ゼンゼロのキャラに好かれ過ぎた男の話   作:しいたvol.3

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【注意】後半にver3.1メインストーリー「ロング・グッドバイ」の一部ネタバレが含まれます。

まだストーリーを読んでいない方、ネタバレが嫌な方はブラウザバック推奨です。


毎度ながら、誤字報告感謝です。









レミエール・ダン⑥ 

ここは秘匿されし天空の城「ロスカリファ」。

 

新エリー都に住まうものたちのほとんどはその名前すら知らない、空に浮かぶ都市である。

 

「パエトーン」であるビデオ屋の店長アキラとリンはある日自身の眼に搭載しているインプラントの異常を感じ、その治療の手立てを求めていった結果、ロスカリファへと訪れた。

 

結果的に彼女たちの中に眠る力である「ピュロイス」を開放するに至り、眼の状態は回復へと向かった。

 

そしてこのロスカリファに存在しないはずのエーテリアスらしき怪物の出現、ボンプ達の言う「天使」の正体、そしてロスカリファにて指名手配されている「レミエール・ダン」との再会…。

 

紆余曲折在りつつ、リンとアキラは一時の平和を得ることになった。現在はロスカリファでも営業しているビデオ屋の経営に力を入れるべく、ビデオの整理を店前でしているところだ。

 

現在リンはイアスと共に店番をしているところである。意外とロスカリファでもビデオは人気なようで、それも地上関連の映画をレンタルする人が多い。

 

ぼんやりと「地上関連の映画を見えやすいところにでも配置しようか」と考えていると、またひとりリンの前にお客さんが来たようだ。

 

__失礼、ビデオを借りたいのだが…む?

 

今度の客は一人の男だった。かなり大きく、体格も筋肉もあるのでリンが彼の影にすっぽり入るほどである。

 

見た目は青年というには老けていて、おじさんというには若すぎるくらい。紳士然とした格好で、中折れ帽に大きな杖がサマになっている。

 

「はいは~い。お客さん、ここは初めて?ポイントカードを作るとお得…って、ここじゃほとんどのお客さんは初めてだよね」

 

リンはそう言った。…が、それとは裏腹に男は一枚のポイントカードを取り出した。紛れもない、このビデオ屋「Random_Play」のポイントカードである。

 

__ふむ…店長殿。斯様な場所で会うとは、貴殿もまた数奇な運命にあるらしいな。

 

リンは首を傾げた。それなりに店を長くやっている以上、ポイントカードを作り、しかもこれだけポイントがたまっている客の顔を自分が忘れるはずがないと。

 

自分の頭の中にある記憶を片っ端から遡っていると、男はそんなリンの様子と自分の容貌を見て何かに気付いたのか、リンに再び声をかけた。

 

__店長殿、見た目が変わっている故気づかないのも仕方がない。ヨロイだ

 

「…え、ヨロイさん!?あの鎧脱げたの?…というか、なんでロスカリファに?しかもどうやって?」

 

このロスカリファは先の説明の通り、地上に住まう人々のほとんどはその存在すら知りえない極秘の機密のはず。まして、空に浮かぶこの都市にどうやって来たのだろうか。

 

驚き故に物凄い剣幕で男を問い詰めるリンを見て、男は手で「待った」のサインを作った。

 

__順番に答える。我は少々用があってここへと来た。そしてここへは少々独自の伝手を使用してきた故、表では我は「TOPS直属の特殊な来客」という扱いでな。あまり不審な格好…全身鎧のような恰好は、あまりできぬのだ。

 

「へ、へ~…」

 

正直彼のプロキシを担当していた時から、その実力と底の知れなさは知っていたため「まぁ、ヨロイさんなら…」とリンは感じてしまった。

 

男は少しリンの方へと近づくと、懐から写真のようなものを見せる。

 

__申し訳ない、店長殿。我と貴殿の信頼を見込んで聞きたいことがある。…この手配書の人物を見たことがある、もしくは何かしらコンタクトを取ったことはあるか?

 

そう言って男が出したのは、ここロスカリファではそこら辺の壁に貼ってある手配書でよく見る顔。そう、「レミエール・ダン」の写真である。

 

…しかし、男が出した写真は手配書にあるようなレミエールの姿ではなく、なんだか元気そうでニコニコとしているレミエールの写真だった。

 

「…これって、指名手配犯のレミエール・ダンでしょ?そこら中に手配書があるから知ってるけど…ヨロイさんはこの人を探してるの?」

 

リンは確かにレミエールとつい最近までロスカリファで色々と行動してはいるが、だからこそうかつに彼女のことを話してはいけないことも知っていた。

 

故に、まだ話さない。たとえ地上からの知り合いである程度の信頼のおけるこの男だったとしても。

 

__ああ。少々こいt…失礼、この者に用があってな。なに、別に捕らえて首を取ろうなどとは考えていない。

 

「へー…どういう関係か、聞いてもいいの?」

 

__それで信頼貰えるのなら、な。店長殿、ここから取引だ。本当に貴殿がレミエール・ダンの情報を持っているというのなら、我はどんなことでも2つ答える。それで手を打てないか?

 

男は随分と大きく出た。彼がレミエールを追っている以上、自分よりも知っていること…彼女の目的などを知れるかもしれない。

 

無論リスクはあるが、彼の持っている写真があまりにもレミエールの素を映したもの過ぎる。ここに来てからそのような写真は見たことがないし、おそらく男はリン以上にレミエールの事を知っている。

 

逡巡の後、リンは頷いた。

 

「…OK。じゃあ私が知っていることもこたえられる範囲で答えてあげる。と言っても、私もそんなに知っているわけじゃないけど…とりあえず外じゃなんだし、そこにある私の部屋で話そ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男はロスカリファで借りたホテルの一室で一息ついていた。持ち得るコネをフル活用し、なおかつ地上に居る友人たち(主にメロン好きの友人と自分の弟子)の強烈な引き留めを振り切ってこの天空へと来るのは楽な事ではなかったのだ。

 

男がここに来た目的はたった一つ。地上にいた頃に

 

『あ、私明日からロスカリファ行くから。君はどうせ一人でも行けるんだからちゃんと来てよね。私の事、また教えてあげるからさ』

 

と男の自宅のソファの上でぐうたらしているレミエールから言われたからである。

 

…まぁまぁふざけているのだが、男は未だ今レミエールがどんな状況にあるのか全く把握できていない。

 

今いる中では一二を争うレベルでの昔からの友人なわけで、それが現代でもそのままの姿で存命となれば知りたくなるのも当然の帰結であった。

 

そんなわけで、リンとの交渉を終えた男は旅の疲れを癒すべく早めに宿を取り、少しお高めの夕飯を多めに買って食べることにした。

 

男は杖をベッドの横に置いてから思索にふけっていた。当然内容はレミエールのことだ。

 

(レミエール…か)

 

考えつく疑問は多くあるが、やはり出てくるのは憶測のみ。今考えてもどうしようもない事ばかりだった。

 

これ以上考えてもらちが明かないと男はぐっと部屋の椅子から体を起こし、さっさと飯を食べることにした。

 

「う~ん…私この卵サンドがいいかも。今日は結構あっさり目の気分なんだよね。鎧君は何食べるの?」

 

 

気のせいだろうか。空の上までわざわざ探しに来た人物が目の前で飯が入った袋を漁っているように見える。

 

目の前のレミエールらしきものはこちらをじっと見つめ、そのまま「ねぇ聞いてる?」と言っている。

 

__いや、いい。もはやお前がここになぜ侵入できたかは置いておく。しかし卵サンドはダメだ。我も一番食いたい。

 

男は思考を放棄した。なんにせよ探し人があちらから来てくれただけだ。別に男の目的に支障はない。

 

しかしこの卵サンドは結構人気な物らしく、かなり列に並んでようやく買ったものだ。いかにレミエールと言えどこれを譲るわけにはいかない。

 

「じゃあ半分こしようよ!他にもいっぱいあるし、どうせなら二人で分けて食べよ?」

 

__まぁ、それならいいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~!おいひぃ~♪」

 

わかりやすく頬に手を添えて美味しいアピールをするレミエールに対して、男はひとまず気になっていたことを聞くことにした。

 

__まずこれだけは答えろレミエール。お前の身体は今無事か?

 

「むぐ…もう、せっかちだなぁ鎧君は。でもまぁ…せっかくここまで来てくれたんだし、その分くらいは答えてあげようかな」

 

「結論から言うと、私の身体は今は大丈夫。私はちょっと色々あって百年くらい眠ってただけだから、身体も眠っている間は進んでない」

 

__ふむ。なるほど。

 

「もちろん、強さだって昔のまま。ちょっと前にタウミエルも取り返したし、初代虚狩り様大復活って感じかな?」

 

レミエールはそう軽く言って微笑むと、パンと手を叩いてにやりと男の方を見つめて続けた。

 

「はい、じゃあ質問終わり!次は私のターンね!じゃあまずは~「おい」…どうしたの?」

 

__答えになっていないな。いや、我の質問の仕方が悪かったか?

 

レミエールは確かに男からの質問に答えた。しかしその答えはあまりにも「浅すぎる」

 

__お前の体内にあるその「業核」だ。我が気付かないとでも思ったか?

 

「…っなんで、それを君が知ってるの?」

 

先ほどまでの余裕のある笑みが、レミエールから消えた。

 

男とレミエールがかつて別れたのは「沈黙の日」と呼ばれる日から1年以上は前のことだ。

 

__生憎、我はお前と違ってこの百年をそのまま生きて過ごしてきたのだ。如何に我と言えど、その言葉と意味するものくらい知っているさ。

 

しばらく沈黙していたレミエールは、やがて観念したようにベッドに寝っ転がった。

 

「あ~もう!はいはい私の負けだよ負け!…まったく、あんまりこういうの話すつもりなかったんだけどなぁ」

 

「…まぁ、タウミエルを使いすぎなければ大丈夫かな。でも、使いすぎると「結使化」はどんどん進行しちゃうよ」

 

__はぁ、やはりか。お前もお前で随分なものに悩まされているらしいな。現代も初代も虚狩りというものは…どうしてこう、な。

 

「…」

 

レミエールはしばらく下を向いて枕を抱きしめていた。その表情には陰りが見える。

 

(…無理もない。そのような状況に置かれて辛くない、と言う方がよほど嘘くさい)

 

 

__なぜその状況になったかは聞かぬ。しかし、我にできることがあるなら何でもしよう。数少ない旧友なわけであるしな。

 

男はレミエールを慮り、静かにそう言った。

 

…しかし、「何でもしよう」といったあたりからレミエールの耳はピクリと動き、ゆっくりを顔を挙げた。

 

「へぇ」

 

「なんでも…してくれるんだ?」

 

__ぐっ…レミエール!?

 

レミエールはすっと立ち上がり、男の手をぐっと掴んで同じベッドの方へと引っ張った。

 

そのままぐるっとレミエールは男をベッドへと押し出し、自分が男を押し倒す形となる。

 

「あはっ…鎧君やっぱり大きいね。ちょっと引っ張るの大変だったよ」

 

レミエールの双眸と視線がかち合った。普段は水晶のようにキラキラと輝いているその眼の奥に、男は深い澱のようなものを見た。

 

__下手ないたずらは辞めろレミエール。我は「ダメ」

 

男はすぐさまレミエールが押し倒している状態から離脱しようとする。…が、レミエールはその男の手首をがっちりと掴んだ。

 

「何でもしてくれるんでしょ」

 

__…

 

そのままレミエールは男を抱きしめ、その胸へと顔をうずめた。

 

「…私ね。ホロウの中で目が覚めた時、不安だったの」

 

「100年も寝てたからさ、景色も、人も、世界も変わってて…私だけ、昔に取り残されたみたいで」

 

「初代虚狩りレミエール・ダンを知ってる人は居ても、『私』を知ってる人は、もうほとんどいなかった。ましてや、そんな私が帰る場所も…当然ない」

 

それは、かつて信じた仲間たちと希望を抱いてホロウと戦った少女の、そのあまりにも残酷な末路についての独白だった。

 

レミエールが男を抱きしめる力が強くなる。先ほどからずっと、手は震えていた。

 

「…あのね」

 

「今から私、昔みたいにすっごく我儘な事言うよ」

 

 

 

 

『ねーねー鎧君!今度新しくできたお店行こうよ!』

 

『ぶっぶー!鎧君に拒否権はありませーん!』

 

『鎧君!お散歩しに行こ!』

 

『濡れちゃった~…鎧君、拭いてくれない?』

 

『私と鎧君はずっとセットだからね!分かった?』

 

 

かつての男とレミエールの記憶が駆け巡った。

 

レミエールの男に対する無茶な我儘なんて慣れたものだった。

 

「だった」はずだ。

 

 

 

 

 

 

 

「離れないで」

 

「二度と私に「さよなら」なんて言わないで」

 

「私の全部あげるからさ、お願い。…お願いだから」

 

 

 

 

「私の事、一人にしないで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、鎧君がリンちゃん達に協力してくれることになったよ!」

 

「いや、どういうことで!?」

 

ある朝のアンバー・ホールにて、リンは自室に現れた迷惑な二人組…ヨロイとレミエールの話を聞いていた。

 

「話を聞いた感じ、ヨロイさんとレミエールが昔からの知り合いなのは分かってたけど…それにしたって見つけるのと仲間になるのが早すぎない?これじゃあヨロイさんとコソコソ話してた意味なかったじゃん!」

 

結局、男はレミエールの事情にあまり踏み込むことはしなかった。しかしレミエールから「リンちゃん達のお手伝いをしてあげてよ。そうすれば勝手に分かっていくから」と言われたため、結果的にこうして協力を打診しているというわけだ。

 

「つまりは…ヨロイさんは基本レミエールと行動して、外に出れない用事とかをヨロイさんが済ませると…。それは全然オッケーだけど、うーん…」

 

「まぁまぁリンちゃん…これにはラマニアンホロウより深~いわけがあるんだよ?」

 

__義理である。ただのな

 

「はぁ~…君のそういうトコ、ほんと変わらないよね。可愛げのあるリンちゃんを見習ってよ…もう」

 

__お前こそ謙虚さと言うものを学んでほしいのであるがな

 

「とか言って、結局なんだかんだ我儘を聞いちゃう人はどこのどなたかな~?」

 

__…

 

「…あのねお二人さん、朝から私の部屋でいちゃつくの辞めてくれる?私だってビリーたちの誘いを断ってまでここに居るんだから」

 

リンは呆れた目で二人を見つめた。朝っぱらからこんなコーヒーが欲しくなるほど甘ったるい会話を聞きたくてこの二人を入れたわけではないのだ。

 

__失敬。…そうであるな、要件は伝えた故、我らは去るとしよう。達者でな。

 

「またね、リンちゃん。今度会う時はお互い元気でね!」

 

男が部屋の窓からスッと跳躍し、レミエールはその後ろを翼で飛んで追いかけていく。…屋根をジャンプしている男の方が早いのは目の錯覚だろう。

 

 

 

 

「…さて、とりあえず朝ご飯でも食べにいこっか」

 

レミエールと男は空を飛びつつそんなことを話していた。ちなみに男は翼なんてないので勢いをつけてハンググライダーで飛んでいる。

 

__そうだな…たしかここら辺に店長殿から教えてもらったパン屋があるぞ。

 

「おっいいね!甘めのパンにしちゃおっかな~」

 

__我はなるべくがっつりした方がよいな。果たしてどんなものがあるやら…

 

「それも新しい店の開拓の楽しみだよね~」

 

びゅうと風を切る音だけがしばらく響いた。もう少しで隣の島に着きそうというところで、レミエールは口を開いた。

 

「ねぇ」

 

「絶対逃がさないから。」

 

「もし君が居なくなってたら、私今度はまともでいられる自信ないからさ」

 

「だから、約束。守ってね?」

 

 

再び風を切る音のみが響いた空間の中で、男は今日の朝食をがっつり系からなるべく軽いものにしようと決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「え?私と鎧君の関係?あくまで友達だよ。それだけ」

 

 

 

 

 

(鎧の男が女性に道を聞かれ、丁寧に答えた後)

 

 

 

 

 

 

「ふぅん…君はずっと一緒に居る女の子が隣に居るのに他の女にデレデレして話しちゃうんだ?」

 

__レミエール。

 

「気にしてないよ?全然気にしてないから。でもね?私たちは共にあの時代を生き残った唯一無二の仲なわけでさ、それをないがしろにしてまでさ?する事かなって私は思っちゃうよね。でも全ッッッ然!気にしてないよ!」

 

__それならこの翼をどけろ。さっきから俺を包んでるせいで歩きにくい。

 

(無視)

 

__おい!レミエール!おい!

 

 

 

  • レミエール
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