【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
一般人では手の出ない程の高級ホテルでさえ悪魔達にとっては仮拠点以上の価値はない。そんな仮の拠点にしているとあるホテルの一室で美しい赤いドレスが汚れることさえ構わずに膝と肘を床に付けて苦しんでいる悪魔がいた。
「ぐ、ぎ、がぁ……!!はぁ、はぁ、はぁ……!!」
「ちょっとー♪そんな調子で大丈夫なのかなぁ♪」
「問題、ないわ……!!」
呼吸を荒くしながらも笑みを浮かべる『愛求堕喰』アドラメレク。自分もこういう時期があったと思い出に浸っているのが『永死殺総』アネモネ。ドッペルを後一歩まで追い詰めた二体の上級悪魔はそれぞれが楽しそうに笑っていた。もっとも、表面上はいつも通りに戻っているアネモネだがその内面はドッペル、エル、シルフィに対する殺意がグツグツに煮詰まっているが。
「“魂魄契約”を奪ったはいいけど、条件に私を殺すことを付け加えていたみたいでね……。抑え込むのに彼から流れてくる“欲望”は使えないからそれ以外の有象無象達の“負の感情”や“欲望”を使っているのよ……」
「そりゃなんともまぁ♪だーいぶ恨まれてるみたいじゃん♪」
「ええ、そうね。だけど幸いなことにこの条件は彼に対しての要求。彼が私を殺すことを義務付けているものであって、私が能動的に何かをしないといけない訳じゃない。私が奪ったあの下級悪魔に与えられた契約条件は幸せになることを諦めないこと……これを利用すれば抑えつけるのに一度成功すればその後は苦労しないはずよ」
「悪魔に幸せになれとかおもしれ―男じゃん♪ドッペルじゃなかったら私が飼ってあげたのにさぁ」
「協力者とはいえ、彼に手を出したら私が殺すわよ」
「あーはいはい分かりましたー♪ま、アンタがあの男を手中に収めたところを見せつけてやった方がエル・ライトガーデンもシルフィ・エアロードも絶望してくれるだろうから構わないけどさ♪」
弱い者ならば向けられただけで生存を諦める程の明らかな殺意を向けるアドラメレクを笑って受け流すアネモネ。だがその笑みは憎い復讐相手をどのように苦しませるかで頭がいっぱいだった。
アドラメレクが「あらゆる“欲望”を奪い、自身の望みを見つける」という“欲望”から変化したように、アネモネもまたその“欲望”を変質させかけている。「あらゆる全ての上に立ちたい」、何より優先すべき“欲望”よりも唯一無二の友を殺した相手を苦しませる復讐を選びかけている。
「はぁ……ふぅ……。キツいけど、大分マシになってきたわね……。とはいえ、戦闘行動を起こすのはまだ難しい。動くのは、もう少し先になるわね」
「ふぅん。だけどあんまり時間をかけるとあっちも準備してきそうじゃない?速攻でぶっ殺しに行った方が楽だと思うけど。なんならさぁ、私一人で行ってもいいんだよぉ?全ゾンビ放出すればいやでも出てこざるをえないでしょ」
荒げていた呼吸を整えてこちらを眺めていただけのアネモネにジト目を返しながら彼女の体面に座る。不満そのものの表情からは今すぐにでも復讐対象達を殺しに行きたいという欲求が見て取れる。それに対してアドラメレクは焦ることなく現状を彼女に伝えた。
「貴女一人じゃ勝てないわよ。天界組織も馬鹿じゃない。今回のエル・ライトガーデン達の敗北を受け止めてもういつでも動けるようにしてるはず。最悪、最上位天使が一人くらい来るかもしれないわ」
「うへぇー。アイツらとやり合うのはまだ勘弁してほしいなぁ。手駒が足りな過ぎて勝てるビジョンが見えないし。間違いなく私の手駒、全損させてくるもん。マモン様がぶっ殺しに来てくれればいいのに」
心底嫌そうな顔をするアネモネは、悪魔の中でも古参の『病孤涙苦』の友人だったこともあってか最上級天使の脅威を熟知している。無尽蔵ともいえる“愛”とそれに裏付けられた能力の数々は厄介そのもの。魔王からすれば遊べる相手でも上級悪魔からすれば死力を尽くしてなお勝機が1割あるかどうかの脅威そのものの存在。そんなものが出てくると思えば復讐で煮だった頭も冷えて冷静になるというものだ。
それに苦笑を返しながらアドラメレクはアネモネの考えを否定する。今回の件、間違いなく『強欲』の魔王は表に出てくることはないと確信して。
「あの方が今回の件で出てくることはないでしょうね。私が仕掛けたことだし、マモン様なら間違いなく「お前が求めた“欲望”の為のリスクだ。
「ああ、言いそう言いそう。というか絶対言うね♪どんな手段も許すけど“欲望”にだけは真摯だもん、あの王様♪」
「昨日までの私だったら何を気取ってるのかしら、くらいには思うわね。今の私にとっては理解出来る考えだけど」
自分達の王である『強欲』の魔王マモンが言うであろう光景を同時に想像し笑う。最強の魔王であり、自身の部下である悪魔達に甘い所がある『強欲』。だがそんな彼も“欲望”を得る為に行った行動の責任は絶対に本人にとらせる。それが彼の部下が天使達に殺されてきても報復行動に出なかった理由だった。
「しっかし、アンタマモン様のこと嫌ってなかったっけ♪あの方のことを笑いながら話すとか大分変ったみたいだね♪」
「満たされる方法も分かっていなかった頃の私にとっては目障りそのものだったもの。言ってることの一つ一つが神経に鑢をかけてくるみたいで。だけど、今はあの視野の広さに驚嘆と畏怖を持ってるわ。私が私自身の“欲望”を見つける方法をあの方は理解していた。どこまで見えているのか、世界がどう映っているのか。少しだけ興味が湧くわね」
「それでも少しなんだ♪忠誠心が足りないんじゃないのぉ?」
「悪魔なら自身の“欲望”を最優先にするのは当然でしょ?私はようやく見つけたこれを大切にしたいのよ。でもまぁ、彼に関係しない計画なら協力してもいいかってくらいにはなっているわ。というか、本心から全身全霊であの方に仕えてるのって『病孤涙苦』と『斬念死極』くらいじゃないかしら。あの二人は“欲望”の性質からそういった面が強かったから」
「……………………」
『病孤涙苦』の名前が出たからかアネモネが眉をひそめた。不機嫌になったわけではなく、他者から彼女のことを聞くというのが珍しく、どう反応していいのか分からなかった。結局何も言わずに手元にあったジュースを飲み込み重い溜息を吐いた。
「で、結局どう動くわけぇ?色々と言ってたけどさぁ、ライトガーデン達を追い詰めた以上もう天界組織は動き出すでしょ?時間をかければかけるほど不利になると思うんだけど?」
「ええ、それはその通り。否定しきれないわ。そして今動けるのは貴女くらい。私の手駒だった『盗炎結偽』はあの出来損ないを見てから姿を消してる。この街にも色々と仕込みはしているけどそれでも戦力は足りないと言っていい」
「つまり時間は敵ってこと。ドッペルの仲間達だって馬鹿じゃない。この状況になったらもう天界とも渡りをつける可能性だって高い」
「ええ、その通り。そうなれば私達の負けは必至」
艶のある、見る者を魅了する蠱惑の口元を笑みの形にしてアドラメレクは嗤う。これから全てを自身の“欲望”の為に利用する悪魔は、何もかもを焼き尽くしてもなんの感慨も覚えないだろう。ただ一つ、あの少年を手に入れること以外は全て些事となっているのだから。
「だから天界だろうと彼の仲間であろうともうどうしようもないくらい全て燃やしましょう。――――日本中に仕込みは終えてるもの。後はただ、着火するだけ」
『愛求堕喰』は嗤う。自身が望む未来が近いことを確信して。
メインキャラそれぞれに合う曲とかたまに考えてる。
リルナにはカリギュラオーバードーズの「おんぼろ」がよく似合うなぁとか思ってます。
今回の曇らせは良かったか?
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最高だった
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良いと思う
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もっと時間をかけて欲しい
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絶望が足りてない
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もっと序盤で見たかった