幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった 作:ビスマルク
他にもあらすじとかキャッチコピーとか小説タイトルとかよく悩む。
中身はすぐ思いつくのに変だよなぁと悩む日々よ。
『スメラギ製薬』、それはこの新興都市で起業し瞬く間に実績を残し始めた会社の一つである。色々と手広く扱っているが、一番の事業はやはり薬剤関係だろう。この会社の薬は本当に効くとよく話題になっている。今では若者の入社したい会社ランキングとかいう胡乱なものにも上位ランクインしてるとのことだ。
「あの、すみません。ドール・メイカーさんにバイトのお誘いを受けた沢渡リョウと言います」
「少しお待ちください。今確認しますので。…………はい、はい。分かりました。それでは社長の方にお通しします。確認が取れました。あちらのエレベーターに向かい、地下へのボタンを押してください」
「ありがとうございます」
僕がそんな大企業と言って差し支えない会社にノコノコやって来たのは『スメラギ製薬』の社長、その付き人であるメイドさんからのバイトの誘いがあったからだ。ロビーにある受付のお姉さんに案内されたままエレベーターに乗り込んだ僕は地下階行きのボタンを押す。幸いボタンは一つだったので迷わずに押すことが出来た。
『しっかし人間って凄いよねぇ』
『何が?』
『だってこんな大きいビルをさっさと建てちゃうんでしょ?悪魔じゃ無理だよ、絶対無理。会社経営とかも100パー不可能だもんね』
地下への移動はそれなりに時間がかかるのかリルナがそう言って話しかけてくる。彼女はかなりしっかりものだからそうとは思えないが、悪魔には文化というものがあまりないのかもしれない。
『そこまで言う?』
『だってそもそも貨幣とかそこらへんもないし。基本物々交換だったんじゃない?姉さん達曰く人間社会で“欲望”集めする時に一番驚いたのがただの紙っぴらを欲しがる人間が多いってことだったもん』
『あぁ。なるほど、貨幣って存在がなければそういう驚きも生まれるのか。しかしそれで物々交換とか面倒じゃないのかな?』
『そもそも取引って行為自体があんまりなかったね。ほら、悪魔って自分の“欲望”が最優先でしょ?あのドルザルクだってそうだったし、アタシもそう』
ドルザルクとリルナを同じように扱いたくはないが言いたいことは何となくわかる。あの上級悪魔は見た目麗しい天使や悪魔を捕らえて絶望するまでの過程を見たい。ただそれだけの為にこれまで多くの物を踏みにじってきた。
ではリルナはというと、こちらはこちらで最初の方では僕のことを利用しようとしていた。それは姉達を殺したという上級悪魔に復讐したいという欲からだ。僕が彼女と契約し、それを成そうとしているからこそ今リルナは大人しくしている。
『要するに自分の“欲望”の為には手段を問わないのが悪魔。基本的には相手のことなんか何も考えない。だから相手の立場になってほしい物同士を交換するって取引は成り立たないの。だってそんな七面倒くさいことするより力で全部奪った方が楽だからね』
『……そんな考えだから個人主義が多くて組織とかが成り立たないのでは?』
『まぁ、そうじゃなかったら天使に対抗する為の組織作ってもっと上手くやってたのかもね。悪魔が悪魔な以上机上の空論だと思うけど』
ここ最近僕が心の中で勉強してそれを見ているせいか物凄くリルナの語彙力が上がってきてる気がする。別に悪いことではないんだけど、テストの時に悪魔の誘惑をしてくるのはやめて欲しい。
『アタシに聞けばー?』とか『暗記問題なら心の中に持ってきてる教科書見ればいいんじゃない?』とか毎回断るのに精神力使ってしまう。バレなきゃいいだろって一度でもやってしまったら間違いなく堕落してしまうのでそこは断固として断るが。
『お兄さんが毎回頑張って断るの見るの結構好きなんだよねー。絶対堕ちちゃ駄目だよ?ちゃんと真面目なお兄さんでいてね?』
『厄介ファンか何かかな?』
『うーん、お兄さんの相方かな♪』
リルナも大分今の生活に慣れてきたようでこうやって僕のことをからかって楽しんでいる。授業中など空いた時間では僕が持っている漫画や小説を読み漁っていたり、学ぶことが好きなのか小学生時代や中学生時代の教科書を使って勉強してる。本質的には真面目なリルナらしいと思いながらたまに教えたりもしている。
「っと。ついたみたいだな」
『それじゃあ地下研究施設見に行ってみよー!!!』
…………そうだよ、今更ながらなんで僕は何の疑いもなくこんな地下にまで来てるんだ。しかもエレベーターに乗ってここまで来るのに3分近く経っている。そんなに長い時間エレベーターに乗ることなどあるだろうか。乗り換えで止まることも一切ないのに。
「リルナ、もしかしたら僕達はヤバい所に来てるのかもしれない。覚悟だけはして」
「ッ!!!!」
違和感に気付いたのとエレベーターの扉が開いたのがほぼ同時だった。いやな予感がした僕が身構えた瞬間にエレベーターの隙間から棒が飛び出てくる。すぐさま身体を前に倒してそれを避け、そのままの勢いで棒を突き出してきた相手に飛び掛かり押し倒す。
「ッ!?め、メイドさん!?」
「申し訳ありませんが、お付き合いくださいであります。
そこには今日僕をこの場に呼んだ張本人がいた。メイドさんは押し倒される寸前に身体同士の間にその長い脚を折りたたみ、勢いをつけて僕を蹴り飛ばす。
普通の一般人の女性が出せる力ではなく、壁に叩きつけられた僕は思わず咳き込む。だがそのままの体勢でいられるほど目の前の女性は甘くはない。
薄い金色の髪を後ろで束ねた彼女は距離を取ることを許さずにそのまま突っ込んでくる。その速さはまるで、ドルザルクのようで。
「舐めんじゃねぇ!!!」
「ッ!!これが例のっ!!!」
咄嗟に影を纏う事を決断し、その勢いのまま影を放出しメイドを地面に固定する。何が何だかわからないが、彼女の言っている『教授』とやらを抑えない事には事情の把握もままならない事だけは分かった。
影で身動きを取れなくしている間に持っている棒を壁の隅に蹴り飛ばす。どうやらモップの柄の部分のようだが、それにしては感触が硬い気がする。
それにいくら何でもこの場所は怪しすぎた。周囲を見ればビーカーやら試験官があちらこちらに置いており様々な薬品がコポコポ音を立てている。
「なんだ、こりゃ……」
それだけだったら製薬会社なんてものを知らない俺ならば納得してそこまでにしておくだろう。だが、一番の問題はそこではない。そういった物の奥にガラス張りに覆われている特殊な部屋がある。様々な器具が置かれている部屋の中心には拘束器具が付いている椅子が一つだけあり、そこには一人の少女が横たわっている。
「悪魔、か?」
ドッペル化して強化された目ならば遠目であっても少女の背中から黒い翼が存在しているのが分かる。それは紛れもなく悪魔の証明であり、ここが裏側と繋がっていることを否が応でも理解させられた。そしてここに呼び出されたということは
「『俺の正体も知られている』と考えるのが妥当……、そう思っているのではないかね?」
「―――――」
後ろから声が聞こえ咄嗟に距離を取る。そのまま後ろを見れば影で拘束していたはずのメイドを自由にして横に立たせている男がいた。白衣を着て、黒縁眼鏡をかけて、黒い髪をボサボサにして肩くらいまで伸ばしているいかにも研究員ですと言わんばかりの格好。
一番の問題は、その背中から黒い翼が大きく広がっていること。その翼は、大きく、包もうと思えばこの距離でさえ俺を包めるほどの。
「悪魔、か……!?」
「うむ。吾輩は『観測希究』ライド・ソローネ。格的に言えば上級悪魔、というのが正しいのである。君が来るのを待っていたのだよ、影法師ドッペル君?」
「やっぱり、俺のことも……!!」
「うむ、知っておるとも。あの鬱陶しく、そして趣味の悪い『大飢万征』を打ち倒してくれた。心より感謝申し上げたい」
「…………趣味の悪さじゃ、アンタも相当だと思うけどな」
ガラス越しに今もなお眠っている悪魔の少女。ここで何をされていたのかなど想像するのは簡単だろう。なにせここは誰にも知られていない実験場、ならば好き勝手やりたい放題出来る。
「あの悪魔の子を使って、何してやがった!!!」
「なにって……治療だが?」
「治療だぁ?」
「うむ。ドルザルクのゴミカスが長年捕らえてきたからな。身体が弱りに弱っておる。中級悪魔だったのが今や下級悪魔相当、それも下位程度の力しか持っておらん。一刻も早く治療せねば命にかかわるのでな。無論当人の許可は貰っておるぞ」
「は?」
「え?」
時間が止まる。お互いに何を言っているのかを理解しきれない。俺はあの悪魔の子を使って実験台にしていると思ったが、目の前の男の様子を見る限りそれが見当はずれなのではないかとすら思えてくる。
こちらを見ていた『観測希究』は少しの間の後、翼をしまい込み隣に立つメイドを向き、引きつった顔で問いかけた。
「ドール君、吾輩が悪魔であることや、彼の実力を知りたいという説明を既にしたかね?もちろんしているとは思うのだが一応聞かせてほしいのだ」
「いいえ、教授。その説明をした後の場合、彼の性格を考えれば十分な実戦データが取れなくなると考え奇襲を仕掛けたであります。何か問題がありましたでしょうか?」
「問題しかないのだが!?これじゃあまるで吾輩が大企業の皮を被った人体実験大好きな屑悪魔ということになるのだと思うがそこはどう思う!!?」
「…………おおっ。流石は教授であります!!生憎そこまで考えが及びませんでした。なるほど、つまり先程の私は命の危機で教授が助けてくださったという事でありますね!!!」
「なにを喜んでいるのかね!!今すぐ影法師君に謝るのだよ!!私と共に土下座でな!!!!」
そんな会話の後、二人して見事な土下座を披露する。なんというか、今の会話だけで緊張感が大分消えたというか、敵意を持ち続けるのが馬鹿らしくなったというか。
それでも上級悪魔であることは確か。一切の油断はしないでいざという時はすぐに地面の中に潜れるように準備しておく。
『うーーーん……』
「どうしたんだ、リルナ」
『いやねぇ。アタシがかなり世間知らずなのも、悪魔事情についても知らない事多いのも分かってるんだけどさぁ。『観測希究』なんて二つ名の上級悪魔、聞いたことないんだよね。ここまで人間社会に深くかかわってるなら噂くらいは姉さん達から聞いたと思うんだけど』
心底不思議そうに呟いたリルナに対し俺もまた内心首を傾げる。話しを聞くだけで分かるくらいにリルナの姉達は妹に対して甘いし心配性だった。それこそいつ外に出ても大丈夫なように知っていることを叩き込むくらいには。その彼女達が知らなかった、ということはこのライド・ソローネという悪魔はそこまで有名ではないのかもしれない。
だがここまで大きな会社を隠れ蓑にしている以上そんなことがありえるだろうか。いくら悪魔が他に対して興味がなかったとしても、利用価値は幾らでもあると思うが。あの小賢しく鬱陶しいドルザルクならば知っていたら間違いなく利用していたと思うし。
「む、君の中の悪魔くんと話しているのかね?」
「……ああ、隠す必要もないな。お前のことを知らないって言ってるぞ。『観測希究』なんて二つ名の上級悪魔なんて聞いたことないってな」
「うむ、それに関しては正しいのだよ。吾輩は悪魔ではあるが他の悪魔と関りを持ったことなどないからな」
「どういう意味だ?」
『観測希究』は土下座から立ち上がり、近くの椅子に腰かけた。それは戦うつもりはないという意思表示だろう。こちらがその気になれば即座に影で貫ける近さにいるというのもその証明か。
「我が身を説明するとすれば一言で出来る。吾輩は悪魔と人間、そのハーフだ」
そして眼鏡の位置を戻しながら、そんな驚愕の事実を告げたのだった。
どのパートが一番面白い?
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ラブコメ、甘すぎるラブコメ!!
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設定語り。もっと見せろぉ!!
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バトルよバトル。もっと濃密に!!
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その他ァ!!!