幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった   作:ビスマルク

70 / 70

長くなった二章終わりィ!!!

一章が12万5千文字くらいだったの考えると大体1.5倍になりましたねぇ……。


エピローグ ① そして病は消えていく

 

 音楽フェスが終わりに近づいている頃、遠く離れたシルフィの部屋の中で蠢く影があった。

 

 

『はぁ、はぁ……!ふざけ、るな……!この私が、あんな形で死ぬわけがないだろうが……!!』

 

 

 その声は通常であれば誰にも聞こえない声。それもそのはず。それを発しているのは細菌レベルに自らを分解し、何とか蠅程度の大きさになった『病孤涙苦』から発せられていたのだから。

 

 

『まずは、シルフィだ……!!奴に入り込み、“欲望”を取り込み、隙を突いてあのイレギュラーを殺す……!!』

 

 

 蠅程度の大きさになった『病孤涙苦』には既に上級悪魔に相応しい力はない。それでもその執念は死ぬことを許さず生き長らえる最適な方法を取っている。

 その欠片はジャネット・シックのマネージャーに取り付いていた物の残滓だった。本体とは切り離されていたが今やこちらが『病孤涙苦』の本体になっている。それは本体が無残に死んだことを指し示す。そして本体と同期した記憶により自分が完膚なきまでに敗北したことを知った。

 

 

『寄生さえしてしまえば、あとはどうとでもなる……!!まだ、まだ私は絶望を吸い足りないんだ……!!私は、私はもっと』

 

 

 一度感染したのであれば絶対逃がさない不治の病の如き執念深さ。それが『病孤涙苦』の本質。そしてその本質は自身に屈辱を味わわせた二人を破滅させることに執着する。シルフィに寄生するなどすれば定期的に行われている天使達の検査によりその存在がバレる、などと今の『病孤涙苦』には考えられない。

 それほどまでに追い詰められながらそれでもなお目的を達成しようとするのは上級悪魔としての本能だろうか。

 

 

「――――それは不可能だと思う、よ」

 

『ッ!?誰だ!!!』

 

 

 だから『病孤涙苦』は気付かなかった。その本能こそが自身の死刑執行書にサインをしてしまったことを。

 誰もいないはずのシルフィの部屋に鈴を転がすような、天上の楽器を連想させる声。耳をくすぐるようなこの状況に似使わないその声が『病孤涙苦』に届く。

 

 

「リョウ(にい)に無様に負けて、それでも生き残ろうとするのは凄い、よ。でもこれ以上は、駄目。だってもう負けたんだか、ら。負けたなら素直に死なない、と。だって互いに命を懸けて戦ったんだから、そうじゃなきゃ不公平じゃない、かな?」

 

 

 声の主は静かに椅子に座りながら『病孤涙苦』を見ていた。艶やかな、鴉の濡れ羽色のような黒髪を床に着きそうなまでに延ばした、和製人形のような少女だった。

 全てに飽いたようなたれ目は静かに『病孤涙苦』を見つめている。それはもう捨て方が決まっているゴミを見るような目で、それに気づかない『病孤涙苦』は突如現れた少女に対して激昂した。

 

 

『黙れッ!!!私が、この『病孤涙苦』があんな死に方をするはずがないだろうがッ!!!私はもっともっともっと!!!誰からも恐れられ認識される病になるのだッ!!!そしてやがては『強欲』のあの方の隣に立つッ!!!!』

 

「……話、聞いてない、の?お前はもう負けた、の。『強欲』の馬鹿でも、要らなくなった玩具を捨てるくらいはする、よ?」

 

『私が!!捨てられるはずがないだろうがァ!!!!!』

 

 

 自分を最も強く求めてくれた『強欲』に心酔している『病孤涙苦』はその言葉を認められない。相手が誰なのかすら把握せずに今ある全ての力を使い黒髪の少女に襲い掛かる。シルフィの前にこの少女に寄生してしまえばいい。自意識を消さずに雑巾のように使い捨ててやるとその“欲望”に従って。

 

 

跪け(・・)

 

『グボッ!?』

 

 

 その“欲望”が『病孤涙苦』の死因になる。少女が呟いた言葉と同時に急激に増した自重によって床に叩きつけられる。いや、『病孤涙苦』だけではなく建物全体がミシミシと嫌な音を立てて倒壊しようとしていた。

 

 

「今日はこの寮、誰もいなくなっていてよかった、ね。おかげで面倒な制御しないですむ、から」

 

『な、んだこれは!?重力の操作!?それとも何かしらの質量操作!?天使か貴様ァ!!!!』

 

「ううん。人間だ、よ?天使だった時もあった、けど。悪魔だった時もあった、かな。だけど私は最初の生からずっと自我を維持し続けてるから、やっぱりこう名乗るべき、だね」

 

 

 建物が壊れないように手加減をしながら少女は脚を上げる。足元にいる文字通り虫けらのようになった『病孤涙苦』を踏みつぶす為に。

 その気怠げな目を見ながら『病孤涙苦』は足掻く。相手が何を言っているのかは分からないし理解しようとすらしないけれど生き残ろうとただ足掻いて。

 

 

「私は『怠惰』。自身は変わらず世界の法則を変える、『怠惰』の化身。名前は……名乗る意味はない、ね。お前はここで死ぬん、だから」

 

『は?』

 

 

 そしてその言葉を聞き生存本能も敗北を認める。目の前にいるのは悪魔達にとって絶対の強者。上級悪魔だとしても抗う事の許されない、意味を成さない本物の化け物。

 その言葉を嘘だと主張する事すら出来ない。『病孤涙苦』の本能がそれを本当だと認めてしまったのだから。理性は既に手放され本能は死を認めた。だからその終わりは必然だった。

 

 

「リョウ兄にこれ以上面倒、かけないで」

 

『ぐげ』

 

 

 静かに下ろした足が『病孤涙苦』を踏みつぶす。本来ならばそれだけでは細菌になっている『病孤涙苦』を殺すのは無理だろう。だが少女の力ならばそれが可能だった。細菌を物理的に潰せば死ぬように世界の法則を変えたのだから、そうならない方がおかしいのだ。

 

 

「これで終わり、だね。天使ももう少し頑張って欲しい、かな。でも、昔よりは大分まともになってきてるみたいだし、良しとしよう」

 

『―――――』

 

「うん。貴女もありがとう。魂だけになってもまだリョウ兄を助けようとしてくれて。おかげでコイツを始末することが出来た、よ」

 

『―――――』

 

「歌を、聞きたがっていた?リョウ兄らしい、ね。うん、それじゃあ貴女を私が保護する、ね。輪廻に行ったら私以外は記憶なくしちゃう、から。貴女もそれでいい?貴女の意思を尊重する、よ」

 

『―――――』

 

「分かった。それじゃあ、この箱の中に入ってて。また、その内身体を用意する、から」

 

 

 少女の近くにいた小さい光はそのまま持っていた小箱の中に入っていく。その魂がここまで少女を連れてきた。自分を解放してくれた優しい影法師を少しでも助けたくて。

 その動機を知っているからか少女は小さくため息を吐く。本当に毎度毎度変わらないなあの男はと思いながら。

 

 

「今回は、建物も壊さず済んだし良しと、しよう。早く帰って寝よう。お兄もうるさくなりそうだし」

 

 

 そのまま自然に扉から出て少女は夜の街を歩きだす。街灯に照らされながら歩いていると向こう側から走ってくる人影が見えた。思わず少女はうげっと声を漏らす。

 

 

「おい(すず)!!何処に行ってたんだお前!!!こんな時間に中学生が一人外に行くなよ!!!」

 

「分かってるよ、お兄。でもコンビニに行くくらい許してほしい、かな。急にアイス食べたくなったん、だもん」

 

「お前この前夜中にアイス食ってずっと腹抑えてトイレに籠ってたじゃねぇか。次の日も顔色悪くしてリョウも心配させて」

 

「うぐっ。それを言われると、弱い……。分かった、もう帰る、よ」

 

「そうしろそうしろ。ココアくらいは入れてやるからそれ飲んで寝ろ」

 

「むぅ……。子供扱いはやめて欲しい、な」

 

「そういう事言ってるうちはまだまだ子供だってことだ」

 

 

 頬を膨らませて今世の兄を睨むも、その兄は飄々と受け流す。思いきり溜息を吐いて共に帰路につく。家に帰れば両親からの説教もあるだろうことも考えると頭が痛くなってくるが夜中に出て行き心配させたのは自分なのだから仕方ないと諦めるしかないだろう。

 

 

「またリョウ兄に、慰めてもらわない、と」

 

「夜中に電話すんのはやめとけよ。最悪迷惑がられるかもしれないぞ。特にアイツ今バイト中だろ?」

 

「お兄みたいにリョウ兄は邪険にしない、もん」

 

 

 『怠惰』の魔王、今世の名前は秋野鈴。沢渡リョウの親友である秋野智成の妹である彼女は夜を二人で帰っていった。

 

各章終わりにネタバレ含むキャラ紹介&ストーリー紹介書いていい?

  • いいとも!!
  • それより本編書くのじゃ
  • キャラ紹介だけでいい
  • ストーリーネタバレOK
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

厄ネタヒロインたちとラブコメをすることになった(作者:灰鉄蝸)(オリジナル現代/恋愛)

「キミが好きだよ。だから殺すね」▼「あなたが好きです。好きなので洗脳しますね」▼「俺の死因多すぎるだろ…」▼異能バトルも伝奇ホラーもある世界で、バッドエンドの元凶になるような厄い美少女に好意を抱かれる――好意全開の金髪巨乳幼馴染み、ややホラーな超能力者の黒髪ロング同級生、彼女たちが引き起こす破滅の未来に巻き込まれる少年。▼愛が重くて、死の原因になる厄ネタヒロ…


総合評価:4481/評価:8.84/連載:40話/更新日時:2026年06月28日(日) 18:01 小説情報

底辺退魔師、ボロボロの魔法少女を拾う(作者:非表示)(オリジナル現代/冒険・バトル)

退魔師「魔法少女って霊力の生成効率悪くね?」▼魔法少女「退魔師って随分非効率な術式の使い方してるんですね」


総合評価:2972/評価:8.44/連載:9話/更新日時:2026年05月19日(火) 05:39 小説情報

家事代行先は闇堕ち寸前魔法少女の家でした~貧乏一人暮らしの俺は生活力を買われて内緒の焦れ甘同棲生活を始めることになる~(作者:水瓶シロン)(オリジナル現代/恋愛)

「ぎゅって、して……?」▼「構ってくれないと闇落ちしちゃうよ……?」▼ 高校入学を機に一人暮らしを始めた『御守望』は、青春を勉強とバイトに費やすような限界貧乏生活を送っていた。▼ 幼くして両親を失っている望が頼れる人は、田舎に住む祖父母くらいだが、なるべく負担は掛けたくない。▼ そのため、睡眠時間を犠牲にして死に物狂いで勉強することによって好成績を維持し、入…


総合評価:4591/評価:8.7/連載:88話/更新日時:2026年06月24日(水) 20:28 小説情報

夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~(作者:サッドライプ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

或いは異世界転移して閉じ込められた遺跡ダンジョンで意味深に封印されていた眠り姫を勝手に脳内彼女にしていちゃこらする妄想電波を毎日垂れ流していたら実は意識があったので全部聞かれていた話。▼「はい♪あなた様が言っていた恋人同士の睦み合い、全部ぜーんぶやりましょうね!!」「え゛」▼脱出不可能なダンジョンに放り出されてモンスターとバトるか可愛い美少女を眺めるかしかや…


総合評価:5708/評価:8.79/連載:44話/更新日時:2026年06月24日(水) 11:01 小説情報

和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?(作者:鬼怒藍落)(オリジナル現代/冒険・バトル)

一般和風好き転生者VS曇らせと理不尽と絶望▼ファイ!▼カクヨムにも出します


総合評価:3979/評価:8.05/連載:42話/更新日時:2026年05月07日(木) 07:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>