幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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主人公勢以外の恋愛模様が気になる時が多々あります。

アンデラはその点宝庫でしたね。でもショーンとジーナをもっと見たかった。ションジナが良かったんだマジで……!!!



風天使の突撃親友晩御飯

「つ、疲れた……マジで疲れた……!!ツッコミが追いつかない……!!」

 

「の、喉が、喉が痛い……。私、アイドルなのに……」

 

「…………ふむ、何故お二人がここまで疲れているのでしょう。私にはまるで心当たりがありませんね」

 

「「ツッコミ待ちなんでしょ、絶対そうでしょ!!」」

 

 

 この数時間で急速に僕とエアロードさんの距離は縮まっていた。それは甘酸っぱい物ではなく、ただ同じ境遇の仲間を得たという方面だったが。僕達は肩で息をしながらここまでツッコミの嵐を巻き起こさせた元凶を睨む。

 

 

「…………何が問題だったのでしょう。素晴らしい薬ばかりだったと思うのですが。そう、例えば毛生え薬。頭部が寂しい人には大ヒット間違いなしでしょう」

 

「そうだね、頭部にかけただけなのに全身から毛が生えて来たね」

 

「ビックフットの誕生をこの目で見させられるとは思わなかったわ」

 

 

 ガラス越しとはいえ、禿げたおじさんの頭部にかけたら急速に全身から毛が生えてきたのはどう考えてもおかしいだろう。しかもこれ天使の技術も悪魔の異能も関係ない純粋な薬学で出来た代物だというのだからここの人達は本当に天才だと思う。

 

 

「馬鹿と天才は紙一重とは言うけどまさか目の前で実例を魅せられるなんて今日は厄日ね。今日からここで働くなんて大変ね沢渡君?」

 

「いやいや、ここの仕事を受けた以上エアロードさんも似たような案件にこの先も巻き込まれると思うよ?」

 

「…………お待ちください。他にも素晴らしい薬はあったはずです。お二人に見せた中では……のど飴などはいかがでしょうか。副作用もありませんし」

 

 

 確かにそののど飴は凄かった。ここで作っているだけあって凄い効き目だった。前日一日中カラオケに行った研究員のガラガラだった声がそれ一つで物凄く聞こえやすくなる代物。これだけならば間違いなく売りに出せる。

 

 

「問題は何故か知らないけど凄いソプラノボイスになってたことだよね」

 

「…………ご安心ください。ソプラノ以外にもテノールになる飴も多種多様にご用意していますから。我が社の研究員に不可能はございません」

 

「飴一つ舐めるだけで他にも色んな声を出せるとかどういう原理なのよ。本当に理解を拒みたくなる才能達よね。ここにひとまとめにしてることに不安を感じるけど」

 

「逆に一纏めにした結果がこれかもしれないよ?ほら、蟲毒ってあるじゃない。アレと同じ原理が発生してるのかも」

 

「……まずは倫理観の勉強をすべきじゃないかしら。後は常識の勉強」

 

 

 技術力は本当に凄いのにと話に出たのど飴、その商品版を二人で舐める。声音が変わることもなくツッコミで疲労した喉が急速に回復していくのを感じる。高性能だけど逆にそれをどう抑えるかが彼らの中では苦労する部分らしい。普通は逆ではないかと思わなくもないがもう思考を放棄した方が楽なのだと諦めることにする。

 

 

「っと、マネージャーから連絡だわ。えっと……話し合いは終わり、今日はここで解散していいってことね」

 

「僕の方にも通知が来たよ。社長から初日の仕事は終わりだってさ。今日はもう終わっていいってことらしいね」

 

 

 社長とマネージャーさんの話し合いは無事終わったらしい。ここからも色々とやり取りはあるだろうが、そこにただのバイトである僕が入り込む必要はない。何もかも知ろうとすれば余計なことも知ってしまうのが世の常という奴だ。

 

 

「それじゃあ帰りましょうか。今日は、寮の食堂で適当に済ませればいいわね」

 

「ふむ……。エアロードさん、一つ提案なんだけど」

 

「なにかしら?デートのお誘いだったら断るけど」

 

「ある意味デート、になるのかなぁ?とりあえずだけど今日の晩御飯、うちで食べて行かない?」

 

「ひょえっ!?」

 

 

 そういえばと思い返せばエルは友人を家に呼んだことがなかった気がする。普通の女子高生じゃないし、普通であってもそういう事をするのかは知らないけれどやって損のないことではあると思う。もちろん誰かに見られてもいいように変装はしてもらうつもりではあるけれど、しなくても認識阻害があるなら何とかなりそうだ。

 

 

「エルが今日勉強の為に学校に居残りしてるんだ。だから今日は豪勢にエルの好物のメンチカツでも作ろうと思って。量を多く作るつもりだから、よかったら是非。これも何かの縁だと思うし。もちろん無理だって言うなら仕方なく諦めるけど」

 

「そんな捨てられた子犬みたいな目で見られたら断り切れないでしょ……。分かった、分かったわよ。エルの私生活とかも見ておきたいし、その誘いお受けするわ」

 

「エアロードさんも結構心配性だよね。ま、それじゃあ行こうか」

 

 

 そのまま氷織さんと別れ会社を出る。気付けば既に日が落ちかけており夕日が街を照らしていた。なんとなく、こういう時間が好きだった。昼から夜に移り変わる瞬間を綺麗だと思う人は結構多いと思う。後ろから氷織さんに襲い掛かっている例の「ゲンキンMAX」をコーヒーに混ぜられた男の人の声が聞こえてきたがこの光景の前では些事だろう。今振り返ったらまた喉を傷めそうになるので止めておく。

 

 

「まずは……スーパーに直行。今の時間帯ならまだまだ品物は残ってる。この機会に色々と買い溜めしておかなきゃ」

 

「発想が最早主婦なのよね。ところでマイバックとかは……」

 

「もちろん常に鞄の中に常備してあるよ?金欠ならこういうところにも気を遣わないとね。一円を笑う者は一円に泣くってよく言うし」

 

 

 学校の帰りにスーパーによることなんて多々あるし。これに関してはエルが来る前からやっていることだから既に習慣づけられている。今はネットが盛んだから、割引やらセールがそれで知らされることもあるし。たまに事前予告なしの割引とかあるからいつでも行けるようにマイバックは常に持っていないと不安になる。

 

 

「家ではエルはちゃんとしてる?結構迂闊な所があるから不安なんだけど……」

 

「家事とかはちゃんとやってくれてるよ?僕が料理と片付け担当、掃除洗濯はエルが担当って感じで役割分担してるし」

 

「片方に負担がかからないようにしているのはいいことね。どちらかに寄り掛かっている関係は破綻しやすいから」

 

「そうだねぇ。それが絶対というわけではないけど、なんでこっちばかりって不満は溜まりやすいから息抜きはちょくちょくしておかないと」

 

 

 対等であり続けるというのは決して簡単なことではない。関係を構築した時は対等でも、それが続くことにより甘えが生まれてそれが影響して関係破綻することはよくある話だと思う。

 

 だから大切なのは対等であり続けることではなくて。相手を想い、尊重する事なのだと思う。

 

 

「それが出来れば苦労はしないって話だけど、気をつけていきたいよね」

 

「そう思っているうちはいいんじゃない?頑張ってると思うわよ、エルも沢渡君もね」

 

 

 天使として戦ってる上にアイドルとして頑張って、その上友人としてエルのことを心配しているエアロードさんが言う事じゃないと思う。一番頑張っているのは君だろうと言いたいが、知っていてはおかしいこともあるので黙らざるをえない。

 少し会話の間が空いたままカートにカゴをセットし、ゆっくりとスーパー内を歩き出す。

 

 

「お米は欲しいから5kgの奴を買って、挽肉は大容量パックがあるからこれを……。で、キャベツと玉ねぎ。玉ねぎは結構使うから多めのを買って、キャベツはみじん切りにされてるパックの奴を買おう。っと、味噌汁用に豆腐と乾燥ワカメを忘れないように……。あっ!!パスタが安くなってるし卵もおひとり様一パックだけど安い!!これは買いだね!!!」

 

「…………ここまで真剣に買い物に真剣になってる学生見たことないわ。いつもこんな感じなの?」

 

「いやいや、今日は結構買うもの多くてびっくりしてるよ。筋トレを日々続けてなかったら結構きつかったかもしれないね」

 

 

 ここまで買う時はエルが一緒にいる時だ。休みの日に買い物しに来る時は結構多めに買ったりする。何が食べたいか―とかそういう何気ない会話をしながらスーパー内を回るのが結構楽しかったりするのだ、これが。

 

 たまにお惣菜とかを買うがやはり自分で作るものとお店で作り置きされている物は違う。どちらが美味しいかではなく、便利かどうかの違いではあるが。たまにお店の焼きそばとか食べたくなる時が無性にあるんだよねぇ。

 

 

「……ここまで尽くされればそりゃアイツも幸せでしょうね」

 

「ん?エアロードさんも誰かの手作り料理とか食べたいの?そういえばエアロードさんってご飯どうしてるの?自炊かな?」

 

「私は基本的に寮の食堂を利用してるわ。アイドル寮で結構遅くまでやってるから助かるのよね。ただ作り置きとかも多いからそこらへんは手作りが羨ましくなる時もあるわ」

 

「そうなんだ。もし良ければお昼のお弁当は僕が作ろうか?」

 

「えっ……?」

 

「二人分が三人分になっても特に時間に変わりはないしね。おっと、材料費はちゃんともらうからそこは気をつけてね」

 

「い、いやそれはいいけど……いいの?私、貴方の幼馴染の友達ってだけよ?」

 

「まぁそうだけど。今まで関係が薄かったからってこれからそれを強くしちゃいけないとは決まってないでしょ?それにエルと仲良くしてくれるってことが僕にとってはとても嬉しいことだからそのお礼ってこともある。それに何より」

 

「なにより?」

 

「頑張ってる可愛い女の子を応援したいって言う自己満足が大半だからね。エアロードさんは僕の満足の為に受け取ってほしいかも」

 

 

 苦しい言い訳だろうか。だけど言葉に嘘はない。頑張って、命懸けで戦ってくれている彼女の為に「沢渡亮」として出来ることと言ったらこれくらいしかない。ドッペルとして戦う事は出来るかもしれないが、それも悪魔の能力を使っていると判断されたら難しくなるだろう。

 

 戦う場だけではなく、日常を支えたいとそう思う。戦うのであれば、せめて戦う理由くらいは幸せな物であってほしいという自己満足。断られたら他の方法を考えるだけ。押しつけがましいと自覚しているが、そもそもドッペルの存在も似たような物だし今更だろう。

 

 

「……エルが嫉妬するわよ」

 

「エルだったら「シルフィもリョウ君からお弁当を貰ったんですね。どうですか、美味しいでしょう?私はこれを毎日食べているんですよ」って自慢しそうだけどなぁ」

 

「ああ……。無表情なのに分かるドヤ顔してるのが目に浮かぶわ……」

 

 

 二人で共通の話題は今のところはエルだけ。これから増えるかもしれないけど、それでも今はこれだけだ。だから二人で同じ人のことを話す。好きな人を、親友を、互いに知らない彼女について。

 この時間を僕は幸せだと思う。

どのパートが一番面白い?

  • ラブコメ、甘すぎるラブコメ!!
  • 設定語り。もっと見せろぉ!!
  • バトルよバトル。もっと濃密に!!
  • その他ァ!!!
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