【三章完結】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
夜、夕食もお風呂も済ませて後は寝るだけになった時間。昼に入った時とは違い夜はエルが入ってくるなんてこともなくいつも通りの一人風呂だった。それが当然だし疲れはそちらの方がとれるのだがなんだか寂しくなってしまった僕は順調にエルの作戦に嵌っているのだろう。
「ふぁ~~~……。アタシもう寝るねー。昼に騒ぎすぎちゃって疲れちゃった……』
「うん、おやすみリルナ」
ここ最近は夕食の時間くらいから実体化して現実でゲームをしたり動画を見ているリルナも寝る時は以前のように僕の中にいる。黒い光になったリルナが僕の中に入るのを見届け寝息が聞こえてくるのを確認し、部屋の窓を開く。
「…………」
今日は。いや今日もになるけれど楽しかった。みんなでわちゃわちゃ騒ぎ、三人の笑顔を見れた。間違いなく夢見た日々だけれど、それ故に少し怖くなる時もある。こうして一人になったと実感すると特にそれが大きくなる。
「星が、綺麗だな……」
手を伸ばせば掴めそうなほどよく見える星々。当然それは錯覚で手を握り締めても何一つ掴めない。何故か今日はそれがとても寂しくてもっと近づきたいと思った。
“我欲”で強化した肉体で窓から外に出て庭に着地する。靴下越しに触れる草はつんつんしていて少しくすぐったかった。それを気にも留めずに屋根を越えて空までジャンプで上る。リルナの協力がなくてもこれくらいならば出来るようになった。なってしまった。
「当然だけど全然掴めないなぁ」
全力で跳べば雲にも届いてしまう。それでも星にはまるで届かず、身体に感じる浮遊感とは裏腹にこれだけの力を個人が使えてしまうという事実に今更ながら少し肩が重くなった。エルと出会ったこと、リルナと契約したこと、シルフィを助けたいと思ったこと。今までやったことに何一つ後悔はない。それでもこれからも戦い続けることに少し怖くなる時がある。
「エルもシルフィもこんな気持ちだったのかなぁ……」
落下しながらそう呟く。近づけていた星が急速に遠ざかっていく。あの星々が今の夢みたいな日常のようだと勝手ながら思ってしまった。平穏は長く続けば続くほど次の戦いと死への恐怖が大きくなる。ついこの前死にかけたからだろうか。どうにもナイーブな気分になってしまう。
「こんなところ、エル達には見せられないからなぁ……」
「――――どんなところを見せられないんですか?」
その声と同時に落下していた身体が止まり空中に浮かぶ。見て見ればクッションのように光が集まって僕の身体を受け止めていた。声の方を見れば白い翼を広げた白銀の天使がそこにいる。
「庭から音がしたと思ったらリョウ君が凄く高く跳んでてびっくりしてすぐに追いかけてきちゃいました」
「……もう少し飛び出し方、考えた方がよかったかも」
まさかみられていたとは思わず苦笑いする。こういう弱いところは誰にも見せたくないし見られたくはない。僕もまた男なのだ。好きな娘にはカッコいい所を見てほしいと思うのはそこまでおかしいことではないはず。
「今日はとても楽しかったですね」
「えっ?あ、うん。僕も楽しかったよ」
今見たことに何か言われるのではないかと思ったところに出された話題に困惑する僕の隣に座りながら笑顔で彼女は続ける。
「悪魔娘もシルフィも大盛り上がりで、色々と試してましたよね」
「……うん。普段着ないような物も着てたよね。シルフィの方はアイドル衣装みたいなの着てたけどやっぱり着こなしが凄いと思った。凄い自然体だったし」
「悪魔娘はちょっとえっちなのを着てましたけどね。バニーガールと言う露出度の高いもの……リョウ君も凄く見てたの知ってますよ?」
「あれは見るでしょ。見なきゃ失礼まであるよ」
「……まぁ、確かに凄いすりついてましたから見るのはしょうがないですね。デレデレしてたのはちょっとおこですけど」
「でもエルも楽しんでたよね。パーティードレスみたいなのから動きやすい男装とか」
「リョウ君が一番お気に入りだったのはどれですか?今度、二人の時に着てあげますよ?」
「メイド服。ロングスカートの奴」
「即答でしかも食い気味ですね……」
「だって凄く似合って可愛かったし。ご主人様って呼ばれた時ちょっと夢に出てきてほしいくらいだったよ」
「……そんなに気に入ったならまた着てあげます。今度は二人の時で」
「それは暴走しそうになるからやめてほしいかなって。“欲望”も抑えられないかも」
僕にとってそれは決して起こしてはいけない事だ。“我欲”により強化できるようになった肉体は能力なしでも悪魔や天使とも戦えるレベルになっている。そんな僕が欲望のままに動き出したら絶対に迷惑をかける。理性で抑え込んで現実にしてはいけない事。
「いいんですよ。抑えなくても。その時は私が受け止めますから」
光のクッションに座る僕の手を取り真っ直ぐこちらを見つめながら真摯に伝える天使。どこまでも真剣で覚悟を決めているようなその目が僕を見ている。気まずくなって目を逸らしたくなるもこの少女の前でそんな格好悪い事は出来ない。その意地だけで見つめ返す。
「リョウ君の欲が凄いのは分かります。悪魔どころか魔王の使う“我欲”にまで発展している以上きっと私が想像できないくらいの衝動になっているとも」
「大丈夫だよ、僕はちゃんと抑えられてる」
「はい、それも分かります。今日もリョウ君は自分の“欲望”を抑えて私のお願いを聞いてくれました。一緒にお出かけするのも、一緒にお風呂に入ったことも。リョウ君がそれを喜んでくれるのも分かっています」
握られた手に込められる力が強くなる。決して離さないように白く細い指が絡んでくる。エルは今何を思っているのか僕にはわからない。だけどこの手を離してはいけない事だけは分かる。だから僕もまた彼女のその手を掴んだ。
「我慢は大切です。私達みたいな普通の人からしたら恐れられるような力を持っているのならそれは当然です。だけどだからと言ってそれでリョウ君が苦しむのを私は見たくない」
「……僕は、大丈夫だよ?」
「そんな自分も騙せないような嘘はやめてください」
駄目元の嘘もバレてどうしようもなくなる。いつのまにここまで理解されていたのだろうか。あまりに強すぎるエルに惚れ直してしまいそうだ。
「私は、リョウ君のカッコいいところばっかり見てきました。そのリョウ君を好きだと思ったことは本当です。でも、だからと言って弱いところを見たくない訳じゃないんです。全部は無理でも貴方のことをもっと知りたい」
「なんで?僕は見せたく」
「貴方とこれから一緒に生きたいから。ずっと、この生が終わるまで」
言葉を遮られて伝えられたのは夢みたいな、だけど現実になりそうな未来の話。段々と高度が下がってエルの部屋の窓の前に降りてきた。彼女はそんなことも気にせずにただ告げる。
「そんな長い時間隠されているなんて私は嫌です。だからこれは私の我儘。リョウ君の、男の子の強がりを無視した言葉です。私の想いです。私の“欲望”です」
握っている手とは逆の手で頬をなぞられる。ぞわぞわすると同時にどうしようもなく彼女を求めている欲望があり、それを表に出したくないと思って。
「リョウ君、もう我慢しないで」
耳元で囁かれた甘い音の言葉は僕の我慢を引きちぎるには十分すぎた。窓からエルの部屋のベッドに転がり込んだ僕は自分を抑えることも難しくなって
「リョウ君を感じさせてください」
エルの言葉に抵抗することもなくそのまま夜を超すことを決めた。
◆
「やってしまった……」
「気にしないでって言ったのに」
理性を失った夜が明けて朝日が昇りかけている。共にベッドにいるというのはここ最近は珍しくなかったがそれでも互いに素肌のままというのは今までなかった。あとベッドのシーツとか洗濯しないと絶対に臭いとか着くのが確信できる。
「スッキリしましたか?」
「うん、それは……したけど」
とても良かったというのが本音ではある。今まで我慢していた物がなくなり心に巻き付いていた鎖が消えたような清々しさを感じる。だけどこれ放置したら猿になりそうでいやだ。格好悪いにも種類があるけどこれは絶対体現したくない類の格好悪さだ。
「また求めてください。また見せてください。貴方の全て、私が受け止めるから」
「…………たまになら、ね」
誘惑してくる天使に出てくる抵抗はその程度。そんなあってないがごとき言葉しか出せない。何がおかしいのかエルはクスクス笑っている。
「リョウ君の強がっているところ、可愛いですよ」
「敵わないなぁ……」
これから一生、彼女には勝てないのではないかと思わされる。だけどそれも当然かもしれない。恋なんてものは先に惚れた方が負けだとよく言うのだから。
コイツらヤったんだ!!!
ちなみに夜の性活でもリョウ君は最強の模様。だって“我欲”でほぼ無限だから。
評価&感想及びお気に入りオネシャス!!!
これまでの章でお気に入り
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一章 愛と欲のカタルシス
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二章 歌と病のラプソディ
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三章 希望と炎とフラグメント
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四章 天使と悪魔とラブコメディ
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章ごとのバトルシーン
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章ごとのヒロインタイム