オレ様がジムリーダーと勘違いした女は、ノワールというらしい。
トキワジムのジムリーダーの娘なんだとか。
カントー最強と言われるトキワジム、ジムリーダー・サカキの娘。
道理でそこらのトレーナーとは違う訳だ。
トキワジムは今日定休日らしいが、折角来たからという事で特別にジムの中を見学させて貰えることになった。
「ジムが休みの日なのに、いつもジムトレーナー同士でバトルしてるのか?」
「うん。みんな、凄く向上心が高い」
「確かにな。でも、何時も同じ面子でバトルしてて飽きねえ?」
「飽きないね。このジムは、他所と違ってタイプに制限はないし、ジムトレーナー向けに、ポケモンや道具のレンタルをしている。毎回色んな組み合わせを試せるから、楽しいよ。それに、毎月ジムトレーナー同士のランク戦もやってるから、飽きるどころか、のめり込む人の方が多いかな」
「ほう! そいつはいいな! オレ様にもやらしてくれよ!」
「ジムに入会してる人の特典だからダメ」
「なんだよ、ケチくせーな」
「でも、レンタルポケモンの見学ぐらいならいいよ」
「ふーん。ま、いっか。じゃあ見せてくれよ」
「こっちきて」
ノワールに付いていくと、バトルコートの端に置いてあるパソコンの前に座らされた。
「ジムのボックスに、沢山のポケモンが預けてあるの」
「へえ! こりゃスゲー! 珍しいポケモンも沢山いるじゃねーか! このカイリューなんか1匹でも珍しいってのにこんなに沢山! 全部で何匹いるんだ?」
「カイリューは…………今、6匹かな」
「カイリューだけでパーティ組めるじゃねえか! こんなに沢山いらねーだろ? 1匹くれよ!」
「ダメ。全部型が違うから」
「1匹ぐれーいいじゃねえか! ……ん? 型って何だ?」
型、聞き慣れない言葉だ。
「コレは物理攻撃型。物理攻撃が強くなるように育ててある。コッチは物理防御型。物理防御が強くなるように育ててるのは勿論、特性は"マルチスケイル"。さらにコッチは特殊攻撃型で──」
「おい待て待て! 育て方ごとにポケモンを用意してるってのか!?」
「そうだよ?」
「そうだよってオマエ……」
オレ様は絶句した。
このジムでやってることに比べたら、オレ様がやって来たコンビネーションの研究なんて子供の遊びだ。
「このジムは、ただのジムじゃない。研究所でもあるの」
「研究所……?」
「そう、研究所。でも、君のお爺さんであるオーキド博士みたいに、ポケモンの生態を研究してるわけじゃない。ここでは、ポケモンの育成やバトルに関する研究をしているの」
ポケモンバトルの……研究?
それをこんな大々的にやってる施設なんて聞いたことがねえ。
「トキワジムはカントー最強、なんて呼ばれているけどそれは間違い。このジムはね────世界最強なの」
世界最強……。
オレ様の心臓がドクンッと大きく跳ねる。
「カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス、アローラ、ガラル。ありとあらゆる地方からポケモンを集めて、バトルの研究をしてる」
「一体どうやって、そんなに沢山のポケモンを……」
「パパの
…………すげえ。
最早それしか言葉が出ねえ。
オレ様やレッドにポケモン図鑑を持たせて研究した気になってる
「安心していいよ」
「あ? 何がだ?」
「グリーンじゃ、パパはもちろん、私どころかジムトレーナーにも勝てないだろうけど、ポケモンリーグに挑戦する実力があると認められれば、ジムバッジは貰えるから」
「……ッ!」
コイツ、完全にオレ様のことを舐めてやがる……!
確かにこのジムはすげえ。
ジムとしての設備やサービス。
ポケモンバトルを学ぶには最高の場所だ。
だがしかし!
それとオレ様が天才で最強だってことに何の関係もねえ!
「…………明日はジム、やってんだよな?」
「うん」
それを聞いたオレ様は椅子から立ち上がる。
そして、ジムの中に響き渡る大声で叫んだ。
「明日! このオレ様が! このジムの奴等も! オマエも!オマエのオヤジも! 全員ブチのめすッ!」