お腹の中にジャシン様がいるらしい件   作:笑嘲嗤

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第10話 引き返せない橋

 橋にガトーが現れた。

 

『HQよりブラボー4。拘束可能ならば拘束せよ。判断は任せる。今ブラボーチームが現場に向かってる』

 

『了解HQ』

 

 さてせめてサスケを見捨てたんだ。なら仕事くらいはしなきゃいけない。

 

「まったくワシの想定内に落ち着いちまって退屈極まりないぜ!再不斬、その程度でクーデターなんてやろうとしてのか?くははは!」

 

 ガトーは右腕を釣っていた。けがをしているようだ。

 

「ああ。こいつ死んじゃってるよ!まったく!血継限界持ちなんだろう!まったく!生きて子作りしてくれればガキが売れて儲かるのによぅ!」

 

 ガトーはお面の子の顔を蹴り飛ばした。

 

「何やってだってばよ!こらぁ!」

 

「迂闊に動くな!!」

 

 ナルトがキレてガトーに殴りかかろとするけどカカシ先生が止めた。

 

「なにしに来やがったガトー?」

 

 再不斬がガトーに尋ねる。

 

「あん?ああ。勝利宣言だよ。ビジネスっていうのはやっぱり勝った後にパーティーするのが楽しいんだぁ!こうして決着がついただろう?お前らにこの波の国なんて貧乏な国になんでわざわざワシ自ら乗り込んでビジネスしていたか教えてやろうと思ってな。くくく」

 

 ガトーは陶酔しきっていた。

 

「ワシがタズナを狙ったのはまずこの国の住民の心をへし折るためだ。たかが橋づくりでなんやかんやとガトーコーポレーションへの反抗心は育っていたからな。橋自体はどうでもいいんだ。本当は心を折るため。折らないと次の仕事が出来なくてねぇ!」

 

「次の仕事だと?」

 

「ははは!この波の国には資源がない。と思われていた。あるんだよ。地下にレアアースの大鉱脈がな!だがいきなり土地を確保して掘っても水の国か火の国かあるいは雲の国が介入していくる。資源があると知ればこの国の住民も富の可能性で死にもの狂いの反乱をしてくるだろう。統治コストは安い方がいいに決まってる。タズナ。ワシはお前やカイザを評価してるんだ。部下に欲しいくらいのしぶとさだった。まあそういう奴ほど部下にはならないものだがね」

 

 思っていた以上に大事だったようだ。ガトーを拘束する判断は正しい。その正しさは歪んでいるけど、ガトーはもっと歪んでいる。

 

「そこまでして金が欲しいか?もう世界有数の大金持ちだろう?」

 

 カカシ先生がガトーを睨んでいる。もっともな意見だ。

 

「若い頃に忍界大戦があった。ワシは戦災孤児だった」

 

「それがなんだというんだ?」

 

「ワシは飢えて飢えて仕方がない子どもだった。だけどある日忍びたちが戦地で忍びの死体を回収しているのを見たんだ。閃いたよ。忍びの死体を忍びに持っていけば高く売れるってね。俺はその日から忍びの死体を運んでは売りさばいた。敵対国同士の忍びなら術式の解析に、仲間の里に届ければ遺族に感謝された。最高に愉しい日々だった……この世に価値を齎したワシは一人ぼっちの戦災孤児ではなくこの世にかけてはならないビジネスマンだと悟った!この世界にワシが存在し続ける理由!それはビジネス!金はスコア!勝利は報酬!ガトーは金ではなくビジネスのために生きるビジネスマンなのだ!!あはは!ひーはははははは!!」

 

 ああ。なんだこの狂気は。こんな人間がいるのか?日々を働かないと人は生きていけない。こいつは逆転している。生きるための糧を快楽に変換した。こいつは止まらない。怪物だ。

 

「というわけで勝利宣言も済んだ。お前らは死ね!」

 

 そしてガトーの後ろの荒くれ者どもが武器を構える。

 

「カカシ。クナイを」

 

「再不斬。わかった」

 

 カカシ先生は再不斬にクナイを投げた。それを口でキャッチした再不斬は荒くれ者どもに向かって突撃する。ああ、そうか。あのお面の子が好きなんだね。再不斬はそのままクナイ一本で突き進んでいく。ガトーの目前まで迫る。正しいと思う。だけど。ここからは俺の仕事だ。

 

「ガトぉおおおおおお!なぁ?!」

 

「うん?ううんん?!」

 

 俺は忍び足でガトーの後ろに迫り、ガトーを抱えて跳んだ。そしてクナイを再不斬の額に投げる。そのクナイは再不斬の額に刺さって彼は絶命した。

 

「なに?おまえ?木の葉の忍び?今のいい仕事だ!言い値で払おうじゃないか!」

 

 ガトーは生き延びてハイになってる。なにを言っても無駄だろう。俺は欄干に立ってチームの到着を待つ。

 

「お前?!ヒヨリ班のナナシだな?!なぜ再不斬を殺した?!ガトーを守ったのはなんでだ?!」

 

 カカシ先生が膝をつきながらも俺を凄まじい殺気を込めた目で睨んでくる。だけど答えることはできない。

 

「任務です。忍者だから」

 

「任務だと?!」

 

 俺はガトーを連れて荒くれ者とカカシ先生の間に立つ。そしてガトーを放して手錠を取り出してガトーの両腕にかける。

 

「ガトーあなたを逮捕する。木の葉の忍びただのナナシは波の国の司法活動の代執行としてあなたを拘束した。あなたには黙秘権がある。供述は法廷で不利な証拠として扱われる。弁護士に立ち合いを求める権利がある。弁護士が用意できない場合には国に用意を求める権利がある」

 

「なに?ああ。そういうことか……やられたねぇ。くくく」

 

 みんながポカーンとしている。

 

「代執行?ナナシ。答えてくれ。どういうことだ?」

 

「答えられません。今から隊長のヒヨリ先生が来ますのでそちらにお問い合わせください」

 

 俺はカカシ先生の追及を躱す。だけど波乱はまだ終わってない。

 

「お前たち!ワシを解放したら特別報酬を出してやるぞ!」

 

「「「「「うおおおおおおおおお!!」」」」」

 

 荒くれ者たちがこっちに迫ってくる。状況は最悪のままだ。俺はガトーだけ連れてカカシ先生たちの間を駆け抜ける。

 

「あっ?!てめーにげんじゃねー!!」

 

 途中でサスケの遺体に泣きつくサクラをみて心が折れそうだったけど、それでも走る。

 

「よくやったわナナシ。あとは私に任せなさい」

 

 橋の途中でヒヨリ先生とすれ違った。ヒヨリ先生は影分身を五体出して、同時に同じ印を組んだ。

 

『雷遁 雷獣追牙』

 

 影分身たちが放った雷遁が荒くれ者たちを飲み込んだ。あとに残ったのは黒焦げの死体だけ。敵勢力はヒヨリ先生の御陰で全滅した。

 

「カカシ先生。御無事ですか?」

 

 ヒヨリ先生が声をかける。

 

「もしかして俺たちの戦闘ずっと見てた?助太刀してくれても良くない?」

 

「すみません。それも含めてできませんでした。ガトーを確実に確保するのが我々の任務でしたので」

 

「はぁ。わかっちゃいるけどこういうのはしんどいなぁ……」

 

 カカシ先生は額当てを下げて写輪眼を隠した。俺も足を止める。ガトー拘束は成功した。

 

「なんなんだよおまえら!?」

 

 ナルトが叫ぶ。ぼろぼろ泣きながら俺を睨んでいる。

 

「ずっと見てたんだろ!?ならお前がいればサスケは助かったんじゃないのか?!どうなんだよ!!」

 

 俺はその言葉に俯くことしか出来なかった。だけどヒヨリ先生がナルトに近づいていってその頬を張った。

 

「なにすんだよ!!」

 

「うちのナナシは仕事をこなしただけ。サスケを守ることはうちのチームの仕事じゃない。責任を転嫁するな!お前も忍びなら任務に真剣に臨みなさい!!」

 

 やめてくれヒヨリ先生。その言葉は俺にも効くんだよ。

 

「ナルトー!サスケ君が!生きてるわー!」

 

 サクラが嬉しそうな声を上げた。俺もそっちを見るとサスケが立ち上がっていて手を挙げる。

 

「よかった。生きてたのか……」

 

 あのお面の子はサスケに手加減していたんだ。そして再不斬を庇って死んだ。なのにそれを侮辱して蹴ったガトーはくそ野郎だ。だが。そんな奴を生きて連れて行くのが俺の任務だ。

 

「お?もう終わったのか?ざんねーん」

 

「皆さんご無事ですね。良かった」

 

 忍び装束のハナコとリノイも到着した。

 

「ナナシ。現場の処理は私たちがやっておくからあなたはハナコとリノイに護衛されながら森乃特別上忍のところにガトーを連れて行って」

 

「了解しました」

 

 俺は振り向かなかった。泣きながらナルトが俺を睨んでいたのを知っていたから。こうして波の国での任務は完了した。何か引き返せないものを感じながら。

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