俺はポケモンバトルで生計をたて、チャンピオンを目指すエリートトレーナー…………だったのは遥か昔。
今ではトレーナー時代の貯金を食い潰しながら、何を成す事もなく無駄に日々を過ごす無職のおっさんだ。
自分で言うのもなんだが、俺のトレーナーとしての実力はかなりのものだった。
もちろんジムバッジは8つ全てコンプリート済みであり、ポケモンリーグに挑戦し、あと少しでチャンピオンに手が届く所まで到達した。
あの時は惜しくもキクコのババアに負けちまったけどな。
てか四天王連戦ってなんだよ。
普通の一対一なら負けなかった。
…………いや、これは負け惜しみだな。
ともかく、俺の未来は明るいはずだった。
この時までは。
俺と相棒のポケモン達はリベンジを誓い、特訓に特訓を重ねた。
チャンピオンロードに籠もり、ライバル達と鎬を削る日々。
今思えば、あそこが俺の人生のピークだったな。
俺はチャンピオンを目指すあまり、自分のポケモン達をちゃんと見ていなかったんだ。
俺のパーティーのエースはピカチュウだった。
子供の頃からずっと一緒に過ごしてきた相棒。
何故かライチュウになるのを嫌がる少し変な奴だったが、甘えん坊で可愛い奴でもあった。
それでいてバトルでは誰よりも頼りになる、頼もしい相棒だった。
あいつはまさに俺の半身で、もちろんチャンピオンになるというのも俺達の共通の夢だったんだ。
だからだろう。
あいつは俺を心配させまいとずっと病気を隠していた。
バトル中に突然あいつが倒れた時は呆然としたよ。
目の前が真っ暗になった。
その後すぐにポケセンに連れて行ったが、間に合わなかった。
今はシオンタウンで安らかに眠ってる。
それからの俺は、抜け殻だった。
半身たる相棒を失い、飯を食って糞して寝るだけの日々。
他のポケモン達は俺を心配してくれたが、俺にとってはそれが余計に辛かった。
悔しくて、情けなくて、あいつらに合わせる顔がなくて、今ではあいつらを実家に預けてタマムシシティで一人暮らしをしている。
今では毎日スロットを打つだけの日々だ。
スロットは良い。
やってる間は嫌な事を忘れられる。
負けた時は死にたくなるがな。
たまにトレーナーになりたてっぽい子供を見かけるとコインを恵んじまうのは感傷かね。
まあ、そんな事はどうでもいい。
どれだけ後悔しようが二度とやり直せないんだ。
そんな事を考えるよりこれからの事を考えよう。
今日はスロットを置いてある店、"ロケットゲームコーナー"の新装開店の日だ。
いや、"ロケットゲームコーナー"じゃなくて"タマムシゲームコーナー"に店名が変わったんだったな。
この日を待ち侘びたぜぇ。
なんでも新台が出るんだとさ。
雑誌でリーク情報の記事を読んだが、今度のスロットは凄いらしい。
スロットにテレビが付くとか、四天王とバトルが出来るとか、そんな事が書いてあった。
スロットにテレビなんて付けてどうすんだと思うが、今までのスロットにも飽きてきたから何か変化があるのは大歓迎だ。
開店前に店に来たんだが、既に3人ほど並んでる。
今並んでる奴等は全員顔見知りだ。
「おぉ、無職も来たのか」
俺の前に並んでいたオヤジが話しかけてくる。
「よう借金オヤジ。新装開店の準備のせいでしばらくスロット打ってねぇんだ。そりゃ来るさ」
「ハハハ、愚問だったな」
「あんたは来ていいのかよ? ちゃんと借金返さねえと、またヤバい奴等に追っかけられるぞ」
「何のために借金してまで貯めたコインをケーシィと交換したと思ってんのよ? 借金取りなんぞ"テレポート"でどうとでもなるっつーの。そんな事よりあの雑誌は読んだか? 何でも新台には
「ああ、読んだよ。 テレビみたいなもんなんだろ?」
俺と借金オヤジのそんな会話に、列の先頭に並んでた爺さんが混ざってきた。
ちなみにこの爺さんは毎日タマムシジムのジムトレーナーの女の子を覗きに行っているスケベ爺だ。
「テレビとは違って、スロットの
「おいおい爺さん。そんなの雑誌には書いてなかっただろ? どこ情報だ?」
「カッカッカ! ワシも無駄に長生きしとらんでな。色んなツテがあるのよ」
「ほんとかねぇ……」
「あ、あ、そ、それ、僕も、親から聞きました……」
今度は二番目に並んでたヒョロガリが会話に混ざってくる。
コイツはタマムシ大学の学生だが、親のコネで裏口入学し、講義の単位なんかも親の力でどうにかしてもらっているらしい。
親はカントーでも有数の金持ちらしく、その親の金を使ってスロットで遊び呆けている駄目な奴だ。
「
借金オヤジ、スケベ爺、
そして無職の俺を合わせてタマムシシティのクズ四天王だ。
開店までの暇潰しに意味のない会話をする。
俺達クズ四天王の後ろにもゾロゾロと列が出来てきた頃、ついに