮き上がった。
「……え?」
背中の割れ目の奥に、ぽっかりと空いた暗闇。覗き込めば魂を吸われるという、虚無の穴。
頭の上には、天使の輪のような光の輪。
ヌケニン。
進化の過程で生じた、生ける屍。
空を高速で飛び回るテッカニン(本体)と、無音で浮遊するヌケニン(抜け殻)。
一つの命が、二つに割れたのだ。
僕はリュックを探った。
予備のモンスターボールが一つある。
僕は震える手で、ヌケニンにボールを向けた。
ヌケニンは抵抗しない。感情がないからだ。
「……」
何も伝わってこない。シリウスやウィックのような温かさも、ウツセミだった頃の優しさもない。
ただ、そこに「死」が浮いているだけ。
「……似てるな、僕と」
中身が空っぽで、いつ死んでもおかしくなくて、それでも世界にへばりついている。
僕は吸い寄せられるように、ボールを投げた。
カチリ。
あっけなく収まった。
テッカニン(ハヤテ)と、ヌケニン(ウツセミのまま)。
僕のパーティに、また歪な仲間が増えた。