幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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ここから第二章メインヒロインを投入。

みんなに愛を与えるアイドルが個人に執着するようになるのはとても美しいと思います。



影法師とアイドル天使

「遅くなり申し訳ございません。お待たせしていた時間、何か不自由はありませんでしたか?」

 

「いえいえ。皇社長もお忙しい中私達の為に時間を使っていただき感謝しています。本日もよろしくお願いします」

 

 

 誰だろうこの人。さっきまで一人称吾輩の白衣着てワハハハ笑っていた人がスーツ着て髪整えたら一瞬でカリスマ的社長に変貌したんだけど。もしかして人間名と悪魔名を使い分けてるのってこういう切り替えを一瞬でやる為だったりするのだろうか。

 

 僕自身も「沢渡亮」と「ドッペル」を使い分けているからなんとなく理解は出来る。もちろん同一人物なんだけど、名前と姿を変えることで意識を切り替えている部分があるからね。口調が変わっているのもその辺が影響していると思うと、便利ではあるが少し不安でもあるが。いつか二重人格になったりしないよね……?

 

 

「……ねぇ」

 

「なんでしょうかアイドル様。僕はただのアルバイトでございますよ」

 

「そう言うの良いから。なんでここに沢渡君がいるのよ」

 

「いやだからアルバイトなんだって。アイドルへの接待役として抜擢されちゃった」

 

 

 アイドルと聞いてなんか嫌な予感というか、直感はあったんだ。こういう時にこそピンチは訪れると。だけど本当に当たるとは思わなかった。びっくりだよなんでここにエアロードさんがいるんだ。はい、お仕事ですね分かります!!!

 

 

『お兄さん凄い混乱してるねぇ。でもまぁありえない事じゃないからしょうがないんじゃない?この天使アイドルなんだし』

 

『いやでもアイドルって言ってもかなり数はいるはずじゃない?まさかここまでピンポイントで来るとは思わないじゃん』

 

「どうしたのよ。私の前で黙って。接待役なんじゃないの?」

 

「えっ、あ、ごめん。今日はいつにもまして可愛いね。その衣装がアイドル用の奴?エアロードさんのイメージに合ってて凄くいいと思う。天真爛漫さが出てる感じが特に」

 

「…………初手誉め言葉とはやるわね。私の承認欲求が満たされていく感覚があるわ」

 

 

 なんとビックリ、扉を開けた先にいたのは我が校の誇るアイドル天使ことシルフィ・エアロードさんだったのだ。いや、なんとなくあり得るかなぁとは思ったが本当に来るとはびっくらぽんってやつだ。

 思わず本音で褒めてしまったがこれはいいのだろうか。アイドルに対して陳腐な言い方で問題あったりしないだろうか。アイドル褒める時の正解が分からないからとりあえず本心で接することにしよう。

 

 

「あらシーちゃん。そちらの方とは知り合いかしら?」

 

「知り合い、というか友人よ。同じ学校の違うクラスのね。ほら、前話したでしょ。エルの幼馴染の」

 

「ああ、あの天然口説きボーイのことね。うんうん、なかなかいいじゃない。メジャーデビューしてみない?」

 

「マネージャー、恥ずかしいからいきなり勧誘とかやめてちょうだい」

 

「その前に天然口説きボーイってどういうこと?エアロードさん僕のこと周囲になんて話してるのかな?」

 

『いやぁ、お兄さんのことを示すには的確だと思うよ……?』

 

 

 チクショウ味方がいない!!メイド服からスーツに着替えて秘書役になっているドールさんも社長であるライドウこと教授もなんかうんうん頷いているし!!何より僕の中にいるリルナが真っ先に肯定している為に本人である僕が否定しても意味がない!!

 

 

「じゃあシーちゃん。私は皇社長と今後の予定を詰めておくからお兄さんとちょっと仲良くしててね」

 

「お兄さんって……一応同年代なんだけど」

 

「でも背の高さに差があるから、傍目から見たら良くて兄妹だと思われると思うわ」

 

「いや、僕とじゃそう見えないと思うけどなぁ。エアロードさん、滅茶苦茶可愛いし。僕も恥ずかしくないくらいにはしてるけどお洒落とか化粧とか本当に完璧だし」

 

「そういうところよ本当。エルに怒られても私は庇わないわ」

 

「な、何故ここにエルが出てくるのかな……!?」

 

 

 やめて欲しい、エルに怒られるとか考えるだけで辛くなる。エルの涙目とか見るどころか想像するだけで胸が痛くなりそうだ。普段あんまり表情が変わらないからこそ、そういう変化はよくわかる。彼女が泣くとかそんなのもう本当に耐えられないってところまできている証拠だ。

 

 

「いやでもエルが泣くのは想像できないな……?怒る所はなんとなく想像できるけど……」

 

「あの子、昔は泣き虫だったんだけどね。確か……十年くらい前から今みたいな感じになった気が……」

 

「ふーん、そうなんだ……。あれ、なんでエアロードさんがそんな昔のエルのことを知ってるのかな?」

 

「え、エルから聞いたのよ!!ええ、私は実際見たことはないわ!!エルから聞いた話よ!!!」

 

「シーちゃんの言う事に間違いはないわ!!私も聞いてたから保証するもの!!!」

 

 

 僕の疑問にものすごい勢いで反応してくるエアロードさんとマネージャーさんの二人。いや、うん。そりゃこれで僕が違和感覚えたりしたらエルの生活が台無しになるから仕方ない気もする。天使とかバレたらエルに何されるか分からない。真の無表情で詰められるのは僕でも勘弁願いたいところだ。

 

 しかし、前も思ったがあまりに天使というのは情報漏洩とかに甘すぎやしないだろうか。エルもそうだがエアロードさんも少し迂闊すぎる気がする。それでも周囲の人達にまるで気付かせない辺り認識阻害というのは本当によく出来ているのだと実感する。以前の、それこそ天使と悪魔について何も知らなかった頃の僕だったら間違いなく今ので納得していただろうから。

 

 

『いやぁ、しっかしこれであのマネージャーも天界とかそこらへん知ってるの確定したね。あんまり油断しないようにね、お兄さん』

 

『分かってる。あっちと違って僕らに認識阻害なんてないからね。どこでボロが出るか分からない以上話す内容には気を付けないと。不味いと思ったら止めてくれよ?』

 

『分かってるって。アタシとお兄さんは一蓮托生、ちゃーんと協力するって♪』

 

 

 心の中で共犯者であるリルナに感謝する。金色の髪を分けている髪留めを着けてくれているので以前は見えなかった色の違うその両目がちゃんと僕を見ていることが分かる。そういえば彼女が着ているのは最初の頃からずっとボロ布だったし、ちゃんとした服を用意したいのだがそこらへん後で教授に相談しようと思う。

 

 

「さて、沢渡君。私はこれからマネージャー君とCMについて話をしようと思う。エアロードさんと共に社内を見学してくれると助かるかな」

 

「分かりました。……でも僕、この会社のことまるで知らないんですけど」

 

「安心したまえ。そう言うと思って助っ人を用意してある。氷織(ひおり)君、後は頼むよ」

 

「…………分かりました」

 

「うぉ!?」

 

「にゃっ!?」

 

『うっわびっくりした!?いつのまにいたのこの人!?』

 

 

 リルナの言う通り、社長の言葉に返事を返した女性は扉のすぐ傍に立っていた。艶やかな黒い髪を肩まで延ばした女性はどこかで見た記憶がある。しかしその記憶について思い出そうとする前にスタスタと氷織と呼ばれた女性は歩き出してしまう。

 

 

「彼女はコミュニケーション能力に難があってね。それでもこの会社をよく知っている。彼女の説明を噛み砕いてエアロードさんに伝えてあげて欲しい」

 

「僕は翻訳家ですか」

 

「そう言う事になるね。あとはよろしく頼んだよ」

 

 

 教授こと社長はそう言って僕達を部屋から出してしまう。ここから先の話は僕達……というより僕には聞かせたくないのだろう。まぁいくら仲間になったからと言ってそこは僕とはあまりに関係のない会社部分。全部を知らせる必要などないし、逆に知ってもらっても困ることがあるのだろう。僕はあくまで戦力として必要とされただけで会社として必要にされたわけではないのだから。

 

 

「…………こちらです。私の後をついてきてください」

 

「あっ、はい。エアロードさん、行こう」

 

「え、ええ……。人間ってなんというか、キャラが濃い人が多いわね……」

 

 

 人間という括りで一纏めにされると困ってしまう。僕は僕で悪魔と契約している自分がおかしいというのは分かっている。社長はそもそも半分悪魔だし、目の前で我関せず出歩きだしてる氷織さんは多分悪魔だろうし、エアロードさんは天使でそのマネージャーさんもそのことを知っている。純粋な人間ってそもそもこの場にはいないのではなかろうか。

 

 

「しかし、ここで沢渡君がバイトしてるとは思わなかったわ。エルは知ってるのかしら?」

 

「ううん、まだ言ってない。今日バイトの面接しに行くって言うのは話したけどそのまま働くとかはまるで言ってないよ。言う暇もなかったし」

 

「初日からアイドルの相手させるとか非常識じゃない?」

 

「それに関しては僕も思うけど、お給料が凄かったからある程度の理不尽は仕事の内じゃないかな。こうして服も用意してくれてるし、文句はないかな」

 

「ああ。確かに仕事やってる時は理不尽なこともあるわよねぇ。言っておくけど社会人って大変よ?あまり感情を出し過ぎるのは歓迎されないし」

 

「エアロードさんもそうなの?アイドルってファンの前で凄い笑顔で沸かせてる印象があるんだけど」

 

「そりゃずっと本心で笑顔でいられるわけじゃないわよ。コンサートの前に嫌なことがあったりすることも多々あるし、そういう時は嫌な気分のままでファンの前に立たなくちゃいけない。でもそんなのせっかく来てくれた皆に見せるわけにはいかないでしょ」

 

 

 堂々と、仕事に向き合い真面目にアイドルをしている女の子がこちらを向きながら不敵に笑う。それはアイドルというには荒々しいはずなのに、まるでそうとは感じない、彼女らしさを表している笑顔だった。端的に言って、凄く良かった。

 

 

「いつだってファンの前で見せる私の笑顔は最高じゃないといけないの。昨日より今日、今日より明日。ずっとずっと最高を更新し続けて、皆を魅せて私を認めて欲しい。それが私が頑張る原動力。愛されるために全力を尽くし続けるのよ」

 

「……凄いな、エアロードさん。うん、素直にそう思う。これがトップアイドルかぁ……」

 

「トップを名乗るのはまだまだ遠いわ。特に今度来日する海外のアーティストとか、私とは比較できない知名度だし」

 

「それでも実際共演とかしても負ける気はないんでしょ?」

 

「当然!!私が一番だってみんなに認めさせてやるんだから!!!」

 

 

 負けん気を持って、仕事に誇りをもって頑張っている。天使とか人間とかそう言うの関係なく応援したくなる。彼女のファンになる人って言うのはこういう気持ちが大きいんだろうと思う。

 ただ、どこか不安定に見えるのは僕の勘違いだろうか。無理して、頑張って、それを続けていつか壊れてしまうような不安を僕は少し感じてしまった。 

 

 

「…………着きました。ここが薬品の実験場となります。アレが新薬である「ゲンキンMAX」の原液を摂取したネズミの姿になります」

 

「ホイールの中を両足で走ってるんですけど!?」

 

「どう考えてもネズミの走り方じゃないわよねアレ!?」

 

 

 本当にこの会社大丈夫なのだろうか。僕とエアロードさんは顔を見合わせて二人で不安な顔をしていた。

 

どのパートが一番面白い?

  • ラブコメ、甘すぎるラブコメ!!
  • 設定語り。もっと見せろぉ!!
  • バトルよバトル。もっと濃密に!!
  • その他ァ!!!
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