幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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ちなみにですがジャンヌ・ダルクが悪魔だったことを天使側は把握しています。

その上で全てが謎に包まれているのが『病孤涙苦』である。


『病孤涙苦』

 暗い暗い、太陽の光も届かない海の底。人類が未だ到達していない深海の中で蠢く大きな存在がそこにはあった。

 もし光があり、その存在を照らすことが出来たならそれが地球上で最も大きいとされる鯨をも遥かに超える大きさを持つ魚型の生物だと気付けただろう。

 『鬼死海生(きしかいせい)』。上級悪魔の中では珍しい人に化けることをせず、“欲望”を集めることもしないただそこに存在するだけの化け物。悪魔の頂点に立つ三大魔王の誰の配下にもならずその体内を上級悪魔に提供するだけの存在。

 そして魔王を含めた全ての悪魔の中で最も長寿であり、最初にこの世界に来た悪魔だった。

 

 

「おや、珍しいですね『炎天渇奪』。貴女がここに顔を見せるなんてめったにないでしょうに」

 

「その名で呼ばないで欲しいわね『病孤涙苦』。あなただって今は忙しいんじゃないかしら?人間達の間で今流行っている病、アレあなたの仕業でしょう?」

 

「ええ。今回は人間を対象にしたものですね。殺傷力も低く、感染者を苦しめるだけの物。これを作るのに色々と掛け合わせるのが大変で準備に時間がかかりました。褒めてくれてもいいんですよアルドメラク」

 

「あなただったらすぐに出来るでしょう、それくらい。天使達に手を出さないなら構わないわ」

 

 

 『鬼死海生』の体内に作られた大きい部屋。それは外の様子を見られるようなガラス張りになっていた。いや、実際ガラス張りになっているわけではなくそう見えるように『鬼死海生』が身体を作り替えているだけなのだが。

 

 そんな部屋のど真ん中に設置された椅子に腰を掛けて机の上に置かれた酒を飲む一人の黒ずくめの女がいた。誰にも顔を見られないように、病的という言葉が似合う程他者を警戒し続けている女――――『病孤涙苦』は地声をも変えて部屋の中に入って来た悪魔に声を掛ける。

 

 新たに入室した赤いドレスに金色の髪を持つ、見る者全てを魅了するであろう黄金比のプロポーションを持つ悪魔アルドメラクは『病孤涙苦』の対面に座りその目的を聞く。一見仲睦まじいような、理解者同士のようである会話だが彼女達の間にあるのは仲間意識ではなく、自身の邪魔をするかどうかの確認だけだ。

 

 

「いえ?最終的に天使には手を出しますよ?狙いは精神性がしっかりしている上級天使あたりですね」

 

「は?」

 

 

 だから自身の獲物を狙う発言をしたその瞬間、アルドメラクの金の髪が逆立ち全身から炎が巻き上がる。炎はそのドレスと同じく真紅の色をして一瞬で机を燃やし尽くす。だがその炎は『病孤涙苦』には届かない。瞬時に炎を喰らう菌を作り出しそれが自身に届く前に防御する。

 だがその菌もまた内部から焼き尽くされてその場に黒炭となって落ちる。

 

 

「落ち着いてくださいアルドメラク。私が狙うのは精々一人です。もし二人以上を手に入れた場合はそちらに提供してもいいですよ」

 

「……そう、それならいいわ。あなたは嘘はつかない。だからこそ厄介だけど」

 

 

 菌が焼き尽くされる前にアルドメラクから距離を取った『病孤涙苦』は両手を上げて降参の意を表しながらそう提案する。その言葉に納得したのか再び椅子に腰を掛けたアルドメラクは『病孤涙苦』が飲んでいたワインをグラスに注ぎその喉を潤す。

 離れていた『病孤涙苦』もその移り変わりの早さに苦笑しながら再び席に着き焼き残されたクッキーを食べながらアルドメラクの目的を察する。

 

 

「人間と悪魔の合体が失敗したから、次は天使と悪魔の交配ですか?貴女も懲りませんね」

 

「あの実験に関しては一つの教訓が得られたから失敗ではないわ。それに完全に無理ではないという結論自体は出せたもの」

 

「というと?」

 

 

 興味もない癖にアルドメラクの実験結果に関して聞こうとする『病孤涙苦』はその“欲望”の性質から多くの人間と関わってきた。だからこそ自身の望みを果たすのに何が必要になるか後にならなければ分からない、どんな情報が自身を助けるかが分からないことをよく知っていた。

 研究者という側面を持つ簒奪悪魔、『炎天渇奪』アルドメラクの持つ情報はもしかしたらいずれ自分を助けるかもしれないという考えでそれを聞き出そうとする。

 

 

「人間と悪魔自体はそこまで相性が悪くないわ。むしろ“愛”を欲する天使よりも“欲望”を手にしたいと思う悪魔の方が人間との相性はいい。それは長く人間と接しているあなたの方が知っているでしょう?」

 

「ええ、それはそうですね。彼らは一時の“欲望”に飲まれやすい。後がどうなるか想像できてもその場の苦しみから逃れるためなら自ら地獄へ足を踏み出す。もしかしたら大丈夫かもしれない。そんな妄言を心から信じて。ええ、ええ、そこが非常に可愛らしいんですけどねぇ……」

 

「あなたの性癖については聞いてないわよ」

 

 

 黒ずくめでありながら、僅かに見える顔が紅潮しているのが分かる。それほどまでに『病孤涙苦』は人間を理解し、愛おしく思っていた。その姿を見たいからこそ『病孤涙苦』は歴史上、ありとあらゆる方法で人々を侵し続けたのだから。時に病で、時に信仰で。

 『病孤涙苦』が求める物は、いつだってただ一つだった。

 

 そんな恋する乙女のように声音を震わせる『病孤涙苦』の“欲望”を一言で切り捨てたアルドメラクは話しを続ける。こちらもまた相手の反応などどうでもいい。ただ自分の実験結果を誰かに話すことで自分の中で情報を整理する事だけが目的だった。

 

 

「結論から言って、下級悪魔の欲するエネルギーを人間が常時提供し続けるのが無理なのよ。そして人間と合体、同一化した悪魔はその後その人間からしか“欲望”を手に入れられない。必ず枯渇し、人間の精神は死に至る」

 

「そうなれば“欲望”を手にする手段を失った悪魔もまたいずれ枯死する、と。確かに私達悪魔も目的を達成すれば一時的にでも満たされますからね。肉体も精神も“欲望”を生み出し続けることに向いていない人間であるなら猶更ですか」

 

「そういう事。どんな人間だろうと胃の中を埋め尽くすほどの食事をとった後、更に美味い食事を見ても食べたいとは思わないでしょう?一つの欲を満足させれば他の欲もまた抑えられることも多々ある。とにかく、永久機関には程遠いのよ、人間は」

 

 

 アルドメラクは机に膝をつき悩まし気に溜息をつく。その様子をもしも人間が見れば性別問わず間違いなく見惚れる程蠱惑的だった。だがしかし、対面に座る『病孤涙苦』はアルドメラクの様子を全く気にかけずに自身の思考に没頭し、やがて一つの疑問を専門家にぶつけることにした。

 

 

「…………アルドメラク、もしも仮にですが……人間と悪魔が“契約”を交わした場合はどうでしょうか?我々は人間の“欲望”こそを欲する。だから近付いた人間に対してその欲を刺激し活性化させることが出来ます」

 

「……成程、“契約”によって人間と悪魔の魂の距離を近づけることでその活性化を常時行うという事ね。私が行った合体実験は、あくまで無理やりやった上、魂よりも肉体を一体化することでその力の増幅を図ったけど両者合意の“契約”なら……」

 

 

 『病孤涙苦』の提案にアルドメラクはブツブツと呟きその様子をおかしそうに『病孤涙苦』は嗤いながら眺める。彼女の研究自体にはまるで興味を持たないが、こうして悩んでいる姿を見るのが『病孤涙苦』は病的に好きだった。もっとも、一番見たい光景には遠く及ばないが。

 

 

「駄目ね。前提条件からして無理よ。そもそも人間が悪魔と“契約”を結ぶという事自体があり得ないわ。私達悪魔の基本技能ではあるけれど、あれを人間との間に結ぶ馬鹿はいないでしょう?」

 

「そうですねぇ。でも下級悪魔ならどうですか?私は下級悪魔を使わないので知りませんけど」

 

「あっちもあっちで基本性能は人間より上だもの。人間を自分と対等に認めるなんてこと、ある意味下級悪魔の方が私達より難しいかもしれないわ」

 

「ああ。悪魔の中では自分達が一番下ですからねぇ。さらにその下に人間がいれば安心できるのに対等と認めるなんてこと自分の存在に価値を見出していないことに繋がる。悪魔である以上絶対に不可能ですね」

 

 

 悪魔はその全てが自身を最も大切にする。これは常識だった。今ここにいる二人もまた三大魔王の一人に忠誠を誓い、その指示に従っているがそれは戦っても間違いなく勝てないと確信しているからこそ。勝てるのであれば即座に下剋上を行い、その地位を使い自身の“欲望”を満たすことを第一に考えるだろう。

 

 

「もしそれが出来る存在がいるなら是非手元で飼いたいわね。その人間と悪魔がどういう過程をたどってその結論に至ったのか。その人間と悪魔の異常性も何もかもを知り尽くしたいわ」

 

「いるわけがないって結論が出たのに一人で興奮しないで欲しいのですが。貴女の悪い癖ですよ、妄想で盛り上がるのは」

 

「ええ。でも研究者として未知の存在に想いを馳せるのは正しいことだと思うのよ」

 

 

 だからこそ二人の悪魔はありえないと切り捨てる。悪魔が自分を真っ先に優先しないなどという例外など存在しないと。

 想い想われた姉妹と共に失敗作だと処分されかけ。その姉達に救われたことで自身に価値を見出すことをやめ、拾われた人間が我が身を省みず“契約”を交わすことで上級悪魔と同等以上の力を手に入れたことなど知らずに。

 

 自身を無価値だと断じる悪魔と、騙されたと知ってもなお変わらない自我を持つ人間が交わることでどんな反応を起こすかも知らずに悪魔達は嗤う。その例外の存在がいずれ自分達に牙を剝くなど想像だにせずに。

 

 

「ああ、そういえば聞きましたか?ドルザルクが死んだらしいですよ。私がこれから行く国にいる天使に無様に敗北したとのことです」

 

「…………ごめんなさい。誰だか思い出せないのだけど」

 

「時間をかけてた辺り本気で思い出そうとして失敗しましたね……。まったく、自分の派閥にいる上級悪魔のことくらい覚えておいてくださいよ。我らが王も「ふーん、そうか」で終わらせていましたけど」

 

「王が言うならいいんじゃない?所詮その程度の駒だったってだけでしょ」

 

「ま、それもそうなんですが」

 

 

 二人の悪魔は再び酒を飲みながら自分の話に夢中になっていく。『大飢万征』ドルザルクの敗北は、悪魔の中ではその程度の話だった。

 




この話の結論:
悪魔と契約できる適性を持ち、ほぼ無尽蔵にその力を使用し続けることが出来る果てのない欲と愛を持つリョウ君がおかしいだけ。なお一番恐ろしいのはそれを制御しきっている理性である。
そりゃ悪魔達もあり得ないと切り捨てますわ。

どのパートが一番面白い?

  • ラブコメ、甘すぎるラブコメ!!
  • 設定語り。もっと見せろぉ!!
  • バトルよバトル。もっと濃密に!!
  • その他ァ!!!
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