特級呪術師・禪院直哉   作:どうでもいいや

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第1話

「ケヒッ……!あぁ!やはり、光は生で感じるに限るな…!」

 

 

 2018年6月

 宮城県仙台市 杉沢第三高校

 特級呪物〝両面宿儺〟の受肉が確認された―――

 

 

「―――動くな」

 

「え?」

 

 

 呪物の回収の為、居合わせた伏黒恵は目の前の虎杖悠仁に向かって呪術規定に基づいた祓除を宣言する―――

 

 

「呪術規定に基づき虎杖悠仁、お前を呪いとして祓―――」

 

 

 そう言いかけて、気が付けば目の前の虎杖悠仁は鉄柵へと蹴り飛ばされていた。

 

 

「―――なにやっとん。2級ぽっちのカスが特級の呪いに対してわざわざ申告するとか。恵君、やっぱちょっと頭アホちゃう?」

 

 

 和装を身に纏い、反対側の柵の上に降り立つは、既に死亡した夏油傑を除き日本に四人しかいない特級呪術師の一角―――禪院直哉であった。

 

 

「特級呪術師―――禪院直哉……」

 

「いッてぇ……いきなりなんだよ……」

 

「……?君、呪いの王相手に意識保っとるん? てか、わりと本気で頭蹴ったのに呪力強化無しで平気で生きとるし……えぇこわ……」

 

 

 肩を竦めてわざとらしく反応する直哉は続けて何でもない事のように言い放つ。

 

 

「ま、ええわ。どうせ君、死刑や―――」

 

「ねぇ、恵、コレどういう状況?」

 

「な、五条先生──―!どうしてここに……!?」

 

 

 と、そこを遮るように“現代最強”である五条悟がやってくる。

 

 

「どんな状況て……そんなん、わざわざ聞かんでも分かるやろ?悟君のその目は呪力しか見れんただの節穴なん?まぁせやろね。だって悟君、親友君のSOSにすらロクに気付いとらんのやから」

 

 

 へらへらと軽薄に笑いながら盛大に五条悟の地雷を踏む直哉。辺りに静寂が満ち、険悪な空気が蔓延する。

 

 

「へぇ、何?ケンカ売ってんの?僕にまともに触れることも出来ないくせに?なんなら此処で格付けしてやってもいいけど?」

 

「……そんな簡単に挑発に乗らないでください。五条先生、両面宿儺が受肉しました」

 

「……へぇ、誰に?」

 

「―――……そこの彼、虎杖悠仁に、です」

 

 

 すっと悠仁へ指を向ける伏黒恵。

 

 

「どれどれ……?」

 

「ハハ、ウケる。本当に混じってるよ―――君、宿儺と変われるかい?」

 

「宿儺?」

 

「──“両面宿儺”、君が食った呪いのことや」

 

「そう、で?変われる?」

 

「あー、うん、多分できるけど……」

 

「じゃ、1分。いや30秒でいいや。そんくらい経ったら戻っておいで」

 

「でも―――」

 

「大丈夫、僕最強だから。―――それに、例え僕がいなくても此処には最速の術師くんが居るんだしさ。……あ、そうだ。恵、これ持ってて」

 

「なんや、俺に役目押し付ける気なん?ま、悟君がどーしても出来ないんやったらそれでもええけど?」

 

「またまたー、そんなこといっちゃってさ。宿儺の攻撃、一発でも食らったら土下座ね?」

 

「ちょいまって。それ悟君有利すぎへん?」

 

「そんなことないでしょー、対等対等。あっ、もしかして直哉はハンデがなきゃ僕に勝てないってことが言いたいカンジかな?ゴメンゴメン、気付いてあげられなくて―――」

 

「ッ後ろ!」

 

 

 飛び上がり、五条に向かって猛スピードで突進してくる両面宿儺。

 土煙が上がる―――が、気付けば宿儺の背に軽く腰かけている五条悟がいた。

 

 

「それで、直哉……ハンデとか……いる?」

 

「ケヒッ―――!」

 

 

 身を返し、すぐさま五条へ手を伸ばす両面宿儺。

 だが、そこへ待ったをかける者がいた―――

 

 

「非道いなぁ、俺のこと無視せんといてや」

 

 

 宿儺と五条の間に手を挟み込む―――1秒間のフリーズ。

―――気付けば両面宿儺は宙を舞っていた。

 

 両面宿儺は平安の呪物である、つまり比較的、歴史が浅い投射呪法の知識は持っていなかった。

 六眼や天与呪縛のフィジカルギフテッド等の例外でなければ術式の看破など容易ではない。

 それが完全な初見ともなれば当然である。

 

―――さらに空中で殴られたことにより、1秒間のフリーズ。そのまま地面に強く叩き付けられる。

 だが、両面宿儺は体勢を立て直し、今度は直哉に向けて直接拳で殴りかかる。

 

 然しながら直哉は()()()使()()()()最小限の動きで回避してゆく。

 宿儺の腹部に拳を叩きこもうとする直哉―――それら全て……正確には直哉を中心として、巻き込むように発生してゆく蒼い渦―――それに対し直哉は両面宿儺の頭を掴んでそのまま足で蹴り飛ばし、順転・蒼へ叩き込むことで回避する。

 

 

「ちょっとー、悠仁が死んじゃったらどうすんの。人の心とかないわけ?」

 

 

 直接、宿儺と蒼が接触する前に順転を切った五条が直哉に対しブーイングを飛ばす。

 

 

「あ゛?お前が言うなや……!ドブカスが……!」

 

 

 どっちもどっちである。

 

 

「クックッ、いつの時代も厄介なものだなぁ、呪術師は―――!!」

 

 

 直哉に向かって呪力を滾らせ、纏い、拳を叩き込む。

 軽く助走をつけて重力までもを存分に利用した拳―――それが並みの術師であるならば、反応すら出来ずに木っ端微塵になる程のスピード、威力だった。

 だが、対面するのは特級術師―――“禪院直哉”である。

 

 

「―――なんやそれ、舐めとんの?」

 

 

 直哉は呪力を衝突させ、()()()()()()()()―――〝投射呪法・圧縮(エンコード)

 投射の順転は24分の1秒間を1秒掛けて再生する―――であれば、反転は1秒間の「動き」を〝24分の1秒間〟で再生する事である、と直哉は考えた。

 

 然しながら、そのままでは物理法則を無視した動きと見做されてしまう。

 だからこそ、物理法則を遵守した動きを一度順転で作り上げ、それを反転により24分の1まで圧縮する―――その複雑な工程と事実上の移動距離減衰、そしてそれによる目算のし難さが無自覚の縛りとなり、結果として物理法則を無視し、圧倒的な加速度を持つ拳が放たれた。

 

 

ドンッ!!!!

 

 

 ソニックブーム―――音速に近いスピードで移動する物体が生む衝撃波である。

 つまりはこの瞬間、禪院直哉は亜音速へと達していた。

 

 

「……やっぱアカンわ、こんなん毎回やるんは隙だらけや。アタり的に多分やけど死んどらんし……あーあ、しんど。堪忍したってや」

 

 

 反対側の壁まで吹き飛んだ両面宿儺を見ながら禪院直哉は不満足げにそう言い放つ。

 理由は単純明快、放った拳が自壊するからである―――直哉はブツブツと呟きながら、腕を反転で治していった。

 そして―――

 

 

「……ま、ええわ―――そんで?きっちり三十秒、俺が稼いでやったで?」

 

「―――……いや、容赦なさすぎね?身体中のアチコチが痛ぇんだけど……」

 

「驚いた―――ホントに制御出来てるよ」

 

「あー、でもちょっとうるせーんだよなぁ、アイツの声がする」

 

「それで済んでるのが奇跡だよ」

 

 

 悟は悠仁の額に指を当てて気絶させる。

 

 

「―――これで目覚めた時、宿儺に身体を奪われて無かったら、彼には器の可能性がある」

 

「で?どうするつもりや?」

 

「……さぁーて、此処で問題(question!)、恵―――彼をどうすべきかな?」

 

 

 悟は問い掛けてきた特級術師の直哉ではなく、恵へと問い掛ける。

 

 

「……仮に器だとしても、呪術規定に則れば虎杖は死刑対象です。でも、死なせたくありません」

 

「―――私情?」

 

「私情です、何とかしてください」

 

「……ハハ、可愛い生徒の頼みだ―――任せなさーい」

 

「―――それで?直哉はコレ見てどうする気?……僕を止めるのか、それとも乗っかるのか。ちなみに僕に乗っかったら君も共犯だよ?」

 

「―――あ゛?俺を都合よく巻き込むなや。別に俺は宿儺の器が死のうが、見っともなくこの先何十年と生き延びようが関係ない。この惨状の後始末すんのも悟君と恵君(君ら)やし、何かあった時腹割って責任取るのも悟君や」

 

 

 そういって術式を起動し、直哉は高速で夜の街へと滑り降りるように下り、消えていった―――。

 

 

「……あのクソ、散々やった後始末全部押し付けていきやがった……」

 

 

 そんな伏黒恵の呟きでこの話は一旦幕切れとなるのだった―――

 尚、このあと五条も窓への必要連絡等を全て恵に押し付けるのだが、それはまた別の話。

 

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