【四章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
無理そうだったら後日訂正します。
色々とあった湖での水泳訓練は予想外の形で幕を閉じた。諸々の片付けは自分達がやると言っていたヒルダ達に任せて僕とリルナはエレベーターに乗り自然エリアからラボに戻っていた。
「ふぅ……堪能したゼ☆」
「腰ガクガクでお姫様抱っこされてちゃ格好つかないと思うよ?」
「えへへー、移動の時リョウちゃんにこうされるならアタシとしては最高なんだよねー♪」
予想外の運動に中々体力を使ったがそれでも普通に移動できる僕と腰が砕けてしまい水着も汚れてしまって動けなくなったリルナの対比はなんともこう、犯罪臭がする光景に見えるかもしれない。でも今回は襲われたのは僕なので言い訳は聞くと思いたい。被害者と言うには美味しい思いをしているので主張できないが。
「ほら、リョウちゃんって色々とアタシのこと考えてくれてるでしょ?優しくしたいとか思い出とか色々と考えててさ。でもねー、アタシとしては色々と我慢が効かないわけで。特に銀髪天使に後れを取るとか悪魔の沽券に関わるというか」
「多分そこは悪魔とか関係ないと思うんだよね。だってリルナ、シルフィに対しては仲良くやってるし」
「ん?そういえばそうだね。んー……じゃあやっぱり銀髪天使が個人的に気に入らないだけ、なのかな?」
一緒にテレビでゲームをしているのを結構な頻度で見るくらいにはリルナとシルフィは仲がいい。どこか馬が合うのかよく協力プレイとかをしている。最近は地球を防衛する軍隊の6作目を一緒にやっていた。シルフィは我が家の潤滑油というか、エルとシルフィの間によく入ってくれていて助かる。
「実際に初めて顔合わせた時は色々と言いあってたしね。エルの事、嫌い?」
「ん?そんなことないよ。あのひたむきさとか真面目さとかリョウちゃんへの想いとかは凄いと思ってるし。ただ別に憎んでないし嫌いあってはないけどそりが合わない。お互いに相手には負けたくないと思っている感じかなー」
「ライバル関係みたいな感じか。悟○とベ○ータ的な」
「その二人で例えられるには力の差がありすぎる気もするけど。ま、エルとの同居生活も悪くはないんじゃないかな。リョウちゃんを独り占めするタイミングはアタシが一番多いしねー」
「名前言ったの聞こえてるよ」
「…………本人にはまだ銀髪天使呼びするけど、これからちょっとずつ変えてくから黙っててね」
「分かってるよ。リルナの頑張りを言いふらすような真似はしないから」
「ん。リョウちゃんのそういうところ大好きだよ」
そう言って腕に力を入れて頬をこすりつけてくるリルナに愛しさを感じこちらも顔を近づける。縄張りを主張する猫のように互いに匂いをつけるような行いはここ最近よくしている癖のようなものだ。女の子の独占欲は可愛いものだが男のそれは醜いとも思うのだがどうにも止める気になれない辺り僕も大概だろう。
ただ人前では流石に自粛するつもりなのでこういうことをリルナとする時は人のいない今のエレベーターや魂空間の中になる。後者の場合やめ怒気が見つからなくなるのが難点ではあるけど。
「あっ、ついたみたい」
「そうだね。結構時間経ってるしみんなもう仕事終わって自分の部屋に戻ってるかもしれないね」
「ヒルダには言ってあるしもう帰っても良いんじゃない?」
音が鳴りラボのある階に着いたエレベーターの扉が開く。もう見慣れてしまった我らが秘密基地の通路を歩きドールさんがいるであろう中央区に向かう。今のリルナを抱えている状態を見られるのは僕的に物凄く恥ずかしいのだが当のリルナはむしろ見せつけたいのか魂空間に戻ることもなく抱えられたままだった。現実に気軽に出られるようになってからこういうところが増えたがいい傾向なので受け入れることにしているが、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「ドールさーん?ここにいます?」
「おや、沢渡様とリルナ様。自然エリアでの水泳ダイエットは……していないようですね。別方面で激しい運動をして来たようですが」
「そういうことわかってても言わないでほしいんですけど」
「というか教授達どこ行ったの?仕事まだ終わってないの?」
「いえ、通常業務はもう既に終えています。ただ天界から緊急連絡がありましてそちらに対応しているのであります」
「天界から?厄介ごとですか?」
「いえ、あちらからしたらそうかもしれませんがこちらからすれば望んでいた展開と言うべきか。リルナ様にも伝えようと思っていたところなのでちょうどよかったでありますよ」
「アタシに?なんなんだろ。リョウちゃん分かる?」
「んー……、まぁ想像は何となくつくけど……」
もし僕の予想が当たっていれば大変喜ばしい話ではあるのだがリルナはおろか僕の心の準備も出来ていない。なんというかこう、恋人の身内に会う時の気まずさというか、そういうのは戦いの時とはまるで違う覚悟が必要になってくる。勇気を出さなくてはいけないのだが胃が痛くなる。特に僕の場合三股になっている所あるから……。
心の中で頭を抱えていると背後の自動ドアが開き疲れた顔の教授が入ってくる。僕達の顔を見ると同時にどこか安心したような表情になったのは気のせいではないと思う。
「おお、沢渡君にリルナ君。すまないがこの後用事はあるかね?」
「いえ、今日はもう帰るだけですけど……」
「お腹減ったから帰りたいんだけど」
「そう言わんでくれたまえ。リルナ君が立ち合いをしてくれるのであれば今から『盗炎結偽』の封印を解き彼女を自由にしたいのだよ」
「ッ!!ベル姉を!?えっ、天界は!?」
「近いうちにとあるイベントをやるからその前に片付けておきたいそうだ。我らの所なら万が一もないだろうということで許可されたのだよ。もちろん能力はある程度封印されてしまうがね」
「うちのベル姉は夏休み前の宿題かい」
あまりにあんまりな扱いに思わずリルナがツッコミを入れている。こういうところを拾ってくれるからリルナと話しているのは楽しかったりするのだ。それはそうと予想通りと言うべきか、あちらも色々と忙しいから同じ人間を守る悪魔の組織があるなら任せそうと思っていたがここまで早いとは思わなかった。
「と言うわけなのだが、封印解除の場に立ち会うかね?」
「もちろん!!!あっ、リョウちゃん、えっと……」
「僕もちゃんとついていくよ。リルナのお姉さんにはちゃんと挨拶しないとって思ってたから。ほら、一緒に行こう」
「うんっ!!!!」
僕の腕の中に収まっていたリルナはまだ歩けない状態だ。いや歩こうと思えば歩けるだろうけど気持ちが逸っている今だと無理をしてしまうかもしれない。どのみち会わないと行けなかったので一緒に行くことにする。
封印解除の場はラボより一つ下の何も置いていないエリアだった。こういうことに使う為の場所だそうだが今まで使用する機会がなかったらしい。中央には目を閉じた『盗炎結偽』ベルサシエが水晶のような結晶の中で目を閉じている。
「ベル姉……」
「さて、それでは封印を解除しよう。この札を張るだけで終わるらしいが……リルナ君、やるかね?」
「うん、アタシにやらせて」
教授から札を受け取ったリルナを抱えて結晶の前まで進む。札を大事そうに抱えているリルナの手は少し震えている。それもそうだろう。少し話を聞いただけだがそれでももう二人しかいない姉妹同士で言い争いをしたのが最後に会った時だと言っていた。そこからまた会えるとなって、嬉しいけどどんなことを言えばいいのかだって分からなくなってもおかしくない。
「大丈夫だよ、リルナ」
「リョウちゃん……」
「君のお姉さんなんだ。妹達のために戦ってきた悪魔なんだよ?大好きな妹と仲直りなんてそれこそ息をするより楽に出来るに決まってる」
「そう、かな」
「もしも、万が一にもまだ怒ってたらさ。その時は嫌かもしれないけどまた喧嘩しよう。それでスッキリした後また話そう。一回で駄目なら何度でも。僕も一緒にいるからさ」
「本当に、一緒にいてくれる?」
「もちろん。僕と君は一心同体、だろ?」
「そうだね……そうだよね!!アタシはベル姉に会いたい。何を言われるか分からないけど、それでも」
手はもう震えてはいなかった。ゆっくり、それでも確実に札は近付き結晶の中のベルサシエが起きる時が近付く。
「起きて、ベル姉」
その言葉と同時に札が貼られ、結晶から光が溢れる。思わず目を閉じる程の光量が収まった時、ベルサシエを封印していた結晶は消えて彼女はその両足で立っていた。
「あ……ボ、クは……」
「ベル姉!!!」
「なな、ばん……?そう、だ……。ボクは、あの女に、“欲望”を奪われ、て……」
「『炎天渇奪』ならもういないよ。だから、その想いももう君の中に戻ってるはずだ」
一分、二分、頭を抱えていた彼女はやがてスッキリとした様子で顔を上げた。そこには少しだけの未練はあれどそれでも未来に向かう意志が見える。
抱えていたリルナを降ろし、リルナはそのまま泣きながらベルサシエに抱き着いた。それを涙を浮かべながら受け止めた彼女の顔には笑みがあった。
「……封印されている間、妹達に会ったよ。ボクの夢かと思っていたけど、でも違ったみたいだ」
「姉さん達に……?なんか、言ってた?」
「叱られたよ。君に迷惑をかけるなって」
「うん、滅茶苦茶心配させられたし面倒だった」
「ごめんね。それと、もう一つ……。七番とボクに、幸せになれって」
「姉さん達らしい、ね」
姉妹は互いを抱きしめながら静かに泣き出した。互いの思い出をすり合わせて離れ離れになっていた間の話をして、少しずつでも隙間を埋めるように。
いつの間にか一緒に来ていたはずの教授達がいなくなっていた。この場にいるのが憚れたのだろうか。でも僕は離れる気にはなれなかった。もう半身と言っていい彼女が満たされるその瞬間を見ていたかったから。
しばらくした後泣きつかれて眠ってしまったリルナを抱えてベルサシエが立ちあがった。そのまま眠ったリルナを僕に任せるように渡してきたので優しく受け取る。壊れやすい宝物を抱きしめるように。眠っているリルナは今までに見たことないほどに安らかだった。
「君がリョウ、だね。七番……いや、リルナか。この娘から色々と話しを聞いたよ。君にも迷惑をかけたようですまなかった」
「リルナと一緒にいる為に必要なことなら苦労とも思わないさ。そっちも『炎天渇奪』に扱き使われたみたいで大変だったね」
「力が足りないまま挑み敗北した末路さ。ボク自身の扱いには納得している。それでも出来ることならこの怒りをぶつけたかったけどね」
「なら僕にぶつければいいよ。今すぐとは言えないけど時間を作った後に模擬戦でもしよう。君の全力を僕とリルナが受け止める」
驚いた顔をしているがそれくらいしなくてはこちらとしても立つ瀬がない。なにせ彼女のことはシルフィに任せてしまい僕自身何も出来ていないのだから。
「本気の君を見たいし、今のリルナの全力も見せたい。その上で僕がリルナを任されるに値するかも証明したい。それにはこれが一番だろ?」
「……思っていたよりも好戦的だね。だけどいいさ、ボクもその方が蟠りがなくなりそうだ。その挑戦を受けよう」
「ま、何をするにしても今は休みなよ。力が戻っていない状態でそんなことすることも出来ないだろうしさ」
「うん、それはそうだね。ところで沢渡リョウ、君に一つ聞きたいのだがね」
ベルサシエを休める部屋に案内しようと背後を見せた時、腕を掴まれる。万力のように締め付けるその手からは絶対に逃がさないという意志を感じた。
「君からリルナの匂いがすることと、リルナから君の匂いがすることについての説明をしてほしいのだが」
「それを話すには時間が足りないかな!!!」
「あっ!!待て!!!可愛い妹に何をしたァ!!!!」
「んみゅぅ……うるしゃいなぁ……」
暴走したシスコンから逃げる僕の腕の中からリルナの小さい笑い声が聞こえてきた。それだけで悪くないと思えてしまうのは僕が安いからだろうか。それでもこの日常に価値があると信じてる。
リルナ編決着ぅうううううう!!!!!
ちなみにエルとリルナの関係性はFGOのマシュとリリスをかなりマイルドにしてる感じをイメージしてます。
次回からはシルフィ&天界編!!下がり切った評価をあげてやるぜ!!!!
天使達は思ってる以上に愉快です。まぁ悪魔と根源変わらねぇから清廉とは程遠いからしょうがねぇけど。
これまでの章でお気に入り
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一章 愛と欲のカタルシス
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二章 歌と病のラプソディ
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三章 希望と炎とフラグメント
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四章 天使と悪魔とラブコメディ
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章ごとのバトルシーン
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章ごとのヒロインタイム