幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった 作:ビスマルク
正統派アマゾネスを感じる。いや、正統派アマゾネスってなんだ……?
そして今回クッソ難産だった。二度とテスト勉強の話と書かんぞ。
「すみません、リョウ君。勉強に付き合ってもらっちゃって」
「別に気にしなくていいよ。エルも今回のテスト前大変だったみたいだから」
我が家にエアロードさんが夕食を食べに来てから数日が経った。それからの毎日は特に代わり映えはしない……と言いたいところだが色々と変わった気もする。
まず毎日のお弁当を作る量が二人分から三人分になった。これに関しては大して手間は変わらないので構わない。エアロードさんから食費も受け取っているし金銭的にも問題はない。
次に僕の日常だが、一週間に3度程度バイトが入ることになった。天使と悪魔関係を知っている常識ある人間というのがスメラギ製薬の研究部には必要だったらしい。毎日毎時間彼らの暴走を止めるのが仕事となっている。始めたばかりだがもう彼らに遠慮はいらないと身をもって知った。
その上で戦闘訓練みたいなものを受けており、僕の経験値は最初とは比較にはならない。3時間以上ぶっ通しで色んな人と戦うのは体力的にキツイものがある。いや体力は問題ないが精神がガリガリ削られている感覚がする。
『胸を借りていきます、ドッペル様!!!』
なんて言いながら戦いに来る悪魔が多いのだ。彼女達はあのクソッたれのドルザルクにずっと囚われていたコレクションにされていた者達。それを教授が天界組織にバレないように秘密裏に確保していたらしい。大体が衰弱しきっており、未だに本調子が出ないのだがそれでもやれることを探しているという。動かない、動けないということがトラウマになっているとは教授の弁だ。
そんな経験をしたから、その環境から解放した僕に対して物凄い恩義を感じてくれている。リルナ曰く『上級悪魔だったらともかく中級以下は大分人間寄りだよ。“欲望”の中身も常人らしく理解しやすいしね』とのことだ。確かに美味い物を食べたいとか力試しをしたいとかは理解出来るので彼女達に対して隔意はない。教授にとってもいざという時の戦力にしたいだろうから下手な扱いはしないだろうと思う。
「リョウ君、どうかしましたか?上の空みたいですが……」
「ちょっとバイトがね。慣れればだいぶ楽だと思うんだけど始めたばっかりだから」
「慣れないことをするのは初めのうちは大変ですからね。私もそうでした」
エルに聞かれて本音で答える。互いに隠し事はある身だがどうしても隠さなきゃいけない一点以外は話してしまっていいだろう。
しかしエルの場合今もまだ慣れない事ばかりだろうに。こうしてリビングに集まって勉強会をしているのも彼女がテストの補習を受けることになったからだ。天使関連について知らなかった頃の僕であれば逆に違和感を感じるだろうが、全てを知った身からするとこれは至極当然の結果だと納得する。進学校の授業に一ヵ月程度でギリギリ赤点というところまで持ってきてる時点で彼女の素の頭の良さは僕よりもずっと上だろう。
「数学や歴史なんかはいいんですけど、古文や現代文がちょっと……」
「エルは記憶力いいから暗記は問題ないよね。で、文系の方がちょっと惜しいってところかな」
「はい。読めなくはないんですけど意味が理解出来なくて……作者の気持ち、というのも納得がいかないものばかりでした。締め切りに追われている状況であったなら何とか間に合わせる以外の感情はないと思うんですが」
「うん、それはそうなんだけどね。この場合考えるべきなのは問題を作った人がどう答えて欲しいかだと思うよ。作者の気持ちなんて結局その人にしか分からないしね」
テストに出てきた夏目漱石や森鴎外のような小説家は調べれば調べる程こんな事考えてないだろうとツッコミしたくなる人間だった。憧れを持って調べたら全て真っ向から叩き潰された時の衝撃は未だに憶えている。まぁ、昔のもう死んでしまっている人のことを外からアレコレ言うのは好きではないのでそこはやめにしてエルがテストを合格できるようにする方を優先する。
「問題を作った人、この場合は先生ですね。それだったら納得も出来ます」
「それより漢字とかは大丈夫?読むの大変だったりは……」
「大丈夫ですよ。見た目は外国人ですけど中身は日本人そのものですからね!!」
そう言いながらもたまに問題文の意味を理解できてない部分が結構あったりする。これに関しては世界で一番難しいと言われる日本語が悪いのかもしれないが。
『よくよく考えたら僕はエルのことを何も知らないんだな……』
『そりゃ出会ったのが1ヵ月前なんだから仕方ないんじゃない?逆にあっちだってお兄さんのこと何も知らないも同然だし』
僕の漏れ出た思考がリルナに届き、そんな当たり前のことを改めて認識する。僕はエルの正体のことを知って、どうしてそんなことをしているかは知っている。だけどどうして僕の家を選んだのかが分からない。彼女の容姿ならばエアロードさんのようにアイドルになった方が簡単に“愛”を手に入れることが出来ただろうに。
知りたいと思ってもこちらからは何も動くことは出来ない。幼馴染という関係を刷り込まれて、その認識が消えていることを知られる訳にはいかないから。好きな人に嘘を吐き続けるというのは辛いものがあるが、この選択をしたのは僕自身の意思だから恨むなら自分しかいない。
『そんなに気になるならドッペル状態の時にでも聞けばいいんじゃない?聞き方に気をつければ正体に繋がることもないと思うけど』
『いやいや、エルは僕より凄く頭いいからね?少しでも不審な点を見つけたらそこから芋づる式に全部引っ張り出されるかもしれない以上聞けないよ』
今こうして一緒に勉強をしてても分かる。それくらいに彼女の学習速度というのはずば抜けていた。天使が全員こうだとしたら人間よりも遥かに上なんじゃないかとさえ思う。いや、人間の仲にも彼女のように物凄い人はいるだろうからやはり僕が凡人なだけかもしれない。
「むぅ……これは……」
「ん?どうかしたのエル」
「いえ、少しだけこのテストに書かれている小説に共感してしまいまして」
「この?って、ああ……夏目漱石の「こころ」だね」
本当にごく一部分しか書かれていないがこの「こころ」は中間だけでなく期末にも出てくるだろうから読み解いておくのは必須だと言えるだろう。
しかしこれに関してエルが共感できる部分があったりするだろうか。軽く思い出そうとするが思い当たる部分を思い出せない。
「大切な友人に終始何も言えず、そのせいでその友人を永遠に失ってしまう。もしもちゃんと話が出来ていればこんな結末にならなくて済んだかもしれない。そこが、少し私自身に重ねてしまってちょっと、辛いですね」
「うーん。つまりエルは僕に何か隠しているってこと?」
「はい、隠してます」
誤魔化されるとばかり思って口にした質問に彼女は真っ直ぐこちらを見てそう答えた。目を逸らすことなくこちらを見つめる紅い目は、だけど揺れていて不安を感じているようだった。
「私は、リョウ君に隠し事を、しています」
「それは僕には言えない事なんだね?」
「はい。でも隠し事をしていることくらいは」
「僕はエルが何を隠していようと気にしないよ。そんなことで僕達の関係は変わらないって断言出来る」
その隠し事とは天使であることだろうか。それとも幼馴染だと偽ったことだろうか。それともそれ以外の何かなのか。心を読むことのできない僕にその中身は分からない。それでもできることと言えばこうして言葉を尽くすことだけだった。
「それに僕だってエルに隠し事くらいあるしね。だからお互い様だし、そんなこと当たり前なんだよ」
「それでいいんでしょうか。もっと悩むべきことのような気が……」
「悩むことも気にしないこともどっちも良いんじゃないかな。立ち止まることが悪いことだとは思わないし、進むことだって良いことばかりじゃない。後からああすればよかったって後悔することはあり得るかもだけど、どのみち違う選択をしたところでどうなるかなんてわからないんだから」
神様ならわかるかもしれないけれど贔屓して欲しいなんてそれこそ望み過ぎだろう。僕の人間関係なんてそれこそSSRを越えたURでしかないのだから。星4以上どころか星5しかいないし、なんなら限界突破した星6までいるのだから。これ以上望むことは罰が当たるというものだ。
「ふぁ~~~~。しかし、ちょっと疲れたね。休みとはいえずっと勉強は大変だ」
「リョウ君はバイトもありましたからね。私も大分問題を理解することが出来てきたので休んでもいいですよ?」
「うーん、じゃあお言葉に甘えて……ちょっと、昼寝するね……」
エルに言われて連日大変だったことを思い出して瞼を閉じる。すると僕の意識は闇に消えるように眠りの中に入っていったのだった。
「……リョウ君、眠ってしまいましたか?」
エルの言葉にリョウの寝息が返ってくることでその意識はもうないことが分かった。エルは少し考えた後その場を立ちリョウの下に近づく。
リョウが枕代わりにしていた座布団を慎重にどかして、その頭を自身の膝に乗せる。膝枕をしながらリョウの黒髪を撫でながら愛おしそうに眺める。しかし、その目には罪悪感も宿っていた。
「リョウ君は、優しいですね。優しすぎて溺れそうになっちゃいそう」
どうして彼はいつも自分が欲している言葉をくれるのだろうか。初めてであった時も、再会した時も、今こうしている時も。毎日毎日、欲しい言葉をくれる。おはようを始めとした挨拶も、いい天気だねという何気ない言葉もエルにとっては全てが奇跡のような環境で。ここにいる対価が命懸けの戦いだとするなら喜んで彼女はそれを払い続ける。
「私が天使だって知ったら貴方は何というのでしょう。きっと今までのような関係ではいられないでしょうけど」
記憶を弄ってまで構築した関係をそのまま受け入れてくれる人間がどこにいるだろうか。エルはそんな幻想には浸れない。知っても気にしないだろうなんて、例えそれがリョウ本人の言葉だとしてもエルは信じられない。今をずっと求め続けた彼女にはこれ以上なんて存在しないのだから。
「受け入れてくれれば、なんて思う自分もいますけど。それがどれだけ難しいかなんてよくわかってますから。それでもこれくらいは許してください」
膝枕をし、無防備に眠っているリョウの額に自分の額をくっつける。天使と人間、どこまでも遠いはずの距離がこれほどまでに近いと錯覚しそうで。それが本当になればどれだけいいだろうとエルは悲しそうに笑う。普段無表情の彼女を知っていればそれがどれほど大きい感情なのか分かるだろう。
「好きです。好きですよリョウ君。十年前から、ずっとずっと。私の、私だけの希望だったんです」
誰も聞いていないからこそ漏れ出た本音。今の自分は天使よりも悪魔に近いと自嘲しながら、それで求めることのない想いを口にしてエルはリョウの髪を撫で続けた。
『これ、聞いたことバレたら間違いなくアタシぶっ殺されるだろうなぁ……』
リョウの中に存在する共犯者はそのエルの想いを聞いてしまい、その重さを知ってしまう。何をどうしたら天使をここまで堕とすことが出来るのかと疑問に思いすぐその答えに辿り着く。
『お兄さんのことだから欲しい言葉をぶつけちゃったんだろうねぇ。それも混じりっ気なしの本音で。そう考えればだいぶ納得だよ』
リルナにとってもエルがリョウを選んだ理由はずっと分からなかった。自分のように偶然なのかと思ったがこの執着具合を知れば間違いなく自分の意思で選んだのだと分かる。
そのことを知ればきっとリョウは喜ぶだろうと思う。リルナからしても共犯者の彼はエルに対して強い想いを持っているのだから。自分の存在を知らなかった不運を恨んで欲しいと思い
『…………なんか、それは嫌だな』
結局リルナはこの時のことをリョウには話さなかった。それがどういう理由からなのか彼女にも分からない。ただ、自分を見てくれる時間が減るのは嫌だという事だけは分かった。
『こうすれば、アタシにも分かるかな』
普段からリョウが寝ている間、心の中の世界にもその寝姿が現れる。リルナは現実のエルの真似をして、彼を膝に乗せる。頭の重さが膝にかかって拷問か何かと勘違いしそうになる。
『……うん、悪い気分じゃ、ないね』
天使と悪魔を振り回している少年はそんなことがあったとも知らず、ただ眠り続けていた。
時間関係としては3月初め辺りにエルがリョウ君の所に乗り込む
同時期にドルザルク襲来。一ヵ月間にわたり迷惑行為を繰り返す。
4月の最初期にドルザルクぶっ殺し完了。と、同時期にテスト。
この学校の中間テストは学期最初期にあるってことでお願いします。時間関係タイトにしちまった。この学校の中間は前学年や中学時代の確認テストみたいな感じで、はい。
こういうところの整合性合わないの嫌いなんですけどこうなっちまった……。
エルが来た時間3ヵ月前くらいにしとけばよかったと後悔中。
どのパートが一番面白い?
-
ラブコメ、甘すぎるラブコメ!!
-
設定語り。もっと見せろぉ!!
-
バトルよバトル。もっと濃密に!!
-
その他ァ!!!