【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活-   作:ビスマルク

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影法師と『炎天渇奪』

 

 暗く、空まで届きそうなほどに立ち昇る炎に対して僕は喫茶店の中で見つめるしか出来なかった。先程までいた場所が燃やされているという事実と、爆発もなくあそこまで一気に燃え上がるという事実から悪魔の襲撃だと理解させられる。

 

 

「リョウ君、今すぐ家に帰ってください。私達は、やることがありますので」

 

 

 エルの声が届くと同時にスマホにインストールされたアプリがけたたましいアラーム音を鳴り響かせる。喫茶店の至る所から聞こえるそれに従い、店にいた人達はどこか目を虚ろにしながらこの場を後にする。恐らく、天使達による認識阻害によってここを離れるように誘導されているのだろう。今にも飛び出していきそうなリルナの腕をとってエルの言葉に何も言わずに従い店を出る。

 

 

「帰ったら、話しをしましょう」

 

「うん、そう……だね……。待って、る」

 

 

 以前もそうしたように彼女に誘導される形で帰路に帰るように見せかける。今すぐにでも向かいたいだろうに素直に従ってくれるリルナに感謝しつつ人混みに紛れ込み、誰にも見られないように路地裏に入る。

 “影探知”によって周囲にこちらを見ている存在がいない事を確認してすぐに影の中に入り込み通信機を取り出して教授達に連絡を入れる。この状況で動かないということはありえない。

 

 

「教授、僕ですけど。状況はどうなってますか?」

 

『沢渡君かッ!!そうやって連絡を入れられるということはショッピングモールから離れているということだな、それならまずは一安心というところである……!!』

 

「はい、エルとその後輩の天使と思われる女の子に会って今までショッピングモールからちょっと離れた喫茶店で話してました。二人とは別れて今は影の中です。周囲は認識阻害されて移動している人達がいっぱいいますね」

 

『こちらもそれを観測している。しかしそうか、ライトガーデン君達と一緒にいたということは影武者を用意しなければならないな……。この状況で人出が減るのは非常に痛いが仕方あるまい。ヒルダ君に君の模倣をさせて家に向かわせよう』

 

 

 僕がドッペルとして動く時、アリバイ工作の為にヒルダがこうして向かってくれている。その能力故に人の癖まで模倣することが得意な彼女には非常に助けられる。正体を隠すという基本を今も守れているのは彼女の働きが大きいだろう。

 

 

「そんなことよりさ、今どんな状況なの?あそこにいるのは、『炎天渇奪』なんだよね。今すぐ、本当に一瞬の間もなく殺しに行きたいんだけど」

 

「僕も同じです教授。今日を奴の命日にしてやらないと気が済まない。リルナのこともそうだし、人の多い昼時にショッピングモールを燃やしにかかるその性根が心底気に入らない」

 

『ことはそう単純ではないのだよ、沢渡君。あのショッピングモールから最低でも3体の上級悪魔の存在を感知できた。『炎天渇奪』以外にも、それだけ動いているのである』

 

 

 思わず絶句する。それは『炎天渇奪』に対する復讐心で頭が煮えたぎっているはずのリルナも同じだ。今までの戦いで悪魔達が手を組むということは絶対になかった。確かに徒党を組んでいたのはいたものの、それはあくまで自分が生み出した働きアリのような存在である下級悪魔を集めていたくらいだ。上級悪魔同士が手を組む、あるいはまったくの同時に事を起こすなど、これまで決してなかった。

 なにせ相手の目的は自分の“欲望”を満たすことなのだから。人間が多い所を襲うというのはあり得るが、同格と組んで襲うとなると考えにくい。“欲望”一直線なのに同格が居たら分け前が減るのだから当然だろう。『大飢万征』も『病孤涙苦』も他の上級悪魔達が単独で来ていたのはそれが原因だ。

 

 

『巧妙に隠しているがね。吾輩の能力ならば上級悪魔を見抜くくらいは出来る。以前の『病孤涙苦』のようなへまはしない。あの場にいるのは上級悪魔3体。更に突撃してくる可能性も考えれば、相手の戦力はそれ以上かもしれん』

 

「だったらどうしろっていうのさッ!!!!」

 

 

 忠告する教授に対して今まで抑えていた怒りが爆発したようにリルナが叫ぶ。憤怒でぐちゃぐちゃになった頭を理性で無理矢理繋ぎとめていたのに自身の根幹である復讐を止められそうな発言に噛み付くほどに今の彼女には余裕がない。

 

 

「あそこに!!あそこにアイツがいるんだ!!!アタシを処分しようとして!!姉さん達が死ぬ原因を作ったアイツがあそこに!!!これ以上待つなんて無理だ!!!今すぐ、今すぐあそこにいるアイツを殺して、姉さん達に詫びさせてやるッ!!!!」

 

「落ち着いて、リルナ」

 

「ッ!!お兄さんもそうやって止めるの!!?アタシとの“魂魄契約”を忘れちゃったのかなァ!!?アイツを殺さないとお兄さんだって酷い目に合うってことを分かってなかったりするの!!!」

 

「リルナ」

 

 

 握っていた手をさらに強く握りしめる。ハッとしたようにリルナは色の違う両目を向けてバツが悪そうに目を伏せる。その様子を見て柔らかく笑う。激情を持っていても、人のことを考えて抑え込める子なのだ、リルナは。

 

 

「教授、リルナとの契約もある上に上級悪魔3体は流石にエル達だけじゃ不安です。シルフィが即座にこちらに来るとは思いますけど、それでも相手の方が戦力的に上。僕達もすぐに向かいます」

 

『うむ。吾輩もそれに関しては何も言うことはないのである。ただ突撃するにしろ戦うにしろ確実に『炎天渇奪』を狙う必要がある。あの炎はリルナ君の様子を見る限り間違いなくそいつである。他の二体と組んではいるが、場所は別々。吾輩の目で一度観測さえ出来れば判別もつくのだが初見では誰が誰なのか分からんのだ』

 

「そこはもう、全員叩き潰す勢いで行くしかないかなぁって。全員やればその中に『炎天渇奪』も混ざってるだろうし」

 

『意外と脳筋な沢渡君ならばそう言うと思っていたのだよ』

 

 

 思いきり大きい溜息を吐いた教授。通信機越しにバシバシと聞こえるが気合いを入れる為に自分の頬を叩いているのだろう。再び聞こえてきた彼の声音には覚悟をしたことが分かる響きが混ざっていた。

 

 

『ナビゲートは吾輩がする。ライトガーデン君達と出来る限り鉢合わせしないように進めよう。彼女達の目が合っては戦いにくいだろう?』

 

「そこは任せます。ダフネとディアンナは?」

 

『ダフネ君は今は動けん。彼女は力を上げてきて上級に手をかけている。今は身体と魂が齟齬を起こして立ち上がることもままならん。ディアンナ君はいざという時君達を回収する為に向かわせよう。状況が不味い状態になれば嫌であってもその場から離れてほしい』

 

「…………分かってる。アタシの復讐に、リョウちゃんを巻き込みたくないし」

 

 

 不承不承というのが分かるがそれでもリルナは頷いた。その判断に僕が混ざっていることは嬉しいが一言だけ言っておかないと気が済まない。

 

 

「リルナ。僕はとっくの昔に君の復讐に巻き込まれてる。最初に出会ったあの時からその為に君は行動していたんだから」

 

「……うん」

 

「でも、ここまで来たのは僕の意思だ。君に幸せになってほしいと思ったのは僕の意思だ。だから巻き込みたくないなんて寂しいこと言わないでほしい。これは僕が選んだ道で、君と一緒にいられる唯一の生き方なんだから」

 

 

 始まりはどうあれこうすることを選んだのは僕なのだ。例えエル達と敵対することになるとしてもこの一人ぼっちになってしまった少女の側に立つと決めたのが僕の生き方だ。だからそれを否定することは誰にもさせない。それが始まりになったリルナであってもだ。

 

 

「だからさっさと君の復讐にケリをつけよう。今日泣いて、明日笑う為に」

 

 

 リルナが頷きその姿を消した。魂が僕の中に戻ったことを本能的に察する。足元から広がった影が僕を覆い最早着慣れた黒い装束になる。白い仮面をつけた怪しさ満点の姿。リルナの復讐を終わらせて次の生き方を探す為に『炎天渇奪』をここで潰す。

 





襲撃悪魔
『炎天渇奪』『■■■■』『■■■■』

各章終わりにネタバレ含むキャラ紹介&ストーリー紹介書いていい?

  • いいとも!!
  • それより本編書くのじゃ
  • キャラ紹介だけでいい
  • ストーリーネタバレOK
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