幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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説明回&リルナちゃんの過去伏線

こういった説明は早く終わらせてヒロインとイチャつかせてぇ……


影悪魔の提案

『その方法があるよ。お兄さんが戦うことが出来る方法が。おすすめは出来ないけど、ね』

 

 

 その言葉はリルナの甘い蜜のような声でなくても僕の心を揺らすくらいには魅力的な提案だった。だがそれで何もかもかなぐり捨ててその提案を受けるには、彼女の声は暗い。これだけはやめた方が良いと言葉にしなくても分かるほどに。

 

 

「…………何かリスクがあるの?」

 

『むしろリスクしかないと思うけど』

 

 

 そりゃまぁそうだ。あの光景を見ればあのドルザルクという悪魔と戦える可能性がある強さを手に入れる方法なんてリスク山盛りに決まっている。世の中そうそう簡単にはいかないという事だろう。だけど、それでも選択肢には上がる。

 

 

『はぁ……。まず最初にこの方法はアタシとお兄さんの魂をより近づける。要するにお兄さんを悪魔化させる感じになるかな。この時点で前例がなさ過ぎてどうなるか分かんない』

 

「発想は分かるけど、それって可能なの?」

 

『アタシを作った親元上級悪魔がその手の実験をやりまくってたからねぇ。拉致って来た人間を使って悪魔と同化させて戦力にするって感じの奴』

 

「えぇ……。何の意味があるのそれ……」

 

 

 悪魔なんてもとより人間より遥かに強いだろうに。わざわざ人間を拉致するとか天使に目をつけられるようなものじゃなかろうか。そんなことも分からないくらい馬鹿だったのか、それともそのリスクを帳消しにして有り余るくらいの利益を見込んでいたのか。

 

 

『理論上、だけどね。アタシ達下級悪魔が人間の“欲望”を集めて上級悪魔に渡して力を発揮するってところまでは説明したでしょ。だったらそのエネルギー源である人間と同化させれば悪魔の力を無制限に発揮して上級悪魔に匹敵する強さを得られるんじゃないかって話』

 

「でもそれ間違いなく失敗するでしょ。そもそも悪魔の力を発揮できる程人間の身体は強くないってことで」

 

『そこは何とかなるんだよね。アタシも“欲望”があれば肉体を強化してお兄さんより強くなれるだろうから、その根源であるお兄さんをアタシが強化すれば何とでもなる』

 

 

 人間の“欲望”や“負の感情”……面倒だから分かりやすく魔力でいいか。その魔力がなくなると上級悪魔もかなり弱体化する。だから人間と一体化することで魔力の消費という欠点を帳消しにする為の実験か……。

 

 

「…………あのさ、リルナ。僕こういう何かを断言する言い方するの好きじゃないんだけどさ」

 

『うん、なにかな?』

 

「これ絶対失敗するよね。成功したところでやった張本人に対する怒りとか殺意しか生まれないんじゃないの?」

 

『せいかーい。そのせいで実験は大失敗ってことであの上級悪魔にとっては黒歴史ってことになってるよ。そのまま抱えて深海に行って誰の目にも止まらないところで溺死すればいいのに』

 

 

 地面に唾を吐き捨てるイメージが見える。実際にはやっていないだろうけどそう思わせるくらいにはその親元上級悪魔のことが大嫌いのようだ。かなり価値観が僕達に近いリルナならそうなるのも分かるくらいにはやり方が酷いし仕方ないだろうが。

 

 

『一体化した後即座に下級悪魔と人間の双方の意識が混ざって、こんな事しでかした悪魔をぶっ殺そうとするのが一割。それ以外は一体化する前に下級悪魔と人間が相反して両方の魂がぶっ壊れるのが大抵だったね』

 

「成功例とかはないんですか……?」

 

『融合した後に意識保って上級悪魔の思惑通りに動く奴?いるわけないじゃん』

 

「絶望的な確率ってことかぁ」

 

『あとさ、お兄さんがアタシ達の事働きアリって言ってたけど確かに凄い的確だなーって思ったんだ。でも一つ違いがあって、アタシ達上級悪魔に対しての忠誠心とか欠片もないから。力で抑えつけられてるから反抗しないだけで力あったら絶対反逆してたよ。少なくともアタシ達は、ね……』

 

 

 寂しそうに、どこか遠くを見ながら吐き出すその言葉に返す言葉を僕は持ち合わせていなかった。何があったのかを何も知らない、聞けない僕が下手な慰めをするなんて彼女達に対する侮辱だろう。何か言う資格があるとすればそれはリルナが心を開いた相手だけだ。

 

 

『つまり理論上は可能、ってところかな。やるなら融合の一歩手前、魂魄契約をしてって形にするべきだね』

 

「魂魄契約?」

 

 

 響きからしてなんか凄い縛り付け感がある。一生に一度とかそういうレベルじゃない契約の名前だ。契約書には安易にサインしてはいけないとは思うがこれは断る前提で話を聞いて、熟考した上で更に断るべき類の話だと察した。

 

 

『そうそう。互いの魂に条件を付けて契約する。そうすることでアタシの力をお兄さんが完全に使えるようになる感じだね』

 

「例えば……僕からの条件は力をくれ、って感じ?」

 

『いやそれは大前提だから違うよ。この場合は……アタシに絶対嘘を吐くなとか、絶対的な味方でいろとか、絶対裏切るなとか。まぁそんな感じの強制力のある命令だね』

 

「破るとどうなるの?」

 

『破った場合は、輪廻転生の輪から外れるだとか。もう二度と蘇生も何も出来なくなるレベルの傷を魂が負うとかだね。まぁここら辺は契約の重さにもよるけど』

 

 

 想像以上に重かった。輪廻転生が実在しているらしいことは朗報だがそれ以外は全て考えられる中で最悪の部類だろう。これに縋る人間は多分、後のことを何も考えない無鉄砲な人間かどうしても叶えたいことがある人間かだ。

 

 この条件を聞いてなお、悩む僕は後者だろう。いや、前者も内包しているからどちらもというべきか。どちらにしろろくな末路を辿るとは思えない考えなしだ。

 

 

「リルナからの条件は」

 

『親元の上級悪魔を殺すのに力を貸してほしい。アタシからはそれだけ』

 

 

 リルナの答えは一切の迷いも恐怖も怯みもなかった。そこにあるのは純然たる怒り、いやそれは最早憎悪や殺意というべき暗い感情だ。やはり、先程の軽々しく聞こうとしなかった僕の判断は正しかったと思う。

 

 リルナは短い付き合いでもわかるくらいには理性的で、感情を荒げたりしないタイプだ。だがそれは決して感情的ではないことを示さない。むしろ彼女は感情に振り回される側だろう。だからそれを普段は無理矢理抑えつけてるように見える。

 

 だが親元の上級悪魔の話になるとその蓋が外れてどす黒い中身が出てきてしまう。他人にも分かるレベルのそれはリルナ自身も隠そうという意識を持てないでいるんだろう。先程の実験内容は、多分その悪魔のやらかしの一端なんだろう。そして一番の被害者はその上級悪魔に道具として生み出された下級悪魔ということになる。

 悪魔ってだけで地獄に生み出されていいように使い捨てられたらそりゃ憎悪するし殺したくもなるだろう。

 

 

『悩んで考えて、それで決めた方が良いよ。アタシにとってもこの契約はかなりのリスクになるけど、それでも悪魔だから死ぬってことはない』

 

「…………」

 

『でもお兄さんは違う。お兄さんは人間だ。リスクはアタシなんかとは比べ物にならない。さっきの例え話がいい例だよ。死ぬならまだマシで、それよりもひどい結末が待ってる可能性の方が高い』

 

「……二つだけ、いいかな」

 

 

 やはり、彼女は優しすぎると思う。彼女は僕のことをお人好しのように言うけど彼女の方がよっぽどお人好しだ。力関係で言えば彼女の方が上で、願いに対する想いも彼女の方が上で。その上で彼女は僕の心配をしてくれた。それがどれほど得難い優しさなのかを彼女は分かっていない。

 

 

「一つ。もし契約が成功した場合はどうなるの?」

 

『アタシの使っている影の操作の力を使えるようになる。後は肉体の強化だね。悪魔の力を使えばその分身体能力が上がる。実験では暴走する被検体でさえ上級悪魔に出力だけなら届いてた』

 

「それは、ちょっと想像できないな……」

 

『今の影の中の移動もお兄さんの“欲望”をアタシがダイレクトに受けてるから出来るようになったこと。多分これ以上のことを容易に出来る。お兄さんに例えとして出すなら、ドルザルク並みのことが出来るようになると思う』

 

「それは一個人が持っちゃいけない力なんじゃないの」

 

『アタシと二人だから一個人じゃないし、ヘーキヘーキ』

 

 

 一個人ってそういう意味じゃないと思う。いやどうだろう、調べてみないと分かんない。日本語ってたまに難しいからな……。

 

 

『それでもう一つ聞きたいことって?』

 

「聞きたい、というより言いたいことかな」

 

『なにかな?』

 

 

 影の中で立ち止まり、目を瞑って意識を集中させる。再び目を開いた時目の前には初めて会った時と変わらない姿のリルナがいる。何もない白い空間、僕の心の中の部屋。

 直に会って話さなければ伝わらないことがある。大切なことだからこそ伝え方を間違えればそこで人間関係が終わるのが道理だ。

 今から言う事は彼女の神経を逆撫でするかもしれない。それでも言っておかなければいつか彼女は破滅に向かっていきそうだから。

 

 

「僕はまだ死にたくない。だから君の言う契約についてこの場で決めることは出来ない」

 

「うん。それがいいよ。幸い時間はあるし、自分のこれからを放り出して戦う力を求めるなんてお兄さんには似合わないと思うし」

 

「それでも、僕にしか出来ない事があるかもしれないから悩むよ。だからリルナ、答えが出るまで待っててほしい」

 

 

 ここまで誠実に話しをしてくれたけれど、恐怖は残る。この場でキッチリ決めることが出来ればカッコいいのかもしれないけれど、これから先の未来全てを賭けるとなれば二の足を踏む。優柔不断が一番嫌いな事なのに今の僕はまさにそれだ。

 

 

「その上で、君の望みが叶うように出来る限りのことをすることを約束する。最悪の場合はエルに頼むとかして、うん。君との出会いから全部話せばきっと味方になってくれると思う!!」

 

「いやそれやったらかなりの高確率であの上級天使アタシの事殺しにかかってくると思う。そもそもお兄さんとこうしてるって聞いたら初手光の槍で突き刺しに来るよ間違いない」

 

「いやいやエルは優しいからそんなことしないって。もしそんなことなったら僕が身体を張って止めるから」

 

「やめてよ!?冗談じゃなくアタシがお兄さんの事操って盾にしてるように見えるから!!本当に何の迷いも慈悲もなく殺しに来るよあの銀髪天使!!」

 

 

 リルナはどうやらエルのことを誤解しているようだ。確かに僕も一ヵ月しか一緒にいないが同居している以上その理解度は他よりも上だろう。

 仕方ないのでエルとのこの一ヵ月間の話をすることにした。きっと聞けばリルナも納得してくれることだろう。

 

 

「いややっぱマジで殺しに来るね。というかお兄さん普段の言動からもう少し気を付けた方が良いと思うよ」

 

 

 何故かそんな言葉を告げられたが、何故智弘君といい僕の話を聞いた人は同じようなことを言うのだろうか、謎である。

一章完結目前 ヒロイン誰が推し?

  • 無表情赤面幼馴染天使エル
  • ツッコミ系メスガキ詐欺悪魔リルナ
  • 承認欲求アイドル天使シルフィ
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