オレ様はモンスターボールを握る手に力を込める。
場所はトキワジムのバトルコート。
相手はジムリーダー・サカキの息子であり、ノワールの弟のシルバー。
昨日シルバーとノワールのバトルを見たが、負けたとはいえシルバーのトレーナーとしての実力は確かなものだ。
だが今回シルバーはベストメンバーではなくジム戦用のメンバーを使う。
ここで勝てなきゃ、ノワールに勝つどころか最強のトレーナーなんて夢のまた夢だ。
「覚悟はいいか? 負けた後で準備が出来てなかったなど言い訳するなよ?」
「……」
「フンッ、話す余裕もないか」
シルバーが何か言ってるが無視してボールを構える。
今オレ様は、ボールの中のポケモンの息遣いさえ聞き取れそうなほど集中している。
コンディションは最高。相手にとって不足はねえ。
「はじめッ!」
審判の掛け声と共にお互いにボールを繰り出す。
「行け! ピジョット!」
「クロバット! 実力の違いを教えてやれ!」
シルバーの先発はクロバット。
"どく・ひこう"タイプのポケモンだ。
"ノーマル・ひこう"タイプのピジョットとの相性は、良くもねえが悪くもねえ。
「ピジョット! "つばさでうつ"!」
「クロバット! "あやしいひかり"!」
くッ……! 素早さはクロバットの方が上か!
"あやしいひかり"がピジョットに命中し、"こんらん"したピジョットは自分を攻撃してしまった。
その辺のトレーナー相手であれば、オレ様のピジョットなら"こんらん"状態でも地力の差でゴリ押しする事が出来る。
しかし、このレベルの相手にはそんな戦法は通じない。
ここは他のメンバーに交代を────
「クロバット! "くろいまなざし"からの"どくどく"だ!」
「なにッ!? クソッ! ピジョット、"つばさでうつ"で応戦しろ!」
判断が一瞬遅れたせいで"くろいまなざし"を食らっちまった!
これでクロバットを倒さない限り交代は出来ない!
しかもピジョットは"こんらん"かつ"どく"状態!
あまり時間はないぜ……!
「クロバット、"おいかぜ"!」
「素早さ上昇の補助技かッ! ピジョット、元々相手の方が素早さは上だ! 無視して攻撃を続けろ!」
「馬鹿めッ! この勝負、お前の負けだ! 戻れクロバット!」
何だと!?
"こんらん"、"どく"状態のピジョットより、どう考えてもクロバットの方が優勢。
このまま押せばクロバットの勝ちは見えている。
しかも"くろいまなざし"の効果も切れてしまうのに何故交代する……!?
「行け! バンギラス!」
「ウッ……!? 特性"すなおこし"か!」
とんでもなく強烈な"すなあらし"だ……!
このバンギラス……強いッ!
「バンギラス! "かみなりのキバ"!」
「ピジョット!?」
ピジョットは呆気なく倒れた。
"こんらん"と"どく"、そして"すなあらし"によるデバフ。
そして相手は"おいかぜ"でバフが掛かってる状態だ。
仕方ない。
「良くやった。ゆっくり休めピジョット。……さあ、仇を討つぞ! フーディン!」
「そんなポケモンで勝てると思ったのか!? バンギラス! "かみくだく"だ!」
「グッ……!? 一発かよ……!?」
フーディンも一撃で"ひんし"になった。
"あく"タイプ技の"かみくだく"はフーディンには"こうかばつぐんだ"。
しかもバンギラスとタイプ一致なうえ、フーディンの防御力は高くない。
当然の結果か……。
残りのオレ様の手持ちはタマタマ、ギャラドス、リザードン。
タマタマは"くさ・エスパー"タイプ。
フーディン同様、"かみくだく"で一撃だろう。
ギャラドスは"みず・ひこう"の複合タイプ。
"みず"も"ひこう"も"でんき"が弱点だ。
"かみなりのキバ"を持っているバンギラスには出せない。
エースのリザードンも"ほのお・ひこう"タイプ。
"かみなりキバ"もヤバいが、バンギラスは"いわ・あく"タイプ。
タイプ一致の"いわ"技を食らえばリザードンも一撃で落ちる可能性がある……。
どうする?
どうすればいい?
「どうした? 早く次のポケモンを出せ!」
「クソッ……タマタマ、頼む……!」
シルバーに急かされて取り敢えずタマタマを出したが、やはりバンギラスの"かみくだく"は耐えられなかった。
続くギャラドスも"かみなりのキバ"で落ちる。
ここで相手の"おいかぜ"の効果が切れるが、リザードンでは"すなあらし"の効果で防御力の上がったバンギラスを落とす事は出来ず、逆にタイプ一致の"ストーンエッジ"で落とされた。
「フンッ! やはりこの程度か……。時間の無駄だったな」
シルバーが何か言っているが、勝負前とは別の意味で耳に入ってこない。
オレ様の手元には戦えるポケモンがいない。
オレ様は目の前が真っ暗になった。