お腹の中にジャシン様がいるらしい件   作:笑嘲嗤

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第7話 対中忍戦闘

 奪還任務が締結されたので俺たちはすぐに雲隠れの忍びたちを追跡に入った。

 

「また私が猫を呼びますか?」

 

 ビルの間を跳びながらリノイが言った。だけどヒヨリ先生は首を振った。

 

「問題ないわ。もう『視た』からね。私についてくればいいわ」

 

 ヒヨリ先生は迷いなく跳んでいく。俺たちはその後ろをついていく。そして辿り着いたのは港だった。

 

「あいつらはここから海路で雷の国に逃げ込むつもりね。痕跡はこっち!」

 

 ヒヨリ先生が走り出して俺たちは後に続く。そして辿り着いたのは倉庫エリア。

 

「驚いたねぇ!すごいねぇ!匂いはちゃんと消したんだけどねぇ!」

 

 コンテナの上に雲隠れの忍びたちと縛られたアリシさんがいた。

 

「どうやってつけてきたのかねぇ?教えてくれるよねぇ?」

 

 銀髪の上忍が興味深げにヒヨリ先生に問いかけた。

 

「あいにく答える義務はないの。いますぐにアリシさんを引き渡してちょうだい。そうしたら見逃してあげるわ」

 

「だめだねぇ!俺たちの任務はこいつの拉致と脅迫なんだねぇ!まだ任務の途中なんだねぇ!渡さないねぇ!あはは!」

 

「脅迫?」

 

「そうだねぇ。まあ君たちは基本殺すけどねぇ。メッセンジャーは一人残したよねぇ!火の国の領海内資源開発に向居カンパニーが入札かけてるよねぇ?それから降りたら息子さんを返してあげるねぇ!」

 

「……なるほど経済利権の代理戦争だったわけか」

 

 ヒヨリ先生がため息を吐いた。話のスケールがデカくなった。これはただの誘拐事件ではなく企業間の代理戦争だったわけだ。俺たちの任務は息子さんの奪還であると同時に依頼人の財産である経済権益を守ることでもあったわけだ。

 

「そういうことだねぇ。ぼくの名前は雲隠れのジー。じゃあ」

 

 そして雲隠れの忍びたちの殺気が膨れ上がる。

 

「殺すねぇ!」

 

 雲隠れの忍びたちが印を組む。

 

「あなたたちは下がって!」

 

 指示通り俺たちはヒヨリ先生の背中に隠れる。そしてヒヨリ先生はサングラスを投げ捨てて、印を組む。

 

「ん?なんだねぇ?その眼?」

 

 ジーは首を傾げながらも印を組み終えて術を発動させる。

 

『雷遁 雷霰!!』

 

 俺たちの周囲に雷が降ってきて、それが迫ってくる。だけど。

 

「解!!」

 

 ヒヨリ先生が叫ぶと雷が突然消えた。逆に雲隠れの忍びたちの組んだ手の印のあたりに雷のチャクラが荒れて巻き散った。

 

「術が途中で消えた?!なんだねぇ?!それは?!」

 

 雲隠れの忍びたちも慌てている。向こうにとっても想定外の事態のようだ。

 

「ヒヨリ……なんだその眼?」

 

 ハナコがヒヨリ先生の目をじっと見ている。俺も顔を伺る。灰色っぽかった瞳の色が虹色になっている。黒いのは瞳孔だけ。その瞳孔もまるで蛇のように縦に割れている。

 

「ぼさっとしないで!術をキャンセルされたあいつらは接近戦に切り替えてくるわよ!!」

 

 ヒヨリ先生は印を高速で組む。そして術が発動する。

 

『風遁 惨乱弾!!』

 

 ヒヨリ先生の口から沢山の風の弾丸が現れて雲隠れの忍びたちに迫る。彼らはコンテナから降りてそれを回避する。

 

「バラバラになったわ!上忍のジーは私がやる!他はあなたたちが片づけなさい!!」

 

「「「応!」」」

 

 俺たちは散ってそれぞれの一番近い相手の前に立ちはだかった。

 

「あんたら上忍と新人下忍だよねぇ?チームワークしなくていいのかい?」

 

「うちは自由放任なんでねぇ。って口癖が移った!?とにかく雲隠れのジー。ビンゴブックにも載ってる大物上忍。ここで仕留めさせてもらうわ」

 

「やだねぇ!ビンゴブックにも載ってない新米上忍さんにはやられないからねぇ!ひゃははは!!」

 

 そしてみんなの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハナコは雲隠れの中忍の男を前にニヤニヤしていた。

 

「なにがおかしい?小娘」

 

「小娘じゃねぇ。あたしはさとうハナコ。お前は半殺しにしてやるから里に帰ってからちゃんとあたしの武勇を布教しろよ。あはは!」

 

「ふん。そういう粋がるやつから忍びの世界じゃ死ぬんだよ!!」

 

 すぐに雲隠れの忍びは印を組む。

 

『火遁 竜翔』

 

 口より放たれた直線の火はハナコに迫る。そしてハナコに火が直撃して全身を燃やす。そして真っ黒な炭になって地面に倒れる。

 

「他愛ない。さて他の助太刀に……」

 

「だからあたしの武勇を布教しろって言ったろ?」

 

「なぁ?!ぐぅ!!」

 

 ハナコはいつの間にか雲隠れの忍びの後ろに立っていた。躊躇なくクナイを背中に何本も刺す。

 

「なんだ?!変わり身はあり得ない!だって現に今も燃えてるのに!」

 

「くくく。あーあれね。見てみれば」

 

 雲隠れの忍びが燃えていたはずの消し炭を見る。人型の消し炭がまだそこには残っていた。そしてそれはすぐにゆらゆらと姿を歪めてすっと消えた。

 

「幻術か?!ばかな?!そんなのかけられた覚えは?!」

 

「そんなちゃちな手品はかけてねぇよ。あたしは幻術が嫌いなんだよ。あれは光分身。攻撃を受けてもそれを再現する、立体映像だよ。くくく」

 

 得意げにハナコは説明する。それは子供の自慢と変わらない温度感だった。

 

「光!?光を操った!?まさかお前は血継限界なのか?!」

 

「そうそう。あたしは超エリートなの。だけどまだあるから!」

 

 ハナコは印を組んで術を発動させる。

 

『闇遁 影食』

 

 すると雲隠れの忍びの影が膨れ上がって起き上がり、体を縛り上げる。

 

「影縛り?!ち、違う?!あれは木の葉の奈良の秘伝だが、影がとりもちのように動くはずだぞ!」

 

「ああいう三流の術といっしょにすんなよ。あれは能無しの陰キャどもが一族で独占してる手品。あたしのは影じゃない。闇そのものを操る」

 

「それも血継限界なのか?!ばかな?!血継限界を二つも持っているというのか!?」

 

「あんたはころさねー。だから里に帰ったらちゃんとあたしの推しをいっぱい作ってくれよ。じゃあな」

 

 そのまま影に縛られた雲隠れの忍びは宙を浮いて近くの船まで吹っ飛ばされた。死んではいないが蹲って戦闘不能である。

 

「あー他国の忍びにドヤるの楽しー。さて他はどうなってるかなぁ?」

 

 ハナコはのんびりと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 敵の雲隠れの茶髪のくのいちとリノイは激しい剣戟戦をしていた。

 

「下忍の分際で大した剣術ね!」

 

「息子さんを色仕掛けしたのはあなたですね?剣裁きが下品ですよ。はぁ!」

 

 リノイは剣を振って相手のくのいちを吹っ飛ばす。くのいちはすぐに綺麗に着地して今度は印を組みだす。

 

「雷遁 れーっえ?!」

 

「遅いですよ」

 

 いつの間にかリノイがくのいちの正面に立っていた。そしてくのいちの両腕を刀で切断した。

 

「いやぁああああああああああああ!!?」

 

 痛みに喚くくのいちをリノイは冷たい目で睨んでいた。

 

「忍術とは本来六道仙人が人々の安寧のために編まれたもの。それを戦にもちいるなど言語道断」

 

 そしてリノイはくのいちの首を見ねうちした。

 

「あなたは忍術で人々を苦しめた罪びと。残りの人生を人々を傷つけた手なしに生きなさい」

 

 リノイはカナタを振るって血を落としてから鞘に仕舞う。そして他の扇情の方へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺にはスタミナがない。主にチャクラ。

 

「うおおお!!」

 

 敵の忍びは雷を纏った体でさっきから肉弾戦を挑んでくる。俺はなんとか回避し続けていた。

 

「ふははは!ガキのくせに一丁前に忍びのつもりか!怖いなら逃げても構わんぞ!」

 

「仕事を放棄するわけにはいかないんだよ」

 

 だけどさっきから敵がまき散らすチャクラの御陰で飢えが減っていくのを感じる。さて状況はどうだろう。どうやらハナコとリノイはもうケリをつけていた。逆にヒヨリ先生は敵の上忍とすさまじい死闘を続けている。早く切り上げる他ないな。だから覚悟を決めなきゃいけない。

 

「おらぁ!!ラリアットオルタネイティブ!!」

 

 敵の腕が俺の首に迫ってくる。俺はそれを上体を反らして躱す。そして見た。相手のチャクラの使い方を。

 

『おぼえた』

 

 お腹の中のジャシンがそう言った。だから俺はそのままチャクラを形質変化させて体に流す。ピリッとする感触と共に体がとても軽く感じられた。

 

「エルボー!!」

 

 俺は迫るひじに手を置いてその上に逆立ちする。

 

「な?!」

 

 敵が驚いている。だからチャンスはこの一回だけ。チャクラを足に集中させる。そして体を回転させて敵の頭に踵を落とす。

 

「踵落とし」

 

「ぐぁあぁぁ……」

 

 声は途中で消えた。だって相手の頭は潰れてお腹の方まで踵で切り裂いたから。俺が着地すると敵の身体は真っ二つに裂けた。確認するまでもなく死んでいるだろう。

 

「ああ……気分良くないなこれ……」

 

 人を殺した後ろめたさ。なのに相手から俺の身体に流れてくるチャクラで満腹になるからだの心地よさ。相反する感情が俺の心を揺らした。俺は肩を落としながら敵に目もくれず仲間のところへ歩くことにしたのだった。

 

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