【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活-   作:ビスマルク

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影法師と影悪魔 ③

 リルナの服を買いに行く時、一番困ったのは着ていく服だ。まさに服を買いに行くための服がないという奴だろう。リルナはずっと僕の中にいた関係上私物というものが殆どない。あるとすれば元から着ていた襤褸切れと僕があげた髪留めくらい。

 

 

「お兄さんの匂いに包まれるのはやっぱりちょっと恥ずかしいねぇ」

 

「そういうこと言われると僕も恥ずかしいんだけど……!!」

 

 

 というわけで彼女が今着ているのは僕のジャージだ。運動用に持ってきていた物を急遽使うことにした。体格があってないので結構ダボダボでジャージの裾からは指がチラ見出来る感じだ。これが俗に言う萌え袖という奴だろうか。

 

 

「アタシとしてはもうこれで良いんだけど」

 

「勘弁してよ。出掛ける度にリルナにジャージ着られたら、僕が着る時物凄く気になって集中できないじゃないか……」

 

「今のアタシとは逆で、お兄さんがアタシの匂いに包まれるってことかぁ。それはそれで面白そうなことになるなぁ」

 

 

 ニシシシとこちらをイタズラ好きな笑顔を浮かべてこちらを見上げてくる。滲み出る魔性が彼女が悪魔なのだと僕の本能に告げてくる。リルナの為に何かしたくなるというのは彼女の魅力からだろうか、それとも惚れた弱みという奴なのか。今の僕には判断が出来なかった。

 

 

「とにかく、早く行って服を買おう。うん、そうしよう」

 

「えぇー、もう少しこの服でいたいんだけどー?これで色々と見に行こうよー」

 

「駄目駄目、そういうのは目的を果たしてから。ショッピングモール来たことなくて色々と目移りするのは分かるけどさ」

 

「ぶー。分かったよもう」

 

 

 表情豊かに不満を表すところを見るとやはりエルとは対照的だと思う。どこか似ている感じの二人だけど表面的には大違いだ。エルとリルナが顔を合わせたらどうなるか少し不安になるけどそうはならない。というかならないでほしい。見られたらどう言い訳していいか分からなくなるから。

 手を繋いで二人でショッピングモールを歩いていく。ここに来ることは滅多にないので僕の中にいたリルナも当然初見の物ばかりだ。以前ここに来たのはエルの服を買いに来た時で、あの時はリルナは僕の中で眠っていたから当然外の景色なんて見れてなかったことになる。

 

 

「わっ、わっ、お兄さんお兄さんあれあれ凄いよ!!なんかキラキラしてるのがすっごい動いてる!!!アレがゲーセンってやつだよね!!!」

「おおっ!!いい匂いがしたと思ったらステーキにラーメンにタコ焼き、ハンバーガーとかもある!!!これがフードコートって奴かぁ……宝の山ってやつだなぁ!!!」

「本があんなにいっぱいある……。図書館って奴?いやここは買わないと本が読めないってことは、本屋さんってやつだねぇ。これだけあれば暇つぶしには苦労しなさそう」

「腕時計がいっぱい置いてあるねぇ……。えっ!?これで15万円!?なんで腕時計がこんなに高いの!?い、いや他人の趣味に文句言う気はないけど……これ買う人って凄い人だよねぇ……」

 

 

 ああだこうだ言っててもいざ来てみればあちこちに興味を持ってくれているのは嬉しい。きっと手を繋いでいなければ走り回って興味を持ったところに行きまくっていたところだろう。それに振り回されるのも楽しいだろうけどそれは最初の目的を達成してからだ。

 

 

「あったあった。あそこが目的の服屋さんだよ」

 

「へぇー。いっぱい服があるねぇ。フリルついてるけど涼しそうなのとかもあるし」

 

 

 やはり女の子なのか、服を見れば興味津々で触りに行こうとする。それを苦笑しつつ引き留める。やらないと信頼はしているが初めて見たたくさんの服を前に興奮して崩したりしたらことがことだ。

 

 

「あら、貴方前に来たことあるお客さんよね?今日は別のお嬢さんを連れてきたのかしら?」

 

「あっ、ご無沙汰してます。その節はお世話になりました」

 

 

 そうやって待っているとリルナの声で気付いたのかあの名物店員さんがやってきてくれた。以前エルの服を買いに来た時、その手伝いをしてくれた男性の店員さんだ。口調はお姉さんらしいがまぁ些細な事だろう。大切なのはこの人がお客さんに合う服を選ぶプロフェッショナルというところだ。

 

 

「わぁ!わぁ!!すっごい筋肉だねぇ!!!お兄さんも凄いと思うけどこっちはもう見るだけで凄いって分かるなぁ!!!カッコいいねぇ、凄いねぇ、どれだけ頑張ったんだろうなぁ!!」

 

「あら、ありがとうお嬢さん。フフフ、これはまた見事な原石を連れてきたわねお客さん。以前連れて来た女の子に負けず劣らず飾り甲斐がありそうな女の子だわ。今日はこの子の服を買いに来たのかしら?」

 

「はい、彼女の服をよろしくお願いします」

 

 

 リルナが興奮して店員さんの腕の筋肉をぺたぺた触っている。それに慣れているのか店員さんは余裕のある大人の笑みを浮かべている。互いに好印象なのはよかった。

 以前エルの服の時もそうだけど僕に服を選ぶセンスはない。どれでも似合うと思う僕にエルやリルナの服を選ぶのは難易度が高すぎるのだ。だったら最初からプロの店員さんに任せた方が間違いなく彼女達の魅力を引き出してくれるだろう。

 

 

「それじゃあ行きましょうかお嬢さん。どんな服がお好み?」

 

「んー……。普段からあんまり動かないし動くのに邪魔になってもいいから可愛いのかなぁ。あっ、ちょっと悪っぽく見えると嬉しいかも」

 

「あらそう。なるほどなるほど、それならこっちの方が良いかもしれないわね。フリルがついてて運動には向かないけどそれでも動きは制限されないし」

 

「わぁ、わぁぁ……!!服、凄いねぇ」

 

 

 リルナが店員さんと一緒に服を選んでいる姿を後ろから眺めて、やはりここに来てよかったと思う。リルナは決定的に人との関わりが少ない。僕と出会う前の“欲望”を集めていた時でさえだ。そもそも彼女の最初の獲物は僕だったのだから。

 そこからはずっと僕の中にいた。教授やドールさんを始めとした仲間達と交流することはあったけどそれはあくまで身内扱いだし、その上で一歩線を引いてる位置に立って居た。そのことを教授達も分かってはいたけど指摘はしなかった。

 

 

「あそこに踏み入っていいのは今のところ沢渡君だけだろう」

 

 

 教授達の言葉は正しい。無理矢理踏み込んだところでリルナはきっとすぐに逃げてしまうだろう。彼女はきっとまだお姉さん達が死んでしまった時から進めていないから。その傷を癒すことはとても難しいことで、時間をかけても出来るか分からない。

 それでも人と触れて、何かを得てほしいと思うのは僕の我儘だ。彼女が笑顔で過ごせる未来に必要だと思っている僕の欲。

 

 

「お兄さんお兄さーん!!こっちこっち!!凄いのいっぱいあるよ!!!着てくるからちゃんと見に来てよね!!!」

 

「うん、今行くよ」

 

 

 だけどあの笑顔を見ればきっと間違いじゃないと思えた。こっちに手を振っているあの姿は年相応の無邪気な少女のようで。誰が見ても彼女を悪魔だと思う人などいないと確信できる天真爛漫さ。周囲も笑顔に出来る自然な魅力があった。

 そんなリルナが呼んでいるのだから行かなければならない。相棒としていつも力を貸してくれている彼女の幸せの為に。

 

 

「りょ、リョウ君?」

 

「えっ」

 

 

 いつも聞いているその声に振り向けば何故かエルが絶望的な表情を浮かべてこちらを見ていた。

各章終わりにネタバレ含むキャラ紹介&ストーリー紹介書いていい?

  • いいとも!!
  • それより本編書くのじゃ
  • キャラ紹介だけでいい
  • ストーリーネタバレOK
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