ロケット団首領の娘   作:ポコポコぱんぱん

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第20話 視察

 

「フーディン! "サイコキネシス"!」

 

「ソーナンス、"ミラーコート"」

 

「フーディン、戦闘不能! 勝者、ノワール!」

 

「まだまだだね。グリーン」

 

「ウゼェぇぇぇッ!!!」

 

 

 

 

「ピカチュウ、"ボルテッカー"」

 

「甘い! ペリッパー、"ぼうふう"!」

 

「ピカチュウ、戦闘不能! 勝者、シルバー!」

 

「ハッハッハ! "あめ"状態なら"ぼうふう"は必中! 詰めが甘かったなレッド!」

 

「クッ……」

 

 

 

何だコレは…………?

一体、何が起きている…………?

 

ポケモンリーグ史上最強だと思っていたチャンピオン達が、赤子の手をひねるように倒されている。

 

 

「いかがかな? 我がトキワジムのトレーナー達は?」

 

 

シワ一つない真っ白なシャツに、真っ黒のスーツを着込んだ男。

このトキワジムのジムリーダー・サカキが話し掛けてきた。

 

 

「…………素晴らしい、という言葉しか出てこないよ。グリーンとレッドが、こうも簡単に負けるとはね。これでは、彼等がチャンピオンという肩書きに魅力を感じないのも無理はない」

 

()()()ワタルにそう言って貰えるとは光栄だな。……おっと失礼。()()チャンピオンだったな」

 

「…………()()チャンピオンだ。私はグリーンにもレッドにも負けた。チャンピオンなんて呼ばれる資格は……」

 

「そう卑下するものではない。逆に言えば、グリーンとレッド以外には負けてないのだ。十分にチャンピオンを名乗る資格はあるだろう」

 

 

以前の私なら同じように考えられただろう。

このジムのトレーナー達のバトルを見せられた後では……。

 

 

「君達四天王にはスロットの件でもお世話になっているし、今日は好きに見学していってくれたまえ。気になるトレーナーがいればバトルしてもいいし、引き抜きをしても構わない」

 

 

引き抜きをしても構わない……だと?

リーグとしても優秀なトレーナーは喉から手が出るほど欲しいが、一体どういうつもりだ?

 

 

「引き抜きに応じるトレーナーなんかいない。そういう自信の表れかしら?」

 

 

カンナの失礼ともとれるストレートな質問にも、サカキは笑顔で対応した。

 

 

「ハッハッハ! そんなつもりで言ったわけではないよ。嫌味に聞こえたのなら謝罪しよう」

 

「それなら、何故トレーナーの引き抜き許可なんて出すのかしら?」

 

「それは勿論、彼等のためだ」

 

 

サカキは片腕を広げる、ジムトレーナー達の方へ向ける。

 

 

「どういう事かしら?」

 

「我々は最強のポケモントレーナーを目指し、日々研鑽を積んでいる。そして、我等が最強であるという自負もある。だがしかし……そんな我等に、足りないものが一つある」

 

「足りないもの?」

 

 

首を傾げるカンナに対し、キクコは何かに気付いたようにフンッと鼻を鳴らした。

 

 

「……名声かい?」

 

 

キクコのその言葉に、サカキは大きく頷いた。

 

 

「そう! それだ! トキワジムは活動再開したばかりという事もあり、未だ知名度は低い。それに、どれだけポケモンバトルについて研究していようが、ジム内でバトルしているだけでは名声は得られない」

 

「今まで人前に出るのを嫌っていたアンタの言葉とは思えないね」

 

「確かに私自身、1円にもならない他人からの評価なんぞ欲していない。…………いや、いなかった」

 

「ほほう? 今は違うと? どういった心境の変化だい?」

 

「フフフ。キクコ、私も人の親だったという事さ。子供達にとって自慢出来る父親になりたくてな」

 

「……子供? アンタ……子供がいたのかい?」

 

「ああ、紹介しよう。ノワール! シルバー! こっちに来なさい」

 

 

サカキが名前を呼ぶと、先程グリーンとレッドとバトルしていた2人がこちらに歩いてくる。

なるほど、彼女達が…………。

 

 

「ポケモンリーグ四天王の皆さんだ。ご挨拶しなさい」

 

「娘のノワールです」

 

「…………シルバーだ」

 

 

姉の方は淡々と、弟の方はぶっきらぼうに挨拶した。

性格的には、どちらも社交性の高いサカキに似ているようには見えない。

しかし、その2人の持つ"するどいめ"は、間違いなくサカキの子供である事を感じさせた。

 

 

「フェッフェッフェ。これはまたやんちゃそうな坊主どもだね。あたしは四天王の一人、"ゴースト"使いのキクコさ」

 

「私は"こおり"使いのカンナ。よろしくね?」

 

「…………オレは"かくとう"使いのシバ」

 

「"ドラゴン"使いのワタルだ。2人とも、今日はよろしく」

 

 

握手しようと手を差し伸べるが、弟のシルバーに払いのけられる。

 

 

「オマエ等のような弱い奴等に用はない! 勝手に見学でもなんでも──いてッ!?」

 

「失礼でしょ」

 

「何するんだ姉貴!? オレはただ事実を──いてッ!? 分かった! 分かったって! ………………失礼な事を言ってすみません」

 

 

ノワールにボカボカと頭を引っ叩かれ、まったく思っていなさそうな顔で渋々と謝罪するシルバーに、再度ノワールの手が振り上げられる。

その淡々とした躾に、私は思わず吹き出してしまった。

 

 

「プッ…………アハハハ! サカキ、面白い子達だな。気に入ったよ」

 

「……そういって貰えると助かる。息子の方はなかなかの跳ねっ返りでね」

 

 

サカキは苦笑しながら答える。

先程の少しピリついた空気は、この姉弟のお陰で霧散していた。

 

 

「男はこのぐらい気が強い方がいいよ! 坊主、アンタあたしを弱いと言ったね! "ゴースト"タイプの恐ろしさ、教えてあげるよ! バトルコートへ案内しな!」

 

「婆さん、この俺とバトルする気か? いいだろう。冥土の土産に相手になってや────いたッ!? ご、ごめん姉貴! 悪かったって! ………………対戦よろしくお願いします」

 

 

キクコはシルバーと共にバトルコートへ歩いていった。

全くあの人は……。

そろそろ年相応に落ち着いて欲しいのだが……。

 

 

「キクコは相変わらずだな」

 

「……すまないサカキ。私達も、もう少し大人しくして欲しいと思っているんだが……」

 

「構わないさ。カントーのトレーナーは全員、子供の頃からキクコのゲンガーの恐ろしさを教えられて育つんだ。このジムにもキクコのファンは多い。彼女のバトルが見れるなら皆喜ぶだろう」

 

「そう言って貰えると助かるよ……」

 

「さて、キクコはシルバーに任せて、皆は娘に案内させよう。親バカになってしまうが、よく出来た娘だ。何でも聞いてやってくれ」

 

 

サカキがノワールの肩を抱きながらそう紹介すると、ノワールは初めて少しだけ微笑んだ。

 

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