お腹の中にジャシン様がいるらしい件   作:笑嘲嗤

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第6話 他国の忍び

 首都の繁華街の名は冠木丁というそうだ。そこで俺たちは聞き込みを開始した。

 

「ああ。この子ならいつも花金には見るな。良く出入りしてるところ?倶楽部かな?」

 

「どうもありがとうございます」

 

 忍び装束を着ているヒヨリ先生相手にはみんなべらべらと喋ってくれた。息子のアリシさんは倶楽部を中心に良くナンパとかしてらしい。で当日足取りは友人の証言によると倶楽部で女性と遊んでいたのを最後に消えていて、街の人の証言でその後の足取りが見えてきた。

 

「ここら辺の羅舞穂手琉らへんで明るい茶髪の女性と歩いているのが目撃されたそうね。さてどうしましょうか?」

 

「ヒヨリ!羅舞穂手琉ってなんだ?!」

 

「……さあ私は行ったことないから知らない」

 

 ハナコは興味津々だけど、リノイは近くの羅舞穂手琉にカップルがイチャイチャしながら入っていくのを見て顔を赤くして察したようだ。

 

「でもどうしましょうね。片っ端から聞きこむには数が多すぎるわ。かと言って子供のあなたたちを入れるわけにもいかないし」

 

「あの」

 

 ヒヨリ先生が困って唸っている時だった。

 

「匂いなら追えます。口寄せできるので」

 

 リノイが手を挙げた。

 

「へぇ。じゃあやってみて」

 

「はい。口寄せ!」

 

 リノイが手を地面に翳して煙が立ち上がる。するとそこに可愛らしい猫が現れた。

 

「にゃー。またたびくれよ!ひっく!うぃ!」

 

「また酔ってるんですかあなたは……忍猫らしくしてくださいよ……」

 

「小言はいいからまたたびぃ!またたびぃいいいい!!にゃあぁ!!!」

 

 顕れた猫はなんかこう、よくない酔い方してる。

 

「またたび欲しいなら仕事しなさい。これがターゲットの着てたシャツよ」

 

 ヒヨリ先生がリュックから息子さんの着ていたシャツを出して猫に嗅がせる。

 

「くさぁ!くさぁ!!男の匂いなんてかがせるにゃぁ?!」

 

 猫がその場でゴロゴロと転がり悶える。

 

「畜生。またたびの酔いが冷めちまったぜ!こっちだ!ついてこいがきども!」

 

 猫がすたすたと歩きだす。俺たちはそのあとをついていく。そしてなんかお城みたいな羅舞穂手琉の前に停まった。

 

「この上から漂ってくるニャー」

 

「上?中からじゃなくてですか?」

 

 リノイが猫に聞く。猫は頷いている。俺たちは壁を跳んで羅舞穂手琉の屋上に登った。

 

「こっちだ!」

 

 猫が走る。そして屋根伝いに俺たちはぴょんぴょん跳んで進む。そしてとある古いビルの屋上に辿り着いた。

 

「そこのドアの方から強く匂ってくるにゃぁ」

 

 そして猫はぽわんと煙を出して消えた。俺はドアを睨む。これってどう考えてもおかしい。ヒヨリ先生も難しい顔してる。そしてヒヨリ先生は屋上の床にしゃがみこんで耳を当ててからこう言った。

 

「中に足音が四人くらいね」

 

「どうすんだヒヨリ?中に入るか?」

 

「……三人ともドアの横に配置して。エントリーするわ」

 

 俺たちは指示通りにドアの傍に潜む。そしてヒヨリ先生がドアに手をかけようとしてやめた。

 

「電流が流れてる。トラップだわ……」

 

 俺たちは顔を見合わせる。トラップ。それが意味することは追跡されることを織り込み済みということだ。

 

「起爆札を張るわ」

 

 ヒヨリ先生はドアに起爆札を張る。俺たちはドアから離れる。そして。

 

「爆発と同時に床を私が破壊するから中に突入するわ。3,2,1!」

 

 ドアが爆発する。同時にじりりりとベルの音が鳴る。それと同時にチャクラを込めた拳でヒヨリ先生が床を砕いて大穴を開けた。俺たちはそれと同時に穴に飛び込む。

 

「あちゃー。やだねやだねやだねぇ。もうバレちゃった。これから脅迫のお手紙書こうと思ってたのになぁ!」

 

 木の葉とは違う忍び装束の忍者が四人、それと縄で縛られてるアリシさん。褐色の肌に銀髪の男が殺気に満ちた笑顔でこっちを睨んでいる。

 

「あらあら。その額当てからするとあなたたちは雲隠れの忍びね。私の庭で何をしているのかしら?」

 

 ヒヨリ先生がサングラス越しに雲隠れの忍びたちを睨む。

 

「あなたたちと同じさ!任務だよ任務!しかし困った。忍者が雇われるのは脅迫後だと思っていたんだが、手が早いねぇ。困ったねぇ。さらば!!」

 

 銀髪の忍者は煙玉を足元に投げつけた。煙が充満して雲の忍びたちが動く気配がした。そしてガラスの窓が割れる音が聞こえた。俺たちが窓際に向かうと忍びたちと担がれたアリシさんがビルの屋根の上を走っていく姿が見えた。

 

「やべぇ!逃げられる!!」

 

 ハナコがすぐに追いかけようと駆けだすがヒヨリ先生がパーカーのフードを掴んで止めた。

 

「なにすんだよ!ターゲットが逃げちまうぞ!」

 

「窓の傍をよく見なさい」

 

「……うお!?まじかよ……」

 

 窓の外には細い鉄線が張ってあった。しかもご丁寧に雷のチャクラが流れてる。置き土産のトラップのようだ。あのままいったらハナコは真っ二つになっていた。

 

「残念だけど追撃はむりね。もう姿が見えない。それに市街地戦は論外よ。一般住民に被害が出かねない。向こうは敵対国だから術使い放題。こっちは手加減しなきゃいけない。分が悪すぎるわ」

 

 トラップをヒヨリ先生が解除しながら窓の外を見る。

 

「どうするんですか?匂いは新鮮ですし追いかけることはできますけど」

 

 リノイが心配そうにヒヨリを見ている。

 

「一旦依頼人の下に行くわ。これは報告しないといけないわ」

 

 そして俺たちはビルを後にして依頼人の下に戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 依頼人は渋い顔をしていた。

 

「見つけたはいいがおめおめと帰ってきたと?」

 

「状況的に極めて危険だったためです。第三者へ損害を出すわけにはいきませんので」

 

「お前たちへの依頼は息子を連れ帰ってくることだ!」

 

「はい。たしかにそうです。ですがこれはCランク任務として契約を締結されています。Cランクでは忍者同士の戦闘は想定外の事態となります。それは契約書にも記載されている事柄となります。発見はいたしました。これ以上は任務外ですね」

 

「くっ!……だが忍者が出てくるなんて私だって思わなかった!!」

 

「それを考慮しても契約は契約です。このまま任務を終了なさってもかまいません。ただ契約通り報酬は半額払っていただきます」

 

 Cランクでは対忍者戦闘は考慮されていない。この場合俺たちは任意で任務を切り上げても依頼人には文句は言われる筋合いはないそうだ。

 

「ヒヨリ!他国の忍者が出たなら戦いたい!任務を続けようぜ!」

 

「ハナコさんに賛同するわけではありませんが誘拐を黙って見過ごすわけにはいきません」

 

 ハナコとリノイは任務継続を希望しているようだ。

 

「だめよ。任務の規律上不可。契約にないことを請け負うのは里の損害になる。忍者は合理でしか動かない。正義の味方じゃないのよ私たちはね」

 

 ぴしゃりとヒヨリ先生は斬り捨てた。これが隊長ってやつなんだな。

 

「いくらだ」

 

「いくらとは?」

 

 ヒヨリ先生が嫌そうな顔をしている。

 

「対忍者戦闘を含む任務はいくらだと聞いているんだ!」

 

「それはこのまま我々に息子さんの奪還を依頼したいということでよろしいでしょうか?」

 

「ああそうだ!腕に覚えはあるんだろう!?人探しは完了でいい!だから新たに任務の契約をしてくれ!息子を生きて私の下に返してくれ!!いくらでも払おう!!」

 

 依頼人は真剣で真摯な目をしている。この顔なら間違いなくどんなに金がかかろうと払うだろう。

 

「はぁ……。まいったなぁ……」

 

 ヒヨリ先生が額に手を当てている。

 

「頼む!大事な息子なんだ!俺の一番大事なかわいい息子なんだ!あの子がいなければ俺は生きていけない!頼む!この通りだ!頼む!お願いします!息子を助けてくれぇ!!」

 

 とうとうサトシさんは床に土下座を始めた。これ断るのなかなかしんどい。だけどリスクはすさまじく高い。だけど。忍者に誘拐された人を見捨てるのは、正しいこととは思えなかった。

 

「……わかりました。里へ連絡を入れます。人探しの任務はこれにて完了とし、息子さんの奪還任務に入ります。ただし敵は上忍と中忍のフォーマンセルです。Aランクは確定だとお考え下さい」

 

「ありがとう!ありがとう!息子を頼む!!」

 

 こうして俺たちの人探しの任務は完了し、派生任務として暫定Aランクの対忍者戦闘を請け負うことになったのであった。

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