幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

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『病孤涙苦』戦クソ長くなってしまってすみません。

『大飢万征』が3話程度で終わったことを考えるとコイツやっぱすげぇ生命力してんな……。


影法師と『病孤涙苦』 ⑦

 シルフィを見送った後、緊張していた全身の力を抜いてディアンナに身体を預ける。同時に僕の中にいるリルナが悪魔の力を活性化させることで病に対する抵抗力を上げた。そのおかげで先程まで荒かった息も大分落ち着く。

 

 

「はぁ……ふぅ……。よし、やれる」

 

「呆れた元気さデスねぇ……。人間離れしてるというか私よりよっぽど悪魔らしいというか反応に困るデス」

 

「人間扱いされてないことに怒るべきなのか分からなくなるよ、その反応。だけど今は逆にそうじゃないとみんな死にかねないし良いことだと思おう」

 

『アタシとしては今すぐベッドに直行して欲しいけどねぇ。抑えてるだけで身体が病に冒されてるのは間違いないんだから』

 

「ゴールデンウィーク中短期入院するべきかもしれないデスね。教授達も便宜図ってくれそうデスし。リョウさんが入院したらサポート役の私も休めるデスし」

 

「君の終始変わらないそういうところ僕は好きだよ」

 

「はいはい。そう言うのはあの銀髪天使だとか緑髪天使だとかリョウさんの中にいる子に言ってほしいデス」

 

「えっ、ことあるごとにいつも言ってるけど?」

 

「あー。これが通常運転デスか。苦労するデスね、リルナちゃんも」

 

『いつまで経っても慣れないからお兄さんが好きそうな反応返しちゃうのが最近の悩みだよぅ』

 

 

 何故か知らないけどいつの間にかリルナとディアンナが仲良くなっていた。いつか対面させたら色んな話で盛り上がるかもしれない。そんな未来を思い描きながらステージが破壊されて僕達の元にドッペルの姿をしたヒルダと、戦意喪失する気配もないダフネが転がってくる。

 

 

「大丈夫、ヒルダ?」

 

「ごめん、もうちょっと厳しいかも。リョウさんの方は?」

 

「シルフィは自分の居場所に行ってくれたよ。だから問題ない、とは思う」

 

「天使の方じゃなくてリョウさんの体調を心配してるんだけど……」

 

 

 ドッペルの姿をしたヒルダから心配の声が上がるが、いつもの彼女の声ではなく僕を模した声音なので違和感がある。自分が聞いた自分の声と他人が聞いた声は全然違うとは聞いたことがあるがここまでとは思わなかった。あと彼女は悪魔らしく天使のことを敵視しているのも伝わってくる。他の二人はそこまで天使を特別敵視していないが本来はヒルダの方が正しいのだろう。

 それはそれとしてヒルダの問いに対しては目を逸らす。彼女がその口調からは想像出来ないくらいには奉仕体質というか、ドールさんにメイドの作法を教わっているくらいにはそちらが“欲望”の方向で主人と一応定められている僕に対して基本忠実なんだけどこういう時は怖くなるのでそちらを見たくなくなる。なので地面に爪を立てて削るくらい口惜しそうなダフネを見て精神的に安定を得る。

 

 

「あーチックショウ!!!時間切れかよ!!!俺が一人でぶっ倒したかったのによぉ!!!」

 

「今回は難しかったってことで。次回を楽しみにしておきなよ。まぁその前に僕に勝たないと一人で上級悪魔と戦わせたりとかしないけどさ」

 

「分かってるって!!弱者は強者に従うもんだからな。アンタが俺に勝つ限り指示には従ってやるよ。いつか下剋上してやるけどな!!!」

 

 

 そう言いながらダフネは僕の身体に触れてその手を光らせる。彼女の能力は時間操作。自分と自分が触れているモノの時間を加速させたり、停止させたり、巻き戻したりできる。もっとも能力の行使にはかなりの消費があるのでバカスカ使う彼女は“欲望”切れが早かったりするが。

 特に巻き戻しなど今の彼女には5分前に戻すのが限界だ。だが5分も巻き戻ってくれるならそれで十分だ。急速に体調が元に戻っていくのを感じ、身体から怠さが消えていく。

 

 

「――――先程より随分と弱くなってますね、影法師。その程度で私を邪魔しに来たのですか。中級悪魔を連れてくる程度で、私に勝てると……おや?」

 

 

 僕の体調が戻ったのとほぼ同時に悠々とした足取りで破壊されたステージの向こう側からジャネット・シック――――『病孤涙苦』が歩いてくる。今まで散々邪魔した苛立ちを晴らす為にドッペルを甚振ると思っていた。だから二人に任せても死ぬことはないと思ってはいたが、想像通りで少し安心した。僕の想像は正しかったようで今更のように慇懃無礼な態度を取り繕っている。少しでも自分のプライドを取り戻そうとしている慎ましい努力だろう。

 

 

「確か、シルフィのプロデューサー代わりの沢渡リョウ、でしたか。何故ここに?」

 

「ジャネット・シックの口調じゃなくていいのかな、『病孤涙苦』?それとも中級悪魔二人を圧倒出来たからプライドが回復した?安いプライドなだけに買い戻すのも簡単そうで羨ましいよ」

 

「貴、様……!!」

 

 

 ここまで聞こえてくるような歯ぎしりと一緒にその美しい顔が酷く醜く歪む。異物が入っているからだろうか。本来のジャネットがどのような人物かは知らないが多分そんな表情を本来はしないだろうことは想像できた。あくまで想像で、『病孤涙苦』の犠牲になる前の彼女がどんな人だったのかを知る術は僕にはないけれど。

 

 

「ヒルダ、ディアンナ、ダフネ、ここまでありがとう。三人とも先に拠点に戻ってて。後は僕がやる」

 

「武運を祈ってるわ、リョウさん」

 

 

 ディアンナが二人に触れたままその能力を発動させてマーキングしてある教授の研究所に跳び姿を消す。あとに残るのは荒れたステージと、僕と『病孤涙苦』の二人だけ。コイツと二人きりの時間など吐き気がするがそれでも言わなくてはならないことがある。

 

 

「沢渡リョウ……なるほど、お前が下級悪魔と契約した影法師ですか。悪魔と契約しているということは天使達についても知っているという事でしょう?私と同じように信頼している者を裏切るのが楽しい手合いですかな?」

 

『今すぐそのドブ臭い口閉じて欲しい。お兄さんがそんな人間だったらアタシはもっと楽してたしこんな毎日心配性になりそうになってることもないよ。逆に幸せを感じることもなかっただろうけど』

 

 

 リルナが『病孤涙苦』の言葉に反論してくれている。それ自体はとても嬉しいのだが『病孤涙苦』が言っていることにも一理はある。無論エル達を騙していることに対して愉悦を感じているわけではない。むしろ言いたくて仕方がないくらいだ。今でこそこうやってドッペルであるということを隠しているが、そもそも隠し事をするということ自体が僕は苦手なのだ。

 ともかく、僕が『病孤涙苦』の言葉に対して唯一頷くことが出来る言葉は決まっている。

 

 

「その通りだよ『病孤涙苦』。僕はエル達を裏切っている。もちろん彼女達を傷つけるつもりなんてない。守る為に、こうしてリルナに契約してもらっている。だけど彼女達が天使だと知っていることをエル達は知らない。その時点で僕は裏切り者なんだろうね」

 

「なんだ、自覚があったんですか。ええ、貴方が悪魔と契約していると知った時の天使達の顔を想像しただけで私は頬が上がりますよ」

 

「安心しなよ。もしそうなる未来があったとしてもお前がその光景を見ることはないから。理由は、言わなくても分かってるよね?」

 

「…………下らない理由だと思いますが一応聞いておきましょう。それは何故ですか?」

 

「決まってるだろ。――――今日ここで、お前は死ぬからだ」

 

 

 『病孤涙苦』を前に僕のままで会ってしまった以上逃がすという選択肢はない。見られなくてもないから結論は変わらないけれど。

 歩み、『病孤涙苦』の距離をゆっくりと詰めながら足元から影が僕の身体を覆っていく。最早慣れてしまった高揚感が僕の口調に影響を出し始める。

 

 

「『病孤涙苦』。お前は僕の地雷を四つも踏んでるんだよ。冥途の土産に聞いていけ」

 

「貴方の遺言として聞いておきましょう」

 

 

 苛立った顔を隠そうともしない。確かにコイツの計画をグチャグチャにしたのは僕達だ。だからそういう目で見られるのは想像通りではあるが、こっちはそれ以上に腹立たしくて仕方なかった。この際だから全てぶちまけさせてもらうことにする。

 

 

「一つ目。お前は千年以上を生きて人間を苦しませ続けた。今この瞬間にもだ。特に、シルフィを始めとした大勢のスター達の歌を楽しみにしてきた人達を天使達の足止めの為だけに暴走させている。あの人達の幸せをお前は土足で踏みにじって、嘲笑っている」

 

 

 今回の大型音楽フェスの為に何人、何十人、何百人、いや恐らくは万に届く人達が仕事をまっとうして来ただろう。僕もまた、ほんの一端ではあるがそれを実感したからこそ分かる。きっとこの仕事に自身のプライドをかけている人達が数えられないくらいいたはずだ。

 そしてその仕事の結果を楽しみにして今日この日、ここにきているお客さん達。シルフィのライブで盛り上がっていた彼らを知っているからこそ誰もがこの日を望んでいたことを知っている。

 更に『病孤涙苦』を生かした場合コイツは同じことを繰り返す。今日のように罪もない人々が苦しめられ、背負わなくてもいい苦しみを背負わせる。

 努力、未来、そういった全てを『病孤涙苦』は踏みにじり、唾を吐き、嘲笑っている。人の努力を嗤い利用している。僕はそれが許せない。

 

 

「二つ目。お前は僕の好きな人を傷つけた。僕の尊敬する人を傷つけた。僕の仲間達を傷つけた。戦いの結果だから仕方ない、なんて納得出来るほど僕は大人じゃない」

 

 

 殺し合いをしているのに傷つけられた程度で文句を言うな。そんなことを言う奴がいるかもしれない。だが僕から言わせてみればそんなもの関係あるか。大切な人を傷つけられたなら怒るのが普通だろうが。逆に僕が誰かの大切な存在を傷つけたならその誰かは僕に対して怒っていいはずだ。

 僕はジャネット・シックの話を聞いてマネージャーのことを大切にしていると知った。だからマネージャーに扮してる『病孤涙苦』を殺したことで恨まれるのであればそれは受け止めるべきだと思っていた。不幸中の不幸で、既にジャネット・シックは『病孤涙苦』に飲み込まれていたが。

 エルもシルフィもヒルダもダフネも、傷つけられた。彼女達の身体に笑いながら傷をつけた。断じて許すことは出来ない。

 

 

「三つ目。お前は、お前を信じていた人達を裏切ってその信頼に唾を吐いて嗤った。それが自分の“欲望”だからといって何も省みず、ただ踏みにじった。」

 

 

 エル達に何も言わず黙っている僕が言えることではない。だがそれでも耐えられない怒りがある。コイツはこれまで何人の身体を乗っ取ってきたのだろう。何人を絶望させてその心を折ってきたのだろう。きっと数えるのも馬鹿馬鹿しくなるかずだろう。

 それに対しコイツは悔やむどころか笑っている。楽しんでいる。

 ふざけるな。そんなものを許したらコイツを信じていた人達の無念はどこにいけばいい。どこにもいかずに泣き寝入りしろというのか。

 分かっている。こんなことはただの自己満足だ。裏切られた人達の代弁者になろうなんて烏滸がましいにも程がある。だからこの怒りは僕が勝手に抱いた僕の我儘だ。僕の想いのまま、コイツは絶対に許さないと決めた。

 

 

「そして四つ目。これが何より重い。お前を絶対に殺す最大の理由だ」

 

「三つだけでも十分だと思いますが?いい加減に聞き飽きて」

 

「お前は、エルとシルフィの絆を利用して二人を傷つけた。あの二人の友情を、互いへの想いを踏みにじった。それがお前が今日地獄に落ちる最後の理由だ」

 

 

 エルにシルフィと暴走した人達を天秤に乗せて苦悩させた。シルフィのエルへの劣等感を刺激してその心を折ろうとした。互いを強く想っているからこそそれは今後も引きずるかもしれない。二人が今まで通りの関係でいられるか分からない。あの二人が笑いあっている光景を奪っているかもしれない。全て可能性でそうならないことだって十分にあり得る、というより今まで通りである可能性の方が高いだろう。

 だが、それが『病孤涙苦』を許す理由にはならない。

 

 

「僕の――――俺の大切な人達を利用しておいて無事に済むと思ってんじゃねぇよ『病孤涙苦』。今日ここでテメェを潰して他の上級悪魔にも危機感ってもんを植え付けてやる。『大飢万征』だけじゃ足りねぇみたいだからなぁ」

 

 

 影が俺を覆い、ドッペルとなる。自然と口調が代わり戦いへ向き合う形になる。こうなることに慣れてしまったがそれで戦えるようになるなら受け入れる。

 完全に戦闘態勢に入った俺に対し『病孤涙苦』は慌てた様子一つも見せずに口角を上げて笑っている。ステージ上に立っている奴に対して俺は観客席側にいるからか、物理的な意味でも精神的な意味でも見下しているのが分かる顔をしている。今すぐそこに拳を叩き込んでやりたい。

 

 

「『大飢万征』のような小物と私を一緒にするな、などというのはきちんとした物差しを持っていないが故の悲劇ですねぇ。比較する事すら烏滸がましいということをその身体に教えてあげましょう。散々私の計画を邪魔したのです。覚悟の上でしょう?」

 

「生憎ゴミを図る物差しなんて無駄な物はもってねぇんでな。明日は生ごみの日だ。テメェを潰してさっさとゴミ置き場に叩き込んでやるから御託言ってんじゃねぇよ」

 

 

 互いに殺意を放ち、軽口をたたきながら相手を殺す方法を考えている。本当に嫌になるしこういうところをエルには見られたくない。それでも一度決めたのだからやり遂げるまで走り切る。

 病の力を宿した槍を持った『病孤涙苦』と、“影爪”を腕に展開した俺がその場から動いたのはほぼ同時だった。




なおリョウ君は自分が天使関連とか知っていることをエル達に黙っていることに対して罪悪感持っているし自分が悪い男だとも思ってる。

でも乙女心を揺らすタイプの悪い男だとは思っていない模様。

設定公開はどういう形にすべき?

  • 話しの中で自然にを頑張って欲しい
  • 設定だけで一話使ってほしい
  • 設定とかどうでもいいからストーリー書いて
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