【三章完結】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
人間にも天使にも悪魔にも対応を変えることを面倒だったので『嫉妬』に対してもちゃんと会話したりコミュニケーションしたり出来ていたので。
魔王の中で仲が良かったのはこの二人と『暴食』『憤怒』のコンビくらいです。
それ以外は全員全方面に死ねばいいのにと思ってる。『憤怒』と『強欲』に至ってはどっちも「頼むから死んでくれ。俺の知らないところで死んでくれ。死体を見るのもキツいんだよ」になってる。そりゃ欲しいもの全て手に入れないと満足できない『強欲』と、それ全部要らねぇぶち殺すしてる『憤怒』じゃ相性が良いわけがないのだ。
八月、夏休みという学生にとっての天国が訪れた。それはついこの間『炎天渇奪』『永死殺総』との決戦を乗り越えた僕達にも変わりなく来た。戦いとバイトがない日くらいは僕もまた学生らしく惰眠を貪っていたいと思うものだ。
「ん……。なんか、暑いな……」
夏なので当然クーラーをつけて寝ていた僕だったが何故か寝苦しくなって重い瞼を開く。掛け布団は薄いものを二枚、暑さを感じる要因などないはずだ。カーテンの隙間から光が入っていない事を見るところ時間だってまだ日が昇っていないだろう。
「スマホ……スマホ……ん……?」
「すぅー……すぅー……」
時間を確認しようとベッド横にある机に置いてあるスマホに手を伸ばし、身動きが取れないことに気付く。なんというか、全身に柔らかいものがくっついている感覚がある。未だに意識が覚醒しきっていない状態のままで首を横に倒せばそこには白銀の天使がいた。
間違えた、天使かと思ったらエルだった。いやエルは種族天使なんだけどそういう意味ではなく美少女過ぎるという意味で天使という感じで。誰に何の言い訳をしているのかと自分でも思うがそれくらい寝起きの頭は混乱しているのだ。
僕が身じろぎしたからか絡みついているエルもまた目を開く。トロンと酔っているような紅い目がこちらを見つめている。不思議な魔力のある宝石のように見つめ続けることを抗えない魅力がその目にはあった。
「ん……むぅ……?もう、あさですか……?」
「いや、まだ夜だよ。ほら、まだ寝てていいから」
「そう、ですね……?それじゃあ、リョウ君もいっしょにねましょう……」
僕の言葉に納得したのかそのままエルは目を閉じてまた小さい寝息を立て始めた。クーラーが付いている上、エルの体温もあまり高い方ではない。とはいえこの暑い夏に人の体温が絡みついているというのは中々に寝苦しいのだがそれを気持ちよく眠っているエルに対して言う度胸は僕にもない。
「それに、まぁ……言い方悪いけど慣れたからなぁ……」
そう呟きながらここ数日を思い返す。あの三体の上級悪魔との戦いが終わり互いの正体を知った結果エルから遠慮が消えた。それ自体は大変喜ばしいことでもあるし彼女の我儘は可能な限り叶えたいのだが流石に夜一緒に寝るというのは心臓と“欲望”に悪い。まだ全然慣れていないし今後も慣れる気がしないので当分はこのままだと思う。
必死に我慢するこちらの身にもなってほしいものだ。分かっていてやっている節があるから言っても無駄かもしれないけど。というか好きな娘に抱きつかれて眠るとか言う男の夢からわざわざ抜け出そうとは思えないのでこれは僕の負けだろう。
僕もまた男なんだなと苦笑しつつエルの柔らかい肢体を抱きしめながら再び瞼を閉じる。男故の暴走をしてしまいそうになるが幸運だったのか眠気の方が勝ってくれたようで夢の世界に落ちることが出来た。
◆
暑い日差しが照り付けている中、気持ちのいい冷たい風が維持されている生活空間。その快適な状態を維持してくれているシルフィは風の能力で出来上がった朝食をテーブルに運んでくれている。作るのは僕の役目だが運ぶのくらいは手伝うと言ってくれる。そういうところも好きだ。
エルもまた席についてテレビの電源を入れている。毎朝同じ時間に同じように一緒に生活する。それだけで嬉しく感じるのは僕がチョロいからだろうか。
「「「いただきます」」」
手を合わせ食事を始める。朝は洋食派なのでメニューもそれに合わせてある。たまに二人のリクエストに合わせてご飯やお味噌汁を用意することもあるけど。
ちなみにリルナは外に出てくることが出来るようになった今でも基本僕の中にいる。復讐やお姉さん達との別れを告げられたことから彼女本来のぐうたらさが出てきたのか今もまだ寝ている状態だ。今まで大変だったから僕はそれでもいいのだがヒルダからはもう少しちゃんとするように会う度にお小言を言われている。それでも治す気はないようだけど。
「……アンタ達距離感近い、近くない?」
「そうですか?」
「前もこんなもんだったと思うけどなぁ」
「肩が触れ合う距離でキッチンで並んでるとか前はしてなかったでしょ。もう少し距離空いてたわよ」
リビングに並んだコンソメスープ、目玉焼きやパン、ジャムなどを思い思いに取りながら会話をするこの時間が愛おしい。そんな時間にシルフィはジト目でこちらを見ながら溜息をついている。
「別に我慢しろとは言わないけど……。いやエルに関しては言わせてもらうわ。アンタ、リョウの部屋で毎日寝るのやめたら?」
「嫌ですけど」
「即答で断言しないでくれる?」
「嫌ですけど」
「同じこと言わないで??」
「嫌ですけど」
「会話してほしいんですけど???」
「まぁまぁ、僕は気にしてない。というより嬉しいから」
「リョウ君が嬉しいなら問題ないですね、ハムハム」
「遠慮ってもんがなくなってきたわねコイツ……」
天使であることを隠していたというのはエルにとって非常に強いストレスだったようだ。そこから解放された現在、エルの表情はコロコロ変わるようになっていた。以前は意識して表情を動かそうとしていなかったのではないかと思うくらいに自然と笑ってくれる。それが僕はとても嬉しい。
「世間はこうもめまぐるしく忙しくなっているってのに本当呑気よねぇ……」
「まぁ、正直僕達に出来ることはないからね」
「大変なのはミカエル様達であって私達ではありませんからね」
「当たりが大分強くなったわね。まぁ、遠慮しないってことから良い傾向だと思っておこうかしら」
「事情があり、必要があったというのは分かりますけどそれはそれこれはこれです。記憶を書き換えられたことに関しては謝罪されない限り許しませんよ」
「謝られたら許すだけエルは優しいと思うよ」
エルの育ての親でなかったら僕は謝られても許せるとは思えない。大切な人との出会いを忘却させられていたということがどうしても気持ち悪く感じる。認識改変でエルに似たようなことをされて幼馴染として一緒に暮らしていたことに関しては何も思わない辺り僕のこういうところは不平等と言うか、もろに好感度が出てくるところに呆れはする。直せるとも思えないけど。
「だけどミカエル様だってこの状況は予想外でしょ」
「あー、まぁこれに対処するのが難しいというのはよく分かるよ……」
そんな僕でさえも現在の天界組織に対しては同情するくらいには忙しそうだ。なにせニュース番組で『永死殺総』の凶行が映し出されたのだ。しかも生放送でテレビだけでなくネットまで使った上での放送。人間社会のことを知っていれば一度でもネットに流された情報を消すのが難しいかは分かるだろう。
『ですからこれはただのフェイクニュースですよ。現実にこんなことがあるわけないじゃないですか。悪魔だの天使だの馬鹿らしい』
『では貴方はリアルタイムで流れていた映像をここまですぐに加工出来るというんですか。そもそもこの自称悪魔の言っていた通りのことを経験したと現場にいた警察官たちは語っているんですよ?』
『いえ、ですからそれは』
『それにテレビ局でこの放送を決定した人物たちがこの事件の後すぐにこと切れていたのが発見されてるんです。現実なんですよこれは!!!』
ニュース番組に出演しているゲスト達がこの件について言い争いをしている。なおフェイクだとか加工された映像だとか言っているのはこの騒動を出来る限り穏便に鎮めようとしている天使である。認識阻害や改変にも限界はあるようでもうここまで来たら隠しきるのは不可能というのが我が家の誇る上級天使二人の見解である。
「『永死殺総』がやったことだけじゃなくて各地でも悪魔の被害が出てたのが痛いのよねぇ。もう誤魔化すとかそういう事が出来る状況じゃなくなった以上さっさとばらした方がいいと思うけど」
「認識阻害で出来たことは私やリョウ君の個人特定を防ぐことくらいでしたからね。街の修復などは問題なく行えましたし死者も限りなく少なく出来ましたが被害は出ましたし難しいですね」
「そんな難しい状況なのにこんなのんびりしてていいのかなぁ……?」
「そうは言ってもこうなった時点で私達に出来ることはありませんからね。ミカエル様からもここ数ヵ月で上級悪魔を複数体倒したことから休みを取れとも言われてますから」
「メディアに伝手のある私ならともかく完全戦闘班だったエルに出来ることはないからいざという時の為にも休んでもらうのは私も賛成よ」
天使の社会にも色々とあるようだ。情報源がリルナや教授達関連しかなかったので天界組織に関しては知らないことが多々あるのでこういう情報は貴重でもある。一応教授に保護されている天使達もいるのだが残念ながら上層部とは縁もゆかりもないという事らしい。
これからどうするか、どうなるのか。考え事をしていた僕の肩に隣に座っていたエルの頭が乗せられる。白銀の髪が鼻元をくすぐり、花のような甘い臭いが脳をとろかしそうになる。
「また、難しい顔をしていますよリョウ君」
「えっ、あ……ご、ごめん」
「いいですけどね。そういう放っておけないと思ってしまうところも好きです。でも隣にいる私のことをちゃんと見てくれないところは嫌いです」
「どうすればいいかな?」
「……じゃあ、もう少しこうさせてほしいです」
甘い声音でされるおねだりに屈して僕はそのまま動けなくなる。以前よりスキンシップも距離感も近いエルに最近の僕はたじたじだ。ただしやめてほしいというわけではなく思わずにやけるくらいには幸せである。僕も男ということだ。
「……やっぱり距離が近すぎない?」
シルフィの声が聞こえていないようにエルは綺麗に微笑んだ。
評価&感想及びお気に入りオネシャス!!!
イチャイチャしかしないパートが人気なのか誰か教えてくれ