幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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天使達と放課後

 

 

 放課後、それは学生にとって学校という拘束時間から解放されたことを示す自由になった時間のことである。当然それを待ちわびている学生の方が殆どであり、学業に集中したいという生徒が居たとしてもこの時間の方が恐らくは勉学に励めるため嬉しく思うのではないだろうか。

 

 そんな誰しもが高校生であるならば待ち望んでいた時間。それでも僕の呼びかけに応えるように目の前の彼らはクラスで待っていてくれた。素直に僕はその事実に感謝したいと思う。

 

 

「ここに来ればライトガーデンさんと仲良くなれるチャンスが来ると聞いて」

 

「アイドルのエアロードさんと会話出来るとか嘘だったらぶち殺す!!」

 

「あの髪のさらさらにどんな秘密があるのか、私気になります!!」

 

「褒め殺しの会とか聞いたけど俺の語彙力ではそれを表現しきれない。なので俺の考えと似ている沢渡君に是非言語化してもらいたい。出来ることならその言葉とそれに対する二人の反応を録画して大事にしたい所存である。沢渡君にはぜひ羞恥心の欠片もなく自分の言葉をぶつけて欲しい。それがそのまま彼女達に自分の魅力を分からせる最適解だと思っている。無論録画映像に関しては沢渡君と二人に渡すのでどうするかは各々に任せたいが出来るならば永久に保存して大事な場面で流してほしいと思う。具体的に言うなら結婚式とかそういう大事なところで公開して欲しい。それだけで俺は満足して成仏できるだろう」

 

「あの二人に似合う服を好きに着させられると聞いてきました!!!ライトガーデンさんには軍服ロリータが似合うと思うしエアロードさんにはよくあるゴスロリが最高だと思うけどそれはそれとしてメイド服や執事系の男装みたいな服もギャップがあって最上だと思うがかといってそればかりに傾倒していいわけではなく外からどう見られるかも大切だけどそれ以上にすべきなのは彼女達がそれぞれどんなファッション、服が好きなのかという点でありそこに合わせ尚且つどれだけその魅力をどれだけ引き出せるかが大事なので色々とお話をしてあの二人の天使に似合う服を用意したいと思います!!!!!」

 

 

「キャラが濃いのがいる!!!しかも二人もいる!!!!」

 

「それを集めたのはお前だぞ???」

 

 

 教壇に立つ僕の目の前に集まった中に何人かヤバいのがいる気がする。殆どクラスメイトのはずなのだがその中にありえない程の熱意を感じる人間が存在する。片っ端から声を掛けまくったけれどあんな人いたかと少し不安になる。周囲も美少女二人と会話出来るチャンスだと喜んでいたところにぶつけられるマジもんにドン引きしている。

 

 

「んんっ!!さて諸君!!!今回集まってもらったのは他でもないエルとエアロードさんと交流しどれだけ自分が魅力的なのかを二人に分かってもらうというのが目的である!!!諸君らの会話術と欲望に満ちた言葉を期待する!!!

 

「「「「おぉおおおおおおおおお!!!!!」」」」

 

 

 いいね!!ノリのいい友人とクラスメイトは大好きさ!!!

 とはいえこの場にいる全員がそれぞれ別の思惑があるのは分かっている。素直に仲良くなりたい、会話するきっかけが欲しいと思う人が殆どだが、その中には下心がある人間もいるはずだ。だが人間なんてそんなものだし、そういう人がいるということを二人が知るいい機会だろう。僕だってエルが好きだからこうやって行動してると考えればそれも下心に含まれるはずだ。

 

 下心といえば聞こえは悪いが欲望なんて人から引き離すことなど絶対に不可能だ。もしそれが可能になるのならばそれはきっと人間という生き物を家畜へと変える行為になるのだと思う。

 大切なのは理性と本能の融合。それこそが人のあるべき姿だ。

 

 

「ただし二人に不埒な真似をしようとした奴がいたら周囲全体で囲んでぶっ殺す」

 

((((コイツマジで言ってやがる……))))

 

 

 それはそれとしてキッチリ釘をさしておく。好き勝手やられても困るし、人間関係初心者二人に対して適当こいて欲望ぶつけるなど許せはしない。

 幸い僕と智弘君がいれば大抵は何とかなるだろう。伊達にトレーニングが趣味な男とサッカー部で好き放題やりレギュラーを勝ち取ったフィジカルエリートではないのだ。

 

 

「それではお待ちかね!!今回の主役二人の登場だ!!!拍手と共にお出迎えを!!!さぁさぁエルにエアロードさんどうぞ!!!」

 

 

 机を動かして中央付近を広く場所を開けた場所に誘導するように教室のドアを開く。そこにいる二人はやはり、どこか人間離れした美しさを持っている。だけどその表情にある色は人が良くする困惑の顔だ。はっきり言おう。「なんでこの人ここまでしてるんだろう」という目である。よく言われるしそういう目で見られ慣れているのでよく分かる。

 

 

「行動力が凄い……なんで昼休みから放課後まででここまで出来るの?」

 

「リョウ君にはブレーキがないですから……。やろうと思ったら何でもやりますよ。良識はあるので問題になるようなことはしませんけど」

 

「僕の理解度が高くて嬉しいよエル!!だけどブレーキないとか僕の事暴走車扱いしてない?」

 

「してませんよ?私は純粋にリョウ君は凄いと思ってます。私達と会話してもらう為にここまで人を無節操に集めてくるその躊躇いのなさが私は好きです」

 

「そういうところで好きとか簡単に言うから危ないんだよ!!ねぇみんなもそう思うよね!?」

 

 

 その場にいる全員が僕の叫びに首を縦に何度も頷いてくれる。そりゃそうだろう。

 なにせエルは長く、光に反射する銀髪を持ち、ルビー以上に綺麗な紅い瞳を持つ神秘的過ぎる美少女だ。そんな美少女が少し微笑んで「好きです」なんて言おうものなら理性が溶かされても誰もそれを否定することなど出来ないだろう。

 

 

「…………何故皆さんそんなに必死に首を振ってるんですか?」

 

「いや、今日は沢渡にライトガーデンさんとエアロードさんと話せるって言われて来たけど……確かにこれは認識を少し改めてもらった方が良いかもって思ったんだよ」

 

「うん。相手がヘタレな沢渡君だったからよかったけど、あんなこと普通の男の人に言ったら理性失くして襲われるかもしれないし。女の私でも思わず抱き着きに行きたくなったもん」

 

「ああ。最初はヘタレな沢渡がまた変なことやり始めたと思ったけど……これは流石に見逃せないな。二人の安全の為にも全力で付き合うぜ!!」

 

「やめろリョウ!!確かにムカつくかもしれないけど言ってることは割と正論だぞ!!」

 

「離してくれ智弘君!!あの邪知暴虐の輩共を排さないと!!!物理で分からせてやるぁ!!!」

 

 

 誰がヘタレだ誰が!!!あんな美少女と二人暮らしで四六時中一緒に生活してみろ!!!理性を保ち続けた僕への称賛こそあれどヘタレなどとは決して言わせない!!!

 智弘君に羽交い締めにされて止められながら、行動で分かってもらえないのならば言葉で現状を理解させるしかないと決意する。

 

 

「第一僕がもし仮にエルに好きだと言ったとしよう。エルはどう答える!?」

 

「私も好きですよ?」

 

 

 何でもないようにさらっと言いのけてくる。そういうところも好きではあるがそれでも心配になるのは幼馴染(偽物だけど)として当然だと思う。

 顔に熱が集まるのを自覚しながらそれでも叫ぶ。声に熱を込めなければ頭が熱暴走でおかしくなりそうだ。

 

 

「これだよこれ!!!これ以上僕に何を求めるって言うんだよお前ら同じこと出来るのかよ!!この綺麗さMAXでさらには料理に舌鼓を打ってニッコリと笑うんだぞ!!ヘタレじゃなくて我慢してること自体を褒めて欲しいよ!!!だからエルには自分がどれほど素敵で可愛らしくて綺麗で完璧じゃないけどそれでも凄い女の子だって自覚させたいの!!!協力してくれッ!!!」

 

「協力する意味ないと思うけど……」

 

「私達が言うべきこと全部自分で言っちゃってるし」

 

「沢渡君、思ったこと全部口に出す癖やめた方が良いと思うよ」

 

 

 クラスに残っているみんなに叫べばそんな言葉が返ってくる。思わず隣を見ればそこにはプルプル震えているエルの姿がある。僕の思いの丈を知った分だけ衝撃を受けたのだろう。

 しかしエルがこうなるのはよくよく考えたら少しおかしい気もする。彼女はそのクールな見た目と同じく普段は冷静沈着だ。なのに僕の言葉にここまで動揺するのはどういう事だろうか。

 

 幼馴染だと思っていた頃ならば時間をかけてきたが故の反応なのだと勝手に納得していたが今はもうそれが嘘で間違いだと分かっている。

 そもそも何故天使であるエルが僕のようなただの人間と同居しているのか、その時点でおかしいのではないだろうか。学生をやるのはその見た目と人のことを知るという目的があるとすれば納得出来るが年頃の男子高校生と同居させるとかいつ間違いが起こってもおかしくないだろう。そしてそういった問題が起きればいくら彼女達が天使だとしても悪感情を抱くはずだ。

 

 考えれば考える程違和感がある現状だ。リルナに渡した質問リストにも入っているが、もし彼女が知っているか、最低でも考察の手掛かりを得られるなら助かる。

 

 

「……私、エルもそうだけど沢渡君の方もちょっと教育した方が良いんじゃないの?これ絶対勘違いさせてるパターン多いと思うわよ」

 

「良いこと言ってくれたなエアロード。俺も友人としていつも心配になるんだよ。コイツいい奴だけどいつか刺されるんじゃないかってな」

 

「待ってエアロードさんに智弘君。なんで矛先がそこで僕の方を向くのさ。僕が一体何を言ったって言うんだ」

 

 

 考え事をしていたら二人がそんなこと言っていたのでつい口を挟んでしまう。そもそもエルのような美少女と僕のような男が似たようなことをしたとしてもそこには絶対的差があるだろう。

 

 

「というか僕の場合褒めてはいるけどそれはただの客観的事実だし。人の心を弄ぶような嘘は絶対に言わないよ。そんなの言うだけで気分悪くなる」

 

「そう言う事言って全部本気ですって示してるから承認欲求の塊とかと関わったら絶対縋りついてこられるわよ。本当に気を付けなさい」

 

「むぅ……。分かった、分かったよ。エルやエアロードさんに自分を客観視して欲しいって言ってるのに自分はしないなんてそんなのは通らないからね。いきなり全部変えるのは無理だけど、少しずつ直して行く形で頑張る。教えてくれて、ありがとう」

 

 

 僕自身にも反省すべき点はある。もしかしたらエルがこうなったのは僕の影響も大きいのかもしれない。だとすればエルだけではなく僕も変わらなければ本末転倒だ。

 それを教えてくれたエアロードさんに感謝する。

 

 

「礼はいいから頑張りなさい。じゃないとエルが不安になるだろうから。可愛い女の子が貴方の傍にいるとか考えだしたら、ね」

 

「シルフィっ!!余計なことを言うのはその口ですかっ!!!」

 

「ちょっ、いふぁいいふぁい!?くひをひっはらないへ!!」

 

 

 同時に余計なことを言ったエアロードさんにエルが珍しく大きい声を出して掴みかかっている。こうしてみると僕とエルの偽物の関係とは違い、彼女達の関係は本物なのだと分かり少し寂しく思う。それでも、どこか楽しそうなエルの姿に僕は確かに満足もしていた。

 

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