本作のヤルダバオトはマスターである黒聖杯と契約を交わし、使い魔としてサーヴァント化した影響により、トリックスターことジョーカーの白髪ver的な見た目をしています。
何だったら、声もそのまんまです。
でも、中身が中身なので感情の起伏が無い上に無慈悲です。
あと、たまに愉悦を仕掛けたりします。
さて、秘密裏に召喚されたエクストラクラスのサーヴァント....統制のルーラー、もとい異世界産の聖杯で現在は人間の姿をしている統制神ヤルダバオトは、只今絶賛暇潰しのために不法侵入の只中であった。
なお、サーヴァントとなった彼の姿はあの忌々しいトリックスターと瓜二つだったとか。
けれども、霊体化したとしても自身の存在がバレる可能性はあり得るので、スキルの一つである『認知操作』を使って不法侵入がバレないようにしていたのか、今のところからの侵入がバレることはなかった。
だがしかし、侵入先の建物の不穏な空気は感じ取っていたようで
「.......魔術という偽りに縋る人間の思考はよく分からんな」
馬鹿馬鹿しいとばかりにそう吐き捨てると、魔力と悍ましい空気が漂う屋敷内を移動していた。
ちょうどその時、彼は屋敷の主人である魔術師を....冬木の地においては間桐臓硯と呼ばれる老人の姿を発見していた。
ただ、人間と言うにはあまりにも不気味な見た目をしている彼に対し、ヤルダバオトはその姿を見る前から人の姿を捨てたのだと察知していたのか、慈悲や哀れみの感情を通り越して阿呆なのか?と内心切り捨てていた。
ただ、臓硯に向かう先に何かあるとヤルダバオトは睨んだようで、スキルを使用したまま屋敷の地下に向かったところ、そこに居たのは....人間ならば悍ましく倫理観が無いと判断するかのような光景だった。
つまり、いわゆる地獄そのものである。
幼き少女が小さい虫達によって屈辱を与えられ、成す術も無くその身を侵食される形で心を失っていく。
叫び声すら上げない少女の姿に対し、通常の人間ならばここで言葉を失っているだろう。
そう、通常の人間ならば。
「....人の身を捨てれば、こんなことも出来るのか」
聖杯そのものであるヤルダバオトにとって、この光景はただただ少女の身体が虫達によって穢され、好き勝手にされているという事実を伝えるようなモノであり、そこに同情や怒りの感情はなかった。
ただ、目の前の事実を眺めているだけ。
本人からしてみれば、たったそれだけのくだらない話である。
そのため、しばらくその光景を眺めていたのだが........そのまま特に変化も異変も起こることはなく、この光景を生み出した張本人である臓硯はその場から立ち去ったのを確認したヤルダバオトは、スキルを解除すると一言二言告げるようにポツリとこう呟いた。
「実に理解し難い上にくだらん遊びだな」
彼がそんな言葉を吐いた瞬間、その少女は階段の先に居るヤルダバオトの存在を認識したようで、思わず光の消えた瞳を大きく見開いていた。
雪よりも白い純白の髪に、人外であることを際立たせるように白さが目立つ肌とオパールのように輝く虹色の瞳。
元々、願いという名の欲望を叶える願望器から神になった存在とは言え、サーヴァントとなった彼の姿が御伽話から出て来たような雰囲気だったため、その少女は彼を見つめながら掠れるような弱々しい声でこんなことを呟いた。
「魔法使い....さん?」
その小さな声に気がついたヤルダバオトは、虫に覆い尽くされている少女の方に視線を移したかと思えば、その表情を変えることなく虫を消し去った。
消し去ったと言っても、焼き尽くしたわけでも殺したわけでもなく........文字通り、その場から小さな虫達を消滅させていた。
目の前から例の虫達が居なくなったことに対し、少女は彼のことを更に魔法使いだと思い込んだようで、這いつくばりながらも移動する形でヤルダバオトに近づこうとしていた。
それを見た当のヤルダバオトは、彼女もまた虫と同じように消し去ろうとしていた。
しかし、その前に少女がこうなるに至った経緯でも知ろうと思ったようで、サーヴァントではなく統制神としての力を使ってその記憶を覗いていた。
その彼の目に映像として映し出されていたのは、ある意味で魔術師の血を引く者としての運命に翻弄され、傍目から見れば悲劇とも言える悲惨な記憶だった。
なお、ヤルダバオトはその記憶を事実として認識した上で眉一つ動かさなかったとか。
「違う、我は......ルーラー、統制のルーラーだ」
「るぅ.........らぁ?」
キョトンとした顔で彼を見つめている少女に対し、表情一つ変えずに見下すヤルダバオト。
少女はそれが魔法使いの名前だと思ったのか、ルーラーという単語を呟いていたのだが、それを見た彼は愚かだなと呟くとその場から立ち去ろうとしていた。
......その少女が彼の服を掴み、死んだも同然の瞳で見上げるまでは。
ヤルダバオトにとって、その少女の瞳に見覚えがあった。
それは死んだも同然の状況から這い上がり、自らを打ち倒した者の瞳に似ていたからか、あるいは見間違いの可能性はあったかもしれないが、ともかく彼は自身を見つめる少女に興味を示し、彼女のことを心から愛している男の存在を利用しようと思ったようで、その少女を見下すように見つめながらこう言った。
「人間よ。貴様は自らの魂が救済されたいと願うか?」
「きゅう....さい?」
ヤルダバオトの言葉に対し、少女はよく分からないとばかりに呟いた後、幼いながらも深く考えるかのような顔になると....彼の顔をジッと見つめながら、生きる希望を見出すどころか願うことも諦めたかのような声でこう答えた。
「痛いのは....怖いのは、嫌だよぉ......」
少女の搾り出すような返答に対し、ヤルダバオトは感情の宿っていない表情を動かしたわけではないが、その手を彼女の上にかざしていた。
その瞬間、全裸の状態になっていた彼女の体に眩い光の粒子がまとい、そのまま可愛らしいドレスの姿に変化していた。
その一連の流れを見た少女は、驚きのあまり再びその瞳を見開いていたが、ヤルダバオトはそんな彼女の様子を気にすることなくお姫様抱っこすると、そのまま地下室を後にした。
そして、少女を抱えたまま彼が向かったのは臓硯の部屋で
「貴様....儂の虫達に何をした!?」
その隣に少女を配置する形にて、間桐臓硯の真正面に居た。
彼が虫を消し去ったことに対し、我を忘れる寸前とばかりに怒りに震える臓硯。
ヤルダバオトは今にも噴火しそうな醜い老人の姿を見たからか、少女は自分のモノだと主張する手段としてその手を握ると、自らの欲望のために今から消滅するであろう男に対し、淡々とこう告げた。
「虫は食物連鎖の底辺の部類の生命体だ。つまり、これは自然の摂理だ」
「き、貴様....!!」
「不満か?不満ならば自分を恨め、哀れで醜い欲に溺れたお前自身をな」
人々の欲望を見てきた願望器として、聖なるアイテムである聖杯としてそうキッパリと言い切ったその瞬間、怒りで我を忘れた臓硯は彼の息の根を止めるため、虫達を使ってヤルダバオトを襲おうとした。
あくまで臓硯は、彼を殺す前提で虫達を放った。
放ったのだが....その虫は一瞬のうちに姿を消した。
それはまるで、最初から無かったかのように。
「なっ!?」
その光景を見た臓硯は再び虫達を放ったが、先程と同じようなことが起こったためにイラついていたのか、激しい歯軋りをしていた。
その虫達を消したヤルダバオトは表情一つ変えることは無く、それを見た少女は彼の方をますます魔法使いだと認識してしまったとか。
ヤルダバオトと手を繋ぐ少女の姿を見て、目の前に居る彼のことをますます邪魔だと思ったのか、何度も何度も虫達を放っては消されるということを繰り返した後、彼は急にその手を止めてしまった。
何故ならば、虫達を消し去った挙句に少女を攫おうとする目の前に居る男から溢れる魔力と雰囲気、既視感の正体について察してしまったからである。
そして、その正体を察した途端に彼の顔は真っ青になっていた。
それもそのはずで、何しろ彼は聖杯を求める戦いの基盤を作り上げた魔術師の一人であったため、その顔には信じられないとばかりの感情が映っていた。
「ば、馬鹿な....そんなこと、あり得るはずがなかろう!!」
「馬鹿も何も、これは紛れもない事実であり真実だ。今の我は道具ではなく、ただのサーヴァント......統制のルーラーだ」
そう言った後、ヤルダバオトは彼の前に手をかざしたのだが.........自身の結末を悟った臓硯はその場から逃亡しようとした。
最も、ヤルダバオトがその手をギュッと握ったことでその逃亡は無意味に終わり、ついでに言えば
「行くぞ、人間」
「........桜」
「....?」
「私の名前.....桜」
こうして、ヤルダバオトは聖杯戦争をめちゃくちゃにするための道具を手に入れたのだった。
(.....ルーラーさんって、優しい人だな)
▼ヤルダバオトは遠坂桜(ロリの姿)を手に入れた!!
なお、スキルの方の認知操作はS++らしい。
ついでに言えば、ヤルダバオトはこの状況を利用して雁夜おじさんを狂化させた上で聖杯戦争に参加させる予定らしい。
流石は聖杯!!人の心が無い!!