幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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 今日二話目

 多分今日はこれで終わり。明日から毎日投稿目指しまーす


悪魔な乱入者

「怪しい小物売り店とか目立つ物すぐに見つかると思ったけど全く見つからないな……」

 

 

 放課後になり、智弘君に勧められたその店を探して街のあちこちを歩き回っているがまるで見つからない。例のサイトも覗いてみたが場所は毎回毎回違う場所にあるという。

 僕達の住んでいる場所は結構な都市であり、道も入り組んでいる。路地裏などにもあったという目撃証言からそこも見ているがやはりヒットしない。

 

 

「んあ?『またまた工事現場で事故。怪我人は少数で問題なく再開可能の模様』?ここ最近結構事故が多いなぁ」

 

 

 スマホが震えここ最近配布された事故・事件ニュースを即通達するアプリが表示される。急速に発展している街だからか、こういう事故が多数あり導入を国が推奨しているアプリだ。正直入れようとは思っていなかったのだがこれらのニュースを見るだけで食料品などのクーポンが配布されるのでちゃんと見るようにしている。

 

 

「げっ、ここエルが行くって言ってた場所じゃないか。大丈夫かな……」

 

 

 ちなみに放課後、幼馴染であるエルは忙しいということで毎度毎度どこか行っている。不幸体質なのかはわからないが彼女が行く場所は何らかの事故が起こることが多いのだが……まぁ関係はないだろう(・・・・・・・・・・)

 

 それより小物売り店だ。情けないと言われようが何だろうが僕はオカルト話にでも縋りたい。とにかく告白する為の後押しが欲しいんだ。

 絶対に成功する、そんな噂まったく信じていない。もしそれが本当だったとしたらそんなふざけた話などないと地団太を踏むくらいには。

 

 だってそんなの、告白する側もされる側にも失礼な話だ。人の心を完全に舐めているとしか思えない。どんなに想っていてもそれが絶対に届くとは限らないのが人間関係というもので、恋愛なんてその最たるものだろう。

 

 

「まぁそれを分かっていながら必死に探している僕が言えることではないんだけどね……」

 

 

 自嘲しながら、それでも歩き続ける。常に僕の頭を支配しているこの感情に後押しされながら。初めての恋で、初めての告白。それを行うために勇気が欲しくて。

 

 

「――――そこにいる坊や、叶えたい願いがあるみたいだねぇ」

 

 

 当てもなく彷徨っていたところに、裏路地からそんな声が聞こえてきた。反射的に周囲を確認するがそこにいるのは僕だけで、この声の主は僕を呼んでいるのだと理解した。

 寂れたラーメン屋とビルの間にある、薄暗く怪しい場所にその店はあった。

 

 

「こ、こは……」

 

「ヒョッヒョッヒョッ……。坊やの探している小物売り店さ……。もっとも、あたしゃ宣伝した覚えなんてないがねぇ」

 

 

 そこにいたのはまるで占い師のような恰好をして顔を全て隠した老婆だった。老婆と分かるのは僅かに見える素肌である手がしわくちゃで、年季を重ねているのが分かるから。声が明らかに女性だったから。それがなければ間違いなく性別は分からなかっただろう。

 

 

「あの、ここは本当に願いを叶える小物を……」

 

「さぁねぇ。あたしはただ物を売ってるだけだよ。その結果願いが叶ったかどうかはその人間次第さ。まぁ、ちょっとした背中押しってところさね……」

 

 

 そう言いながら老婆は机の上にネックレスを置く。目が吸い付くようにそれを凝視してしまう程に、明らかにそれは既存品とは違った。

 不思議な魅力がありこれさえあればきっと告白も上手く行くだろうという考えが生まれてくる。だが頭に靄がかかったように動かなくなってる気もする。これは危ない物だと本能が警戒して手に取るのを躊躇わせた。

 

 

「これを買うかどうかはあんた次第だよ、坊や。あたしゃただ商品を置くだけ。それを選ぶかどうかはあんた次第だ」

 

「僕が、買わなかったら……」

 

「そん時は他の人間に売るだけさ。例えばそう、アンタの想い人のことを好きな人間とかにねぇ……」

 

 

 それがトドメだった。このネックレスがあれば告白は成功する。その確信がある。だとすればこれをもし、エルを好きな男が買った場合僕のあの想像は現実になるだろう。

 それは嫌だった。どうしても認めることのできない未来予想図だった。彼女の隣に立っていられないという状況が僕には認められなくて。

 

 

「買います!!!!」

 

「毎度あり。機会があればまた買いに来な……。もっとも、あたしから二度物を買いに来る奴はいなかったけどねぇ……ヒョッヒョッヒョッ……」

 

 

 ネックレスを手にしてそれを見つめる。吸い込まれそうになる魅力のあるそれに見惚れているといつの間にか老婆は姿を消していた。奥は行き止まりなのに、忽然とその場から煙のように。

 

 

「いや、気にすることじゃないか……」

 

 

 そうだ、そんなこと気にする必要なんて欠片もない。僕は興奮したようにネックレスを握り締めて駆けだす。これさえあれば、これさえあればきっと僕はエルとずっと一緒に居られる。一緒に笑っていられる。あの笑顔を向けてもらえるとそう思って。

 

 

 

 

 

 

 

 そして夜。夕食を作り終わりエルが帰ってくるのを待ちながら自室でネックレスを眺めていた。今も怪しく煌めいているそれは先端に青い水晶のような石がついている。見ているだけで吸い込まれそうで、ついついそれを首に掛けたくなる。

 

 だがまだ駄目だ。それを首にかけるのはエルに告白する直前にしなければ。先に掛けてこの溢れだす勇気がなくなったらと思うと不安になる。

 それでもこのネックレスの不思議な魅力には抗うのは難しかった。

 

 

『かけちゃいなよ。そうすればアンタの願いは叶うよ』

 

 

 そんな声が聞こえてくる気がする。ゆっくりと両手に持ったネックレスを首に掛けようと持ってくる。

 

 

『そうそう、いい子だねぇ~。その身体も欲望もアタシがちゃ~~~んと使ってあげるからさぁ』

 

 

 甘ったるい声が脳内を満たす。それが脳の動きを止めさせて何も考えることが出来なくなっていく。それでも、僕は一度決めたことは守りたい。勇気を出す為に、告白の直前でつけたいのだ。

 

 

『……いや、何コイツ。なんでアタシの声にまだ抵抗できんの?普通の人間なのになんでこんなメンタル強め?というかそもそも数時間耐えてる時点でおかしいわ。普通手にした瞬間に付けるってみんな言ってたのに』

 

 

 声が大人しくなってきた気がする。というより理性が戻ってきたというべきか。頭の中に響く声に未だに違和感は覚えないが、何かがおかしいのではないかと少し冷静になってきた。

 

 

「そもそも、なんで僕はこんなものを……?」

 

『うげっ!?マジでもう呪い解き始めてる!?なんで人間がこんな、気持ち悪っ!!!』

 

 

 なんだか酷いことを言われた気がした。そのせいかより頭が冴えてきた。そもそもなんであんなに街中を必死に歩き回ってあんな怪しい露店を探していたのかという根本的な部分からだ。あとあんなオカルト話をそもそも智弘君が勧めてくるという事自体に違和感がある。

 

 普段の彼だったら間違いなく「オカルトに頼る前に男らしく行け!玉砕したら慰めてやる!!」とか言って周囲の女子達を沸かせるはずだ。僕と彼の掛け算の原因の8割が智弘君のそう言った言動からだし。

 

 数々の違和感を覚えてきた僕は両手で持っていたネックレスを指で摘まむようにもって遠ざける。さながらそれはこぼした牛乳を拭いた汚く臭い雑巾のように。出来る限り接触箇所を減らしたいと思いながら。

 

 

「あんな怪しい店から買った怪しい物……なんか変な成分とか出てないだろうな。というかあんな路地裏にあるとかバッチくない?」

 

『誰がばっちぃだぁ!!!このぴちぴちお肌が見えないのかよ!!!見えないんだったねチクショウ!!!』

 

 

 …………やっぱり気のせいじゃない。さっきから脳内になんか女の子の声が響いている。ああだこうだと騒いでるそれはさっきの甘ったるい声と同じだ。物凄く興奮しているので同一人物には思えないが、多分あってると思う。

 このネックレスは何かがおかしい、ここにあったらまずい。そう思った僕の行動は早かった。

 

 

「軍手とスコップ装備ヨシ。家庭菜園しててよかった」

 

『は?いや待って。アンタ何するつもり?なんでアタシを持ったまま外に行くわけ?なんでネックレスを木箱に入れてるわけ?いや厳重に封すんな!!!聞こえてんだろボケカスがぁ!!!!』

 

 

 口の悪い喋るネックレスなんて持っているだけでろくなことにはならないだろう。庭に出た僕はそのままそこらへんの土を掘り返しそれをゆっくり地面に下ろし丁寧に埋める。なんだか非常に焦っているようだが気にすることはないだろう。

 

 

「よし!!これでオーケーだね!!!」

 

 

 埋めた後そこに漬物石を乗せておく。まるで何らかの邪神を封じた要石みたいになったが似たようなもんだろう。とりあえずこれで安心。喋ることは喋っていたが動くことはなかったしあそこから這い出てくることはまずないだろうと考える。

 

 

「あれの処理はまた後日するとしてエルが帰ってくる前にお風呂を入れておかないとなぁ。いつも遅くなる時は疲れ切ってるし」

 

 

 一仕事終えた僕は口笛を吹きながら自室に戻りネックレスを埋めるのに使った道具を片づける。家庭菜園という趣味を持っていてよかったとこの時ばかりは友達に「地味すぎるというか、爺すぎる。お前本当に年頃の学生か?」と言われても続けていた僕の判断に感謝する。

 

 

「お風呂入れて、ご飯も炊けてる頃だし味噌汁とハンバーグも温め直しておくか」

 

『――――逃がすかボケがァ!!!そう簡単に獲物逃がしてたら悪魔名乗れないのよ!!!』

 

 

 ドゴンという音ともに部屋の開けっ放しにしていた窓からネックレスを入れていた木箱が飛んでくる。間違いなく異常事態だった。即座に手に持った文鎮で木箱を叩き落す。

 

 

「はぁー。びっくりしたぁ……」

 

『嘘吐けこの野郎!!!冷静にひとっことも叫ばずに即座に文鎮で飛んでる物体をぶん殴る人間が何処にいるんだよ!!!マジで頭おかしいんだけどコイツ!!!』

 

「明らかに喋ってるよなぁこれ。クーリングオフとか出来ないかな。慰謝料払ってほしいくらいなんだけど……」

 

『ただで貰ったくせに図々しいことこの上ない!!!!』

 

 

 喋るネックレスに言われたように思い返せば値段も聞いてないしお金も払ってない。これは商品強盗に当たるのではないかと急に不安になってきた。

 ここ最近怪しい物や人には近づかないようにとエルにも言われていたのに不覚と言わざるを得ないだろう。

 

 

「よし、エルにバレる前に証拠隠滅だ。こんな物貰ったとかバレたら絶対にお説教されるしな。今度は石に括りつけて川に沈めに行こう。これくらいならきっと神様も許してくれるだろう」

 

『マジか!?マジだ!!マジでやる気だよこいつ頭おかしいよ!!!』

 

「喋る無機物に言われたくはない。さっさと神妙にお縄につくがいい。大丈夫、ちゃんとその声に似合う可愛らしい紐で石と繋げてあげるから」

 

『安心できる要素が皆無!!!ちくしょう舐めんじゃねぇ!!!!』

 

 

 自室で飛び交う木箱とそれを捕まえようとする高校生男子の姿がそこにはあった。というか僕だった。

 奴は時にトンボのように空中で停止したり、蜂が刺してくるように突撃してくるが何とかそれを防御し今度こそ止めを刺すべく拳を振り上げる。部屋の中がぐちゃぐちゃになりながらも僕の拳がようやく木箱を捉え。

 

 

『よっしゃザマァ!!!』

 

「くっ!!しまった罠か!!!」

 

 木箱は僕のパンチで破壊され中に入っていたネックレスがその勢いのまま僕の首を狙い飛んでくる。伸びきった腕ではそれを捕まえることなど出来ず、するりとネックレスは僕の首の中に収まって。

 

 

「こうして対面しちゃえば人間なんかアタシの敵じゃないもんね!!!」

 

 

 見覚えのない白い空間に一人立っている蒼い目、金の髪と黒い翼を持つ明らかに人間ではない少女と対面した。

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