幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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いい作品というのは創作意欲を刺激するのです。

アニメ呪術廻戦で最推しの石流さんのあの戦闘を見たらバトル書きたくなって仕方なくなったのでこの作品書き始めたところあります


影法師VS『大飢万征』

 影を忍び装束のように纏い、その顔は仮面によって隠されている。エルは自身を抱きかかえる者が誰なのかを判別できなかった。声音もまた男なのか女なのかさえ分からない。仮面越しに出てくるのは聞き覚えのない声と口調。

 

 

『いやぁ、かなり危ない所だったねこの天使』

 

『エルがこうも簡単にズタボロになるとは思えねぇな。弱い所でも突かれたんだろ』

 

『それよりお兄さん、口調変わってるけど大丈夫?』

 

『何の問題もねぇ。気分が酷く良い、が逆に気分が悪い。テンションが上がるのと同時に下がってる変な感じだが、この気分の方が戦いには向いてんだろ』

 

 

 その影法師の正体は沢渡リョウと、彼に力を与えている下級悪魔リルナである。普段とは違う強い口調にリルナは少し引く。力を持ったからこそ浮かれてしまっているのかもしれないと、いざという時は強めに言って止めるべきだと自分の中で決める。

 

 

(いやまぁ、これはこれで結構良いかもだけど……!!口調はともかくお兄さん強引な所は元からあったから性格自体はあんまり変わってないし)

 

 

 それに口調が変わるというのは決して悪いことではない。自然と変わってしまうのであればボロも出にくい。これから先も正体を隠し続けるのだから僅かな部分だけでも変えていかなければ正体がバレてしまう。リョウから平穏な世界を奪ってしまったリルナはせめてその穏やかな日常だけは守りたいと思いフォローする。

 

 

「いっでええええええええええええええ!??!?俺の腕がアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 エルを握り締めていた右腕ごと切り落されたドルザルクは大きく叫ぶ。その声は悲痛に満ちていて聞く者に罪悪感を与えるような物であった。普段のリョウであればそれに対して動きを止めてしまうだろう。

 

 

「“突影(とかげ)”」

 

「ッ!?!!」

 

 

 だがその戦装束を身に纏ったリョウにそんな慈悲は存在しない。即座に呟きドルザルクの足元の影が蠢き爆ぜる。

 何の予備動作もない意識外からの攻撃によってその巨体は地面から無理矢理引きはがされる。追撃するように増えた影が空中に吹き飛ばされたドルザルクを逃がさない。

 

 

「そこでしばらく休んどけ」

 

「あ、あの……」

 

「…………なんだ」

 

「あなたは、誰ですか……?」

 

 

 腕に抱えるエルを静かに下ろしながらドルザルクを見るリョウに対してエルはその疑問をぶつける。この戦士が天使ではない事は間違いない。かといって悪魔かと言われたらそれも違う。人間では決してない。その正体が何もわからない。危険度も、敵対する可能性があるのかも。

 

 

「ドッペル」

 

「は、はい?」

 

「だから、ドッペルでいい。俺の通り名だ」

 

 

 ぶっきらぼうに言い捨てる名に心当たりはない。聞いたこともない通り名。だけどああ、今の彼を表すのであればそれは確かに似合っている名だろう。

 だが名前だけでは何もわからない。この相手に教えるということを放棄した言い方はいかがなものかと思いつつ更に情報を集めるためにエルは更に言葉を重ねる。

 

 

「そ、それだけですか。もう少しこう、情報とかは」

 

「悪魔に恨みを持つ、だから悪辣な悪魔を殺す。俺のスタンスはそれだけだ。分かりやすくシンプルでいいだろ?分かったらそこで寝ておけ。あのクズは」

 

 

 足元の影がドッペルの脚に纏わりつく。リルナの能力(ちから)は本来影の中に入り込むだけの物。それ以上のことは出来ず、そこから移動することも適わない。

 だがそこに人間(リョウ)の“欲望”が進化を促した。その能力は拡張され、影の操作や物理的破壊力を持たせるに至った。

 身体に纏わせる装束がその身体能力を上げ、纏わすことで更なる強化を施す。

 

 

「俺の獲物だ」

 

 

 ドッペルが地面を蹴り上げ駆けだす。目標は今も上空で影に弄ばれている巨体の悪魔。その速度はエルと遜色ない速さだがその背に翼はない。故にドッペルが飛ぶことはできないが。

 

 

「“突影”」

 

『あいよぉ!!!!』

 

 

 一言呟かれた技の名前にリョウの中にいるリルナが即座に能力を組み上げ彼の意図通りドルザルクまでの道を作り出す。

 その勢いのまま今なお影をぶつけられ体勢を整えることも出来ていない上級悪魔の顎に両手を引っ掛けて投げ飛ばす。その勢いは首の骨を折っても構わないと言わんばかりで、それで安心する程ドッペルになったリョウは甘くはない。

 

 

「足場を」

 

『了解っ!!!』

 

 

 再びリルナがその無尽蔵のエネルギーを使い能力を行使する。空中であろうと戦うドッペルを完璧にサポートする。それが今の自分の役割なのだと決定づけて。巨大な力を行使することが出来る万能感に酔いそうになりながらもそれを抑え込む。

 

 

「ガッ!?クソがッ!!少しの躊躇いもねぇか!!!!」

 

 

 投げ飛ばされたドルザルクは錐揉みしながらビルに叩きつけられてなおその勢いが止まらない自分の身体を即座に小さくし少しでもその速度を下げる。新たな乱入者の登場により計画の全てが破綻したことを悟るドルザルクには二つの選択肢が浮かび上がった。

 

 

(どうする?あの天使を諦めてここからさっさと逃げるか?だが奴の能力の効果範囲が広い、逃げ切れるかは微妙だしどこまで追ってくるかも分からない。ならここで奴を殺し天使を拉致する。だがそれも確実性に欠ける。この身体は再生力が低いから腕も戦闘中には治せねぇ)

 

 

 敵の弱味を握り、敵が全力を出せない状況を作り、その上で敵を追い詰め潰す。それがドルザルクの基本戦術だ。だが今はその基本が崩れている。

 この悪魔はドッペルのことを何も知らない、分からない。何故ドルザルクを狙うのかも、天使を助けるのかも。その能力からして悪魔と関連があるとは思うがその能力の強さはドルザルクが知っている物に比べて遥かに強く応用が効く。

 

 

「駄目だな、ここは引くか」

 

「“影牙(えいが)”」

 

 

 即座に逃げを選択するドルザルクの耳にその言葉が入り、同時に悪寒が身体を迸る。反射的にその場に限界まで伏せるのと同時にビルが横に真っ二つにされる。上級悪魔の腕さえ簡単に切り落すそれに人類が作った建築物はあまりに脆かった。

 

 

「物は大事にって習わなかったのかよぉ!!!!」

 

「お前にだけは言われたくねぇよ」

 

 

 影の上から飛び出したドッペルはそのままドルザルクに接近する。上から降ってくるビルの残骸も気にしないその在り方に戦慄しつつドルザルクは能力を発動させそのビルの上半身を“小型化”させることで自身への脅威を排除する。

 

 

「はやっ!?」

 

「お前が遅いんだよ」

 

 

 だがそれは敵に懐を晒すというミスと同じだった。右腕があれば同時に迎撃することなど簡単に出来るが、今その最大の武器は上級悪魔から奪われていた。

 懐に踏み込んだドッペルはそのまま影を纏った腕を振るう。人を越えた力は悪魔をも苦悶させる威力を発揮し連続で殴り突ける。残像さえ見えるその速度はドルザルクが対応するまでの間に十発以上を叩き込むことに成功する。

 

 

「邪魔くせぇ!!!」

 

 

 ドルザルクが巨大化し、足場を破壊する。ドッペルは重力に引かれ落ちる。それに追撃するように今しがた“小型化”したビルを投げつける。今から影を延ばし回避行動を取ろうとしても遅いとその顔に凶悪な笑みを浮かべる。

 

 

「“影形(えいぎょう)”」

 

「“解放(リリース)”!!!」

 

 

 ビルの“小型化”を解きその質量が解放される。その寸前にドッペルがもう一人現われて本体の両足を掴み投げ飛ばす。延ばされた影を足場にして再びドルザルクに向かって飛び掛かる。

 影がしなり投げ飛ばすような動きを起こすことでその速度は先程よりも速く、巨体化している上級悪魔が察知する前にそこに到達する。

 

 

「“影牢(かげろう)”」

 

「なッ!?」

 

 

 両手を翳し、ドルザルクの巨体をドーム状になった影が包み込み圧縮する。その身体を圧し潰し肉塊にせんとばかりの圧力にドルザルクは再び判断を迫られることになる。

 

 

(俺自身をさらに“巨大化”させる?いやダメだそれをやって破れなかったらそれこそ自分の能力で圧し潰される!!なら用意している手持ちの人間の建築物(おもちゃ)を“巨大化”させて突き破る?それも無理だ。俺を抑え込んでいる以上硬さは建築物以上、さっきのあの斬撃を見る限りそれも間違いねぇ!!不味い不味い不味い!!!)

 

 

 事前準備もなしにこんなバケモノに出会うなどなんと運が悪いと嘆くも生き残るために思考を回し続ける。その間も更に影は狭まりドルザルクを圧し潰そうとしてくる。

 一方でドッペルもその仮面の下で汗を流しながら焦る。想像以上にドルザルクが硬く、これで決めることが難しいと理解してしまったからだ。

 

 

(チックショウ!!!なんだコイツまるでダイヤモンドみたいに硬いなクソが!!!このまま潰そうにもこの“影牢”の維持はキツイ!!!“欲望”自体は問題なくても能力を使うことに慣れてねぇからだな!!これを使うと動くことも出来ねぇ!!!)

 

 

 口から出そうになる悪態を必死に抑え込みながらこの状況を維持する事しか出来ない。この次の一手を使う為のリソースさえ注ぎ込んでドルザルクを捕らえ続ける。拮抗状態、この二人の戦いはまさにそうなった。だが、それも長くは続かない。

 

 

「“解放”ぅ!!!!」

 

「ッ!!!!」

 

 

 “影牢”の中から声が響くと同時に地面からビルが突き出してくる。それはエルも嵌った地中に仕込まれた隠しビル。巨体はそのままドッペルに襲い掛かり、“影牢”を解除してその場から離れざるを得なかった事実に歯噛みする。

 

 一方でドルザルクもまた同じく歯噛みする。この一手で出来ればドッペルに痛打を与えたかったが回避されてしまったことに。だが同時にその能力行使における条件を理解しつつあった。ドルザルクにとってドッペルは徐々に未知の敵から既知の敵へと落ちていく。

 

 

(地中にビルを仕込んでいやがるな。どんだけ時間かけてやってんだコイツ、見た目によらず地味な作業が大好きかよ。だが、問題は残りがどれだけあるかだ。リルナ曰く能力を解除するだけなら一瞬で力もいらねぇ、予兆がないから食らいやすい。地面で戦うならコイツ自身を巻き込む近距離戦しかない。遠距離技は用意してないし、あの勢いは無視できない)

 

(他はともかくあの影のドームを使ってる時は動けねぇと見た。その上アレを使う時は近くでなければ無理だということもな。足元からの影の下からの攻撃は厄介だが、奴の能力の破壊力自体はそこまで高くはねぇ。無視してぶん殴る程度は出来る。そんでもってあの質量攻撃を避けるってことは身体の耐久力自体は並みかそれ以下か?ここは未確定だが確かめようは幾らでもある。最悪ビルの突撃をこの身体ごとやれば殺せるだろうなァ)

 

 

 地面に降り立った影法師と巨体の悪魔が対峙する。互いの能力の考察を混ぜてそれでも勝つのは自分だと確信を深めていく。

 この戦いの決着、それは神でさえも予想出来ない。

 




リョウ君の技
技名を言うのは能力を使っているのはあくまでリルナなのでどう使いたいかを伝えるためです。


突影(とかげ)
 影をただ相手にぶつける基本技。
 “欲望”を込めることによりその射程距離はどこまでも伸びる。
 基本なので応用が効き、足場にすることも出来る。


影牙(えいが)
 影に斬撃を付与して相手を切り裂く技。
 影であるがゆえに様々な形があり、それを制御するのは難しい。


影牢(かげろう)
 ドーム状の影で身を包む技。
 自身を囲い防御するか、敵を包み捕らえるかなど応用の効く技。


影形(えいぎょう)
 影で作った人形を作る技。
 作った人形はリルナが操作している。慣れていないので現在は一体が限界。

一章完結目前 ヒロイン誰が推し?

  • 無表情赤面幼馴染天使エル
  • ツッコミ系メスガキ詐欺悪魔リルナ
  • 承認欲求アイドル天使シルフィ
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