今私はタマムシシティのとある高級マンションの1室にいる。
この部屋は私がノワールとその母親の為に用意した部屋だ。
つい先日トキワシティのジムを一時的に閉鎖し、タマムシシティのアジトをロケット団の本拠地とした。
それに伴い、私もこのマンションでノワール達と生活するようになっていた。
「ノワール、準備は出来たか?」
「うん」
今日はノワールをセキチクシティのサファリゾーンに連れて行く。
ノワールはいつも通りの無表情で頷いたが、どうやらかなり浮かれているようだ。
普段は本当に子供か疑わしい程に落ち着いた娘だが、今日は意味なく手をパタパタと動かしたり、ピョンピョン跳ねたりしている。
最近分かるようになったが、ノワールは感情をあまり表情に出さないだけで、仕草はそれなりに年相応だ。
こんな事を考えるようになるとは夢にも思わなかったが、自分の子供というのは可愛いものだな。
「それで、サファリゾーンでどのポケモンを捕まえたいんだ?」
「ケンタロス」
「ほぅ。ケンタロスか。うちのジムトレーナーでも何人か使っていたな」
「"アイアンヘッド"、"のしかかり"、"インファイト"、"しねんのずつき"を覚えさせる」
もう技構成まで考えているとは、さすがは私の娘だ。
選択した技も悪くない。
追加効果のある技ばかりを選んでいるところをみると、恐らく特性は"ちからずく"にするつもりだろう。
「よく考えたな。なかなか悪くないぞ」
「む……それはダメ」
ムスっと膨れっ面をするノワール。
褒めたというのに、何が不満なんだ?
「私はロケット団のボスの娘。"
「……フフフ、ハッハッハ! 確かにそうだ! とっても悪い技構成だな。流石私の娘だ」
「むふー」
先程の膨れっ面から一転、頭を撫でてやれば目を瞑って嬉しそうにしている。
ユーモアもあるなんてうちの娘は才能の塊だな。
いや、これは親バカか?
「"アイアンヘッド"を選んだのは"フェアリー"タイプ対策か? 悪くはないが、カントーに"フェアリー"使いは少ない。"エスパー"対策に"じごくづき"を採用した方がいいだろう」
「……それは、とっても"
「だろう? それに"インファイト"も変えた方がいい。"はがね"対策だろうが、こちらもカントーには少ないタイプだ。カントーなら、"ドラゴン"対策になる"げきりん"の方が使い勝手がいいはずだ」
「……確かにそうかも」
そんな話をしながら車に乗り込む。
ノワールは自転車に乗ってサイクリングロードに行ってみたかったようだが、あそこは少し治安が悪い。
それにロケット団のボスが自転車というのもな。
今回は下っ端に車を用意させた。
そのまま下っ端に運転させるので、タクシーと違い、特に会話の内容に気を使う必要はない。
「ラッキーがいたら、"しあわせタマゴ"をカツアゲしたい」
「ハッハッハ、ポケモンからカツアゲか! それはパパもまだやった事ないな!」
「ラッキーは高く売れる?」
「あぁ、マニアに高く売れるぞ」
「なら、"しあわせタマゴ"を取り上げたあとは繁殖させよう」
「残念だが、ラッキーはメスしかいないポケモンだ。繁殖は出来ない」
「オスのピカチュウかピッピと一緒にしておけば、勝手にタマゴができるよ」
「なに? 本当か? 何故知っている?」
「…………そんな気がする」
「ふむ……試してみる価値はあるか」
ノワールはたまに、こういった突拍子もない事を言い出す。
だが一流のトレーナーであれば、知らないポケモンであってもタイプや技などが
私もそうだ。
特に"じめん"タイプのポケモンであれば、まず間違える事はない。
ノワールのこの知識も、一流のトレーナーが持つ直感によるものだろう。
ノワールはハッサムを愛用しているので"はがね"タイプと相性が良いと思っていたが、"ノーマル"タイプもいけるようだ。
私としてはやはり"じめん"タイプであって欲しかったが……。
いや、まだノワールが"じめん"タイプと相性が悪いと決まった訳ではない。
優秀なトレーナーは複数のタイプを使いこなすからな。
取りあえず今は娘の才能を信じ、試しにラッキーの繁殖をやってみるとしよう。