ロケット団首領の娘   作:ポコポコぱんぱん

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第23話 今後のポケモンリーグ①

 

「ハッハッハ! 皆、ずいぶんとノワールにしてやられたようだな!」

 

 

トキワジムの応接室で、ジムリーダーのサカキが楽しそうに大笑いしている。

 

 

「アンタね、自分の娘に一体どんな教育をしているのさ!? こんな歳からあんなんじゃ将来どうなるか恐ろしいなんてもんじゃないよ!」

 

「フフフ。でも、いい買い物が出来たんじゃないか?」

 

「フンッ! それは否定しないけとね」

 

 

言葉は荒いが、四天王として長く一緒に仕事をしてきた私には分かる。

キクコはかなり上機嫌なようだ。

その原因は間違いなく、サカキの隣でピッタリと体を寄せている少女によるものだ。

 

ノワールの先程の話術は見事としか言えなかった。

激怒するキクコをなだめるどころか、ポケモンを購入させたのだからな。

 

 

「いずれもカントーでは珍しいポケモンだ。今部下に資料を纏めさせているから、君達が帰る時に渡そう」

 

「そいつはありがたいねえ。本当はもっとこの子達の詳しい話を聞きたいところだが、そろそろ四天王の仕事をしないとね」

 

 

キクコはそう言うと、私に目配せしてきた。

ここからは私が話せという事だろう。

私は1つ咳をしてから、今日の本題を話しだした。

 

 

「……今日は、ポケモンリーグの今後について話し合いたい」

 

「リーグの今後か。ジムリーダーの私としても興味深い話しだ」

 

「そういって貰えてホッとしているよ。以前の貴方は、リーグなんてまるで興味がなさそうだったからな」

 

 

私がそう言うと、サカキはニヤリと笑った。

 

 

「言っただろう? 私も父親として、子供達に出来る事をしてあげたくてね」

 

「……そうだったな」

 

「君達ポケモンリーグが何に困っているのかは分かっている。チャンピオンという地位の()()についてだ」

 

「──ッ!?」

 

 

失墜という言葉に"ひるんで"、上手く言葉が返せない。

他の皆もこの言葉に少なからず動揺したようだが、カンナがいち早く"かみつく"。

 

 

「チャンピオンの地位は失墜などしていないわ!」

 

「おいおい、ここには我々しかいないんだ。そういった見栄は捨てて、現実的な話し合いをしようじゃないか」

 

「見栄ですって……!?」

 

「現にグリーンもレッドも、早々にチャンピオンの座を返上してうちのジムに入会している。何故だ?」

 

「そ、それは……」

 

「答えは1つ。()()としてのチャンピオンには価値はあるが、()()としてのチャンピオンには価値がないという事だ」

 

「称号と……役職?」

 

「そうだ。トレーナーにとって、チャンピオンという言葉は非常に魅力的だ。その言葉は、全てのトレーナーの頂点に立つ事を意味する。…………いや、()()()()

 

 

サカキの言葉に、四天王全員が息を呑む。

一度でもこのトキワジムのトレーナー達を見てしまえば、その言葉は否定できない。

歴代最年少としてチャンピオンになったグリーン、そしてそのグリーンに劣らない力を持つレッド。

ポケモンリーグの長い歴史の中で屈しの実力を持つ2人が、このジムのランキングでは下から数えた方が早いという事実。

 

 

「未だ尚、ポケモンリーグのチャンピオンが最強のトレーナーであるという認識は薄れていない。だから誰もが一度はチャンピオンを目指す。そして気付くのだ。誰もが夢見るチャンピオンという肩書きは、ただの幻想に過ぎないとな」

 

「……どういう意味だ?」

 

「今のチャンピオンには、制約と義務が多過ぎる」

 

 

悔しいが、反論は出来ない。

例えば、チャンピオンは軽々しくバトルしてはいけないという暗黙のルールがある。

それはチャンピオンという地位を神聖化するための決まりではあるが、あの年頃の少年少女にとっては苦痛だろう。

 

 

「バトル禁止は論外だが、他にもリーグから指示されたボランティアなどもこなさねばならん。ジムトレーナーとビジネスマンの二足の草鞋を履いている私にとっては勿論、多くのトレーナーにとって、これは大きなデメリットだ」

 

「確かにそうだが、チャンピオンというのは全てのトレーナーにとって見本となるべき存在だ。ボランティアなどは率先して行うべきであり──」

 

「そこが間違っている。チャンピオンとは、人として優れている者がなるものではない。一番バトルが強い者がなるべきだ」

 

「じゃあ、貴方はどんな悪人がチャンピオンになってもいいと言うの!? カントーは、セキエイ高原は、ポケモンリーグの本部なのよ!? つまり全地方のポケモンリーグのトップ! 私はそんな人間を、このカントーポケモンリーグのチャンピオンとは認めないわ!」

 

「カンナ! 落ち着くんだ! 別にサカキもそこまでは言ってないだろう?」

 

「──ッ!? ……そうね。熱くなってごめんなさい」

 

「構わないさ。熱くなれるのは、君達がそれだけ真摯に向き合っている証拠だ。娘にも、トレーナー達の未来をこれだけ真剣に考えている大人達がいるという事を教えてあげたかったところだ。むしろ感謝しよう」

 

 

まさか謝罪を受け入れるどころか感謝されるとは。

カンナもあまりに予想外の対応をされ、目を白黒させている。

以前は黒い噂もあった人物だが、微笑みながら娘の頭を撫でるサカキはどこから見ても立派な父親にしか見えない。

 

我々は、もっと早くにこの人に会いにくるべきだったのかもしれない。

この人と、もっと早くに言葉を交わしておくべきだったと思う。

 

 

「君達は、ポケモンリーグとして現在最も成功している地方はどこだと思うかね?」

 

「成功している地方? どの地方でもかなりの人気を博していると思うが……一番と言われると、難しいな。我々としては、カントーの名を挙げたいところだが……。サカキは、どこだと思っているんだ?」

 

 

「────ガラルだ」

 

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