KSS警備学園奮闘記~うちの学校が廃校になりそうなので、先に独立することにしました~   作:卵パサパサ感

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ホシノ奪還作戦:2

「どうです? 動けそうですか?」

 

「うん、大丈夫。ただ縛られてただけだしね」

 

 こちらが渡したカロリーバーを口にしながら、元気そうな様子で答えるホシノ。

 見た所外傷は拘束されていた手首の痕だけ。薬物が用いられたような痕跡もない。

 多少ふらついてはいるものの、それは恐らく長時間拘束されていたため。少し休めば問題なく動けるようになるだろう。

 

 改めてホシノの様子を確かめると、私は室内の光景に視線を巡らせる。

 プラネタリウムのドームスクリーンを彷彿とさせる、奇妙な内装に覆われた一室。少なくともただの監獄という訳ではなさそうだ。

 恐らく特殊な収容施設か、あるいは何かしらの実験設備といったところだろうか。だとしても、何を目的としたものなのかは分かりそうにもない。

 ただこんな奇妙な部屋でも、空調はしっかりしていて助かった。おかげでダクトを介して侵入することができた。

 

「でもさ、こんなにのんびりしてて大丈夫なの?」

 

 そんなことを考えていると、カロリーバーを食べ終えたホシノが軽く首を傾げる。

 

「さっさと脱出した方がいいんじゃない? 侵入が気づかれたら、あっという間に囲まれるよ?」

 

「当面は問題ありません。既に仲間が駐屯地のセキュリティを掌握済みです」

 

 基地のネットワークハッキングに成功したと、カノンから報告が来たのは5分前の事。その際にセキュリティに干渉し、無力化するように工作してもらった。

 だから既に監視カメラは同じ映像をループさせるガラクタと化しているし、警報もまともに機能する状態ではない。さもなければこうして、敵陣のど真ん中でくつろいではいられない。

 それに破壊工作の完了報告がまだ届いていない。それなしで動き始めては片手落ちだ。

 

「今はもう少し休みましょう。急ぐのはそれでも遅くありません」

 

「……その様子だと、また何か企んでるんだ」

 

「分かりますか?」

 

「本当にまずい時はすっごく慌てるからね、カナメちゃんって」

 

「……」

 

 退学の罠にかかろうとしていた彼女に詰め寄った時の事を言っているのだろう。くすくすと笑うホシノ。

 どうにも恥ずかしいところを見せてしまった。頬に熱が集まるのを感じながら、ふいと視線を逸らす。

 

『こちらOWL4、爆薬の設置が完了しました!』

 

 と、その時。無線越しに小声の、それでいて元気な声が響く。

 なんともいいタイミングで飛び込んできた通信に、私は即座に飛びついた。

 

「OWL4、随分早かったな」

 

『この駐屯地、対空兵器はあまり多くないみたいです。なので余った分は司令部に仕掛けておきました!』

 

「見つかりはしなかったか?」

 

『もちろんです! いくらドジな私でも、そんなヘマはしませんよ!』

 

 ……そう自信満々に言い切られると、かえって怖いものがあるのだが。

 まあ普段はともかく、任務中は信頼できる仲間だ。そこまで疑う必要もないか。

 

「OWL3、合流まではどれくらいかかりそうだ?」

 

『アビドスの子達の動き次第だけど……あと1時間はかかるわね』

 

「分かった。OWL2、周囲の状況は?」

 

『悟られた様子はないわ。今仕掛ければ、こっちが主導権を取れるはず』

 

 通話ボタンから指を外し、部屋の扉へと目を向ける。

 固く閉じられた扉に貼り付けられているのは、シート状に加工されたプラスチック爆弾。ホシノが休んでいる間に仕掛けておいたものだ。

 これを起爆させれば、この部屋からは容易く脱出できる。問題はどのタイミングで起爆させるかということ。

 

 ネストの到達予想時刻、味方の戦力、そして予想される敵の動き。

 それらを踏まえて考えれば……動くのは今だ。

 

「ホシノさん、下がっていてください」

 

「……分かった。ついに動くんだね」

 

「ええ、一気に走りますよ。準備はいいですか?」

 

「大丈夫、これでも結構体力には自信あるからさ」

 

 軽口を飛ばしながら扉と距離を取るホシノ。

 そんな彼女を庇う形で立ち位置を替えながら、右手に握るのは起爆装置。

 

「―――OWL1よりOWL小隊各員に通達。これより作戦をフェーズ2に移行する」

 

 そして短く通信を送った直後、起爆スイッチにかけた親指を押し込む。

 次の瞬間、轟音とともに堅牢な扉は吹き飛んだ。

 


 

「ふぅ~、上手くいってくれて良かったぁ」

 

 基地の各所で次々と生じる爆発。

 巻き起こる爆炎を照明塔の上から眺めながら、朱島アヤは安堵の息をついた。

 いくら事前に何度も確認したとはいえ、万一の事がないとも限らない。自分に付きまとう不運の神は、思わぬところで茶目っ気を出すのだから。

 

「……っとと、あまりのんびりもしてられないんだった」

 

 だが額の汗を拭うと、彼女は即座に愛銃「OWL-95式小銃」のスコープを覗き込む。

 紺色のバーラップロールが巻かれた、どこか古ぼけた銃身。それが向けられるのは、慌てて飛び出してくる兵士達。その中でも大振りな動きで指示を出す者の頭部に狙いを定めると、すぐさまトリガーを引く。

 数瞬後、頭部に命中した弾丸が標的を打ち倒す。隊長格を失った兵士達は、一時的な混乱状態へと陥った。

 

「よし、次!」

 

 その様子を認めると、アヤは勢いよく翼を羽ばたかせた。

 ふわりと舞い上がった体で飛び移るのは、別の照明塔。着地の衝撃を使ってレバーを引くと、再び先程の集団へと狙いを定める。

 だが再びトリガーを引こうとしたその時、アヤはにわかに指の動きを止めた。

 

「……あ、やっぱり」

 

 直後、別の方向に向けて駆けだす兵士。もしあのまま引き金を引いていれば、狙撃は地面に弾痕を刻んでいただけだっただろう。

 アヤにとって、こういったアクシデントはよくある事。だからこそ相手の動きなどのちょっとした兆候から、起こる時は何となく察せられるのだ。

 そして察することができれば、対策を講じるのもさほど難しくはない。

 

 銃口を動かし、再度狙いを付けなおして発砲。足に直撃を受けた兵士は、地面へと倒れこんだ。

 そちらに注目が集まった隙に別の鉄塔へ飛び移り、再度狙いを定めて狙撃。それを繰り返すことで、敵に「狙撃手が複数いる」という誤った認識が植え付けられていく。

 事実、普通の狙撃手はそこまで積極的に動かない。動いたとしても鉄塔を飛び移りながら歩くような真似は考えられない。

 だがアヤにはできる。SRTで精密な狙撃技術を、そして先輩達から飛行技術を体得したアヤには、普通の狙撃手にはできない所業も成せるのだ。

 

「うーん……やっぱり数が多いなぁ」

 

 だがいくら混乱させても、それで全てを止められる訳ではない。次第に統制を取り戻した兵士達は、爆発の元を探りに動き始める。

 ましてアヤの愛銃はボルトアクションライフル。その連射速度では全ての敵を討ち取る事は難しい。

 だから彼女は一度狙撃の手を止めると、無線に向けて呼びかけた。

 

「OWL2、4時の方向から敵集団が接近中。対処お願いします」

 

 この戦場で戦っているのは自分一人ではない。

 ならば不得手な状況は、得意とする仲間に任せてしまえばいい。それがOWL小隊のやり方なのだから。

 


 

「了解、こちらで対処するわ」

 

 飛んできた無線に短く答えると、千堂ホナミは己の翼に思い切り力を込めた。

 蝙蝠を髣髴とさせる大きな翼膜が勢いよく引き絞られる。同時に足の筋肉にも力がみなぎる。 

 そして緊張が頂点に達したところで、ホナミはそれらを一気に解き放った。

 

 瞬間、勢い良く上空へ舞い上がる体。

 暗視ゴーグル越しに下方を眺めれば、報告通りこちらに接近するカイザーPMCの兵士達。どうやらこちらの存在には気づいていないらしい。

 重心を傾け、彼らの背後へ回り込むように滑空。そして静かに地表へ降下した所で、唇の隙間からぽろりと言葉が転び出る。

 

「……改善の余地ありね」

 

 込めた力の割に、高度がそこまで稼げていない。跳躍した時のどこかのタイミングで、ロスが生じているのだ。

 こんな様では目標に並ぶのは夢のまた夢。仮想敵(ライバル)である自分達の小隊長には到底及ばない。

 そんな反省を瞬時に終えると、愛銃である「OWL-240汎用機関銃」を構えるホナミ。ベルトリンクが奏でる金属音が、兵士達の気を惹き付ける。

 

「敵発見!、後ろ―――ぐわあっ!」

 

「いつの間に、がっ!」

 

「隠れろ! 機関銃だ!」

 

 だが気づいた時には既に手遅れだった。

 銃口から放たれる強烈な弾幕。次々と飲み込まれるベルトリンクは機関部に絶え間なく弾丸を送り込み、アサルトライフルとは比較にならない長時間の弾幕を形成する。

 本来は二脚や三脚でなければ、反動でまともに扱える銃ではない。だがホナミは己の腕力を以て強引に抑え込む事で、腰だめでの制圧射撃を可能としていた。

 

「くそっ、撃て! 何としてもあいつを止めろ!」

 

「無茶言うな! 顔を出したらすぐに狙い撃たれるぞ!?」

 

 敵は半数が瞬時になぎ倒され、残る半数も物陰で身動きできない。敵の足止めという点では、この上なく上出来な状況となっている。

 だがホナミは銃身が帯びる熱を感じ取りながら、一つ大きく舌打ちを漏らした。

 

「……面倒臭い」

 

 敵がいるのはここだけではない。それにも対処する必要がある以上、いつまでもここで時間と弾薬を浪費してはいられない。

 故にホナミは射撃を中断すると、腰に下げた榴弾を手に取る。そして安全ピンを指で引き抜くと、勢いよく敵集団に向けて投げつけた。

 

「手榴弾だ!」

 

 そう叫んで身を伏せる兵士。だが彼は不幸にも二つだけ勘違いを冒していた。

 一つはそれが手榴弾ではなく、本来は軽迫撃砲の砲弾として用いられるものであったこと。

 そしてもう一つは……彼女の全力投球が慣性信管を作動させるという、常識外れの事態が生じていたこと。

 

「がああぁっ!!」

 

 そしてその代償は大きかった。

 地表に着弾した瞬間、炸裂する手榴弾の倍以上の炸薬。それがもたらす衝撃と頑丈な破片は、加害範囲にいた兵士達を根こそぎ吹き飛ばす。

 やがて爆煙が張れた時、最早立っているものは誰もいなかった。その光景を見たホナミは、小さく満足げな息を漏らす。

 

「まあ、及第点ってところね」

 

 しかし気を抜いてはいられない。まだ敵を全滅させた訳でも、目標を達成した訳でもないのだ。

 任務が継続中である以上、自分は副隊長として()()の選択肢を取らなくてはならない。そんな考えの元、ホナミは仲間へと通信を繋げた。

 

「OWL3、分断工作の状況は?」

 


 

「順調よ。今兵舎の電子ロックを全て解錠不能にしたところ」

 

 スマートグラスに所狭しと表示された、一括りにするのも難しい雑多な情報の数々。

 それら全てに目を通しながら、白峰カノンは朗らかな口調で通信に答えた。

 それと並行して凄まじい速さで入力される、左腕の仮想キーボード。そのエンターキーが押されるたびに、駐屯地の設備に様々な干渉が加えられていく。

 

 隔壁の閉鎖、電子ロックのセキュリティレベル上昇、消火装置の作動、警報の一斉鳴動。

 好き勝手に弄られ暴走する設備は、兵士達の円滑な任務遂行を阻害する。

 いかに兵力で勝っていても、前線に辿り着けないのならそれらは存在しないのと同じ。そうして数の有利を殺し、味方を助けるのが、前線に立たないカノンの戦い方だ。

 

 だが、それだけではない。もう一つ彼女にしかできない、重要な任務がある。

 

「OWL1、次の十字路を右に曲がって。残りの道は隔壁で閉鎖するわ」

 

『右だな。その次は?』

 

「階段を昇ったら突き当りを左へ直進よ。そこから先はまた連絡する」

 

 それは救助対象を連れて離脱するカナメのナビゲート。

 彼女は通気ダクトを通って潜入したため、地上までの道を知らない。なので少しでも早く脱出するためには、ハッキングでマップを奪ったカノンが案内する必要がある。

 マップに映る光点を目で追いながらも、妨害工作を行う手は止まらない。マルチタスクに長けていなければ、到底実現できない並行作業だ。

 

『こちらζ1、ネスト応答願います!』

 

「あら……このタイミングで?」

 

 そんな彼女の元に舞い込む一本の通信。

 本来ならもう少し後に来るはずのそれに、思わず首を傾げるカノン。しかしすぐに気を取り直すと、操縦席の機器を操作して回線を開く。

 

「こちらネスト、どうしたの?」

 

『現在、対策委員会の皆さんと共にそちらへ急行中! 後5分で合流(ランデブー)ポイントに到達します!』

 

「ちょっと待って。合流は後30分先だったはずよ?」

 

『それが皆さん、既に準備万端で……何よりそうすべきだと私が判断しました!』

 

 無線から響くのは覚悟の決まった声と、情熱的な()()

 それは状況に流された者が出せるものではない。自分の頭で考え、判断した何よりの証だ。

 だとしたら過度に咎めることはできない。少なくとも、カナメならそう考えるだろうから。

 

「予定を早めるのなら、事前に連絡が欲しかったわね」

 

『す、すみません。つい先走ってしまって……』

 

「次からは気を付けて。すぐ収容準備に入るわ」

 

 そう告げて通信を切ると、カノンはぽつりと一言呟く。

 

「ガマユン、着陸態勢に入って」

 

 虚空に放たれた声に答える者はない。だが騒々しい機内に、カノンにだけ聞こえる弾むような音色が響く。

 それと同時にゆっくりとエンジン出力を絞り、高度を下げ始めるネスト。

 そうして機体制御を自作のAIに任せながら、ハッキングを行う手は止めることなく。カノンは移動を続ける光点に向けて、再び声を投げかけた。

 

「OWL1、朗報よ。そちらとの合流、少し早まりそう」

 


 

「それは嬉しいな。だが何があった?」

 

『対策委員会の子達、すっかりやる気らしいわ。おかげでミツキちゃんも当てられちゃったみたいよ』

 

「なるほど……いい後輩を持ちましたね、ホシノさん!」

 

「うへっ!? いきなり何の話!?」

 

 通路を出口に向けて駆ける中、飛び込んできた思わぬ吉報。

 その流れのままにホシノへと話を振ると、途端に彼女の頬は赤らんだ。

 

「どうも思ったより早く、対策委員会の皆もここに来そうです」

 

「そっかぁ……どんな顔して会えばいいんだろ」

 

「難しい事はありません。とびっきりの笑顔を見せて、そのまま叱られればいいんですよ」

 

「叱られるのは確定なの!? ……いやまあ、確かにそれだけの事はしたけどさ!」

 

 理由は何であれ、ホシノが独断で退学という道を選んだのは事実。それで大層胸を痛めた対策委員会の面々には、彼女を叱り飛ばす正当な権利がある。

 もっともその理屈で言えば、私も責を免れないだろう。修正という形といえど、ホシノを止めずに余計な知恵を吹き込んだのだから。

 

「その時は私も同罪です。揃って正座と行きましょう」

 

「……そっか。それならまあ、少しはお説教もマシになるかな?」

 

「どうでしょうね。何しろ向こうにはアヤネさんもいますから」

 

 そんな軽口を叩きながら走っていると、ようやく出口の階段が近づいてきた。

 だが同時に耳朶を打つ、複数人の駆け降りる音。すぐさま足を止めると、通路の角へと身を隠す。

 

「簡単には逃がしてくれそうにもないね」

 

「ええ。手早く片付けましょう」

 

 足音を聞く限り数は少ない。先手を打てば突破も難しくない。

 そう判断すると手榴弾を取り出し、安全ピンを抜くとあえて安全レバーを手放す。

 そしてきっかり2秒数えると、物陰から飛び出し正面の軍勢に向けて放り投げた。

 

「いたぞ―――なにっ!?」

 

 突然の投擲物に驚く兵士。だが彼らにそれが何かを認識する暇はない。

 手元で2秒、空中で3秒。それだけの時間が経過すれば、時限信管は地面に落ちる前に爆薬へ点火する。

 やがて狙い通り空中で炸裂する手榴弾。狭い通路では回避もままならず、兵士達は軒並み爆発に巻き込まれた。

 

「ぎゃあっ!」

 

突撃(チャージ)!」

 

 それと同時にライフルを撃ち放ちながら、階段へと足をかける。

 倒れた兵士を跨いで一気に駆け上がり、地上に出ると周囲を索敵。徐々に明るくなり始めた空の下には、敵の姿は見受けられない。

 それを確認したところで、私は背後から迫るホシノに向けて腕を差し伸べる。ホシノもまたそれにむけて手を伸ばす。

 

「ホシノさん!」

 

「っ!!」

 

 瞬間、固く結ばれる双方の手。

 それを勢いよく引き上げた途端、入口の防火シャッターが勢いよく閉鎖された。

 これでこの入口はもう使えない。少なくとも当面の間、ここから追撃を受けることはなくなる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「うへー、さすがにちょっと息が上がっちゃったかも。おじさんももう年だなー」

 

「何言ってるんですか、同い年のくせに」

 

 おどけるホシノに突っ込みながら、左腕の端末に視線を落とす。

 見ればアヤが設置したのだろう。ここから少し離れたポイントに、着陸地点(ランディングゾーン)を示すマーカーが表示されている。

 ただネストの降下地点の候補だけあって、随分と開けた所だ。敵との交戦が生じ得る事も考えれば、できれば長居は避けたいな。

 

「ひとまず迎えが来るまで、そこらで身を隠しましょう。あのあたりの物陰に―――」

 

 そうホシノに言いながら、隠れる場所を探して視線を動かしていた、その時。

 

「……!」

 

「爆発!?」

 

 突如として、立ち並ぶ格納庫の一角が吹き飛んだ。

 無残に変形して転がる扉に、もうもうと立ち上る黒煙。その中を縫うようにして現れたのは―――全長数メートルはある、人型の二足歩行兵器。

 全身に施された黒色の装甲に、両手の三連装機関砲。そして頭部に備わった大口径砲。その特徴を備えた兵器など、一つしか心当たりがない。

 

「ゴリアテか……!」

 

「カナメちゃん、知ってるの?」

 

「ええ、ですが細部が違う。恐らく改良型です」

 

 即座にマガジンを差し替え、銃口にライフルグレネードを装填。

 だがそうしているうち、重い足音を立てながらゴリアテがこちらへと振り向く。

 ……そして投げかけられたのは、確かに聞き覚えのある声。

 

『―――随分と派手にやってくれたようだな、KSS警備学園』

 

「その声……まさか、理事!?」

 

 今回の事件の元凶とでも言うべき、カイザーPMC理事の声だった。

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