素敵なボーイフレンドを求めて!Traveler of newcomer! 作:THE・STRENGTH
「俺は未だに覚えてるからな?お前が顔面ピッカピカに輝く俺をみてゲラゲラ笑っているのを!」
「あー…確かに笑ったな…。スマン!」
「スマンで済ませたくないくらいには俺は根に持っているぞ…?」
◆
主人公が嵐のように去っていったあと。コルボ山のアジトに、顔面だけが異常な光沢を放つエースが、魂の抜けた顔でトボトボと戻ってきた。そこに、大きな荷物を抱えたサボが帰ってくる。
「よおエース、帰ってきたの──って、うわあああ!? 誰だテメェ!!!」
サボは驚愕のあまり、背負っていた荷物を引っくり返した。慌てて鉄パイプを構え、目の前の「発光体」を睨みつける。
「おい、エースはどこへやった! どこの貴族の回し者だ、その不自然なまでのロイヤルな輝きはッ!!」
「……サボ、俺だ…エースだ……」
「えっ、エース!? 声は確かにエースだけど……嘘だろ、お前その顔、どうしちまったんだよ! 」
サボがパニックになるのも無理はなかった。さっきまで泥とアザだらけだったはずの相棒の顔面が、今は高級真珠のように白く、そして毛穴の一つも見当たらないほど完璧に保湿されていたからだ。
「ぷ……っ、くくふ、ふはははははは!!! ギャハハハハハハハ!!!」
「あァ!? 何笑ってんだテメェ!!」
サボは腹を抱え、ツリーハウスの床を激しく叩きながら爆笑し始めた。涙を流し、呼吸もままならない様子でエースを指差す。
「だ、だって、お前……! 泥だらけの服を着てるのに、顔だけ異常にピッカピカに輝いてるぞ!!! なんだその不自然なツヤは! 鏡見てみろ、ゴア王国の高級真珠より光り輝いてるッ!!」
爆笑するサボとは逆にエースは先ほどのトラウマを思い出したのか地面に膝をつき、絶望に震える手で自分のピカピカの頬を触った。
「……バケモノに捕まった…」
「…バケモノ? とんでもなく強ぇ海賊か? それとも人攫いか?」
「違う……もっと恐ろしい何かだ……。突然現れて、俺の『水分量が万死に値する』とか意味不明なことを喚き散らしやがって……」
「すいぶんりょう……?」
「抵抗しようとしたんだ! でもなぁサボ、俺の全力の鉄パイプを、アイツ『人さし指の爪』で止めやがったんだぞ!?」
さっきまで爆笑していたサボの顔からサッと血の気が引いた。9歳にして数々の修羅場をくぐり抜けてきたサボには分かる。エースの打撃を指の爪で止めるなどそこいらの人間には到底出来ないからだ
「そ、そんな奴がゴア王国に……。で、お前、そいつに何されたんだ? 拷問か? 薬でも盛られたのか!?」
「……『超高速クレンジング』と、『特製コラーゲン化粧水アタック』だ」
「文字面は優しいのに響きがめちゃくちゃ不穏だな!!」
「顔の皮が剥けるかと思った……。でも、無理やり飲まされたスープのせいで、なぜか今信じられねェくらい身体が軽いんだ……ちくしょう…!悔しいけどめちゃくちゃ力がみなぎってやがる……!!」
ギラギラと不健康なエネルギーを放ちながら、顔面だけピカピカに輝くエース。サボは鉄パイプを握り直すと、冷や汗を流しながら森の奥を警戒した。
「おいエース……そいつ、まだこの近くにいるのか?」
「さあな……『10年後が楽しみだわ♡』とか言って、ウインクしながら去っていった。その風圧で木が3本くらい穴が貫通していた…」
「ウインクで木に穴が開く!? どんな顔の筋肉してんだよ!」
サボは、まだ見ぬ怪物のような人間の圧倒的な恐怖を脳裏に刻み込み、深く心に誓った。
(…そいつにだけは、絶対に捕まっちゃダメだ…!)
「…っ…!サボ、前に泥棒に失敗した時の怪我が開いた。救急箱を持ってきてくれ」
「ん?ああ、ここに…」
(…待てよ?嫌な予感がする…)
サボはエースよりも分析力、理解力が優れている。故に今の状況の違和感に勘付くことが出来た
(肉食動物の中には敢えて獲物を逃がし、血の匂いを辿って住処を特定して一網打尽にする奴がいるのを聞いたことがある…まさかな…?いや、流石にそれは…)
──その時だった
ツリーハウスの外、つまり自分たちのすぐ近くから森の静寂を切り裂くような、甘ったるく、そして大気をビリビリと震わせるような声が響き渡った…
「あら、ずいぶん可愛らしい隠れ家じゃないの〜♡」
「「!!!!」」
背筋が凍るような、甘く、そして地鳴りのように響く声。エースはガタガタと震え、サボは警戒しながらツリーハウスの入り口を振り返ると、そこには、いつの間にか音もなく侵入し、窓枠に腰掛けて微笑むテラスの姿があった。
「て、テメェ……!! なんでここに……!!」
エースが驚愕に目を見開く。テラスはクスリと笑って、人差し指をチッチッチと振った。
「だーめよ、ボーイフレンド候補生。あんなお粗末な逃げ方じゃ、お姉さんの目は誤魔化せないわ。わざわざ怪我を治療しなかったのはね……血の匂いを辿って、あなたの『お家』を突き止めるためよ♡」
「どんな嗅覚してんだオメェ!」
(コイツ、わざと俺を泳がせやがったのか……!?)
エースは己の甘さを呪った。目の前の怪物は、ただ強いだけでなく、獲物を確実に追い詰める執念と知性を持っている。
「エース、こいつがさっき言ってたバケモノか!?」
サボが鉄パイプを構えながら冷や汗を流す。テラスはサボを見るなり、さらに両目をハート型に輝かせた。
「あらヤダ! こっちにも磨けば光るロイヤルな
「来るなァーーー!!!」
「ハメられたァーーー!!!」
狭いツリーハウスの中に、新人類の圧倒的な愛(物理)の嵐が吹き荒れるのは、もう時間の問題だった。
「「ぎぃやあぁぁーーーーーーー!!!」」
エースは再び首根っこを掴まれてツリーハウスの床に組み伏せられ、抵抗虚しく服を一瞬で脱がされた。テラスの大きな手が、エースのシャツを容赦なくペリリと捲り上げる。そこに現れたのは、痛々しく腫れ上がり、じわじわと血が滲む痛烈な裂傷だった。それを見た瞬間、主人公の顔から表情がサッと消え、真剣な──どこか怒りを孕んだ表情に変わる。
「……テメェ、何すんだよ! 離せ、こんなの掠り傷だ、痛くも痒くも──」
「痛いなら痛いって言いなさいッ!」
「っ!?」
ツリーハウスがびりびりと震えるほどのドスの利いた大声に、エースもサボもビクッ!と肩を跳ね上げた。
「男の子がね、そうやって意地張って強がるの、ちっ…とも格好良くないわよ! 自分の身体を大事にできない男子なんて、アタシお断りだからねッ!」
テラスは怒鳴り散らしながらも、その手つきは驚くほど繊細だった。どこから取り出したのか、「バイタル薬草ハーブ泥パック」を、傷口にそっと、包み込むように優しく塗布していく。
「あ……冷たっ……!? いや、痛みが……消えていく……?」
「当たり前でしょ、アタシの特製よ。……ほら、じっとしてなさい。痛かったわね、よく我慢したわ」
さっきまで怒鳴っていたのが嘘のように、テラスの声は、まるで本物の母親のような、深く温かい響きを帯びていた。その手の温もりと、傷口の痛みが魔法のように引いていく感覚に、エースは毒気を抜かれたように呆然とする。
「よし、これで安静にすれば傷跡も残らないわ! 男の子の綺麗な肌に傷を残すなんて、アタシの美学が許さないもの!」
満足そうに笑顔で笑った後、テラスはいつのまにか、床にへたり込んでいるサボの方を振り向いていた。エースは自分の脇腹に綺麗に巻かれた包帯を見つめながら…
「なんだよ、あいつ……」
と、赤くなった顔を隠すように俯くしかなかった。
◆
「……フフッ、思い出すだけでも冷や汗が出るな」
「ああ……会って初日で俺にトラウマを植え付けときながら、俺の心を掴んでいきやがった。……あの時の脇腹の傷、森に様子を見に来たジジイにすら言えなかったのにさ。アイツは一目でそれを見抜いて、本気で怒りやがったんだ」
エースは遠い目をして、静かに言葉を続ける。
「『痛いなら痛いって言いなさい!』ってな。……鬼の血だの何だの、生まれてこねェ方が良かっただの、一人で勝手に拗ねてたクソガキの俺をさ、アイツはただの『手当てが必要な男の子』として、全力で叱って、全力で治しやがった。……あの時、ジジイの拳骨とは違う、温けェもんに初めて触れた気がしたんだよ」
「……そうだな」
※木に穴を開けるウィンクの正体
DEATH WINKとは真逆の一点集中型WINK。殲滅力こそ劣るが両手が塞がっている際にも