異世界金策 一攫千金!〜初心者冒険者必見?転移おっさんの怪しい儲け話Readme.exe〜   作:raixip

118 / 121
第118話 採掘計画書

朝。

 

宿の食堂。

 

机の上には、一枚の白い紙。

 

紙の村でもらった大切な紙だ。

 

僕は深呼吸した。

 

「よし。」

 

「書こう。」

 

マクダフが身を乗り出す。

 

「とうとうですな!」

 

「うん。」

 

「採掘計画だよ。」

 

おっさんは腕を組む。

 

「間違えるなよ。」

 

「紙は貴重だからな。」

 

「分かってる。」

 

僕は慎重にペンを持った。

 

インクを少しだけ付ける。

 

そして。

 

最初の一行を書く。

 

『みんなで鉱山を掘る計画』

 

「よし!」

 

満足だ。

 

次の行。

 

「えっと。」

 

「最初は……。」

 

僕は考え込む。

 

「ツルハシを買う。」

 

さらさら。

 

「次は。」

 

「お弁当。」

 

さらさら。

 

「水筒。」

 

さらさら。

 

「休憩場所。」

 

さらさら。

 

マクダフが首をかしげた。

 

「旦那ぁ。」

 

「採掘場所は?」

 

「あ。」

 

書き忘れてた。

 

「あとで書こう。」

 

昼。

 

商人ギルド。

 

「ジョン君。」

 

「何を書いてるんです?」

 

「採掘計画。」

 

「見てもいい?」

 

「もちろん!」

 

ギルド長は紙を受け取る。

 

読む。

 

読む。

 

また読む。

 

「……。」

 

「どうです?」

 

ジョンは期待に満ちた顔だ。

 

「素晴らしい。」

 

「本当?」

 

「ええ。」

 

ギルド長は真顔で頷く。

 

「これは。」

 

「計画書というより。」

 

「理念書です。」

 

「りねんしょ?」

 

「はい。」

 

「事業の目的が最初に書いてある。」

 

「目的?」

 

「『みんなで鉱山を掘る』。」

 

「ええ。」

 

「ぶれていません。」

 

ジョンは笑顔になった。

 

「そこが一番大事だから!」

 

ギルド長は心の中で思う。

 

(だから信用されるんですね……。)

 

その頃。

 

契約監査官エドガーも計画書を見ていた。

 

一枚だけ。

 

たった一枚。

 

そこには難しい言葉はない。

 

利益予想もない。

 

収支計算もない。

 

ただ。

 

『みんなで鉱山を掘る。』

 

その一文が何度も出てくる。

 

エドガーは苦笑した。

 

「……本当に。」

 

「これしか考えていないのか。」

 

支店長も笑う。

 

「だから困るんです。」

 

「困る?」

 

「本人が嘘をついていないので。」

 

「誰も悪人にできない。」

 

夕方。

 

宿へ戻る。

 

「今日は計画書が書けた!」

 

僕は満足だった。

 

紙を丁寧に乾かす。

 

キュ太郎が近寄る。

 

「きゅ。」

 

「ダメ。」

 

「まだ乾いてない。」

 

キュ太郎はしょんぼり。

 

代わりに机の下へ潜った。

 

おっさんが笑う。

 

「大事そうだな。」

 

「うん。」

 

「この紙があれば。」

 

「みんなで鉱山へ行ける。」

 

「そうか。」

 

おっさんは窓の外を見る。

 

町では。

 

今日もM資金券が飛び交う。

 

商人は売り買いをし。

 

銀行は帳簿を付け。

 

荷馬車は紙を運ぶ。

 

誰も。

 

採掘計画書を知らない。

 

いや。

 

知っていても。

 

読もうとはしなかった。

 

夜。

 

王都。

 

エドガーの報告書が会議室へ届く。

 

財務官が読み上げる。

 

「発行者の計画書を確認。」

 

役人たちが身を乗り出す。

 

「利益予測は?」

 

「ありません。」

 

「発行上限は?」

 

「ありません。」

 

「配当計画は?」

 

「ありません。」

 

「では何が書いてある?」

 

財務官は少し困った顔で答えた。

 

「……。」

 

「『みんなで鉱山を掘る。』です。」

 

部屋が静まり返る。

 

やがて。

 

年配の役人が額を押さえた。

 

「今まで。」

 

「誰一人。」

 

「計画書を読んでいなかったのか……。」

 

その一言で。

 

会議室の空気は、また少しだけ重くなった。

 

宿では。

 

僕が満足そうに紙を眺めていた。

 

「あと。」

 

「ツルハシ。」

 

「金貨一枚。」

 

「頑張って貯めよう。」

 

誰も気付かない。

 

町中を巻き込んだ騒動の始まりが。

 

たった一枚の、素朴な計画書だったことに。




【あとがき:現在のステータス】

【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13

■生産系
料理スキル 13

■その他
鑑定スキル 0.3

【所持金】
171G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))

ジョン
「計画書は書けた! あとはツルハシ!」
おっさん
「順番だけは最初から変わらんな。」

【所持アイテム】
???のスクロール 6枚
採掘計画書(NEW)
 『みんなで鉱山を掘る計画』
新しい帳簿 5冊
余り紙
奴隷のマクダフの野郎
 (計画書を読んで「弁当」が気になっていた)
武器破損した剣
???の指輪(バンステ金策で入手)
ゴブリン(テイム)
ケムトレイル群(保護対象)
キュ太郎
 (乾かしている紙に近づいて止められた)

【投資・契約】
中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中

ジョン
「銀行の計画書もこんな感じ?」
銀行
「……もう少し厚いです。」
おっさん
「百倍くらいな。」

【M資金速報】
発行券種
100G券 ★★★★★
500G券 ★★★★
1000G券 ★★★★
5000G券 ★★★

今回の出来事
✅ 採掘計画書が完成
✅ 王都が初めて計画書を確認
✅ 「目的は採掘」と再認識
⬜ ツルハシ購入(まだ)

※ジョン個人の所持金に変動はありません。
ジョンの一言

ジョン
「計画があると、夢が少し近づいた気がする!」
おっさん
「一番短い計画書が、一番ぶれとらん。」
マクダフ
「旦那ぁ、弁当係なら任せてくだせぇ! ……食べる方ですけど。」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。