幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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ちなみにですがエルが天界組織から人間社会に来たのは一ヵ月前くらいになりますが、シルフィは既に二年くらい人間社会にいます。なので常識とか勉強とかもちゃんと覚えてますね。



天使達と夜の道

 

『続いてのニュースです。アメリカの大スター、ジャネット・シックが来日しました。ご覧ください、彼女のファン達が空港に押し寄せています!!』

 

「いやぁ、凄いね。あの人、歌手だっけ?」

 

「そうそう。今度のゴールデンウィークの音楽祭に参加するのよ。私も末席を飾ることになってるけどね」

 

「末席だろうと参加出来ること自体が凄いことだと思いますよ」

 

 

 夕飯を食べ終わりゆっくりテレビを見ながら三人でお茶を啜る。こういうニュースは最近はネットで見ることの方が多いのだが、複数人で見るならやはりテレビが一番だろう。各々の感想から次の話のネタを作り出せる万能ツールだ。

 

 

『ジャネットさんを始めとした海外アーティストも集まってくる今度のゴールデンウィーク、非常に楽しみですね』

 

『はい。最近の暗いニュースを吹き飛ばす明るい物になってほしい所です。日本では水際でせき止めていますが、イオラ禍が広がっている世界中を盛り上げて欲しいですね』

 

『しかしイオラ禍の中でこのように人々が一ヵ所に集まるのは危険では?という懸念も多いようですが、実際のところどうなのでしょう』

 

『確かにその心配はとても大切なモノであり無視できるモノではありませんが、数年前から準備し本当に最近活躍しているアイドル達も参加することになるこのイベントを中止するというのは難しいと思います』

 

 

 キャスターと専門家がテレビの中で話しているイオラ禍。これが教授の言っていた例の上級悪魔の兆候なのだろう。『病孤涙苦』、二つ名からして病気を操っているとしか思えない。ちなみにだが上級悪魔は自己顕示欲が強いのかこういう二つ名を流布してるらしい。しかもご丁寧に色んな言語で分かりやすいように幾つも用意している。最早二つ名どころじゃない。

 

 イオラ、ここ最近急速に広がってきたこの病気は酷い熱と幻覚が起きることで有名な病だ。幻覚の中では大切なモノが壊れたりする光景を見てしまうらしい。寝てる時も夢でその光景を悪夢として見るせいで酷い寝不足になっている人も多いとのことだ。何かに集中している時だけはそれを見ないで済むという特徴もあるが、一体どういう理屈でそうなっているかはわからない。

 

 

『この病気での対策もあの会社でしてるって話だけど、悪魔産の病気に対抗できるのか不安ではあるね』

 

『でも黒死病、ペストみたいに対処できている病気もあるし完全に無理ってことはないと思うよ。思いたい、って言うのが大部分を占めるけど』

 

 

 『スメラギ製薬』でもこの病に対する特効薬を作ろうと試みているのだがあまり進歩がないらしい。あの天才達がいてなお無理なのはイオラという病がヤバいのか、それとも病気の特効薬を作ろうとすること自体が難しいのか、門外漢である僕には判断がつかない。

 

 

「リョウ君、眉間にしわがありますが大丈夫ですか?」

 

「えっ、あ、ごめん。今度の音楽祭が無事に開催されるか心配になっちゃって」

 

「分かるわ。海外からも人が大勢来るってことで今も来日してる人多いもの。病気が入ってくるかもしれないって心配もね。でも、それ以上に色んな人に私達の歌を聴いてもらえるかもしれないってことの方が楽しみになっちゃうわね」

 

 

 そう言って笑うエアロードさんはアイドルとしての顔ではなく、彼女本来の戦意に満ちた笑顔だった。友人になったからこそ見せてもらえるその表情は思わず頑張れと言いたくなるくらい今までの自分達の活動による自負が見られる。

 

 

「まぁ、最悪音楽祭終わる頃にはスメラギ製薬がなんか薬を出すと思うし何とかなるんじゃないかな」

 

「ああ。確かにあの連中ならそうなっても不思議じゃないわね……。いや、本当に色々と滅茶苦茶な連中だったわ……」

 

「うん。バイト先に選んだのを早速後悔しそうになったよ。被検体には絶対になりたくないや」

 

「…………二人が共通の話題を持っているのと、それに入り込めないことがちょっとムカつきますね。私も今度見学しに行きましょうか」

 

「「やめておいた方が良い、絶対に」」

 

「むーーーー……!!」

 

 

 エルがふくれっ面になっているがこれだけは本心だ。彼女の場合あの薬の数々を見てしまったら心配性が発揮されて僕の初バイトは敢え無く終わりを告げることになることは容易に想像できる。「リョウ君をこんな所に居させられません!!!」と言って辞表を叩きつける姿までもがだ。その判断自体には大いに同感しかないのだが、沢渡亮としてではなくドッペルの立場で考えると非常に困る。教授という協力者は今の僕にとって間違いなく必要な存在だ。

 

 

「まぁ滅茶苦茶ではあるけど良識はあるみたいだしあんまり心配するようなことでもないと思うわよ。同僚のコーヒーの中に薬を混ぜる奴いたけど」

 

「そうそう。あの人達にも一応ストッパーはいるしね。製品営業部みたいなところが薬効を落とせって色々と調整してるみたいだよ。まぁ研究員同士でのじゃれ合いで色々と問題起こしてるみたいだけど。バイオハザードは社外まで出てないから」

 

「すみません。何一つ安心材料がないのですが。それは要するにバイトとはいえ社員になっているリョウ君が巻き込まれる可能性が高いという事では?」

 

「「……………………」」

 

「二人して顔を背けて黙らないでください」

 

 

 エルの言葉に対して一切の否定材料がないので黙らざるをえない。外付けブレーキがなければどこまでもぶっ飛ぶ連中なのは確かなのだから。

 社長としてだが教授も「何かあったら頑張って止めて欲しい。我が社の社員は悪魔関連についてもちゃんと知ってるから最悪ドッペルの能力使っていいから」とまで言ってきたくらいだ。僕にブレーキ役になってほしいとかあの人本当に僕を好きに使う気満々だな。

 

 

「ま、まぁ給料はいいし!!!これで夏休みも遊びに行けるよ!!!」

 

「やったじゃないエル!!水着も新調しないとまずいわね!!!」

 

「水着……あの、スクール水着という奴でいいのでは?」

 

「「絶対ダメ」」

 

 

 えぇ……という顔をしているが海やプールで遊ぶときに着るにはあまりにマニアック過ぎるだろう。というか我が校では夏に水泳の授業がないのでスクール水着をエルが用意するには買うしかないのだが。エルみたいな美少女がそんなの買っていたら隣にいる僕の趣味だと思われかねない。

 流石にスクール水着を着せ、それを見て喜ぶ人間だとは思われたくはない。エルにはもっとこうフリルの付いたような可愛い水着を着て欲しい。

 

 

「さて、それじゃあそろそろ帰るわ。外も暗くなってきてるしね」

 

「それじゃあ送るよ。夜中に女の子を一人にするわけにはいかないし」

 

「なら私も一緒に行きましょう。リョウ君一人だと心配なので」

 

「いや、これでも僕男なんだけど。それも毎日筋トレしてるタイプの男子高校生なんだけど」

 

「脱がないと分からないじゃないですか。リョウ君、脱げばすごいタイプですけど服着てたらそこまで凄いとは思いませんよ?」

 

「ああ、確かに細身よねぇ。ちゃんと絞ってるってことかしら」

 

「解せぬ」

 

 

 まぁ解せないと言いつつ実際のところは納得しているが。二人は天使であり、しかもその中でも実力者だ。そんなエアロードさんをただの人間が送り届けたりした場合を考えたらエル達の反応も理解できる。もし仮にその光景を悪魔が見ていた場合、天使の正体を知ったら僕を人質に取ろうとするだろう。特に今回なんてエアロードさんを送って、帰ってくる間一人になっている時に悪魔が襲いに来たら僕なんてひとたまりもないと二人が考えるのは至極当然のことだ。

 

 

「ここ最近、寒いのか暑いのかよくわからないよねぇ。初夏なのかってなる時もあれば肌寒い時もあるし、風邪ひきそうだよ」

 

「日頃からきちんとした日常生活を送っていれば早々風邪なんてひかないわよ。手洗いうがいが大事だってこと忘れないようにね」

 

「私とリョウ君に関しては心配ありません。むしろ心配なのは一人暮らしのシルフィの方です。夜とかちゃんと布団を被って眠ってますか?寝相が悪いの忘れてませんからね」

 

「……ちょっと蹴り飛ばしたりはしてるわ」

 

 

 サラリーマンや部活帰りの学生がいる街中を三人で歩いていく。何事もなく普通の会話をしていれば彼女達が天使だということを忘れてしまうくらいの穏やかさだ。そして二人の会話を聞いていれば分かる。この二人は本当に幼い頃からの友人なのだと。

 僕とエルみたいに嘘の幼馴染ではなく、本当の幼馴染なんだということが滲み出る。それくらいお互いを理解して、尊重している。その事実に少し嫉妬してしまうが、それでもそんな関係を二人が築けていることを喜ばしく思う。

 

 

「っと、ここまででいいわ。今日はありがとう。本当に美味しかったわ」

 

「ううん、別に構わないよ。三人での食事も楽しかったしね。機会があればまた、ぜひ来てほしい」

 

 

 これは本心だ。普段からエルと一緒に夕飯を食べているが、その時より明らかに彼女の口数は多かった。友人と自然と会話できている彼女は楽しそうで、それを見ていた僕も嬉しかった。だからこれは本当のことだ。嫉妬がないとは断言できないけれど。

 

 

「エル、アンタも沢渡君にばっか任せてないでちゃんとしなさいよ?一方的に寄りかかるのは対等とは言えないんだから」

 

「分かっています。毎日の掃除洗濯は私の仕事ですから。特に休みの日のリョウ君はだらだらしているので掃除する時大変なんですよ」

 

「休み日はぐだっとするのが日課なんだ。ソファの下を掃除したいからって僕を無理矢理どかすのはやめて欲しいかなって」

 

「それなら一回言ったらちゃんと反応してください。本当にだらける時は全力なんですから、もう……」

 

「聞いてるだけで大丈夫そうね、安心したわ」

 

 

 本当に安心したとばかりに笑う彼女にエルは親しい人間には分かるくらいの変化だが、不満そうな表情をしている。思わずエアロードさんと共に吹き出してしまう。一ヵ月前を思い出せば、この変化を分かるくらいにはちゃんとエルを見てこれたのだと思う。

 

 

「じゃあエアロードさん、明日からのお弁当だけど何かアレルギーとかある?事前に聞いておかないと大変なことになっちゃうし」

 

「あれ本気だったのね……。アレルギーは特にないし食べられる物は大体大丈夫よ。後は、トマトが好きね」

 

「トマトは僕が嫌いだからヤダ。噛んだ時の中身の触感と味が嫌い。ケチャップとかはいいんだけど」

 

「私も同じくですね。あとアボカドとかは食べたくないです」

 

「好き嫌い多いわね……?」

 

 

 まぁなんでも大丈夫だというなら色々と考えていこうと思う。こうやって誰かの食べる物を考えるというのは中々に楽しい物だ。

 

 

「改めて、今日は楽しかったわ。それじゃあおやすみなさい」

 

「こちらこそ。おやすみなさい」

 

「あ、そうそう。エルだけ耳かして」

 

「?なんですか?」

 

 

 エアロードさんが手招きし、近寄ったエルの耳元で小さく囁く。こういうのを聞くのも野暮なので少し距離を取って聞かないようにする。

 

 

「別に私、沢渡君を取るつもりはないから安心しなさい」

 

「っ!?にゃ、にゃにをぉ!?」

 

 

 聞こえないが、何か言ったエアロードさんが真っ赤になっているエルを見て笑いながら寮の中に消えていった。その場に残されたエルは怒ったように震えているが、本当に何を言われたのだろうか。

 

 

「で、エアロードさんなんだって?」

 

「な、何でもありません!!!!」

 

 

 そう言われたら余計気になるが、頑固なエルに聞いても絶対聞き出せないので諦めることにする。そんな感じで僕達は二人で夜道を歩き家に帰った。





たまに書いてる途中で他のページに行って戻ってきた時に文が変なことになってる現象はなんなんだろうか。
同じ分がコピペされてる感じになるの明らかにおかしいんじゃが?

どのパートが一番面白い?

  • ラブコメ、甘すぎるラブコメ!!
  • 設定語り。もっと見せろぉ!!
  • バトルよバトル。もっと濃密に!!
  • その他ァ!!!
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