「ジ、ジムリーダーだと!? くっ、何でトキワのジムリーダーがヤマブキシティに……! だ、だが、いくらジムリーダーでもこの数を相手に出来る訳がねぇ!」
「甘く見られたものだな。お前達が百人いようが千人いようが私にとっては同じ事。さぁ、このサカキの実力をその身を持って知れ! 行くぞドサイドン!」
「グルアアアアァァァァァッ!!!」
おじ様が繰り出したのはドサイドン。
トレーナーとしては素人の私に、バトルの事はよく分からない。
しかし、そんな私でも分かる事がある。
────格が違う。
ロケット団の男達のポケモンは明らかに怯えている。
それもそのはず。
おじ様のドサイドンが場に出ただけで、まるで"ヘヴィメタル"を含んでいるんじゃないかってぐらい空気が重い……!
離れて後ろから見ている私でさえそうなのだ。
相対しているロケット団の男達が受けている"プレッシャー"はその比じゃないだろう。
「どうした? 掛かってこないのか?」
「くっ……! レベルが、違い過ぎる……!」
「来ないならばこちらから行くぞ。ドサイドン、建物に被害は出すなよ? 上手く手加減しろ」
「ガアアアアァァァァァッ!!!」
────"じしん"
おじ様がそう指示を出した瞬間、世界が揺れた。
床や壁には亀裂が入り、とてもじゃないが立っていられない。
それはロケット団の男達も一緒のようで、床を転げ回っている。
勿論技を食らったポケモン達は一撃で"ひんし"状態だ。
そんな死屍累々とした状況の中、おじ様とドサイドンだけが平然と立っていた。
「流石にこれ以上弱くするのは難しいか……。良くやったな、ドサイドン」
「グルル」
ドサイドンは先程の雰囲気から一転し、おじ様に甘えるような優しい声で鳴いている。
こんな強いポケモンを完璧に手懐けてる。
それに、これで最大元に手加減したっていうの?
これが…………カントー最強のジムリーダーの実力。
「お嬢さん達、怪我はないか?」
おじ様は心配そうに私達に話し掛けてくれた。
一撃でロケット団を倒しちゃうような強さを持ってるのに、なんて優しい方なのかしら……。
「はい、私達は大丈夫です。助けて頂いてありがとうございます」
「怪我が無くてよかった。私はこのビルを開放するため、他のフロアのロケット団も倒してくる。このビルは戦場となる。君達はこの街のポケモンセンターに避難しなさい」
「は、はい、分かりました」
「街中にも奴等の仲間がいるようだから、私のドサイドンを護衛として連れて行くといい」
「えっ!? そ、それは心強いですが、私達がドサイドンを連れて行ってしまうと、あなたのポケモンが……」
「ああ、それなら問題ないよ。これでもジムリーダーだからね。他のポケモン達もロケット団如きに遅れをとったりしないさ。それに、ドサイドンの攻撃でこのビルが倒壊してしまったら私の方が悪者になってしまう」
おじ様はそんな冗談を言いながらパチッとウインクをしてきた。
強くて、優しくて、お茶目なところもあるだなんて………。
このおじ様……
────推せるっ!!!
今までポケモンバトルに全く興味がなかったけどそのせいでこんなナイスなおじ様の事を知らなかったなんて人生損したわね。てかトキワシティにジムがある事さえ知らなかったわ。ばかばかばか私ってばほ〜んとにばか。それに今まではどちらかって言うと歳上ってよりは歳下派だったけど歳上も良いじゃない。てかこんな人生最大のピンチをあんな風に颯爽と助けられたらそら性癖も歪むわよ。しかも何このおじ様の格好。外側は"あく"タイプみたいな真っ黒スーツでビシッと決めつつも中は少しラフで"ノーマル"タイプですって感じの白シャツで硬くなりすぎずいい感じの塩梅を醸し出してるわ。これはご飯が何杯でもいけ────
「君、急にボーッとして大丈夫かい? もしかして何処か怪我でもしているのか?」
「…………え? あ、いえいえ! 全然大丈夫です! お陰様で無傷ですから! ほらこの通り!」
私は慌てて屈伸運動をしてみせた。
あ、いきなり屈伸なんてしたら変な子と思われるかしら?
「何かあってからでは遅い。念の為、ポケモンセンターに着いたら医者に診てもらうといい」
「はい、そうします」
「うむ。それではドサイドン、彼女達をしっかりエスコートするんだぞ」
「グルァ!」
おじ様はそう言ってエレベーターに向かって歩いていった。
「あのっ! 本当にありがとうございましたっ!」
私の御礼に、おじ様は振り返りもせずに片手を挙げて応える。
……ヤバ、マジカッコいい。
今日は色んな意味で忘れられない日になっちゃった。