最初の任務からずっとCランクの治安維持ばかりだった。犯罪者を排除せよという曖昧な命令。リノイは基本生け捕りで、ハナコは殺して、俺は気絶させるだけ。ヒヨリ先生は見てるだけだった。だけど犯罪者は依頼人に引き渡したらすぐに処刑された。正しいとは思えない。かと言って異議を唱える気も起きない。忍者とは任務をこなすのが仕事であって世界の仕組みを考えることじゃないのだ。どこかおかしいと思いながらも俺は日常に流されていた。
「なあヒヨリ!修業はつけてくれないのかよ!?」
「私は勤務時間内しか仕事したくないから。今は任務でいっぱいだからね」
ハナコはヒヨリ先生と修業をしたがっていたけど、ヒヨリ先生はそれを飄々と断っていた。
「ふざけんなよまじで!他の新人班は上忍が修行してくれてるらしいのによ!」
「俺たちはアカデミー卒じゃないからなんじゃないかな?」
「人を殺す力を高めるのは間違っています」
ハナコはこの現状に不満があった。リノイも不満、俺は里から出ると忍者が垂れ流すチャクラがなくなって空腹になるからしんどい。俺たちは互いに仲良くするモチベーションがあまりなかった。ある日の朝。いつも通りに政庁に行って任務受付場に行った。すると第10班の面子とすれ違った。
「あ!ナナシ!げんきー?!」
いのは俺に手を振ってくれた。俺も振り返す。
「うん。うまくやってるかな」
「そうなんだ。あたしたちって見習いじゃん?Dランクの任務って退屈よねー。任務が終わったら修行だししんどい!」
「……うん。そうだね」
俺は自分たちの現状を話す気にはなれなかった。いのは根っからの忍者家系だし話しても仕方ないだろう。気遣われただけでも良しとしよう。
「本当に大丈夫か?」
だけど俺の心をすっと見通しちゃう人はいるものだった。シカマルがそっと俺に声をかけてきた。
「うん。大丈夫。やれてはいる」
「そうか。なんかあれば言えよ。同じ里の仲間なんだからな」
シカマルはぶっきらぼうだけど心配してくれてる。それだけでよかった。今はそう思う。そして第11班と別れて受付に行くと第7班がいた。
「俺ってばもっとこうすげー任務がしたいってばよ!」
ナルトが火影相手に駄々こねてた。サクラはナルトを白い目で見てたし、カカシ先生もため息を吐いていた。サスケはなんか声にこそしないけど、顔だけは賛同の意を示していた。
「新人ってみんなああいうこと言い出すのよね。うんうん」
ヒヨリ先生がなんか遠い目をしている。思うところはあるらしい。
「馬鹿馬鹿しいですね。はぁ。これだから忍者は……」
リノイはナルトの駄々に嫌悪を示していた。ハナコもかなって思って顔を見てみると。ナルトをひどく荒んだ顔で睨んでいた。
「人柱力のくせに……任務をえり好みかよ」
人柱力?なんだろうそれ。するとハナコがずかずかとナルトに近づいていった。だけど。
「だめ。やめなさい」
ヒヨリ先生がしゅっと音もなくハナコの前に立ちはだかる。
「やっぱりそいつは大事なんだね?落ちこぼれだっていうのに?」
「そういう問題じゃないわ。あなたのそれはただの八つ当たり。忍者なら表に出さないで」
ハナコは舌打ちだけして下がった。なんだろう。ハナコはナルトが機雷みたいだけど、尋常じゃない様子だ。
「まったく仕方がないのぅ。特別にCランクの任務を与えてやるぞ」
「まじで?!さんきゅーじいちゃん!」
火影様はナルトたちにCランクの任務を与えることにしたようだ。甘いのかな?Cランクの任務の凄惨さを考えるといいことのようには思えない。そして依頼人が入ってきて、任務の説明が始まった。他国の橋づくりの護衛だそうだ。まあ聞いた感じマシかなと思った。そんで第七班は任務について部屋から去っていった。
「ふむ。まったく。ナルトのやつが見苦しいところを見せたな」
火影様は俺たちに話しかけてきた。
「別にいいですよ。男の子ならそんなもんでしょう。うちは女子しかいないからわかりませんけど」
俺は男なんだけど、なんか怒涛の日々で訂正のチャンスがないんだよね。機会を先送りにし過ぎて逆に言いづらくなってきた。
「では第11班にはいつも通りCランクをやってもらう。今回は遠出だ。依頼人は払いがいいのできちんと成功させるように」
そう言って書類をヒヨリ先生が受け取って、すぐにブリーフィングになった。
「依頼内容は火の国首都灰墨にて人探しよ」
任務 ランクC No.342863132
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依頼人 むかいサトシ(向居カンパニー社長)
長男のアリシが大学の同級生と夜遊びして行方不明になった。
大切な息子だ。すぐに探し出して家に連れて帰って欲しい。
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「なんだよつまんねー。忍者と戦うBランクとか回してくれよ!」
ハナコはやる気がないようだ。逆にリノイは笑みを浮かべている。
「こういう人助けなら大歓迎です」
俺はというと一つのリスクを考えていた。ヒヨリ先生の顔を見ると渋い顔をしていた。同じリスクを考えているように思えた。
「任務は泊りになるわ。宿泊は依頼人の家でできるそうだから、着替え含め遠出の装備を揃えて向かうわよ。では各自一旦家に帰って準備後に昼の12時に門の前に集合ね」
それでいったん解散となった。
里を出て近くの町まで行った後に鉄道に乗って火の国の首都に向かった。すでに俺の腹は若干の飢えを感じ始めていた。
「汽車すげー!チャクラで動いてんの?!」
ハナコは窓から顔を出してはしゃいでいた。
「危ないからやめてください」
リノイはそんなハナコを引っ張って窓を閉めた。忍び装束のヒヨリ先生はサングラスのままで本を読んでいた。タイトルはイチャイチャパラダイスーあいあい傘ーだった。
「それはどんな本なんですか?」
おれはまだすべての文字が読めない。ひらがなとカタカナで精一杯だ。本というものをいつかは読んでみたい。
「素晴らしい小説よ。イチャイチャシリーズは本来は18禁なんだけど人気が出て全年齢版が出たのよ。あーピュアラブいいわー私もいつか恋したいわねぇ」
「したことないんですか?」
くのいちだから色香で敵を惑わすとかしてそうなのに。
「ないわねー。色ごととは無縁なのよ。それに里の各氏族から見合いの話ばかりで彼氏なんか作れないわ。メロってみたいわねぇ……」
ヒヨリ先生はまだ若いのになんか青春とは無縁な生活を送ってるらしい。ちょっとこの人の人間らしいところが見れて安心してしまった。
火の国首都は相変わらずデカかった。ハナコもリノイも上を見上げて圧倒されていた。
「観光は任務終わった後にしてねー。ほら依頼人のところへ行くわよ」
ヒヨリ先生の後をついていく。なんかこの間来た時より視線を感じる。多分木の葉の額あてと忍び装束のヒヨリ先生の聖だろう。遠巻きに見られてる。忍者は怖がられている。そんな印象だ。
「よく来てくれたな」
依頼人の住む豪邸にやってきた。豪奢な応接間に通されて依頼人に自己紹介する。
「忍者が来てくれたのは頼もしいが、子供、それも女の子ばかり?」
「ご安心を。この子たちの腕は十分すぎるくらいにあります。それに上忍の私もおりますからご安心ください」
「なるほど。まあいいが。では息子のアリシを探し出して欲しい。歓楽街で大学の同級生と遊んでいたそうなのだが、気がついたら途中でいなくなったそうだ」
「失礼ですが、例えば恋人の家にいるとかそういうことはないですか?」
「息子にも女の一人や二人はいるが、泊まりに行くときは事前に私に伝えている。それに学業に熱心な子だ。大学をさぼってまで女遊びしているなんて考えられない」
「なるほどわかりました。事故かなにかか。まあ色々な可能性を考えながら調査いたします。すぐにでもご報告できるでしょう。では任務に入ります」
ヒヨリ先生は依頼人と握手をしてから俺たちを連れて豪邸の外へ出た。
「まあ良くない女にハマってどこかでイチャイチャしているんだろうけど油断はしないようにね」
ヒヨリ先生は一応警告を口にした。そしてすぐにいなくなったという歓楽街に向かったのだった。
ナルトは波の国へ行きましたね。
さてナナシたちは何をこの任務で見るのでしょうか?