KSS警備学園奮闘記~うちの学校が廃校になりそうなので、先に独立することにしました~   作:卵パサパサ感

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銃撃戦なき死闘:1

「2人とも、大丈夫ですか?」

 

「う、うん。怪我はないよ」

 

「ちょっと体を打っちまったが……まあ、これくらいならどうってことないさ」

 

 数秒後。顔を上げて周囲を見渡すと、目に飛び込んてきたのは惨憺たる光景。

 多数の榴弾が炸裂したことで、焦げ跡や小さなクレーターが無数に刻まれた道路。そして周囲の電柱や塀なども、一部は無残に崩れてしまっている。

柴関ラーメンと店舗こそ無事なようだが、玄関口は壊滅状態。店の顔たる看板も粉々に砕け散っていた。

 しかし予想に反して、被害は思いの外少ない。もし重迫撃砲なら、この比ではない損害がしょうじていたはずだ。

 

 そしてよく見てみれば、所々には意識を失った便利屋68の面々の姿もある。

 両手を拘束されたまま気を失ったカヨコに、地面のクレーターに頭を突っ込んだハルカ。塀にもたれかかる形で気絶したムツキには、ι小隊の小隊長がハンドカフをかけていた。

 

「ι1、無事か?」

 

『はい。少し頭がくらつきますが、任務に支障はなさそうです』

 

「そうか。だが、無理はするなよ」

 

 

 無線越しに言葉を交わしながら、私は思考を巡らせる。

 被害規模から見て、使われたのは軽迫撃砲で間違いない。そして着弾の直前に聞こえた飛来音、あれは間違いなくゲヘナの50mm迫撃砲のものだった。

 そしてそれをまとまった数揃えている組織は、知っている限りでは一つしかない。ゲヘナの風紀委員会だ。

 

「……また厄介な所が出てきたな」

 

 舌打ちを漏らしながら、体を転がして空を仰ぐ。すると上空にはこちらを睥睨する偵察用ドローンの姿があった。

 すぐさまライフルを構え、カメラ部分を狙い撃つ。これでしばらくは相手の目を封じられるだろう。

 

「う……っ」

 

 その時、どこから聞こえてくるうめき声。

 見れば出所は陸八魔アル。壊滅した柴関ラーメンの玄関口でのびていた彼女は、意識を取り戻しゆっくりと起き上がろうとしていた。

 すぐさま体を起こして立ち上がり、ライフルを握ったまま駆け寄る。そしてようやく起き上がった彼女の上体に、銃口を突きつける。

 

「!……そう。まあ、そうなるわよね」

 

 それに一瞬目を見開くも、すぐに観念したように力なく微笑むアル。

 

「風紀委員会に引き渡すのでしょう? こんな攻撃を仕掛けてくるのは、あそこぐらいしかないもの」

 

「……」

 

 確かにそれは選択肢の一つ。この後に生じる問題を解決するには、一番手っ取り早い方法ではある。

 しかし個人的には、そんなやり方はあまり好きではない。それにそうすることで生じる問題もある。

 もっとも、決めるのは私ではない。結局のところは全てアル次第だ。

 

「……正直に答えてくれ」

 

「何かしら?」

 

「ハルカがやろうとした店の爆破―――あれはお前の意に沿ったものだったのか?」

 

「いえ、違うわ。確かに柴関ラーメンはアウトローな私にふさわしくない店だけど……なくなってほしいほど、恨みがある訳ではないもの」

 

 ぼそりとそう口にすると、アルは僅かに目を伏せる。

 

「……でも、ハルカが動いたのは私があんな事を口にしたから。だから、私がやったようなものよ」

 

「……そうか」

 

 その答えさえ聞けたなら、もう迷うことはない。

 私は大きく息を吐くと―――構えていたライフルを降ろし、代わりに左手を差し出した。

 

「なら、自分の尻は自分で拭け」

 

 何故風紀委員会への引き渡しが嫌だったのか。それは例え便利屋68が連行されても、彼女達が残した負債はそのまま残り続けるから。

 確かにC4は他の爆薬より安定性が高い。しかし至近距離で爆発に巻き込まれれば、誘爆するリスクは確かに存在する。

 つまり柴関ラーメンの周囲で喧嘩したチンピラが投げた手榴弾が誘爆して、辺り一帯が丸ごと吹き飛ぶ……といった惨事さえ起こりかねない。

 

 それを避けるためには撤去する他にない。だがそれにも相応の手間と時間がかかる。

 どれだけ埋まっているかも知れない爆弾を探して、周囲をひたすら掘り返し続ける。そんな徒労を誰かが背負う事になる。

 

 ならばその役目は、仕掛けた張本人達が負うべきだ。

 彼女達ならどこに仕掛けたのかも、どれだけ仕掛けたのかも知っている。少なくとも何も知らない者が行うよりは、費やされるものも少なくなるだろう。

 何より犯した過ちには相応の償いが必要だ。ゲヘナの牢屋で数日反省することが、失言で店一つを吹き飛ばしかけた償いになるとは到底思えない。

 

 もしアルが責任を認めなかったり、部下に転嫁するようなら、その時は容赦なく叩き伏せるつもりだった。

 しかし彼女に反省の余地があるのなら、まだやり直す事はできる。もちろん彼女を慕う、その部下達にも。

 

「それとも何だ? 自分の不始末を誰かに押し付けるのが、アウトローのやり方なのか?」

 

「……言ってくれるわね」

 

 こちらの挑発に、俯いていたアルの視線が上がる。

 その目に宿るのは、誇りを持つ者特有の眼光。心に確固たる信念がなければ、こんな目をすることはできない。

 

「でも、どうするの? いくら貴方達でも、風紀委員会を簡単に倒せるとは思えないけど」

 

「だろうな。それに随分数もいるらしい」

 

 耳を澄ませてみれば、周囲から聞こえる数多の足音。

 数にすれば恐らく1個中隊程度。それだけの人間が立てる音の波は、この場を取り巻く形で広がりつつある。包囲網の密度は不明だが、そう簡単に突破はできないだろう。

 対してこちらの戦力は私とアル、それにι小隊を含めた6名。負傷した小隊長はできれば戦闘に参加させたくないので、実質5名。とてもじゃないが、真っ当なやり方では勝ち目はない。

 

「だがそれならそれで、違う戦い方があるものさ」

 

 口角を吊り上げながらアルにそう返すと、私はインカムの通話ボタンに指をかける。

 

「ι4、射点特定はできるか?」

 

『今やってます! ですが迫撃砲の種類が分からなくて……!』

 

「ゲヘナ製50mm軽迫撃砲、射程は最大520メートル。かなり高角度からの着弾だ」

 

『……分かりました! その条件なら、すぐに絞れ込めます!』

 

「特定完了次第ι2及びι3と共に射点を急襲、これを制圧せよ。……ゲヘナだからって躊躇うな。責任は全て私が取る」

 

『こちらι4、了解!』

 

 威勢の良い声と共に途切れる通信。

 それを確認したところで、傍らに控えていたι小隊の小隊長へと顔を向ける。

 

「残骸で店内にバリケードを作れ。簡単なものでいい」

 

「分かりました!」

 

「先生は大将と一緒に店内へ。爆弾はありますが、少なくとも外よりは安全です」

 

「ううん、私もここに残るよ」

 

 そう言って首を横に振る先生。

 

「命の保障はできませんよ」

 

「だったらそんな所に、カナメを一人で立たせるわけにはいかないね」

 

「……もう少し自分の立場の重要性を、ご理解頂きたいところですね」

 

 きっとこの調子では梃子でも動かないだろう。

 軽くため息をつき、先生から視線を外す。こうなったらなおの事、失敗はできそうにない。

 

「ι1、大将を店内に」

 

「了解! さあ、足元にお気をつけて」

 

「お、おぅ……何するつもりか知らないが、無茶だけはするんじゃねえぞ!」

 

 柴大将の手を引き、瓦礫だらけの入り口を乗り越えて消えていく小隊長。

 これで準備は整った。後は全て自分次第だ。

 

「ね……ねぇ? まさか、本気でやり合うつもりなの?」

 

「ああ、そのつもりだ」

 

 どこか怯えが見えるアルの問いかけに笑って答える。

 そして彼女の顔が青ざめたところで、もう一つおまけに言葉をつけ足した。

 

「ただし、ハッタリでな」

 

 思えば前世でもこんな事があった。あの時もロクな戦力がなかったから、散々ハッタリを駆使する羽目になったんだったな。

 だがあの時と今では何もかもが違う。橋を使えなくするために戦うよりは、よっぽど有意義だ。

 

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