幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった 作:ビスマルク
「何度でも言いましょう。私と一緒に来なさい、シルフィ」
「なに、を」
「簡単な話です。貴女が真に欲するものはそちらでは手に入らない。認められ褒められ欲されるという願いを。何よりも求められるという願いを」
その言葉は毒のように。いや、病のようにシルフィの心を蝕んでいく。図星を指さされ、動揺した心の隙から撃ち込まれたそれは天使の心をも黒く塗りつぶそうとしていた。
「ですが私は違います。私は貴女を欲している。その証拠に私はジャネット・シックをも囮に使い貴女と接触した。敢えて断言しましょう。エル・ライトガーデンよりシルフィ・エアロードを私は選ぶと。貴女にはそれだけの価値があると」
「エル、より……」
「当然でしょう?私としても隠れ蓑であるジャネットを使い捨てるのは苦渋の決断でしたよ。なにせ彼女は“欲望”を集めるのにとても役に立ってくれましたからね。ほら、その証拠に私が作り出した病は今もなお世界を襲っているでしょう?」
「ッ!!アンタが病気を作り出したせいで何人も、何千人も、何万人も死んでる!!!そんな奴についていくわけないでしょうが!!!」
シルフィが求めている物を当てられて、動揺し引きずり出された心が奮起しその場でとどまる。『病孤涙苦』の被害規模を思い出し、自分が折れたらこの先どんな被害が出るか分からない。シルフィの持つ責任感がその未来を許容できない。
「ならば、貴女が私と来た場合病を流すのをやめましょう。私にとってはあれも“欲望”を集める手段でしかありませんからね。貴女が私と共にある限り、ね」
「は……?」
「ほら、貴女が私と来てもいい理由を作りましたよ?『病孤涙苦』の被害を減らし、それを今後抑えつけるという名目を。貴女の天使としての心はこれで守られませんか?」
「な、にを……言って……」
「貴女は天界組織からも多大な評価を得られるでしょう。『病孤涙苦』を止める為にその人生を捧げることにした尊い存在として。誰からも認められるでしょう。それだけのことをしたのだと誰もが」
「……………………」
「エル・ライトガーデンが救ってきた人間の数より、遥かに多い人間を救った英雄天使。誰もが認めるその偉業。私と来るだけで貴女のその評価は不動の物となる。私を知っている者からは必ずそう評価する。だって、それだけのことをしてきましたからね」
承認欲求。常にエルという天才が隣にいた。誰もが彼女を見てシルフィを見る者はいなかった。誰かに認められたい。一番に想ってほしい。その願いを、想いを『病孤涙苦』は土足で入り込み抉ってくる。使命感や責任感、それら全てをシルフィを最も多く占めている承認欲求で塗りつぶしていく。
その言葉は蛇の毒のように静かに心を侵しつくしていく。がん細胞のように気付いた時には手遅れにしていく。『病孤涙苦』の被害規模という確かな事実があるからこそ、それを止める為には仕方ないのではと思わせていく。冷静になれば誘導されていると分かるはずなのに、それをさせないその話術はかつて人を扇動した経験からか。
かつてジャンヌ・ダルクとして生き、一人の慕ってくれたジル・ド・レェという将軍を虐殺者に仕立て上げた手腕はここでも発揮されていた。
「ここでどうするか決める必要はありません。今日は帰って、悩んでくれていいですよ。もちろんそこの彼も連れて行ってください」
「……私に時間を与えていいのかしら?」
「当然でしょう?貴女のような心根の天使、悩むのも必然です。即決するような考えなしを選んだつもりはありませんよ。ええ、ジャネットのような道具ではなく、貴女には私のパートナーになってほしいですからね。おっと、天界組織には私のことを報告しないでください。もし私の元に他の天使が来た場合、即座に致死性の病を無差別にばらまきますので」
「…………」
「悩みに悩んで、そして私を選んでください。その時を楽しみにしていますよ」
◇
今すぐ起きてそのにやけ面を叩きのめしたい衝動に駆られる。好き勝手言ってエアロードさんの心を踏みにじっているそれを否定したくなる。怒りが理性を引きちぎりそうになるのを耐えることが出来たのは隣に立って強く手を握ってくれているリルナのおかげだろう。
「アイツ……!!あの野郎!!!」
「我慢、我慢してお兄さん。ここで戦ったらホテル全体が戦場になる。そうなったら最初に死ぬのは無関係の人間達だよ」
「分かって、るけど……!!」
『病孤涙苦』の要求は簡潔に言えば「こちらに来い。被害増やしたくないだろ。来れば甘い飴をやるし、他の人間にとってもお前にとっても悪い話しじゃないよ」だ。
部分的に見れば成程、悪い話しではなさそうだ。だがはっきり言ってしまおう。こんな物は詐欺同然だ。
悪魔にとって絶対である“契約”を交わすこともなく口約束だけだし、もしも守ったとしてもエアロードさんがどんな扱いをされるか分かったものじゃない。
僕は確信している。人を誑かし、惑わせるということにおいてこの悪魔以上に長けている者はいないと。相手が何を欲しているのかを理解し、言葉だけで死地に追いやる。相手に選ばせるという行程を踏むことで自分の責任を可能な限り排除する。どうなったとしても想像力が足りないからこうなったと言い張る姿が容易に想像出来る。
「エルを、エアロードさんを引き込む為の餌にしやがったな……!!エアロードさんが、どれだけ頑張って今そこにいるのか知ってて、踏みにじろうとしやがったな……!!」
「落ち着いて、本当に落ち着いて!!バックアップもなしに暴れたら、本当に死人が出るしアタシ達の正体だってバレるし今後より悪いことになるの確定するから!!!」
リルナが悲鳴のように落ち着いてを連呼する。それのおかげでこの精神世界に引き込んで奴の話を聞くことが出来た。もしいなかったとしたら怒りのまま飛び出していたかもしれない。いや、百パーセント飛び出していただろう。それほどまでに僕の地雷を踏み抜きまくっているのだ、この上級悪魔は。
僕は、頑張っている人が好きだ。願いを、夢を叶えるために頑張っている人が好きだ。もちろん頑張っている内容も大事だけど。他人を蹴落としたり陥れたりする行為を好きになることはない。
だからこそ僕は智弘君やエアロードさんを尊敬していた。片やプロサッカー選手になる為に日夜努力している親友。片やアイドル、学生、天使の三足の草鞋を履いて体調を崩しても一人でやり切ろうとしている少女。尊敬し、彼らが成功する手伝いをするのになに一つの躊躇いもない。
無論その夢が叶わないこともあるだろう。無残に負けて、終わりになってしまうこともあるだろう。だけど頑張ってきたという事実はなくならない。そこで得てきた物をその先の人生で活かせない訳がない。努力というものはその人の中に必ず根付くのだから。
「それを、アイツは……!!」
一方向から見た事実を全てのように騙る。
成程、確かにエアロードさんはエルのことを特別視して比べられた時苦痛を覚えてきたのだろう。彼女の様子を見ればそれは間違いじゃないのかもしれない。
だけどそれだけではないだろう。親友という関係性が偽物だったわけじゃないだろう。嫉妬もあったかもしれないけど、確かに二人は想いあっている親友だった。
エアロードさんはエルがデートする時、成功するように手伝ってくれた。
エルはエアロードさんが風邪で寝込んでいる時、僕を送り出してくれた。
彼女達のその心を否定させはしない。それを他人が踏みにじっていいわけがない。断じて、無責任に誑かして、掌の上で弄んでいいようなものではない。
「千年生きた悪魔……?上等だ、そのカビの生えた称号と一緒にゴミ箱に叩き込んで燃やし尽くして灰すら残らないようにしてやる!!!」
「あーあ……。こりゃ、もう戦わないって選択肢はなさそうだねぇ……。今日ここでやり合おうとしないだけまだいいけど」
『病孤涙苦』の居場所を特定出来る日、それをコイツの命日にする。
僕の心にその決意は刻み込まれることになった。
設定公開はどういう形にすべき?
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話しの中で自然にを頑張って欲しい
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設定だけで一話使ってほしい
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設定とかどうでもいいからストーリー書いて