ゼンゼロのキャラに好かれ過ぎた男の話   作:しいたvol.3

7 / 9
好きっす(直球)

設定違ってたらごめんなさい。
感想・評価いただけると作者が睡眠時間を削って書きます


レミエール・ダン①

ピコ…ピコ…

 

『K.O!』

 

六分街のゲームセンター『GOD FINGER』。その一角で、ただ無心にコンボ練習をしている者が一人。

 

全身に鎧を纏った異様な雰囲気の大男であり、レバーを動かすたびに微かな金属の軋む音が響く。

 

__ふむ、CPU相手も慣れてきたな。そろそろ対人戦と行きたいところだが…

 

男はつい最近までこのようなゲームの類はしたことがなかった。

 

それは男が修行者であり、古い友人の手伝いや零号ホロウでの調査(という名目で戦っているだけだが)によって娯楽に目を向ける暇がなかったからだ。

 

しかし最近、ちょっとしたトラブルによって男は娯楽を楽しむ「余裕」を手に入れた。

それからというもの、男は目についたゲームを片っ端から経験することを決めたのが、つい2か月ほど前。

 

しばらく遊んだ後に行きついたのが、この格闘ゲームというわけだ。

店内対戦限定で対人戦を募集しているものの、しばらくマッチングしていない。

 

既に日は沈み切っている。昼頃にはそれなりに客がいたが、今の時刻に店内に居るのは片手で数えられる程度。

 

__そろそろ潮時か。

 

男がこれをラストプレイにしようといつも通り金を入れると、目の前には『マッチングしました!』の文字。

 

なんと、この時間帯の店に男と同じゲームをする者がいたようだ。

 

相手キャラは典型的なパワーキャラ…というより投げを主体としたキャラ。

圧倒的な一撃火力を誇るが、故にスピードを犠牲にし、飛び道具も持たない。

 

対する男が使うのは極めてスタンダードなキャラ。

できない事は少ないが、よく器用貧乏と揶揄されるキャラでもある。

 

本来、飛び道具を持つ男のキャラが有利なはずである…が。

 

意外にもその勝敗は五分。対戦開始から10戦ほどしているが、互いに五勝と拮抗していた。

 

しかし11戦目で男が辛くも勝利すると、相手は継続することなく抜けてしまった。

 

男もここで一段落つけ席を立つと、どうやら対戦相手らしい人物が筐体の向こう側からこちらへ来るのが見えた。

 

「…いや~!君強いね!私も久しぶりに熱くなっちゃった!」

 

特徴的なピンク色の髪に、カラスのような黒の衣装を纏った女性だった。

背中には黒い翼を一対覗かせており、どこか謎めいた雰囲気を感じさせる。

 

「って、鎧?」

 

__失敬。訳あって斯様な格好をしている。…対戦感謝する。貴殿も巧みなプレイであった。

 

男の姿を見て少し驚いたように目を見開いた彼女は、すぐに余裕のある笑みを浮かべてじっと男のことを観察するように見つめた。

 

「珍しいお客さんがここにはいるんだね…でも、随分堅実なプレイするな~。結構このゲームはやるの?」

 

__最近はもっぱらこのゲームだ。最近ゲームそのものを触り始めたのだが…どうにもこれが馴染んだものでな。

 

「そうなの?道理で基本に忠実なわけだね。でもやっぱり投げキャラはロマンがあるよね!あの弾を掻い潜って____」

 

楽しそうにゲームの話をする彼女を見て、男はその兜の裏でふっと微笑んだ。

その姿に「彼女」の影を見たからである。

 

「あら、笑ったね。意外と感情は豊かみたい」

 

__少し、かつての友に似ていてな。あの者もよく楽しそうに色々なことを語ってくれたものだ。

 

「へぇ…その友人さんは今どこに?」

 

__さぁな。旧都陥落よりもよっぽど前に、殉職したとだけ聞いたことがある。

 

「…ごめん」

 

__気にしないで欲しい。彼女は軍人だ、戦場に身を置く以上、彼女もわかっていたことだろう。

 

雰囲気が少々辛気臭くなったところで、女性はそんな空気を切り裂くように言った。

 

「ちょっとだけ、街を散歩しない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく、男とその女性は六分街を歩きつつ話をしていた。

その内容は先ほどやったゲームの話だったり、苦労していることなどありきたりなものだった。

 

しかし、話せば話すほど男の中には疑念が増していく。

 

目の前で話しているこの女性に、どうしてもかつての友の姿が重なるのだ。

 

彼女は既に百年以上前の人物なうえ、殉職したはず。様々な思考が男の頭を支配していた。

 

「ん~?どうかした?浮かない顔してるね」

 

そんな男の様子を察したのか、彼女…ラミルと名乗っていた女性はこちらをのぞき込んできた。

 

__鎧の上から表情は見えないと思うが。

 

「見えるよ?ほらこう…しょんぼりしてるみたいな?」

 

__心配、痛み入る。…そろそろ我は帰らせてもらおう。

 

「あ、そう?分かったよ。…じゃあ、また今度」

 

彼女はひらひらと手を振って分かれ道で男と別れたが、何かを思い出したように男の方へとパタパタ小走りで戻ってきた。

 

何かあっただろうかと男は首を傾げつつ彼女を見つめた。

 

「これを言うの、すっかり忘れてたよ。多分あなたの古いお友達は、あなたのこと…」

 

彼女は言葉の途中で俯いてなにかモニョモニョと呟いていたと思うと、「やっぱりなんでもない。…またね」とすぐに去って行ってしまった。

 

…?

 

元々傾げた首の角度をより深くした男は、暫くその場で立ち尽くしていたが…結局何も分からなかったので家路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~。言えなかったなぁ」

 

「ま、いっか。どうせまた会えるだろうし。ちょっと他の子の匂いがしたのは…今回は許してあげる」

 

「それにしても、相変わらずつまんない人。ただただ基本に忠実に、堅実に…」

 

「…私はあの時以外、あなたに『さよなら』を言ったことも、言わせたこともないよ。そしてこれからも、ね」

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