【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
『炎天渇奪』アドラメレクに生み出された下級悪魔、リョウによりリルナと名付けられた彼女には6人の姉妹がいた。リルナを含めた7人の下級悪魔は『炎天渇奪』によって生み出されたがその中でも例外が長女と末妹だった。長女はプロトタイプとして妹達よりも二年以上前に生み出され、リルナは完成品として長女から数えて四年後に生み出された。要するに長女、五つ子、末妹という形で彼女達は生み出されたのだ。
「僕達はあの方の道具だ。あの方の考え次第ですぐにでも殺されてしまう。だから反抗的な態度を見せてはいけないよ。そうすれば僕達は生きれる。生きていけばきっと未来を手に入れることが出来るはずだ」
長女は常日頃からそう言って妹達を抑えていた。上級悪魔に下級悪魔が立ち向かったところで死体しか残らない。いや、アドラメレクの能力を考えれば死体すら残らないだろう。そんな末路を彼女は妹達に迎えさせたくなかった。
長女である彼女はアドラメレクの指示通りに働き続けた。上級悪魔との取引に“欲望”の蒐集、研究の流れの補助。それらをこなしていくうちに彼女の位階は中級悪魔へと上がっていた。
「お前に名前を与えるわ。ベルサシエ、今後はそう名乗りなさい」
「拝領いたしました。これより自分はベルサシエを名乗ります」
アドラメレクから名前を与えられ、本拠地から離れることも増えていった。そのことをリルナは寂しがったがそれを埋めてくれるように五人の姉が可愛がってくれた。それぞれ名前も与えられていなかったから数字で互いを呼ぶ。
「7番、姉様がぬいぐるみを買ってくれたわ」
「チョコが好きなんだね、7番は」
「影に潜るのは7番が一番上手い」
「7番、外に出たら何かしたいことある?」
「あー、人間の“欲望”ってどんなのか気になるなぁ。7番はどう思う?」
名前を勝手に着けたりすれば生みの親に何をされるか分からなかったから。それでも呼ぶ声には愛情があり、それを受けていた
「お前は失敗作よ。何故お前のようなのが生まれたのかしら」
「……はい、すみません」
他の姉妹と違いリルナの目は左右で色が違った。アドラメレクのクローン、模造品として生み出されたのにも関わらず色の違う目はアドラメレクを苛立たせる。何が欲しいのかを探し続けている彼女は常に怒りを抱えていた。何を集めても何を手に入れてもどれもこれも間違いであり正解はどこにもない。そんなアドラメレクにとって完成品として作ったはずなのに自分と違う目を持つリルナは恥であり、怒りをぶつける相手にしかならない。
「どいつもこいつも影を操る能力ばかり。何故お前達は私と同じ
何度も踏みにじられた。何度もぶたれた。何度も炙られた。上級悪魔にとっては遊びであっても下級悪魔にとっては致命傷になりかねないものばかり。
それがリルナにとって最悪の事態を呼び込んだ。
「お前達を殺処分するわ。もういらないから」
その言葉を告げられ、拠点ごと燃やされた。長女であるベルサシエがいない時間に姉妹は6人まるごと閉じ込められ、脱出の術もなく炎をつけられた。下級悪魔の力では扉一つ壊すことは出来ない。生み出された施設の中で彼女達は死ぬ――――はずだった。
「7番は影の中に入ってなさい。この炎は私達を燃やし尽くすまで消えないけど、逆に言えば私達が焼死すればきっと消えるから」
「なに、言ってるの……?か、影に入るならアタシだけじゃなくて姉さん達も!!!」
「そうするには“欲望”が足りないだろ。ベル姉が持ってきてくれたからそこそこ余裕あるけど、6人分はない。だったら一人にまとめた方が効率的だ」
「そうそう、3番の言う通り。それでこの中で一番影に潜るのが上手いのは6番なんだから」
「最後の最後くらいは姉らしいことしたいしね」
「ちゃーんと生き残るんだぞ」
そう言われてリルナは5人の姉に影の中に押し込まれた。影から出ようにもその当時のリルナは影の中を移動することなど出来ない。影の上には姉達が重なったことで出られなくなった。影の中から外の様子を見ることも出来ずに、ただ彼女は泣きながら影を叩き続けた。手から血が出てもそれにすら気付かないくらいに必死で。
「…………………………」
結局リルナが外に出ることが出来た頃には姉達の姿は何もなかった。骨すら残すことなく5人の姉は死に絶えた。彼女達が生きた痕跡は燃え尽きた研究施設と共に消え去って、生き残った二人の姉妹の記憶の中にしかなかった。
「アタシが、生まれたからだ」
何もなくなった荒野で一人呟く。完成品であり、いざという時アドラメレクのスペアボディになる為に生み出されたのにもかかわらずその目が違う。リルナが生きている限りアドラメレクは己の失敗を見続けることになる。だからもういらなくなった施設ごと全部燃やし尽くした。死んだかどうかを確認しないのはそれを見ることさえも厭ったから。
「アタシのせいで、姉さん達が死んだ」
涙も枯れ果てたその場所でリルナは立ち尽くしてその事実を魂に刻み込む。姉達の死の原因は自分なのだと。例え事実が違ったとしてもリルナにとってはそれこそがまぎれもない真実になった。己の存在こそが愛する姉達を殺したのだと。
「7番!!?」
「ベル、ねえ……?」
「あ、ああ……!!なんで、こんな……僕がいない間に何が!?」
唯一姉妹達の中で有益だと判断されたベルサシエが与えられた仕事から戻ってきた時、そこには一人の妹以外全てが消え去った後だった。自分が働き、有益な存在であり続ければ妹達は生存できる。そんな根拠のない考えで中級悪魔になった彼女に残されたのは一人の妹だけだった。
「これが、これがその報いか!!!必死に、死にかけてまでやってきたことの結果がこれか!!?僕の妹達を奪うことが僕に対する報酬だとでもいうつもりか『炎天渇奪』ッッッ!!!!!」
「ベル姉……」
怒り、青い炎を纏ったベルサシエは怒る。妹の亡骸すらないその光景を見て嘆く。自身の愚かさを呪い叫ぶ。自分を作り出した生みの親に殺意を湧き上がらせて。
「7番、僕は今から『炎天渇奪』を殺しに行く。ほぼ間違いなく死ぬだろうけど、それでも相打ちにまで持っていく。だから君は生きるんだ、いいね?」
「アタシ一人じゃ、生きれないよ。だって、なんにも分からないんだもん」
「大丈夫。外には独立した中級悪魔がいる。僕に何かあった時、妹達を任せられるように契約もしてある。その悪魔に従って生き方を学んで生き残るんだ。悪魔にとって契約は絶対だから裏切られることもない。対価はもう払ってあるからね」
「ベル姉も一緒に行こ?」
「……ごめん、それは出来ない。僕はもう己の“欲望”を定めてしまった。この怒りを晴らすことを第一にしてしまった。7番といたら、いつか君も燃やし尽くしてしまうことになる。僕に君を殺させないでくれ」
「…………うん、分かった。嫌だけど、分かったよ」
泣きそうな顔でそう言われて、リルナは頷く。今まで散々世話になり、守られて来た。守ってきてくれた姉の最後の頼みくらい聞かなければならないと我儘を抑え込んで彼女は自分を納得させた。
「さようなら、7番。君のこれからに幸せがあることを心から願っている」
「うん。ベル姉も頑張ってね」
最後の姉はそう言って飛び立った。『炎天渇奪』に勝てるわけがないとベルサシエもリルナも理解しながら。だからこれが生涯最後の会話になるはずだった。
「『炎天渇奪』……アドラメレク……」
リルナは全てを失った。リルナは全てを奪われた。大切な姉を、そのまま続けばいいと思っていた日常も。その全てを燃やし尽くされて何も残らなかった。虫けらのように踏みにじられて影も形も残らず一人ぼっちになった。
「お前は、アタシが殺す」
その殺意だけがリルナを生かした。それ以外を望むことはない。かつて臨んだ平穏は奪われたから。だけど下級悪魔である以上自分は弱い。今は絶対勝てないと断言出来る。勝負にすらならずに無造作に放たれる炎で即死するだけだ。だから人間の“欲望”を集めることを決めた。顔に笑顔を刻み込んで漏れ出そうになる殺意を抑え込み、人間から奪った“欲望”でいつか望みを果たす為に。
「これからよろしく、リルナ」
そして彼女は、
評価……評価クレメンス……。
あとお気に入りと感想も(強欲)
今回の曇らせは良かったか?
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最高だった
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良いと思う
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もっと時間をかけて欲しい
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絶望が足りてない
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もっと序盤で見たかった