幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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 軽く読めるような物語を目指します

 とりあえず一章までは考えてある


愛と欲のカタルシス
天使な幼馴染


 

 部屋で僕は一人頭を抱えていた。常識だと思っていた事実が完全に嘘だった、まるで足場が一気に崩れ落ちたような気分とでもいうべきか。

 

 

『可哀そうにねぇ。信頼して来た女にこんな簡単に騙されてたなんて知ったらそうもなるよねぇ』

 

 

 頭の中で蠱惑的な声が響く。砂糖を混ぜたはちみつのような甘ったるい声が嘲笑うように、それでいて寄り添うように僕の理性を溶かしにかかる。

 

 

『でもこれは事実だし、それももう分かってるでしょ?』

 

 

 その言葉は正しいと確信する。むしろ今まで何故疑問に思わなかったのかという部分が多々ある。僕を構成する部分の一角が一気に崩壊し声にならないうめき声が口から漏れ出る。

 

 

『アンタの幼馴染は“天使”だよ~~~ん』

 

 

 なぜこんなことになったのか、僕の頭は今日一日のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人生理不尽なことは山程あると思う。例えば生まれた家だったり。

 金持ちの家に生まれれば金銭的には大変恵まれた人生を送れるだろう。逆に貧乏な家に生まれれば大変不自由することになると思う。

 

 才能もまた生まれ持ったもの次第でその人間の生き方は大きく変わる。プロ野球選手になりたいのにその才能がなかったりだ。頭の良さだって努力でどうにかなる範疇は決まっている。運動能力や芸術センスだってそうだ。

 

 

「そう考えると僕は大分恵まれてるよなぁ……」

 

 

 顔は中の上程度、よく見れば上の下はあるだろう。この時点で普通にしてはかなり恵まれている。まぁうちの学校には男女ともに上の上を越えた特上がいるので比較的に普通に含まれる。

 

 家族にも恵まれてる。海外出張に両親ともに行っているが愛情はあるし、定期的に帰ってくるので寂しくもない。それに一人で一軒家に住むというのは正直とても楽しい。料理洗濯掃除全部一人でやらなければならないが慣れれば気にもならない。

 

 勉学や運動能力もクラスの平均よりは上の方だ。これまた上には上がいるので自慢できるようなものでもないが。

 要するに第三者目線ではどう映るかは分からないが、自己判断を下すのならばかなり恵まれていると言えるだろう。

 

 だが、僕こと沢渡亮が自他ともに一番恵まれていると言えるのは人間関係だ。

 

 

「どうしたんですかリョウ君?」

 

「別に何でもないよ、エル」

 

 

 心配そうに首を傾げてこちらを見つめてくる超絶美少女が幼馴染だという事実だ。

 正直これに関して神様に感謝してもしきれない。こんな美少女と幼い頃から一緒だったという事実だけで僕の運は天元突破していると言っても過言ではないだろう。

 

 長い銀髪は太陽の光を綺麗に反射してキラキラしている。こちらをみる真紅の瞳は血のように濁ってはおらずルビーのように吸い込まれそうだ。染み一つない肌は水を含めあらゆるものを弾きそうだ。

 プロポーションも完璧であり、出る所は出ており引っ込むところは引っ込んでいる。まさに神が作り出した芸術品と称してもいいだろう。

 

 成績優秀、鮮美透涼、活発婉麗。エル・ライトガーデンという少女はあらゆる称賛を受けてしかるべき少女だ。

 

 

「そうですか、よかったです。顔を顰めてましたから心配しましたよ」

 

「今日小テストあるから、そのせいだね」

 

「ああ……、数学の加藤先生はテストになると要求基準が高くなりますからね」

 

「高得点狙おうとすると大学レベルの問題出してきやがるからな……」

 

 

 こう言った何気ない会話を学校の行き帰りに出来る。その事実だけで僕は周囲の男共から血涙を流して睨まれること請け合いだ。少なくとも僕だったらそうなる。

 

 

「じゃあリョウ君、また放課後」

 

「うん。今日は夜ハンバーグ作るつもりだから」

 

「ありがとうございます。材料は先日買ったのを使ってください」

 

 

 薄く微笑むその笑顔は神秘的で、そう言われたら気合いを入れて作るしかあるまい。僕達のクラスは違うのが残念だが、こうして自然と会う約束が出来るのは嬉しいことだ。

 朝からこんな会話をしていたら当然嫉妬の念も沸くだろう。だが何故か周囲からはあまりそういう事を受けない。ありがたいことはありがたいのだがかなり不思議ではある。

 

 

「よっ、今日も天使ちゃんと一緒に登校か?恵まれてるねぇ~」

 

「僕のこの幸運を君にも分けてあげてたいくらいにはね、智弘君」

 

 

 少し不思議そうにしながら席に座れば隣の席の友人、秋野智弘君がいつもの通りに話し掛けてくる。彼はこの学校のサッカー部のエースだ。

 二年の始まりでありながら既にレギュラーとして活躍しておりその運動神経は突出している。さらに言えばその顔は上の上であること確定の爽やかイケメンである。

 当然ながらモテモテだ。ファンクラブさえあるらしいが僕と掛け算をするのはやめて欲しい。ただの友人なんだ僕達は。

 中学時代からの友人で名前呼びというだけで燃え上がるのはやめて欲しい。キャーキャー言われるのはもっと別の理由であってほしいんだ。

 

 

「かぁ~。あのライトガーデンさんの幼馴染は言うことが違うねぇ。だけどそれにしてはどこか上の空みたいだったけどなんかあったか?」

 

「いや、そういえばエルにはファンクラブとかないなぁって思って。あの容姿で運動神経も勉強も出来るんだしあってもおかしくないと思うんだけど……」

 

「あー、それは確かにそうかもしれねぇな。まぁ、あえて言うなら高嶺の花過ぎるってところじゃないか?」

 

「高嶺の花か……。あまりに周囲とは桁が違い過ぎるから最早信仰の対象になってる、とかそんな感じ?」

 

「まぁな。俺から見てもあの人神々しすぎるから直視できない奴も多いんだと思うぞ」

 

「結構隙が多かったりするから言う程完璧じゃないと思うんだけどなぁ」

 

 

 人からの好意に鈍感というか、「付き合ってください」と何度も言われているのに「どこにでしょうか?私に時間があればいいのですが……」と返してるらしい。幼馴染として、というより彼女を好いてる男としてそこは嬉しいのだがその返答は相手に対して少し悪いのではないかと思わないでもない。

 

 

「余裕ぶってるけどよぉ。実際ライトガーデンさんが誰かと付き合ったりしたらお前地獄の生活になると思うぞ。一緒に住んでるんだし」

 

「うぐっ……!?それはそうなんだけど……」

 

 

 智弘君の言う通り、僕達は今諸事情上で一緒に住んでいる。エルの両親は彼女の名前からも分かる通り純然たる外国人で今も世界中を飛び回っているらしい。

 詳しい仕事は知らないが僕の両親も似たような物である。そして僕達の親は一人暮らしするのをどうやら躊躇ったらしく、一緒に住むことを容認しているらしい。

 らしい、というのは僕自身彼女の両親に会ったことがないせいだ。とても忙しいのだろうが、娘の為にそこまで頑張っているのは素直に尊敬できる。

 

 

「もしライトガーデンさんが誰かと付き合った場合、当然その彼氏とデート行くことになるだろ?あの人の物静かな所から家デートかもしれない。そうなったらお前完全に邪魔者じゃん」

 

「じゃ、邪魔者……!!」

 

 

 想像してみる、その地獄絵図を。エルがもしも他の男を家に連れ込んだ場合を。

 

 

『リョウ君、今日は彼氏が来ます。その間リョウ君は外にいて欲しいのです。理由としては二人きりになりたいので』

 

『えっ。いや、うん。それも……そう、だね』

 

『なのでリョウ君には20時くらいまで外にいて欲しいです。遊ぶお金はあげるので』

 

『あ、ありがとう。20時までで、いいんだね……?』

 

『はいです。その後は防音の自室で二人で色々とするので……きゃっ』

 

 

「がああああああああああああああああああああああああ!??!?!??!!?」

 

「うわっ!?びっくりした!!」

 

 

 脳が!!!脳が破壊される!!!!

 想像するだけでなんだこの地獄は!!!エルが誰か他の男と付き合っているというだけで地獄なのになにこの浮気公認みたいな状況!!!

 浮気男と色々とするから出て行けとかまさにその通りのシチュだよ!!!何が最悪かってこれ実際は浮気でも何でもないから悪いのは恋人二人のイチャラブの邪魔してる僕だって点だ!!!!

 

 

「だめだ……どんなシミュレートしても僕が完全にNTRれた弱男にしかならない……!!」

 

「寝てから言え。いや学生じゃそこまで行く方が問題か」

 

 

 しかも何が悲しいかと言えばこの想像は僕が考える以上に実現しやすいだろうということだ。彼女は毎日のように告白されている。中にはバラの花束まで用意する奴もいる始末。

 衝動的なそれらの告白ならば、十中八九想像の通りにはならないだろう。だが姑息にも少しずつ距離を近づけてから告ろうなんてしてる輩も少なくはないだろう。

 

 何せ僕とエルは違うクラス、今もこうしている間にあちらのクラスで誰かと仲を深めているかもしれない。深く追求するのはウザいと思ってあまり聞いていないがその可能性は低くはないだろう。僕にとってはそちらの方が恐ろしくて敵わない。

 

 

「う、うぅうぅぅ……!!僕は、僕は一体どうすれば……」

 

「そりゃお前、先に告白するんだよ。どっかの男にとられる前に自分のものにすればいい。男らしく堂々とな」

 

「…………智弘君、それはアリだ」

 

 

 友の言う通り、先に動かない者には何かを言う権利などない。例えエルが誰かと付き合ったとしても「僕は動いた、それでもダメだった」という事実はこの先の人生において決して無駄ではないはずだ。

 

 

「そうだ、僕が先に好きだったのに(BSS)などというのはただの負け犬の言い訳だ。第一先に好きだったからなんだというんだ。恋に時間なんて関係ないのに」

 

「幼馴染が言うとなんかこう、もにょるけどなその理屈」

 

 

 智弘君はそう言いながら鞄からスマホを取り出して僕に手渡してくる。なんか最近のオカルトな噂とかが載ってるらしいサイトで、エルが眺めているのを見た覚えがある。

 

 

「この雑誌の中に色々と載ってるけどその中でもお前のおすすめは……そうそうこれだ。」

 

「絶対に恋が叶う小物……?なにこの胡散臭いの」

 

「胡散臭いのは確かだが、効力も確からしいぞ?どうしても叶わない恋を叶えたい人向けらしくてな。この妙な小物を売ってる路上店を見つければ売ってくれるらしい」

 

 

 小物の種類は千差万別あり、ペンダントやら指輪やらべたな物が揃ってる。変わった物の中には刀の鞘とかある。誰が買うんだこんな物。

 

 

「これを見つければお前の恋もきっと叶う!!行け、行くんだリョウ!!!!」

 

「と、智弘君……!!」

 

「俺はお前の味方だ。だから行ってこい。で、効果があったら俺にもそれ貸してくれよ」

 

「と、智弘君……」

 

 

 親友からの熱いエールを元に僕は立ち上がる。そうだ、うだうだしている暇があるのならば行動しなければならない。全ての戦は先手必勝、先に動いた者が大抵の場合勝つんだ。

 

 

「でもお前より先に告った連中全員振られてるけどな」

 

「それな」

 

 

 彼の現実を告げる言葉に水をぶっかけられた気分になった僕はホームルームの時間を告げるチャイムと共に来た先生に言われて席に着いた。

 

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