【三章完結】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
何が笑えるかって自分も同じ気持ちなのが凄く面白いです。
吹っ切れたからって攻めすぎじゃねぇかなこの娘……?
燦々と照り付ける太陽の下、日傘を使って二人で歩く。去年から使いだした物だがうちには一本しかなかったので現在相合傘状態である。肩が触れ合うくらいに近くにいるエルは前に買った白いワンピースを着ている。その白銀の髪も合わさって白一色で統一されている姿はとても神秘的で綺麗と言えよう。ただ一つ、真っ赤になっている顔を除いてだが。
「忘れてください……」
「嫌だけど?」
「リョウ君、後生ですから忘れてください……。お願いします……」
「絶対嫌だけど???」
「リョウ君のいじわるぅ……」
共に入ったお風呂から出た後一緒に出掛けている現在までずっとこんな感じである。たぶん自分がやったことに関して黒歴史化してるのだと思う。勢いのまま突っ走って後悔する何てことあるあるだからその件に関してはしょうがないと思う。
「でもあの素晴らしき光景を忘れるなんてもったいないこと出来るはずがないんだよなぁ。絶対忘れない。百年経っても覚えてる」
「うぅぅ……!!なんで、なんで私はあんな大胆なことを……!!なぜ、どうして……!!」
「僕は嬉しかったよ?また入ろうね!!!」
「リョウ君はどうしてそんなスッキリした顔してるんですか!?」
「色々な意味で燃え滾りそうな“我欲”を“真愛”で無理矢理抑え込んだらなんか反転した感じ?欲も過ぎると毒になるから抑え込める方法あると助かるよね」
これに関しては割と死活問題である。“欲望”の権化たる悪魔達を見てると分かるがそれを抑え込める何かがないと大抵突き抜けてしまう。今まで戦ってきた上級悪魔達なんかがいい例である。アイツらは自分が破滅する、誰かに恨まれるなんてことを一切考えずに他者を巻き込んできた。
僕はリルナや教授達が言うくらいには“欲望”が強い。鈴ちゃん曰く魔王が使うという“我欲”という力も、最上級天使が使う“真愛”にも目覚めてるとのことだ。どちらも使い方を間違えれば人間社会を飛び越えて世界の敵にすらなりえるとのことだ。
「“真愛”は分かる、けど。なんで“我欲”まで持ってる、の……?」
心底理解できないという鈴ちゃんの顔は正直見物だったが僕自身にも分からない。分からないことに思考を割き続けても良いことはないというのが持論なのでそこはおいおい考えていくことにする。大切なのは無限の欲を抑えられる愛があるということだ。真っ赤になっているエルを抱きしめたいという想いを我慢できてるし。流石に人の往来がある場所でそれは無理だ。
「そういえばどこに行くんですか?」
「あれ、言ってなかったっけ?でももうすぐ着くからそこまでお楽しみってことで」
「はぁ……?」
他愛のない話をして笑って、隣り合って歩いていること5分。ようやく目的地が見えてきた。そこはとあるコスプレ喫茶店。店員さんがコスプレをするのではなく、お客さんにコスプレ衣装を貸し出すというあんまり見ないタイプのカフェだ。僕も正直とある人との縁がなければ知らなかったであろう隠れた名店だと思う。
「いやぁ、やっぱりクーラーがあると違うなぁ。外とは全然違って涼しいや」
「日傘のおかげで大分マシでしたけどね。熱中症には気をつけましょう。でもお洒落なお店です。静かな感じが私、好きです」
「あら……?あらあらあら!いらっしゃい、まさか来てくれるなんて思わなかったわ!!」
「えっ、あ、あなたは……」
そこにいるのはあのショッピングモールで名物店員をやっていた筋骨隆々の女性口調の店員さん。我妻源才さんその人だった。エルもここで見知った人を見ることになるとは思わなかったのか口を抑えて驚いている。
「お久しぶり、って言えるかな?まだ一ヵ月も経ってないし……」
「私くらいの年になると一ヵ月なんて本当にすぐだから久しぶりなんて感覚はないわね。でも来てくれて嬉しいわ、歓迎しちゃう」
「え、あ、えっと、ありがとうございます」
エルが困惑しているのも無理はない。なにせこの人は『炎天渇奪』によって“欲望”を奪われていた一人なのだから。智弘君が奪われた“欲望”を取り戻したことを確認していることから全国の奪われている人達のもとに“欲望”が返っていることは把握できているが見知った人、だけど連絡先も知らない人の事を個人的に調べるのはエルには難しいだろう。知人が少ないからか、そういう人達をエルは特に心配しているのを知っているからここにきて安心させたかったというのもある。
だけど僕の考えは甘かったようだ。エルは喜んではいるが少し戸惑っている。確かに考えてみればあのショッピングモールでの戦いで守れなかった人達の一人である店員さんに何の説明もなく合わせるのはいきなりが過ぎたかもしれない。
(先に説明してから来るかどうか聞いた方がよかったのかもしれないなぁ)
サプライズと言うのは失敗すると悲惨なことになるという教訓を得るも今はそれよりも先にこの場を何とかしなければならない。そう思った時には店員さんがエルに頭を下げていた。
「えっ……?」
「ありがとう。貴方達には本当に感謝してるわ。貴方達のおかげで私はまたこうやって好きなことを仕事にすることが出来ている。着飾ったお客さんの笑顔が見たいって思えるようになっている。だから、本当にありがとう」
「あの、そんな。私はそんな大したことなんて」
「ニュース、見たわ。あの時戦っていたのは貴女でしょう?」
「っ!!」
『永死殺総』との戦い、その一部をカメラは捉えていた。認識阻害によって誤魔化せているのはあそこに映っている二人の素性くらいだ。だけどそれも印象に残ってしまったならどうしようもないくらいの力しか今の阻害にはない。こうして見知った店員さんが気付くくらいには弱まっている。
「貴女が何者とか、そういうことは聞かないわ。そんなことは関係ないしどうでもいいの。ただ感謝を伝えたかった。ありがとうと。それしか出来ないけれど、それだけでもしたかったから」
「……いいえ。お礼には及びません。私はただ自分の使命を果たしただけです」
「あら。でもそれがお仕事でもお礼を言われることは嬉しいと思うわ。私だって服を買っていくお客さんにお礼を言われたら嬉しいもの。貴女が初めてお店に来てくれた時、その帰りに言ってくれたのを覚えているもの」
「それでも、です。私は私自身の考えで戦った。それに貴方達の奪われていた想いを取り返したのは私ではありませんから、そのお礼を受け取るわけにはいきません」
エルは頑なにそのお礼を拒絶する。それを受け入れるのが怖いのだろう。今まで人知れず戦ってきた彼女にとってお礼を言われるなんて初めての経験だ。初めてを怖がる人はそれなりにいる。特にエルはその傾向が強い。シルフィやリルナはその性格もあってか受け入れるのも挑戦するのにも積極的なのだが。
でも僕は口出ししない。だって今のエルは昔とは違うのだから。お礼を拒絶するだけではない。その先に進めるだけの強さを今のエルは持っている。そうじゃなかった風呂場に乱入とか一緒に入浴とか出来るはずもない。
「それでも……それでも、お礼をしたいというなら、その……。また、私に似合う服を、選んでくれませんか?」
「あら、私でいいの?隣の彼君に選んでもらった方がいいんじゃないかしら」
「……リョウ君を、驚かせたいです。それで、褒められたい、から。お願い、します」
「あらあらあらあらあらあら!!!」
俯いているエルと隣にいる僕を交互に見ながら満面の笑みで何かを察した店員さんは物凄く上機嫌になっていた。多分色々とバレたのだろう。それだけの観察眼があると思わせる説得力がこの人にはある。
「あとリョウ君に似合う服を色々と試したいので協力してほしいです」
「ええ、ええ!!協力するわ!!ああ、お客さんにはこちらのカタログから衣装を選んでもらうことになっているの。こちらなんかどうかしら?」
「ほうほうほう、中世の貴族をイメージした服ですか。フムフム踏む、これは、なかなか……」
「そちらを選ぶなら貴女はこちらの女性服をお勧めするわ。写真撮影も可能だから色々と試してみるのも」
「是非是非お願いしたいです。こういうところ、私初めてだから色々と試したいです!!」
「私もそちらの彼君にはポテンシャルを感じるから試したいところだったの。今日はいい日になりそうだわ!!!」
テンションが爆上がりしてる二人を見てここに来たのは早計だったかもしれないと思った。この瞬間僕が着せ替え人形になることが確定したようなものだ。
だけど、まぁ。それでもエルが笑っているのであれば僕も受け入れることにしようと思う。
エル編は恐らく多分あと二話で終わるかと思う。
こ、これに続くのか影悪魔と風天使……!?大丈夫か……!!?
そして思った以上にイチャイチャ編が長くなりそうだぞこれ!!!?
評価&感想及びお気に入りオネシャス!!!
これまでの章でお気に入り
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一章 愛と欲のカタルシス
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二章 歌と病のラプソディ
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三章 希望と炎とフラグメント
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四章 天使と悪魔とラブコメディ
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章ごとのバトルシーン
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章ごとのヒロインタイム