幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった 作:ビスマルク
次章のメインはシルフィとなります。三章はリルナ、四章は未定ですがエルメインかなぁ
というわけで『大飢万征』決着となります
地面で対峙した二人の考えは相反していた。『魔人』ドッペルは「近付き接近戦で止めを刺す」。一方の『大飢万征』ドルザルクは「つかず離れず、その上で罠にかけて殺す」。二人の思惑は正反対、だからこそ
「あばよッ!!!!」
「逃がすかァ!!!!」
巨体が逃げ影法師が追いかけるという状況が生まれる。ドルザルクとしては早くドッペルを倒さなければ痛めつけ戦闘不能にまで追い込んだエルがいつ戦線復帰してくるか分からない。この状況で不審な存在であるドッペルだが、今ならドルザルクを殺せると判断し間違いなく手を組んでくるだろう。そうなれば一巻の終わりだと理解してる。
「“
逃げるドルザルクの行く手を阻むように影を展開するドッペルもまた焦る。今は安定しているこの姿がいつまで持つか分からない。既に事前にするべきことをする為に2時間はこの状態を維持し続けている。また能力行使を担当しているリルナの負担も馬鹿にならない。一刻も早く倒し、ここから去って日常に戻らなければならない。
だがドッペルの決死の追跡も空しくドルザルクは誰もいなくなった街の中に逃げ込むことに成功する。周囲にはビルが多くあり、隠れる場所には困らない。『大飢万征』はその口角を上げて大きく笑う。
「“小型化”!!んでもって“巨大化”!!!」
追ってくる影を身体を小さくすることで避けつつ、後ろ手に持った瓦礫をその体勢のまま放り投げ大きくする。ドルザルクが繰り返し使う状況をリセットする為の一手。
瓦礫を巨大化させて視界を奪い、その間に小さくなって逃げ出しどこから襲うかを攪乱させる。
「“
ほんの少しでも目を離せば何をするか分からないドッペルは走った勢いを殺すことなく腕に纏わせた影に切れ味を付与して振るい瓦礫を両断して先に進む。だがその一瞬の妨害でドルザルクはドッペルの視界から姿を消していた。
「“影探知”、逃がすかァ!!!!」
即座に地面に手を当てて影を広げる。この周辺の人間は天使が避難させている。そしてネズミなどの動物は上級悪魔と魔人という規格外の存在に既に逃げ出している。故に、この場で動いている生物は『大飢万征』のみ。
「見つけたァ!!!」
「グォ!?テ、メェ!?」
すぐに隠れている場所目がけて影を飛ばし地面ごと粉砕しようとする。だが小さくなった身体を利用し身を翻し影を足場にビルの中に逃げ込む。まるであの巨体の癖をして小さい身体に慣れているかのような、違和感を覚えるくらいのスムーズな動き。
(待て、そういえばアイツ)
『お兄さん?どうしたの、早く追わないと!!』
覚えた違和感を確かめるべく足を止めてドルザルクが走った後を見る。そこには紫の血が跡となりその足取りを確かにしている。右腕を切り落された後、ずっと流れ続けているそれに疑問を抱く。同時に取りやめていた影探知の効果範囲をさらに広げそこに意識を集中させる。
(いくら上級悪魔だって言っても痛覚はあるはずだろ。少なくても同じ悪魔のリルナは殴ったりすれば痛がっていたし、苦しそうに顔を歪めていた。他の悪魔を知らないから断言は出来ないが)
だが思い返せばエルを助けるために腕を切り落した時、ドルザルクは確かに唖然とした顔をしていた。だが、痛みに顔を歪めた様子はなかった。痛みを叫んだのもドッペルの存在を認知し、自身の存在を印象付けるように。それに今もなお逃げながら一切止血する様子はない。それは痛みを感じていないからではないか。そして、それが流れても問題がないからではないか。
「――――リルナ、悪魔の血は普通何色だ?」
『えっ、人間と天使と同じ赤だよ?人型以外の悪魔の中には違うのもいるらしいけどね』
これだ。これが違和感の正体だった。ドルザルクの身体から流れ落ちている紫の血が、血ではなかった場合。あの巨体が、『大飢万征』の本体ではなかった場合。本体は今もなお執着するコレクション対象の傍にいて自分をここまで連れてきたのも逃げるためではなく、追わせる為だったら?
「ッ!!狙いはエルかッ!!!」
「行かさねぇよ!!!」
この逃走自体が罠だと理解したドッペルはすぐさま来た道を戻ろうとするもその行く手を阻むように『大飢万征』が――――いや、ドルザルクの本体が操る人形が上から落ちて立ちはだかる。
もう隠す必要はないとばかりに痛覚など存在しないその身体を振り回す。一手早く後ろに下がりその攻撃を避けることに成功するが、辺り一面を破壊して出来た瓦礫の山を“小型化”しドルザルクはドッペルに投げつける。
「“
「“
小さいまま投げられた瓦礫は元の大きさに戻ってもその速度を変えることなく襲い掛かり、ドッペルは即座に避けることを捨てて影のドームで防ぐ。
立て続けに硬い物体がぶつかる音に鼓膜を痛めながらも外から聞こえる人形からドルザルク本体の言葉が投げつけられる。
「俺の本体に気付いた奴はほとんどいねぇ。上級悪魔の連中にも気付かれちゃいねぇからなァ……。だから本来ならテメェを確実にここで殺しておきてぇんだが……それはもう諦めたよ」
「…………テメェの本体は、エル・ライトガーデンの近くに放置されてたあの小さい悪魔か」
「へぇ、やっぱ気付いたか。随分離したはずなんだがなァ……。さっきの影の探知、それをあそこまで広げて他に動いてる奴がいることに気付いて違和感を覚えたってところか」
そう。今なお誰もいないはずの場所でエルに向かって進んでいる存在を感知した。それがこの考察を正解だと物語っている。
天使はこの場には来れない。人質がいるからだ。悪魔はこの場に来ない。己のコレクションを奪う可能性がある者をこの上級悪魔が許すはずがない。なら、この場で動けるのは消去法でドルザルクしか存在しない。
「俺の魂の半分はこの人形に埋め込まれてる。だから自由に動けるし、
「仮面で表情は見えないだろッ!!!」
「そうか?だがその声音で焦ってねぇは通用しねぇぞ!!!」
瓦礫の音がしなくなった瞬間に“影牢”を解き、一歩でドルザルクに肉薄しその残った腕を取り大きく飛び上がる。一本背負いの要領で投げ飛ばしビルに叩きつけ踵を返してエルの元に急ごうとするドッペルの行く手を阻むように後方からドルザルクの声が響く。
「“巨大化”ぅ!!!!」
瓦礫を“小型化”させ上に投げ、自分ごと叩き潰す。避けることもかなわない悪意を図るタイミング。ドッペルの姿は圧し潰そうとする瓦礫の中に消えていった。
「ク、クキキキ……!!死んだ、死んだ、死んだァ!!俺の秘密に気付いた奴は死んだァ!!!」
ドルザルク本体は人形越しにその顛末を見て大笑いする。それはエルにコレクションを見せて捨てたはずの悪魔。リョウの声真似をすることでエルの隙を作った小さい悪魔だった。
人形と同じような口を裂くような笑みからは強者を騙しきったことによる愉悦で染まっている。
「あァ……これだからやめられねぇ……!!強い奴を騙し、絶望させるのは最高だァ……!!!」
この本体は常にコレクションと同じクローゼットの中に入っている。コレクションの変化の過程を余すことなくその目で見るために。暗く、光のない空間で自分と同じように捕らえられた存在の懇願の声を聞けばどんな精神が強い者であろうといずれ疲弊し他と同じになる。
諦めない精神を持つ強者が諦める瞬間を見るのが最高に好きだった。中にはそれでも中々折れない者もいるが、それこそドルザルクの大好物だった。
「励まし合った仲間が、閉じ込めた張本人だと気付いた時の顔と言ったら……ク、クキキキ……」
大丈夫だ、いつか助けが来る。天使も悪魔も関係なく諦めない者にはその同士だと思わせる言動で励まし合う。そして疲弊しながらも精神を保たせる者に真実を教えることで全部をへし折る。それが最高の娯楽だと『大飢万征』は信じて疑わない。
その通り名が示すようにドルザルクの欲望は飢えている征服欲を満たすこと。小さく弱い肉体、だが上級悪魔としての能力で生き残り続けたそれはその欲を満たす為に常に気高く美しく強い者を求める。狙われた哀れな獲物を取り逃したことは一度もない。
「あァそうだ!!今までも!!これからも!!俺はこの蒐集を永遠に続け」
「“
その勝利と欲望を満たす確信の笑みを浮かべたドルザルクを背後から闇同然の黒い影が貫いた。何が起きたか理解できない表情を浮かべながら顔を後ろに向ける。その口からは、人と天使と同じ赤い血が流れて出している。
「よぉ、さっきぶりだな」
「あ、りえねぇ……。どうやって、あの瓦礫の雨を……、そもそもどんなに急いでも間に合わないはずだろ……!?」
弱いからこそ観察力に優れた本体。それはドッペルの身体能力やその速さをほぼ完璧に理解していた。だからこそその悔しがる顔が見たくて、守りたかったものを守れなかった無様さを笑おうとしてネタバラシまでしたというのに。
「俺がさっき出した“
「そんなことは分かってるッ!!だがその人形は瓦礫に足を挟まれて動けなかったはずだ!!テメェにそれを操作する余力はねぇ!!!!」
「ああ、だから本体と“影形”を入れ替えた。これが、俺の切り札の“
いざという時、何かがエルを襲う可能性を捨てることが出来なかったドッペルの最後の保険。彼女を守る為にドルザルクの人形と戦いながらも維持し続けた影の分身。それを利用した切り札が、ここで小さい身体に反比例する大きな悪意を貫く。
「な、ぁ……なら、テメェは、いつでも……」
「俺が、エルを守ることを捨てる訳ねぇだろうが」
それがドルザルクの誤算。ドッペルの
(だが、だがだ!!急所は外れてる!!!まだだ、俺の能力ならここからまだ逃げ―――)
「悪魔ってのは人間で言う心臓部分に取り込んだ“欲望”を制御する臓器がある。まぁ必ずしも全員に当てはまるわけじゃないらしいが」
本体と入れ替わった分身がその手に何かを持ちながらこちらに走ってくる。それを見ながら小さな支配者を気取った悪意の塊に優しく教えるように言葉を重ねる。一方のドルザルクは何を言われているのかを理解したが故に顔を青ざめさせていく。
「今、お前のその核をぶち壊した。死にはしないだろうが、能力の制御なんぞ出来なくなる。当然お前が集めていたコレクションとやらもその大きさを取り戻す」
小さくなった者達はその手足を縛られ動けなくなっていた。だが小さくなった肉体が元に戻ればその縛りは解けるだろう。
ドッペルが何をするかを理解したドルザルクはその小さい手足をばたつかせて貫いた影から抜け出そうとする。焦るその姿はまるで生きたまま標本にされた虫のようだった。
「お前を殺すのは、お前の悪意に晒された連中だよ」
その言葉と同時にクローゼットが内側から壊される。そこから出てくるのは捕えられていた天使と悪魔、少数の人間。諦念の中にいた者でさえも久しぶりに浴びた外の光に、自由に動かせる肉体に歓喜し、同時にこんな仕打ちをした者を前に殺意に溢れた目を向ける。
「殺す」「コロス」「ころす」「コロス」「殺してやる」「何回だって殺してやる」「癒して治して何度でも」「焼き殺す」「斬り殺す」「捻り潰してやる」「削り殺す」「毒殺だ」「撲殺だ」「斬殺だ」「窒息死だ」「全部だ」「思いつく殺し方を試してやる」「絶対に逃がさない」
「人の恨みを買うってのは怖いな。じゃ、後は自分がした事を噛みしめながら死んでくれ」
影で捕らえたドルザルクを被害者達に任せてドッペルは歩く。凄惨な惨殺死体など目にしたくもない。だが彼女達の怒りは理解できるが故の行動。
だから後は任せる。好きにやって、その後生きるか死ぬかを選ぶのは本人達次第。出来れば前を向いて欲しいと思いながら。それでもその足は止まらず愛しい少女の方へ向かって歩いていく。
後ろから叫ぶ支配者を気取った悪意のことなど記憶しておく価値もないとばかりに無視をして。
技
“影探知”
影を広げ、それに触れた物体を探知する。無機物と生物を分けて探知するが、その生物が誰なのか、どんな生き物なのかは重さや大きさなど大まかにしか分からない。
リョウ君の切り札その①
“
“影形”で作った人形と本体の位置を入れ替える技。
咄嗟の緊急避難や追撃など様々な使い方が出来る、悪用し放題な卑劣な技。
これが成功した時、「出来ていいんだコレ……」と思った模様。
一章完結目前 ヒロイン誰が推し?
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無表情赤面幼馴染天使エル
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ツッコミ系メスガキ詐欺悪魔リルナ
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承認欲求アイドル天使シルフィ