いずれ神成る恋物語   作:ビスマルク

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両天使のウォッチング ⑤

 

 放課後、午後の授業を乗り切った僕ら学生に訪れる解放の時間。多くの高校生達が待ち望んでいたその瞬間ドアや窓から飛び出していく人達が見える。ドアはともかく窓から靴箱に向かうのはやめた方が良いと思う。君に言っているんだよ智弘君、ここ一階だけど危ないことに変わりはないんだよ?

 

 

「さぁーて、今日はバイトもないからどうしようかなぁー」

 

「あっ、いたいた沢渡君!!」

 

「へ?なんだ小沢君じゃないか。って、まさか……新作かい!?」

 

「そうなんだ!!書き上がったんだよついに!!」

 

 

 今日はバイトもなく食材も言えにある為真っ直ぐ家に帰ろうとしていた僕の元に隣のクラスの小沢健太君が駆けてきた。去年同じクラスだった時から交友のあった彼は少し小太りで身長も僕より低い眼鏡をかけた少年だ。だがその内に秘める情熱は智弘君のサッカーにかけるものと何ら遜色のない。

 

 

「前回から一ヵ月も経ってないのに凄いじゃないか!!早く読ませて!!!」

 

「そう言うと思ってデータ持ってきてるんだ。メールとかだと長くなるし色々と操作が面倒だからさ!!沢渡君に見てもらうならこっちがいいと思って!!」

 

 

 そうやって彼が渡してきたのは彼が書き上げた漫画のデータが入ったUSBだった。小沢君は何と全て自分で漫画を描いているのだ。漫画の描き方など僕はまるで分らないが大変な事だけは分かる。そして描き上がった物を彼は僕に読ませてくれる。

 きっかけは去年、教室で絵を描いている彼に話し掛けた事だった。そこから大体月一くらいでこうして40ページくらいの漫画を僕に読ませてくれる。

 

 

「今回は恋愛を主題にしたんだ。沢渡君には是非忌憚ない意見を聞きたくてね」

 

「恋愛には一過言あるよ僕は……!!今回は厳しく行くからね」

 

「それを期待してのことさ。俺だって沢渡君に見せる以上生半可じゃだめだと思ってるし」

 

 

 眼鏡を煌めかせて小沢君は不敵に笑っている。一体どんな恋愛漫画を描いてきているのか本気で気になるので今日は予定通り真っ直ぐ家に帰ることにする。

 将来彼は大物になりそうな気配がするし今からサインを貰っておきたい。ファン一号として壁に飾るのもありだろう。もし仮に彼が大成できなかったとしてもだ、それはいつかきっと大切な思い出に変わっているはずだから。

 

 

「おいおい、随分楽しそうじゃねぇか小沢。クラスじゃそんな騒いでねぇだろうが」

 

「……何の用だよ、竜崎。さっさと帰ればいいじゃないか」

 

「クラスメイトが楽しそうにしてたのが気になって話し掛けちゃ駄目なのかよ」

 

「それじゃあ用事は済んだだろ。早く帰れよ」

 

「お友達の前だからか随分饒舌じゃないか?ええ?」

 

 

 小沢君と一緒に帰ろうと席を立てば嫌味たらしく笑いながら彼の後ろから肩に手を回してる少年がいた。背が僕よりも10cmほど高い。恐らくは180くらいはあるのだと思う。

 髪を金髪に染めているが塗りが甘いのかリルナと比べたら雑過ぎる気がする。いやリルナの金糸のような髪は一種の芸術品のようなものだから比べたら可哀そうになるか。

 僕より背の低い小沢君に寄り掛かって僕の方をニヤニヤ見てきている。なるほど、彼の狙いは小沢君ではなく僕か。どうやら面倒なことに彼を巻き込んでしまったらしい。

 

 

「初めましてだな有名人。確か……沢渡リョウだったか?」

 

「うん、よろしくね。ところで君は誰なのかな。一方的に知られてるって言うのはあんまり楽しい気分にはなれないんだ。僕は君のことを知らないから」

 

「ライトガーデンと同じクラスの竜崎って言えば分かるか?」

 

「分かんない」

 

「ぶほっ」

 

 

 即答したらなんか小沢君が笑ってる。竜崎と名乗った彼はニヤついていた口の端がピクピク動いている。なんでそんなに名前知られてると思ってるんだろう。彼はそんなに有名人なのだろうか。僕は別に顔が広いわけではないので知らないものは知らないのだ。

 

 

「さ、沢渡君。竜崎はこの前ライトガーデンさんに振られたばっかなんだ。沢渡君がいるからって理由で」

 

「えっ、エルが?そういえば先週帰る時ちょっと遅れるから先に帰っててほしいって言われたっけ」

 

「その時、話とか聞かなかったの?」

 

 

 一週間前のことを思い出す。そういえば表情がいつもより硬かった時があったのを思い出す。あの日はシルフィが配信の準備があると言って先に帰った日だ。ちなみにだがシルフィのネットでの活動は順調で毎週配信されているが僕も毎回リアルタイムで見ている。

 

 

「いやバイトもなかったから帰り待ってそのまま一緒に買い物行って好きな物作ってたけど。メンチカツって1から作るのに手間がかかるから手伝ってもらって。今日は何かあったって聞いても何もありませんっていつもと変わらない感じ……いやちょっと不機嫌そうにしてたっけ」

 

「じゃあコイツが原因だよ」

 

「小沢テメェ調子に乗ってんなよ。テメェもだ沢渡」

 

 

 目を吊り上げて元々悪かった目つきをさらに鋭くして僕を睨む竜崎君だが、正直まるで怖くない。言っては何だが『大飢万征』とか『病孤涙苦』の方が命の危険を感じるのでアレと比べたら遥かにマシだ。比較対象が上級悪魔なのは僕の方が麻痺しているのだと思うが。

 

 

「ライトガーデンはテメェがいるからって理由で拒否りやがったんだよ。だからさぁ、お前が離れてくれれば万事解決ってわけ。分かるこの理屈?」

 

「いやこんな校内の廊下のど真ん中で脅しかける人の理屈とかまるで分かんない。僕が居なくても多分ふられてると思うけど」

 

「ぶふっ!」

 

 

 また小沢君が笑いそうになってる。結構見た目より余裕があるというか、気合いが入っている人なのだと新発見だ。友達とはいえ知らない側面を知れる機会というのは貴重だから大切にしたい。

 案外余裕そうな小沢君に比べて竜崎君のこめかみの血管がピクピク動いている。大して煽ったつもりもないのだが沸点が低すぎないだろうか。

 

 

「怒りっぽいみたいだけど牛乳飲む?怒りっぽさを治すならカルシウムが一番だって聞いたことがあるんだ」

 

「テメェ、俺のこと舐めてんのか……!?」

 

 

 割と本気で心配したのだが煽られたと思ったのだろうか小沢君に回されていた腕こちらに向かってくる。多分このまま襟首を掴んでくるのだろう。正直そうされても問題はないのだが、痛いのも苦しいのも嫌いなのだが。

 

 

「ぐあっ!?な、は!?」

 

「あっヤバ」

 

 

 反射的に、身体が動いてしまい伸びてきた腕を逆に掴んで捻ってしまった。咄嗟に放したからそこまできつくはないだろうが問題なのは場所だ。校内廊下のど真ん中で騒いでいたのだから他の生徒の目もある。大勢が見てたおかげで僕にそこまで非がないのは分かってもらえると思うが、こちらを見る目が変わるのが怖い。

 

 

「テメェ……顔覚えたからな……!!覚えとけ!!!」

 

「いやまぁ別にいいけど……君に一つ忠告しておくね」

 

「なにを……」

 

「エルと、その近くの人になんかしたら……次は容赦しない」

 

「っ……!!」

 

 

 そのまま彼は無言で走り去っていった。一体何だったんだろうか。何をしたかったのか、言いたかったのかまるで分からない。

 いや彼がエルのことを想っているのだとしたら傍にいる僕が邪魔になっているというのは分かるのだが、そこから僕を排除しにかかるというのがあまり理解できない。

 そんなことしてもエルに好いてもらえると本当に思っているのだろうか?本気で疑問に思うのだがそれを問いかける相手はもういなかった。

 

 

「沢渡君」

 

「あっ、ごめんね小沢君。驚かせちゃって……」

 

「普段は優しくコミュ力も高いが喧嘩が強くて美少女幼馴染と仲のいい主人公とかどう思う?」

 

「えっ、いいと思うけど……なんで?」

 

「ふふふふふ……創作意欲が湧いてきた……!!俺は帰ってこのアイディアをすぐにメモするよ!!!漫画の感想はまた読んだら教えてね!!!」

 

「いやだから小沢君も走ったら危ないってば!!!」

 

 

 何故かテンションマックスになった小沢君まで走り去ってしまった。一体何が彼をそこまで駆り立てるのだろうか。だがその情熱は好ましいし、その一助になれたのであれば幸いだろう。

 僕も帰って彼が書いた漫画を読みたいし、いつものように下駄箱でエルとシルフィを待って帰るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな一連の騒動を見ていた天使達はそれぞれの反応を示していた。今すぐにでも飛び出そうとしていたエルとそれを捕まえて押しとめているアリナ。こうなるだろうなと予想していたシルフィだけは冷静に場を見ていた。

 なおエルはアリナに掴まれた状態で両手で顔を隠している。最期のやり取りを見てからずっと呻いていた。

 

 

「っ……!!っっ……!!!」

 

「シルフィパイセン、なんかエルパイセンが悶えてるんすけど」

 

「気にしなくていいわ。どうせ「リョウ君ギャップが凄くてカッコいい」って思ってるだけだから」

 

 

 エルの現在の心境をシルフィが語れば物凄い勢いで隠していた顔を赤くしたまま振り向く。どうしてわかったと言いたげなエルに対してシルフィは呆れたように溜息をついた。

 

 

「そりゃ私だってあんな風に言われたらそう思うもん。予想くらい簡単につくわよ」

 

「っ……!!っ!!!」

 

「シルフィパイセン、これは?」

 

「「分かってくれますか流石はシルフィ!!でもリョウ君の良さは私だけが分かっててほしかった!!!」って感じじゃない?」

 

「表情だけでここまで読めるシルフィパイセンとリョウパイセンが異常なだけがして来たなぁ……」

 

 

 アリナは天を仰ぎながら友人である鈴の眠気眼を思い出していた。あのおとなしく見てるだけで癒される少女の元に今すぐ行きたいと考えながら。

 

 その後リョウと合流したエルは無言で家に帰った。リョウは色々とシルフィに聞いていたがその質問には答えず、とりあえず頭を撫でておくようにとだけ伝えて先に撫でられることでこちらも顔を赤くするのだった。

 





ウォッチング最終回。この日常をグチャグチャにしていくのが今章の悪魔です

しっかしこういう日常は本当に苦手。イチャイチャとか書きたい。
男同士の友情も好きなんじゃが現代日本の学生とかどういう交流してんのか本当分からない。
俺演劇部で交友関係部活くらいしかなかったから……。

そして竜崎君は今まで書いたことのないタイプのキャラなのでかませとはこういうのでいいのか若干不安である。

各章終わりにネタバレ含むキャラ紹介&ストーリー紹介書いていい?

  • いいとも!!
  • それより本編書くのじゃ
  • キャラ紹介だけでいい
  • ストーリーネタバレOK
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