素敵なボーイフレンドを求めて!Traveler of newcomer! 作:THE・STRENGTH
カマバッカ王国大会議室、会議室とは名ばかりでここ最近はエンポリオ・テラスの成長ビデオ鑑賞所になりかけている部屋では彼の教育係である10名の新人類が珍しくシリアスな雰囲気を放っていた…
「皆、今日は集まってくれてありがとう」
「キャロラインちゃん、前置きはいいわ。本題に入って頂戴。皆もそうよね?」
「ええ」「うん」「はい…」
「…わかったわ。今日集まってもらったのはほかでもないわ…」スッ…
教育係長キャロラインが卓上に一枚の紙を置く。周りには可愛らしいハートの模様が散りばめられ、字は遠目からでも達筆だと分かるほどに美しく書かれている紙だ
「事前に通達しておいたけど今朝、この紙がテラスちゃんの机に置かれていたわ」
「ええ。テラスが鍛錬している間にアタシが部屋を掃除しようとしたら見つけてしまったわ」
「そうね。それで念のためもう一度手紙に書かれていたことを聞かせてもらってもいいかしら?」
「そうね。手紙にはこう記されていたわ」
『恋って何なのかな?あたしは他の皆と違って唯一この島で育ってきた新人類だから他人っていうのが分からない。皆あたしが赤ちゃんの頃から知ってるから他人というよりは家族で…皆大好きだけど異性としての好きとは違うって思うの。
絵本に書かれている王子様みたいな人はカマバッカ王国には見当たらないから余計にわからなくて…島の外に出たらわかるのかな?お父様は「何事も待つだけじゃ何も来ないわよ?それを掴むために腕を伸ばして掴める所にまで近づく努力をしなくちゃね!」って言ってたし…
ボーイフレンド…恋…この島にいるだけじゃ駄目なのかも!いつまでも箱入り娘でいちゃ駄目だよね!うん!恋はいつでもハリケーンよ!』
「………」
「「「…………」」」
静まり返る会議室の中、碇ゲンドウポーズをしていた料理長オマツが口を開く…
「…わたしは素直に喜ばしいことだと思います。テラスさんが恋を意識する年頃になったということですし…」
「オマツちゃん、それは此処にいるみんなが思っていることよ」
「あ、ああごめんなさい…」
「あの娘が恋について考えるようになった、それは実に喜ばしい事よ。間違いない。ならなぜ私達はこうして真剣になっているのか、答えはシンプルよ!」
突如全新人類が顔を上げ一斉に声を上げる!
「「「「「テラスちゃんをお嫁に出すべきなのか!という議題について討論するためよ!」」」」」バァン!!
「ええ、理解しています」
「あの娘はニューカマー拳法を全て体得しているし、バイタルレシピも調理可能な腕前を持っているわ。なんなら今までバイタルレシピは99種あった中、あの娘が発明したレシピが記念すべき100種目にもなっているわね」
「ええ!テラスさんが発案したデトックスープは凄いです!身体のあらゆる毒素を3日以内に確実に排出しますからね!私にも作ることはついぞ叶わない難易度のレシピですがそれは私を超えたというわけで…師として嬉しいものです!」
「出たぁ〜弟子自慢!ならばこっちもよ!パキ!」
「ええ!テラスちゃんはニューカマー拳法を体得すると技と技を合成して新たな技として昇華させたりしたわ!そのなかの一つ
「岩は砕けるが斬るとなるとアタシでも難しい…それをあの娘はパキから教わった武装色を応用することで可能とした!アタシ達を超えていると言って過言ではないわッ!!」
パァン!!!
「三人ともそこまで、弟子自慢はあとにして今は議題について討論するわよ」
「あ、分かりました」
「「むう…まだまだ話せるのだけど…」」
「後で聞いてあげるからその時にしなさい。私が議題について聞きたいことはただ一つよ。ズバリ、皆はテラスちゃんをお嫁に出すのに賛成、反対かを聞きたいわ」
「キャロラインはどうなの?」
「私は賛成ね」
会議室のボードに賛成と書かれている所に線が一つ書かれる。賛成1
「可愛い子には旅をさせろというし、何より私自身があの娘を旅に出しても問題ないと判断しているわ」
「アタシも同じだわ」
「ユーコちゃんも?」
賛成2
「教育係長の言う通り旅に出しても問題ない実力を持っているわ。それは側で見てきたアタシが保証する。何より…」
「何より?」
「我慢の果てに辿り着く境地など高が知れているッッ!求めるならば掴みに行くべきよ!」
「成る程ね。テラスちゃんが旅に出たいと言うなら旅に出すべき、そしてそれがテラスちゃんの為になると言いたいのね」
「ああ!」
「あたしは反対だわ…」
「おっと此処で初の反対意見だわ」
賛成2 反対1
「あたしもあの娘の実力ならばお嫁に出しても恥ずかしくないとは思うわ。でもあの娘はまだ花嫁修行をやっていないから出すにしても花嫁修行を終えてからの方がいいと思うの」
「成る程。現状私達はあの娘がお嫁に行っても大丈夫だと推測を立てることしか出来ていないから確実性が欲しいというわけね」
「ええ。その方が夫婦生活も満帆になると思うからね」
「一理あるわね。ほかのみんなはどう思うかしら?」
「一つ良いですか?」
「いいわよオマツちゃん」
「花嫁修行とはいいますが…その…そもそもカマバッカ王国に花嫁にいけた人はいな…」
「それ以上は禁句よオマツちゃん!」
「ああ!ごめんなさい!!!」
「…他に意見がある人は?」
…ワイワイ…ガヤガヤ…ドゥーン!!…
◆
「皆、貴重な意見をありがとう。取り敢えず結果を言わせてもらうと…」
ボードには賛成7 反対3の数字が書かれている。つまり…
「賛成多数によってテラスちゃんを旅に出すべき、ということでいいわね?」
「勿論構わないわよ。でも少数派の意見も汲んで欲しいとは思うわ」
「ええ勿論よ。取り敢えず私としてはあの娘を旅に出す前に花嫁修行の入口だけでも経験してもらおうと思ってるわ。期間はあの娘自身が私もしくは他の誰かに旅にでたい!と伝えるまでとしようと思うのだけれどどうかしら?」
「異議なし!」「ええ、それで結構よ!」
「そうと決まれば明日からのテラスちゃん花嫁修行のスケジュールを組まないといけないわね。少し休憩を取ったらまた此処に集合してくれるかしら?」
「ごめんなさい、あたしこの後美容講習を開かなくちゃいけないからお願いしたいわ」
「大丈夫よ。気にしないでいいからね」
ドンドンッ!
「あら、何事かしら?」
「キャロライン教育係長!テラスちゃんが…!テラスちゃんが!!!」
「勝手に船を出して渦潮に呑まれ、消息不明になっちゃったわ!!!」