【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活-   作:ビスマルク

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さぁ(無理ゲーの)始まりゲスよ!!!
行くでガンス!!!
フンガー!!!

真面目に殺しなさいよ!!!(クッソ古いネタ)


光天使と『永死殺総』

「ひっひっひっ……!!?」

 

「はいはーい。もっとちゃんと逃げてくださいねー♪」

 

 

 燃えるショッピングモール。『炎天渇奪』が起こした火災だったが三階を激しく燃やしただけでそれ以外の階層は無事な場所は多かった。だがその場に命の危険がない者はほぼいない。一人の男が必死になって走り命懸けの鬼ごっこをする。

 その男の後ろを静かに、悠々と、追い詰めるように歩いていく少女。白いドレスを着たその姿は深窓の令嬢と言っても全く違和感がない。青い髪を肩の辺りでばっさり切って動きやすくしているのも相まってお転婆という言葉を連想する者も多いだろう。

 だがその身体からする死臭と血の臭いは平和の中で生きてきた人間にも分かるほどの異常性を発揮している。

 

 

「捕まっちゃうと―、お子さんとお嫁さんが死んじゃうからねー♪というか私が殺しちゃうんだけど♪」

 

「大丈夫、大丈夫よ……!!」

 

「パパぁ!!!」

 

 

 歩いているその腕には小さい鳥籠が幾つもついている。そしてその中に小さくされ囚われている人間が何人もいた。家族単位で捕まえられたそれを使った遊びをその悪魔は行っている。

 先程まで平穏に、家族と共に特別でも何でもない休日を謳歌していた男は突然この空間に捕らわれた。時間の早さが歪んだこの場では既に6組の家族が同じような遊びに巻き込まれ、5組が既に全滅している。それをまざまざと見せつけられた男は逃げなければ家族が惨殺されることを嫌でも理解し死の恐怖と家族を生かす為に呼吸を荒くしながらも走る。

 男の家族は男が逃げる限り死なずに済み、それ以降の人間は男が生きる限りこの死の遊戯が訪れる時間が遅れる。鳥籠に捕らわれた全てが男の生存を望んでいる。

 

 

「食品コーナー?いーっぱい棚があって探しにくそうだなー♪」

 

 

 ショッピングモールの一階全てを対象とした鬼ごっこ。時間は鬼である悪魔が飽きるまで。そしてこの上級悪魔は他者を追い詰め死の恐怖に屈し、無様な姿を晒すところを見るのが己の“欲望”になるほどに狂った存在だった。

 

 

「まぁ手あたり次第出してけばそのうち見つかるよねー♪」

 

 

 人を追い詰め、その最期の無様を見て優越感に浸る。『永死殺総(えいしさっそう)』アネモネ。最も多く人間を殺した悪魔が『病孤涙苦』だとすれば、最も多くの天使を殺してきた正真正銘の怪物。元の世界からこちらの地球に来た中でもトップクラスの危険度を誇る最悪中の最悪。千年以上殺戮という名の遊びに興じる悪魔。

 

 

「それじゃあ探してきてね、皆―♪」

 

「う゛あ゛あ゛あ゛……」

「ごヴぇえあ……」

「んひああ……」

 

「ひっ……!?」

 

 

 男が息を殺しながら悲鳴を上げる。家族が居なければ泣き叫んでいたところを必死になって抑え込む。アネモネがカーテンシーを行い、スカートの中からボトボトと赤黒い何かが落ちて急速にその大きさを取り戻していく。殺されたことで『永死殺総』が死ぬまで終わらない従属という名の死後の安寧、その剥奪。先程殺されたばかりの6組の家族グループが切り裂かれ、焼かれ、殺された時の姿のまま逃げ回る男をゆっくりと探し出す。

 

 

「クソッ、クソッ……!!」

 

 

 何故こうなったのか、男にそんなことを考える余裕など欠片もない。自分が捕まれば家族もまた同じ目に合う。動いている死体は意味のない言葉を吐いている。死体に意識があるからなのか、それともただ単に口から空気が漏れ出ているだけなのか判別はつかない。

 

 

「うーん、やっぱり新鮮な死臭はいいねー♪偶にはこういう数で遊ぶのも楽しいかも♪」

 

 

 鬼役になっているアネモネは楽しそうに棚の上に座り足を揺らしている。無論、本気になれば即座に逃げ回る男を捕まえることが出来るし捕らえている人間を殺すことも出来る。“負の感情”を即座に補充するのであればそちらの方が楽だし早い。

 

 

「でもそれじゃあつまんないんだよねー♪」

 

 

 だがそれでは楽しくない。即座に殺すなんてもったいない。命には価値があるのだとアネモネは考える。命とは決して簡単に捨てていいものでも奪っていいものでもない。そして必死に生きようとするその姿こそが人の命が最も価値を発揮する時だと『永死殺総』は確信している。

 

 

「だから奪う」

 

 

 優れた容姿からは想像もできない程に口元が裂け口角が上がる。熱っぽく、酷薄に、肉を噛み千切ることに特化したような鋭い歯を見せながら嗤う。今まさに命の真価を発揮している男の姿、その価値が最も高まったその時こそが狩り時だと心底から考えて裂けた口から涎が垂れ流しになる。

 

 

「私は私が一番だと知っている。立ち振る舞いが何よりも美しいし待っている姿が絵になるくらいに美しいと確信している。私が世界で一番堂々とこの道を歩いていると断言出来る」

 

 

 死体と共有した視界の中では息を切らせながら走る男の姿が見える。その背をもう少しで捕まえそうなところで死体の足の部分が千切れて倒れ込む。それでも『永死殺総』の命令を守ろうとズルズルと腕の力だけで逃げる男を捕まえようと前に進む。

 その醜く、遅く、そして無様な様子を見てアネモネが嗤う。自分以外の無様な姿を見て嗤う。

 

 

「だけどさぁ、私はそれだけじゃ納得できないの♪だってそうでしょ?評価っていうのはちゃーんとみんなにしてもらわないと駄目なんだから♪」

 

 

だから殺す。

 

 

「私は誰よりも優れて、誰よりも綺麗で、誰よりも素晴らしいの♪でも人の価値観ってそれぞれ違うでしょ?価値観が一致する瞬間なんて悲しいことだけどありえないの♪」

 

 

だから弄ぶ。

 

 

「だからみーんな私の玩具になって♪私が殺して私の玩具にしちゃって♪みんなみんな醜い姿で保存してあげて遊んであげるからさ♪」

 

 

だから他者の命を軽んじて、価値を下に置く。

 

 

「そうすれば――――みんなみんな、みーんなが私が上だってわかるよね?」

 

 

 自分を上だと断じるという“欲望”の元殺戮を繰り返す。

 これが『永死殺総』、天使を最も多く殺しその亡骸を弄び、手中に収め続けた悪魔。

 

 

「それが私なんだって理解してくれたかな、天使ちゃん♪」

 

「――――死になさい」

 

 

 『永死殺総』が視線を背後に向ければそこには空中に浮いている天使の姿があった。背中から白い翼を広げ、更にその背後には幾つもの光の矢が展開されている。数えきれない量の光の矢が射出されるのと同時に悪魔討伐に来たエルもまた高速で迫る。アネモネはその場を強く踏み込みその場から遠く離れ光の槍を避けた。

 光の矢が逃げていた男の背後に迫る動く死体、ゾンビに突き刺さりその身体に捕らわれていた魂を解放した。悪魔に対する特攻効果を持つ光の力だからこそ出来た奇跡。魂を解放された死体は安らかな顔となりその場に倒れ込んだ。

 

 

「ひっひっひっ……!?」

 

「大丈夫ですか。ここから遠くに逃げてください。出来る限り急いで、振り向かずに」

 

「そ、それは出来ない!!!あ、あそこに俺の家族が!!!」

 

「それでしたら恐らくここに。他の人達は無理でしたが、この人達だけは」

 

「えっ!?」

 

 

 エルが取り出したのはアネモネとすれ違いざまに奪った男の家族が入った鳥籠だった。それを見た男は鳥籠を宝物を受け取るように優しく抱え込む。その目からは家族を取り戻した安堵から涙が流れておりエルはそれを見て羨ましさと嬉しさが半々になった笑顔を向ける。

 

 

「ヒャン、彼らを外まで。私の槍を一本渡しておきます。それを使えばここを覆っている結界も破壊できるはずです」

 

「分かりました、ご武運を。行きますよ人間」

 

「あ、ああ。あ、ありがとう!!本当に、本当にありがとう!!!!」

 

 

 静かに降り立ったヒャンがそのまま先導する形で死体が多く転がっているショッピングモールを男を連れて行った。それを見ることもなく冷静に天使にとっての天敵を見据える。

 一組の家族を奪われたことに対して『永死殺総』アネモネはそれに頓着する様子もなく口をすぼめて拗ねたような表情を作る。天使の気質を理解しつくした悪魔はそれが一番相手の神経を逆撫で出来る事を経験則で知っている。

 

 

「酷いなぁ♪人の物を盗ったり壊したら駄目だってお母さんに習わなかったのかな?」

 

「貴女と言葉を交わす必要性を見出せません。その鳥籠を置き、すぐに死になさい」

 

「物騒な女の子は男の子に嫌われちゃうゾ♪」

 

 

 最上級天使に最も近い光天使エル。

 天使を最も多く殺してきた上級悪魔『永死殺総』アネモネ。

 

 二人の戦いはこうして始まった。

 




書いてて思ったが『永死殺総』、思ったより最悪だな……?


『永死殺総』アネモネ
 “欲望”は自身が何より上で堂々としていたい。
 手段は自分以外の全てを玩具にし自身より下に置いておくことにより自身の価値を高める。
 『強欲』に対してさえいずれその地位を自分の物にする為に動いている天使を最も多く殺した悪魔(魔王除く)。
 なお目的も何もかも『強欲』にはバレている模様。
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