幼馴染(天使)が幼馴染(偽)だった。天使なのはガチだった 作:ビスマルク
長くなった二章終わりィ!!!
一章が12万5千文字くらいだったの考えると大体1.5倍になりましたねぇ……。
音楽フェスが終わりに近づいている頃、遠く離れたシルフィの部屋の中で蠢く影があった。
『はぁ、はぁ……!ふざけ、るな……!この私が、あんな形で死ぬわけがないだろうが……!!』
その声は通常であれば誰にも聞こえない声。それもそのはず。それを発しているのは細菌レベルに自らを分解し、何とか蠅程度の大きさになった『病孤涙苦』から発せられていたのだから。
『まずは、シルフィだ……!!奴に入り込み、“欲望”を取り込み、隙を突いてあのイレギュラーを殺す……!!』
蠅程度の大きさになった『病孤涙苦』には既に上級悪魔に相応しい力はない。それでもその執念は死ぬことを許さず生き長らえる最適な方法を取っている。
その欠片はジャネット・シックのマネージャーに取り付いていた物の残滓だった。本体とは切り離されていたが今やこちらが『病孤涙苦』の本体になっている。それは本体が無残に死んだことを指し示す。そして本体と同期した記憶により自分が完膚なきまでに敗北したことを知った。
『寄生さえしてしまえば、あとはどうとでもなる……!!まだ、まだ私は絶望を吸い足りないんだ……!!私は、私はもっと』
一度感染したのであれば絶対逃がさない不治の病の如き執念深さ。それが『病孤涙苦』の本質。そしてその本質は自身に屈辱を味わわせた二人を破滅させることに執着する。シルフィに寄生するなどすれば定期的に行われている天使達の検査によりその存在がバレる、などと今の『病孤涙苦』には考えられない。
それほどまでに追い詰められながらそれでもなお目的を達成しようとするのは上級悪魔としての本能だろうか。
「――――それは不可能だと思う、よ」
『ッ!?誰だ!!!』
だから『病孤涙苦』は気付かなかった。その本能こそが自身の死刑執行書にサインをしてしまったことを。
誰もいないはずのシルフィの部屋に鈴を転がすような、天上の楽器を連想させる声。耳をくすぐるようなこの状況に似使わないその声が『病孤涙苦』に届く。
「リョウ
声の主は静かに椅子に座りながら『病孤涙苦』を見ていた。艶やかな、鴉の濡れ羽色のような黒髪を床に着きそうなまでに延ばした、和製人形のような少女だった。
全てに飽いたようなたれ目は静かに『病孤涙苦』を見つめている。それはもう捨て方が決まっているゴミを見るような目で、それに気づかない『病孤涙苦』は突如現れた少女に対して激昂した。
『黙れッ!!!私が、この『病孤涙苦』があんな死に方をするはずがないだろうがッ!!!私はもっともっともっと!!!誰からも恐れられ認識される病になるのだッ!!!そしてやがては『強欲』のあの方の隣に立つッ!!!!』
「……話、聞いてない、の?お前はもう負けた、の。『強欲』の馬鹿でも、要らなくなった玩具を捨てるくらいはする、よ?」
『私が!!捨てられるはずがないだろうがァ!!!!!』
自分を最も強く求めてくれた『強欲』に心酔している『病孤涙苦』はその言葉を認められない。相手が誰なのかすら把握せずに今ある全ての力を使い黒髪の少女に襲い掛かる。シルフィの前にこの少女に寄生してしまえばいい。自意識を消さずに雑巾のように使い捨ててやるとその“欲望”に従って。
「
『グボッ!?』
その“欲望”が『病孤涙苦』の死因になる。少女が呟いた言葉と同時に急激に増した自重によって床に叩きつけられる。いや、『病孤涙苦』だけではなく建物全体がミシミシと嫌な音を立てて倒壊しようとしていた。
「今日はこの寮、誰もいなくなっていてよかった、ね。おかげで面倒な制御しないですむ、から」
『な、んだこれは!?重力の操作!?それとも何かしらの質量操作!?天使か貴様ァ!!!!』
「ううん。人間だ、よ?天使だった時もあった、けど。悪魔だった時もあった、かな。だけど私は最初の生からずっと自我を維持し続けてるから、やっぱりこう名乗るべき、だね」
建物が壊れないように手加減をしながら少女は脚を上げる。足元にいる文字通り虫けらのようになった『病孤涙苦』を踏みつぶす為に。
その気怠げな目を見ながら『病孤涙苦』は足掻く。相手が何を言っているのかは分からないし理解しようとすらしないけれど生き残ろうとただ足掻いて。
「私は『怠惰』。自身は変わらず世界の法則を変える、『怠惰』の化身。名前は……名乗る意味はない、ね。お前はここで死ぬん、だから」
『は?』
そしてその言葉を聞き生存本能も敗北を認める。目の前にいるのは悪魔達にとって絶対の強者。上級悪魔だとしても抗う事の許されない、意味を成さない本物の化け物。
その言葉を嘘だと主張する事すら出来ない。『病孤涙苦』の本能がそれを本当だと認めてしまったのだから。理性は既に手放され本能は死を認めた。だからその終わりは必然だった。
「リョウ兄にこれ以上面倒、かけないで」
『ぐげ』
静かに下ろした足が『病孤涙苦』を踏みつぶす。本来ならばそれだけでは細菌になっている『病孤涙苦』を殺すのは無理だろう。だが少女の力ならばそれが可能だった。細菌を物理的に潰せば死ぬように世界の法則を変えたのだから、そうならない方がおかしいのだ。
「これで終わり、だね。天使ももう少し頑張って欲しい、かな。でも、昔よりは大分まともになってきてるみたいだし、良しとしよう」
『―――――』
「うん。貴女もありがとう。魂だけになってもまだリョウ兄を助けようとしてくれて。おかげでコイツを始末することが出来た、よ」
『―――――』
「歌を、聞きたがっていた?リョウ兄らしい、ね。うん、それじゃあ貴女を私が保護する、ね。輪廻に行ったら私以外は記憶なくしちゃう、から。貴女もそれでいい?貴女の意思を尊重する、よ」
『―――――』
「分かった。それじゃあ、この箱の中に入ってて。また、その内身体を用意する、から」
少女の近くにいた小さい光はそのまま持っていた小箱の中に入っていく。その魂がここまで少女を連れてきた。自分を解放してくれた優しい影法師を少しでも助けたくて。
その動機を知っているからか少女は小さくため息を吐く。本当に毎度毎度変わらないなあの男はと思いながら。
「今回は、建物も壊さず済んだし良しと、しよう。早く帰って寝よう。お兄もうるさくなりそうだし」
そのまま自然に扉から出て少女は夜の街を歩きだす。街灯に照らされながら歩いていると向こう側から走ってくる人影が見えた。思わず少女はうげっと声を漏らす。
「おい
「分かってるよ、お兄。でもコンビニに行くくらい許してほしい、かな。急にアイス食べたくなったん、だもん」
「お前この前夜中にアイス食ってずっと腹抑えてトイレに籠ってたじゃねぇか。次の日も顔色悪くしてリョウも心配させて」
「うぐっ。それを言われると、弱い……。分かった、もう帰る、よ」
「そうしろそうしろ。ココアくらいは入れてやるからそれ飲んで寝ろ」
「むぅ……。子供扱いはやめて欲しい、な」
「そういう事言ってるうちはまだまだ子供だってことだ」
頬を膨らませて今世の兄を睨むも、その兄は飄々と受け流す。思いきり溜息を吐いて共に帰路につく。家に帰れば両親からの説教もあるだろうことも考えると頭が痛くなってくるが夜中に出て行き心配させたのは自分なのだから仕方ないと諦めるしかないだろう。
「またリョウ兄に、慰めてもらわない、と」
「夜中に電話すんのはやめとけよ。最悪迷惑がられるかもしれないぞ。特にアイツ今バイト中だろ?」
「お兄みたいにリョウ兄は邪険にしない、もん」
『怠惰』の魔王、今世の名前は秋野鈴。沢渡リョウの親友である秋野智成の妹である彼女は夜を二人で帰っていった。
各章終わりにネタバレ含むキャラ紹介&ストーリー紹介書いていい?
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いいとも!!
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それより本編書くのじゃ
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キャラ紹介だけでいい
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ストーリーネタバレOK